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早稲田のゼミをのぞいてみよう ~早稲田大学ゼミ紹介~

2015年12月11日 11:00

「国際協力」と「平和構築」を、多彩なゼミ生と共に学ぶ 山田ゼミ

研究室DATA
山田 満 教授(社会科学研究科)
国際協力・平和構築論研究演習 I
所在地:早稲田キャンパス14号館
どんなゼミ?
 国際関係論や国際政治学の基礎を踏まえた上で、「国際協力」の具体的な進め方と、紛争後の国家をどのように再建していくかという「平和構築」、2つのメイントピックスについて考えていきます。主な活動としては、各ゼミ生の研究テーマに関連する近著や論文を選び、それを輪読すると共に議論を行います。議論では、ゼミ生それぞれが自分の研究を背景にして意見を述べることを求めます。活発な議論を通じて、必要な知識を幅広く習得すると同時に理解を深め、各々の研究に生かしていくことが目標です。
「理論」の研究に加えて、フィールドに出て学ぶ「実践」も重視
 国際社会全体の平和や発展のため、国の範囲を超えて行う「国際協力」と、紛争後の国家を立て直して再び紛争に陥らないように支援をしていく「平和構築」。この2つをメイントピックスとしているのが山田先生のゼミです。ゼミの特徴のひとつは、「理論」と「実践」の両方を重視していること。「理論は重要ですがそれだけでなく、実際に現地を訪れたり活動に関わったりして、自分の目で見て知って欲しいと考えています」(山田先生)。

 ゼミ生には、NGO(非政府組織)でのボランティア活動や海外でのインターンシップなどへの参加を勧めているほか、先生ご自身も積極的にアジア地域のフィールドに出て現地での活動を行っています。取材に伺った日も、「4日後には博士課程の学生を連れて、ミャンマーの選挙に立ち会う予定です」と話していました。

 また山田ゼミには、博士課程に現役の国連関係者が4人もいて、さらにJICA(国際協力機構)の職員やNGO出身者もいます。「すでに実務として国際協力に携わってきたゼミ生は、改めて理論を学びたいとゼミに参加しています。一方、学部から進学してきた学生は理論中心で学んできていて、大学院では実践にも力を入れたいと考えているんです」。

 それぞれの立場での経験や知識をベースに、ゼミで議論を重ねて交流していくことで、お互いに刺激を受けて、それが一人ひとりのスキルアップやキャリアアップにつながっていく――。それも、山田ゼミの特徴であり、魅力と言えそうです。

 さらに、このゼミのもうひとつの特徴が「国際性」。ゼミの始まる前、休憩時間の教室から聞こえてきたゼミ生の雑談は、ほぼ英語でした。ゼミ中に繰り広げられる活発な議論も、最近は基本的に英語だとか。秋学期に東ティモールからの留学生が2人入ってきて、彼らが日本語を話せないため、ゼミの英語化が進んだそうです。「今までも、中国や韓国、ブラジルなどの留学生がいましたが、秋学期からは一気に雰囲気がインターナショナルになりました(笑)」。

 育ってきた国が違えば、考え方や価値観も異なるため、ゼミでの議論がより面白味を増してきたと山田先生。また、「日本人学生の中には英語の読み書きは問題ないけれど、英語で話すのはあまり得意ではないという人もいます。でも、現在のような環境になったので、ゼミが英語のトレーニングの場になっていますね」。毎週ゼミに行くだけで、留学と同じ効果が得られるかも!?
日本人の院生と英語で活発にやり取りしているのは、2015年の秋学期から山田ゼミに参加した留学生Soares Franciscoさん(CJSPプログラム修士課程1年)。母国の東ティモールでは、国家行政省で働いています。
発表を優しいまなざしで見守る山田先生。「学生に対して本当に親身で、ときには人生相談にも乗ってくれます。先生と話したいと思う学生は多くて、研究室にもいつも誰かいるんですよ」(博士後期課程2年・宮下さん)。
国際協力や平和構築の視点があれば、研究テーマは広くとらえてOK
 続いて、ゼミの様子を覗いてみましょう。取材に伺った日は、修士1年の天川直美さんが、自らの研究テーマである「NGOと企業のCSR(企業の社会的責任)活動」について、現在の進行状況などの報告を行いました。

 NGOと企業のCSRの関係に注目する理由や、今後どのように研究を進めていく予定なのかなど、レジュメに基づいて発表した後は、質疑応答へ。静まり返っている間はなく、「どんなケーススタディを想定していますか?」「成功例は何かありますか?」など次々に質問が投げかけられます。また山田先生も、「CSRが何のためにあるのか、まずフレームワークをしっかり把握しておくこと」など重要なポイントについてアドバイスをしていきます。

 ひときわ盛り上がったのは、企業のCSR活動をどう考えるかという議論でした。「日本では、CSR活動は利益追求とは分けて考えることが多いのですが、発表者は生まれも育ちもアメリカで、考え方もアメリカ的。Googleを例に取り、CSRは企業戦略の一環で、CSR活動を通じて自社も名声を高めていくものではないかと言い切って、他のゼミ生はその答えに驚いたようです」。すでに説明したとおり、さまざまなバックグラウンドを持つ学生がいる山田ゼミだからこそ盛り上がった議論だったのかもしれませんね。

 ほかには、どんな研究テーマがあるでしょうか。「たとえば、2015年に修士課程を修了して高校の政治経済の教員になった学生は、東日本大震災後の支援活動を『参加型の開発』という理論でとらえて、被災後の教育に活用できないかという研究をしていました。また、企業からの奨学金を受けてインドネシアのガジャ・マダ大学に1年間留学して、インドネシアのメディアと選挙をテーマに論文を書いた学生もいましたね」。国際協力や国際開発、あるいは平和構築という視点があれば、具体的なテーマ自体は広くとらえてかまわないとのことです。

 ところで山田先生、世界のあちこちで紛争が起きていて、難民問題や貧困問題も後を絶ちません。紛争が終わっても、その後の復興も容易ではないようです。「国際協力」や「平和構築」の研究が進めば、平和で豊かな世界になっていくのでしょうか? 「そう単純な話ではないと思います。ただ、世界平和という大きな目的をみんなで共有することは可能だと考えます。国際協力や平和構築を学ぶことは、平和へのプロセスのひとつ。研究を通じて、世界の平和に貢献する一人になって欲しいですね」。
研究の進行状況について発表する修士1年の天川さん。レジュメはすべて英語で書かれていましたが、この日は取材スタッフにもわかるよう、日本語で発表してくれました。
発表を聞いている側もみんな真剣! 発表後の質疑応答に備えるかのように、気になった箇所にマーカーで線を引いている学生もいました。
先生からのメッセージ
 グローバル化が進む中で、高校生の中にも「自分が世界に対してどんな貢献ができるのか」を考えている人は多いのではないでしょうか。国際協力や平和構築を研究しているこのゼミでは、その問いに対するいくつかの方法を示せるのではないかと思います。なお、国際的に仕事をしていくには、当然ながら語学力が必須です。語学は、あくまで意見や思いを伝える手段。多国籍なゼミですから、さまざまな考えに触れながら、英語を話す度胸をつけるという意味では、うちのゼミは最適な環境でしょうね。
先輩からのメッセージ
 韓国から早稲田に来て、学部生でこのゼミを選んだのは、「国際的な仕事をしたい」という子供の頃からの夢があったからです。14号館(社会科学部校舎)1階に貼ってあった、山田ゼミの紹介写真がアットホームで素敵だったのも理由ですけれど(笑)。ゼミでは「食料の安全保障」に興味を持ち、より専門的に学びたいと大学院に進みました。今は、北朝鮮の食料安全保障を研究中です。朝鮮半島の未来のためにも、必要な研究だと考えて取り組んでいます。

修士1年・李 スーインさん
先輩からのメッセージ
 実は、高校生の頃は「体育の先生」が夢でした。でも、浪人中に「ルワンダの大虐殺」のことを知り、虐殺が起きる原因などについて考えるうちに「国際政治や紛争解決を学びたい」と気持ちが変わりました。学部生のときは主に理論面を学び、大学院に進んでからは実践にも詳しい山田先生のもとで研究を続けています。学部を選ぶ段階で、学べることはある程度決まってきます。だから受験の前に、自分が学びたいことやりたいことが何なのかをしっかり考えて欲しいと思います。

博士後期課程2年・宮下 大夢さん
このゼミを目指すキミに先生おすすめの本
国際平和とは何か ―人間の安全を脅かす平和秩序の逆説―』吉川元/著(中央公論新社)

 戦争や紛争はなぜなくならないのかを考えるために役立つ一冊です。20世紀初頭から現在までの戦争・紛争の歴史と、時代ごとの平和や安全保障に対する考え方を解説しています。世界史の中でも特に現代史が苦手という学生には、歴史の流れを把握するためにも読んでおいて欲しいですね。

新しい国際協力論』山田満/編著(明石書店)

 「国際協力」の理論と実践について、貧困問題や社会開発、人権問題、グローバル化などさまざまな視点から解説している本です。各章の最後には、「ゼミナール」としていくつかの問題提起もしています。読んで知識を得ることはもちろん、自分の頭で考えて理解を深めていただければと思います。
(取材・文/肥後 紀子 撮影/早稲田大学体験webサイト)※2015年度取材

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