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早稲田のゼミをのぞいてみよう ~早稲田大学ゼミ紹介~

2014年8月22日 11:00

数式を使って利益をデザイン! 事業や医療現場を数学的にとらえる大野研究室

研究室DATA
大野髙裕 教授(創造理工学部経営システム工学科)
所在地:西早稲田キャンパス51号館
どんな研究室?
 ものやサービスを提供する企業において、コストを削減して利益を最大限に出すためには、どのようなデータをどのように分析、活用すればよいのでしょうか? 関係する多くの要因を数値化して、客観的に評価できる「数理モデル」の構築を主な研究テーマとしています。数理モデルは経営に関するさまざまな要因の因果関係を明らかにしてモデルを作り、過去のデータから、たとえば消費者の行動やマーケティング効果を予測することで、未来の利益創出やコスト削減に活用できる手法です。最近では企業だけでなく、医療現場などでも幅広く注目されています。
「期間限定」効果を数式で表すには?
 大野研究室が掲げているのは「プロフィットデザイン」。プロフィット(利益)を積極的に創り上げるという意味です。最低限のコスト(費用)から最大限の利益を生み出すためには何が必要で、どのような要素が絡んでいるのか。この研究室では、それらをすべて数値化して評価することを目標にしています。では、具体的にはどのようなテーマがあるのでしょうか。

 取材した7月は、ちょうど学部4年生が卒業論文の作成に向けて方向性を決める大事な時期。ゼミで発表していた内容のひとつが「期間限定商品における消費者購買行動モデルの構築」。お店で「期間限定!」と書いてあるのをよく見かけますが、この言葉が持つ力を分析するものです。発売開始直後と終了直前で売上はどう違うのか、広告の影響力はどうなのか、商品の陳列場所による違いなど・・・これらの要因が消費者の行動や最終的な利益に与える影響を、どう分析すればいいのでしょうか。そのための手法が「数理モデル」です。

 数理モデルとは、研究対象となっている現象を数式で表現したものです。物理や化学の分野では、コンピュータでシミュレーションするための道具として利用されていますが、実は経営の分野でも使われています。新しい物好きな人たちは発売直後に買うけれども、だんだん少なくなるから減少関数で表現しよう、この要素の影響力は大きいから係数を大きくしよう、など。大野研では、自分たちの考える仮説が反映できるように、既存の数理モデルをベースとして、新たにモデルを構築します。そして、実際の店舗から提供されたデータやアンケートデータなどを使って計算するのですが、自分たちが考えていた仮説とは違う結果が出たり、そもそも計算エラーになったりと、一筋縄ではいきません。だからこそ、先生や学生みんなで議論して研究を進めていくのです。

 この研究室では、企業のマーケティングや投資だけでなく、医療の現場も研究テーマとしています。大野先生いわく、病院の経営も大変厳しいとのこと。「病院の7割くらいは赤字で、コストと向き合わなければならない時代。しかし病院関係者にとっては今までコスト意識があまり必要なかったから、どうすればいいか模索しています。そこで私たちは医療機関が医療の質を維持向上しつつ、適正な利益を生み出すためのマネジメントのあり方について、いくつかの病院とともに10年以上にわたって共同研究しています」。医師や看護師が働きやすい病院作りは、私たちが安心して医療を受けるためにも必要なこと。そのための「医療マネジメント」にも取り組んでいます。
夏休み直前の重要な発表。スライドは先輩にチェックしてもらい、万全の状態で挑みます。
発表が終わると、大野先生からコメントやアドバイス。細かい内容についての指摘・質問だけでなく、研究姿勢について熱く語られることも。
身近な問題を追いかけてほしい
 他にも、4年生が卒業研究のテーマとして取り組んでいるものには「動画サイトで最初に流れる広告の影響」「PB(プライベート・ブランド)家電に対する消費者の考え」など、どれも身近なテーマです。これには、大野先生の研究スタンスが大きく影響しています。「卒業研究のテーマは、自分自身で問題を追いかけてほしいため、学生自身が決めています」(大野先生)。3年生までは答えがわかっている問題を解くのがメインですが、研究には「誰も答えを知らない」からこそ、自分で考える能力が求められます。もちろん、最初は研究室の先輩たちとグループワークというかたちで基礎を学びながら、少しずつ研究手法を身につけていきます。

 一方で、自分の手足を動かして調査してほしいとも大野先生は考えています。「人の意見が全て正しいわけではありません。お店や現場に行って、そこで思いついたアイデアが大事です」。インターネットでいろいろなことが調べられる今だからこそ、現場に足を運び、そこで得た直感が大きな糧になるとのこと。医療現場をテーマとしている4年生の永田さんも、医療関係者と直接会話するために、月に1回ほど病院を訪問しています。「自分は医療の専門家ではないので、現場で働く人たちの生の声を聞かないと、わからないことがあります」(永田さん)。実際に現場に行って、データにないものを発見することが、研究には求められます。

 このような「研究に対する取り組み方」を大事にしているのも、大野先生の特徴。ゼミの発表では、細かい内容のチェックだけでなく、調査方法についても熱く語ることがあります。「簡単にあきらめてはダメ」と学生をフォローしたり、逆に「活字となった本で深く知るように」と厳しいアドバイスをすることも。こういった指導に対して学生は、「研究の自由度が高い分、自分のやっていることが本当に正しいのかわからない。自分でやるべきことを判断するのが大変」(4年生・鈴木さん)、「先生や先輩からのいろいろな意見を自分の研究内容に反映するのが難しい」(4年生・舘野さん)。しかし、自分で考えながら行動することこそが、他の人では発見できない、新しい「数理モデル」の構築につながっていくのです。この研究室に入れば、あなた作の数理モデルができるかも?


複雑な数式はいったい何を表しているのでしょう? 研究テーマに合わせて作り上げた、オリジナルの数式(数理モデル)が本当に正しく、ものごとを精度高く表現できているのかを検証するのが研究のポイント。
お昼の研究室の様子。学年に関係なく楽しそうに会話していて、まるでサークル部屋のよう。雑談から研究内容の意見交換まで自由な雰囲気で交わされています。
先生からのメッセージ
 この研究室では、いろいろな背景や考えを持つ学生が集まって、お互いに意見を出し合いながら研究をしています。いろいろな人がいるからこそ、新しいものが見つかり、これまでにないものが生み出せると思っているからです。みなさんも「新しいことをやってみよう」や「これはなぜだろう」ということを常に意識してみてみましょう。「世の中のここが変だな」と疑問に思うことを楽しんでください。
先輩からのメッセージ
 経営システム工学科では、2年生までの授業で幅広い分野を学び、その中から深く掘り下げて学びたいことを決めます。私は高校生のころ、将来の夢は決まっていませんでしたが、そういった人でも専門的に学びたいことが見つかるはずです。また、この研究室では企業のマーケティングだけでなく、医療のコストについても学べるため「一粒で二度おいしい」と思います。

4年・舘野 ひとみさん
先輩からのメッセージ
 この研究室では、いろんな人が集まって研究テーマを見つけていきます。自分もその中に入って刺激をもらいたいと思って、この研究室に入りました。自分の考えをしっかりしておかないと前に進めないという苦労はありますが、他の人たちからアドバイスを受けながら研究しています。大学や研究室に入ると何でもできるので、自分から学ぶ環境としては最適です。

4年・永田 拓也さん
先輩からのメッセージ
 自分の興味と一致するような学科に行くべきだと思います。私の場合、経営とITに興味があり、両方を活かせるのが経営システム工学科だと考えて入りました。この研究室ではやりたい内容を自分で選べるので、苦労もしますがプラスと捉えています。いろんなデータを集めたり、数式を組み合わせたりする分析の過程そのものも楽しいです。

4年・鈴木 槙将さん
このゼミを目指すキミに先生おすすめの本
もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』岩崎 夏海・著(ダイヤモンド社)

 経営の本質を突いていて、高校生の視点で考えることができる、とてもいい本です。自分の身近なところから「マネジメントってこんなに簡単なことなんだ、自分たちでもできることなんだ」と感じることができます。「経営は社長がやること」ではなく、身の回りの生活に関わっていることだと実感してもらって、私たちのところに入ってくれれば嬉しいです。
(取材・文/島田 祥輔 撮影/早稲田大学体験webサイト)※2014年度取材

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