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早稲田のゼミをのぞいてみよう ~早稲田大学ゼミ紹介~

2013年2月22日 11:00

家族を通して社会を見て、社会の問題から家族を考える、池岡ゼミ

研究室DATA
池岡 義孝 教授(人間科学部人間環境科学科)
演習II(家族社会学)
所在地:所沢キャンパス100号館
どんなゼミ?
 名前のとおり、家族を社会学的に研究するゼミです。ただし、「家族」といっても夫婦や親子といった狭い関係だけを指すのではなく、家族につながる社会の問題や事象なども幅広く研究対象とします。また、社会学的な研究を行う上で欠かせない社会調査の技法についても学び、3年次にはゼミ生全員で共同研究を行います。4年生は、各人が興味を持ったテーマで卒業研究に取り組みます。
家族と社会のつながりについて、広く研究する家族社会学
 「家族社会学」と聞くと、家族の内部の関係や問題について研究する学問だと決めつけてしまいそうですが、実はそれだけではないのだとか。「社会学的に家族を研究するということは、家族を閉じたシステムとして考えるだけでは不十分なんですよ」と池岡先生。

 「それでは、親子や夫婦など家族の中の人間関係に関する研究に限定されてしまうからです。そうではなくて、もっと広く、家族と社会のつながりについて研究していきます」。家族を通して社会を見る、あるいは逆に、社会の問題から家族を考えていくというのが、家族社会学なのだそうです。
 と、ここで先生に改めて聞いてみました。そもそも「社会学」って何なのでしょう? 「すごく簡単に言うと、社会で起きている現象や問題を対象とし、それを実証的に調査し分析していく学問です」。

 つまり、社会学の研究を進める際に欠かせないのが「社会調査」。社会現象や問題は自分勝手に解釈するのではなく、世の中の人の意識を客観的に探ることが重要です。調査の方法には大きく二通りあり、ひとつはアンケートなどでデータを集める量的調査、もうひとつはインタビューなどを用いる質的な調査法とのこと。池岡ゼミでは、後者に重点を置いています。「質的調査では、統計データの数値には表れないような微妙なところについても調べられるのが特徴です」。

 ゼミ生に、この質的な社会調査の技法をしっかり習得してもらうため、3年生の後期にはテーマを決めて共同で調査をするのが池岡ゼミの恒例です。取材にうかがった日は、ちょうど2週間後に行うインタビュー調査の準備を進めているところでした。今年のテーマは「年の差婚」。芸能人の年の差婚が話題になったり、大震災以降、頼りがいのある男性を求める傾向が強まって年の差婚が増えているという現象があり、これについて大学生の考えを聞くのだとか。

 池岡先生によると、「インタビュー対象者は学生なので、テーマは学生たちで考えます。私が考えるよりおもしろいテーマが出てきますよ」とのこと。ちなみに、2011年のテーマは「できちゃった婚」、2010年は「草食系男子」、さらにその前年は「失恋調査」だったそうですよ!
「年の差婚に、肯定的か否定的かをまず聞く?」「他人ならいいけど、身内だとイヤっていう人が多そう」「一般論か、当事者かで分けて聞いたら?」、何をどう聞くかさまざまな意見が飛び交います。
共同調査のテーマ「年の差婚」について、グループごとに雑誌、書籍、新聞、ブログなど分野を分けて資料を収集。雑誌担当のゼミ生は、お茶ノ水にある女性誌専門の図書館で資料を探したそうです。
入念な準備が、インタビュー調査の成否のカギを握る
 今回、3年生が行う社会調査で使う調査法は、「フォーカス・グループ・インタビュー」というもの。8~10人の参加者にディスカッションしてもらって話を聞くというインタビュー法だそう。もともと新商品の開発などの市場調査に使われていた方法で、複数の人に話を聞くことで1対1のインタビューでは出てこないような、多様な意見を引き出せるのがメリットです。「たとえば誰かが『こういうことがあるよね』と言うと、『そうそう!』と共感する人たちがいて、議論が活発化するといった効果が期待できます」(池岡先生)。

 ただし、参加者に活発に発言してもらい、テーマの核心に関して話をしてもらうには、入念な準備が必要なのだとか。行き当たりばったり、その場の雰囲気で適当に話してもらうのでは、調査にはなりません。

 この日のゼミでは、進行役がホワイトボードにインタビュー当日の流れを書き出し、整理していました。挨拶から始まって全体的な内容の説明、参加者の自己紹介。そして質問はまず簡単なところから始めて、徐々に突っ込んだ内容へと移っていく予定です。最初に聞くのは、やはり「年の差婚をどう思いますか?」がベストでしょうか? 意見がまとまらない様子を見て、ここで先生が助け舟。「まず年の差ありきじゃなくて、たとえば『とっても好きな人がいるけれど、その人が20歳離れていたら?』という聞き方もあるのでは。そのほうがリアルじゃないかな」。

 聞き方ひとつで、インタビューの答えや流れが変わってくる可能性があり、調査結果にも影響を及ぼしかねません。事前の準備がいかに大切か、先生のアドバイスから垣間見えました。こうした議論をもとに、次週はそれぞれがインタビュー時の質問候補を考えてくるということで、この日のゼミは終了!

 さて、3年生の後期は、この共同調査がひとつの山場。インタビューが無事に終わったら、ICレコーダーで録音した音声を文字に起こし、集めた意見から傾向やパターンを読み取って分析して、最終的には報告書の形にまとめます。そしてその後は、4年生で行う卒業研究のためのテーマ選びに取り掛かるそうです。

 最初に先生からうかがったとおり、家族社会学だからといって研究テーマは「家族」に限定されません。家族と社会をつなぐテーマであればOK。現在の4年生が取り組んでいるテーマには、たとえば「大学生におけるケータイの利用と友人関係の変容」や「スケジュール手帳からみる女子大生の意識構造」があったり、中には「戦闘美少女とそれを愛する人びと」なんていうものまで! タイトルだけで興味が湧いてきますね。なお、池岡ゼミでは卒論を文集にまとめるので、ゼミに入れば過去の卒論も読むことができます。

 社会にはさまざまな問題があり、興味深い現象も多々起きていますが、特に深く考えずにやり過ごしてしまうことがほとんどかもしれません。ゼミに参加することで、そうした出来事に目を留め、社会学的な手法で深く掘り下げられるというのは、非常に有意義なのではないでしょうか。
2週間後に迫ったフォーカス・グループ・インタビューの手順を検討中。インタビュー時の質問内容も、この段階で細かく決めておくことが重要なのだとか。
池岡ゼミでは、毎年卒業論文を一冊の文集にまとめています。「書いた学生にとってはずっと残る宝物。また現役学生は、卒論の目次はどうするのか調査データをどのように分析するかなど、かなり参考にしているようです」(池岡先生)。
先生からのメッセージ
 高校生諸君には、現代社会の中で人間が何を考えどんな悩みを抱えて、あるいは何に喜びを見出しながら生きているのかということに、常に関心を持っていて欲しいですね。人間科学部には多様な研究領域があり、社会調査や実験、実習といった実践的な研究をしている研究室やゼミが多いのが特徴です。 もし、現代社会のさまざまな事柄や問題を深く知りたいと考えたら、 人間科学部に来れば、意欲に燃えるみなさんの期待に確実に応えられると思いますよ。
先輩からのメッセージ
 ゼミに入る前は家族社会学についてははよく知らなかったんですが、シラバス(学習計画)で卒業生の研究テーマを見て、幅広い中からテーマを選べるのがいいなと思ってココに決めました。このゼミが素晴らしいのは、議論が活発で、しかも雰囲気がいいところ。ゼミ生は同学年でも知らない人ばかりでしたが、今は先生も含めてみんなと仲良くなれました!

3年・秦地 美菜さん
先輩からのメッセージ
 2年のときに池岡先生の授業がおもしろかったのが、ゼミを選んだ理由です。あと、僕はもともと若者の消費行動に関心があったのですが、若者論も家族社会学のテーマになると聞き、僕にぴったりだなと。人間科学部は何をやるかわかりにくいですが、逆にいろいろなことができるところでもあります。選択肢のひとつとしてぜひ考えてみてください。

3年・奥泉 卓也さん
先輩からのメッセージ
 卒論では「親の職業は、子供の職業選びにどんな影響を及ぼすか」というテーマで研究しています。何人もにインタビューをして、そこから共通点や違いを見つけ出すのは大変ですが、やりがいも大きいですね。家族とは、自分が所属する環境の中で最も近いところですが、その「最も近いところ」で起きていることが実は社会の大きな問題につながっているというのが、家族社会学のおもしろさだと思います。

4年・岩井 宏暁さん
先輩からのメッセージ
 卒論テーマは「働く母親のキャリア観と子育て意識」。論文は個人作業かと思いきや、お互いの進行状況を報告したり相談に乗ってくれる人がいたり。自然に協力し合うというか、ひとりじゃないと思えるのがこのゼミの魅力です。高校生のときは、大学で何を学べばよいのか迷っていましたが、人間科学部で池岡ゼミに出会って、研究テーマも見つかって...私にとってはすごくいい学部、ゼミでした。

4年・梶 未来乃さん
このゼミを目指すキミに先生おすすめの本
子どもが減って何が悪いか!』赤川学・著(ちくま新書)

 とても刺激的で挑戦的なタイトルの本を推薦しましょう。
 わたしのゼミのテーマである家族にとっても、少子化は大きな問題です。現在、多くの少子化対策がとられていますが、この本はそれらに特効薬としての根拠があまりないことを実証的なデータによって示し、むしろ少子化を前提とした新しい社会の構想をこそ目指すべきだと主張しています。
 社会学という学問は、当たり前だと思われている社会現象の通説や自明性を疑ってかかり、それを社会調査による実証的なデータから検討するのですが、その両者の醍醐味を味わうことができるのが本書です。
(取材・文/肥後紀子 撮影/早稲田大学体験webサイト)

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