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早大教員の授業における Good Practice &Tips 集

2018年10月10日 14:03

会計のプロとして真に役立つ学びを提供したい

【早稲田大学ティーチングアワード2017年度秋学期総長賞受賞者インタビュー】⑨栗原克文先生2.jpg

対象科目:法人税法II(講義概要動画
受賞者:栗原 克文(会計研究科教授)

 国税庁を研究休職し、2017年度から会計研究科の教壇に立っている栗原教授。「有意義」「よく理解できた」と学生から高い評価を獲得し、初年度ながら本賞受賞に至ったその授業においては、26年間の実務経験を活かし、理論と実務を結びつけながら税の考え方を伝えることを心がけているという。
理論・計算・裁判事例の3本立てで力をつける
 近年、経済取引のグローバル化や情報化に伴い、それに対応するための税制も大きく変化してきている。そのため、会計の専門家として活躍するためには、会計の知識のみならず税の知識を有することが大きなアドバンテージとなる。
公認会計士の試験を目指す、あるいは会計の専門家になろうという学生を対象にしたこの授業で、栗原教授は理論と実務を融合させた授業を目指している。

 その柱は3つだ。まずは税の制度について学ぶこと。「単に制度を覚えるのではなく、それがどんな趣旨で作られたものか、どういう経緯でどんな改正がなされてきたかということも詳しく説明するようにしています」。

 2つ目は、その税の制度について、具体的な数字を入れて学生自身に計算させること。「式を見るだけではなく実際に数字を当てはめてみることで、より実感を持って理解できます」。

 そして3つ目は裁判例を数多く紹介すること。「税法は非常に複雑で、認められるものとそうでないものの線引きが微妙なグレーゾーンもあり、訴訟になることもあります。制度上法令で規定されていても、判断が難しい場面もあることを、実際に裁判になった事例を取り上げて解説しています」。

 こうした話をすると、学生たちは非常に熱心に聞くという手応えがあり、学生アンケートでも「計算や裁判事例を取り入れたことが良かった」と評価する声が多かった。加えて、そのときの旬な話題も盛り込むようにしている。「最近はネットを経由したデジタル取引が増えており、そこへの課税が議論されています。ちょうどこの授業の期間に仮想通貨に対する取扱いが示されたこともあり、この問題についても取り上げました。また、トランプ政権による法人税率の大幅引き下げなど、国際的な潮流も説明しました」。
授業をビジュアル化して変化をもたせる
 授業の進め方で工夫しているのは、ビジュアル化することだ。「自分が学生の頃、せっかくいい話でも、ただ耳で聞いているだけの授業は興味を持ちにくかった」という経験から、ホワイトボードに図を描いて説明するなどの手法を取り入れている。図入りのパワーポイント資料も作って配布しているが、あえてそれは教場では投影していない。「資料は手元に配ってあるので、それとは別に取引の流れの図などを、ホワイトボードにリアルタイムに描きながら説明しています」。

 栗原教授は以前にも別の大学で学部の授業を教えた経験がある。「今回は大学院ということもあり、将来の目標を持って来ている学生が多いので、学習意欲は非常に高いと感じました。その分、その期待に応えられるような授業をしなければと気が引き締まります」。

 会計研究科にはさまざまな学部出身の学生が集まっている。前提となる知識にはばらつきがあり、どのレベルに合わせるかという点が悩ましかったという。レジュメは各授業よりも2回ほど前に配布し、予習復習を促した。その結果、「法人税を初めて学ぶという学生でも満足できる成績だった人も多く、努力してくれたのだと思います」。
授業参観で他の教員からのアドバイスも参考に
 会計研究科では、教員同士が互いの授業を参観し、気づいた点を報告し合うというシステムがある。「私の授業を見た先生から、もう少し学生に問いかける機会を設けたほうがいいなどという助言をいただき、さっそく取り入れました」。栗原教授が他の教員の授業を参観したときには、気づいた点を伝えただけでなく、むしろ自分自身が勉強になる点がたくさんあったそうだ。「やはり長年授業をされている先生は話し方も上手ですし、大いに参考になりました。私より前にいらした先生が、着任当初授業のやり方で迷っていたときに他の授業をいくつか見せてもらって役立ったという話も聞いています」。

 授業参観時以外にも、他の教員と会議の前後などにちょっとした情報交換をすることもある。「授業で学生を指名して答えさせるときは、後ろに座っている学生から当てるようにしているのですが、これも他の先生にいただいたアイディアです」。

 今回の受賞の知らせを聞いてうれしかったのは、複雑で難しいと思われがちな税を学生が積極的に学習し、有意義だと感じてくれたことだと語る。それは、まさしく学生のニーズに合う授業だったと言えるからだろう。「会計の専門家になったとき、どうしても税と無関係ではいられません。税の考え方や、基本的な計算、問題になりやすい取引について理解しておくことは不可欠です。それを前向きに勉強して理解てくれたのが一番ですね」。

 国税庁の職を離れて1年間教えた実感は、一般的には、予想以上に税の知識が知られていないということだった。国税庁や税理士会などでは、小学校、中学校、高校そして大学でも租税教育の機会を設けている。「しかし、まだ十分とはいえず、より税への関心を高めていく道があると感じます。任期終了後は国税庁に戻りますが、そのときにはここで得た経験を生かして、より税を身近に感じてもらえるよう努めたいと思います」。

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