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早大教員の授業における Good Practice &Tips 集

2018年8月10日 00:00

ケースの予習+ディスカッションで、授業への参加意識を高める

⑨竹内規彦先生.jpg【早稲田大学ティーチングアワード2017年度春学期総長賞受賞者インタビュー】

対象科目:人材・組織(夜間主)
受賞者:竹内 規彦(商学学術院 教授)

大学院経営管理研究科の必修コア科目である「人材・組織」。30代半ばを中心に、20代後半~50代前半までのビジネスパーソン約30名が、組織や人材をマネジメントする上での理論や方法を学ぶ。すでに実務経験があり、仕事も忙しい社会人学生たちの学習意欲を高めて、主体的に学ばせるためにはどうすればよいのか。竹内教授は、授業の進め方と評価の仕方という主に2つのポイントで独自の工夫を取り入れ、効果を上げている。
ディスカッション→理論の順で学ぶことで理解が深まる
 大学院経営管理研究科(ビジネススクール)は、そもそも3年以上の社会人経験が要件ということもあり、ビジネスの最前線で活躍している人材が履修している。彼らが期待しているのは、ビジネスの現場だけでは学べない理論の部分だ。「とは言え、単に理論だけを説明しても『机上の空論ではないのか』と思われる可能性があります。実務と理論をブリッジするツールが必要だと考えました」と竹内教授は語る。

 そこで、「人材・組織」の授業では、まず2コマあるうちの最初の1コマ(90分)で「ケース」についてのディスカッションをしてから、後半の2コマめでそれについての理論を学ぶという方法を採用したという。ちなみにケースとは、ハーバード・ビジネス・スクールなどのビジネススクールや経営大学院で使われているさまざまな事例のこと。非常に多くの種類があり、その中から各回の内容に合ったものを選び、事前に配布している。

 「あるケースのストーリー、たとえば某企業のオーナー社長が、賃金上昇以外の方法で社員のモチベーションを上げる必要性に迫られた場合、解決法には何があるか、組織のおかれた環境や条件・制約を理解した上で、それぞれの方法にどのようなメリット・デメリットがあるか、ある方法を選択した場合に想定されるリスクは何かなど、多面的にディスカッションします。クラス全員でディスカッションすることで問題の共有度が高くなり、またディスカッション時にはそれぞれのビジネス体験がベースになるので、自己の問題としてとらえられます。理論だけを学ぶより、高い学習効果を得られると考えます」。

 ディスカッションのしやすさを考慮して、教室は「馬蹄形」を選択。「お互いの顔が見やすいので議論がしやすく、中央にスペースがあるので私も動きやすいですね」。ちなみに、教室を選ぶ際には「スライドの表示時にホワイトボードが隠れないこと」も条件としている。「ディスカッション時には、学生の発言を私がホワイトボードにどんどん書き留めていきます。後半の講義ではパワーポイントで作成した資料をスライド表示しますが、その際にも議論の内容を振り返ることがあるため、ホワイトボードが隠れないことが望ましいからです」。
「発言」が評価対象になることで、ディスカッションを活性化
 ケースは長いものではA4用紙20~30ページにも及ぶ。事前に読み込んでおかなければ発言するのは難しいため、予習は必須だ。基本的に、社会人の学生はケースを読んできて主体的に授業に臨むというが、もう一押しの工夫として、事前にケースに関する質問を配布することで準備を促している。「毎回、ケースに関する質問を4~5問程度Course N@vi経由で配布し、回答を準備しておくことを求めています」。授業アンケートによると、予習時間のボリュームゾーンは2~3時間程度で、質問の事前配布もあってか学生が入念な準備をしていることがわかる。

 また、ディスカッションの活性化につながる工夫と言えるのが、ディスカッション中の発言数と発言内容を評価対象としていることだ。「評価されていると思うと、より手を挙げて発言しよう、あるいは意味のある発言をしようという動機づけにもなります」。ただし、と竹内教授は続ける。「もともとクラスに貢献しようという意識の高い学生がほとんどです。仮に評価対象でなかったとしても、発言が出ないということはないでしょう」。

 発言の回数や内容は、きちんと管理する。具体的には、発言した学生にTA(ティーチング・アシスタント)が紙を渡し、学生はその紙に発言内容を簡単にメモした上で提出する。「発言の数や内容を記録するのは評価のためですが、同時に評価への不服申し立てがあった場合に、開示できる情報を用意しておく必要があるからです。学生の中には企業派遣で来ている人もいるので、問い合わせがあればいつでも回答ができるようにしておくべきだと考えています」。

 また、紙での発言の管理に加えて、竹内教授は個々の学生の発言をできるだけ記憶するようにも努めている。「そのためだけではありませんが、クラス全員の名前と顔は覚えるようにしています」。名前と顔を記憶するために、初回の授業のタイミングで学生に自己紹介と顔写真をメールで送ってもらい、A3サイズの用紙に顔写真を貼って、それを眺めながら覚えているそうだ。

 必修科目ということで、やる気がある学生から「必修だから取る」という学生まで、学生のモチベーションにはもともと差があるという竹内教授。しかし、丁寧な予習、徹底的なディスカッション、そして発言が評価の対象になるという工夫などもあり、「結果的には、必修だから取っていた学生も『学んでいるうちに面白くなりました』と言ってくれますね」。
効果的な授業の「形」の確立は、研究の充実にもつながる
 着任した当初から、マイナーチェンジはあったものの、「ケースのディスカッション」+「講義」というスタイルで授業を展開してきた竹内教授。すでに述べたようにこの授業は学生に好評で、今回ティーチングアワード総長賞を受賞したことで、さらに一定の評価を得たと考えている。そこで、今後もこのスタイルでの授業を継続する予定だ。

 評価を得たやり方をそのまま続ける背景には、「研究者」としての思いがあるという。「私は『教員』であると同時に『研究者』です。どちらも重要だからこそ、教育と研究の間でリソースをうまく配分して、効率的かつ効果的な方法を見つける必要があると考えています」。研究を充実させるためにも、効果的な授業の「形」を確立することは欠かせない。

 「実は、着任して1~2年の間はカリキュラムの関係で今より受け持つコマ数も多く、慣れていないこともあり研究に割く時間が少なくなっていました。研究の時間を確保することは当時の課題でした」。現在は、着任当初とはカリキュラムも変わり、教育者としても研究者としても充実しているという。「おかげさまで、昨年度(2016年度)には本学の「リサーチ・アワード(国際発信)」も受賞させていただきました。今回、授業についても評価いただいたので、しばらくはこのまま進めていくつもりです。もちろん、改善すべき点が出てくれば、その都度、改善はしていきます」。

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