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早大教員の授業における Good Practice &Tips 集

2018年8月10日 00:00

理論と実践の融合で、財務の分野でグローバルに闘える人材を輩出したい


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【早稲田大学ティーチングアワード2017年度春学期総長賞受賞者インタビュー】

受賞者:柳 良平 大学院会計研究科 客員教授(受賞時は早稲田大学非常勤講師)

日本経済の発展には、企業の競争力強化と収益力の向上が急務と言われている。上場企業の現役CFOでもある柳教授は、現場で培った経験を盛り込んだ実践的理論を展開する授業で高い評価を得ている。就任以来、研究活動にも力を入れて授業内容をブラッシュアップしてきたのは、早稲田の卒業生に日本経済のグローバル化のリーダーとなって欲しいという熱い思いが込められているからだ。
人脈を活かし、他では得られないデータを活用する
 企業価値をいかに高めるかをテーマにしたこの授業の目指すものは、理論と実践の遂行だ。論文や実証研究などを背景に、大学院としての高度な学術的理論を学ぶと共に、ビジネスの現場で経験を重ねてきた教員ならではの、実践的な内容が加わっている。「製薬会社のCFOとして、企業価値を最大化するための政策や戦略を実行してきた中で、実際の現場では何をどうするべきなのかという話ができる点で、実務家ならではの差別化を図りたいと考えています」。

 注目すべきは、人脈を活かし、外国人投資家に対して毎年行っているアンケートデータが活用されている点だ。日本のコーポレートガバナンスやアベノミクスについて、海外の投資家はどう評価しているのか、その本音の声が授業にフィードバックされるのだ。「私自身、過去の業務において外国人投資家との面談を毎年200件行ってきた実績があり、それを通して彼らとはファーストネームで呼び合う信頼関係もあります。その上での依頼なので、普通は明かさない本年の声を聞かせてもらえるのです。回答をくれるのは毎回100名程度ですが、彼らの日本市場への総投資額は100兆円にもなります。これだけの規模で、しかも10年以上継続したデータを使う授業は、他の人にはできないことだと自負しています」。

 一方で、「実務経験を語るだけでは賞味期限は1年で切れる」という思いも持っており、論文はもちろん、毎年著書を出版することを自らに課すなど、研究活動にも力を入れてきた。当初は持っていなかった博士号も取得した。「単に実務家としての経験を語っているだけという授業は絶対に避けたかったので、アカデミックな世界でも認めてもらうように努力してきました。その甲斐があって、授業の内容も年々良くなっていると感じています」。
ロールプレイのプレゼンで実践力を育む
 授業では、学生たち自身が発言する機会を増やすよう心がけている。「いくら促しても前に座らない、手を挙げないので、こちらから後ろに歩いて行き、直接どう思う?と指して答えさせるようにしています。彼らはシャイなだけで能力も意欲もあるので、そうやってこちらから入って行くことで、氷を溶かすような効果がありますね」。

 実践の集大成としては、授業の後半3回を使ってIRシミュレーションを行っている。学生3人でチームを作り、実在企業の社長、財務担当役員、IR担当役員としてロールプレイに挑戦するというものだ。たとえば社長役の学生はその会社の経営理念や中期計画を、CFO役は配当政策やROEなどを、IR担当役はコーポレートガバナンスや環境問題への取り組みなどを語る。 30分程度の発表の後は、他の学生がひとり1回は質問をするという前提で質疑応答を行う。質問する側もアナリスト、投資家になったつもりで、実際の株主総会さながらの論戦を繰り広げる。「どこを攻めるのか、あるいはそれにどう対応するのか。そこまでの授業で学んだ理論を使って、リアルなバトルを体験してもらっています」。

 最後は、良かった点、改善すべき点などについてプロの立場から講評をする。その評価を充実させるため、発表当日は勤務しているエーザイの部下のマネージャー3人ほどにボランティアTAとして協力してもらい、複数の目線で徹底的にチェックしている。

 評価ポイントは、スライドのクオリティに加え、ボイストーン、アイコンタクト、注目のさせ方などプレゼンのスキルも重視している。「それは国際的な交渉の場で相手を説得するには絶対に必要なものだからです。どんなにいいことを言っても、下を向いてもぞもぞ話していたのでは伝わりません。そういうスキルはぜひ身に付けてほしいですね」。

 協力してもらっている部下たちとは、授業の当日昼休みにミーティングを開き、発表で使われる会社の情報を読み込んでおく。「こちらが先回りして理解しておくことで、学生たちの発表に対して、高いレベルのフィードバックが可能になります」。

 現状、海外投資家からは、日本企業の経営者の財務リテラシーは低いと見られているという。「今すぐ我々専門家がすべきことも多いのですが、中長期的には教育の影響も大きい。若い人たちへの教育を通じて、10年後20年後には財務の分野でも、世界と闘っていける国にしたい。私も卒業生として、ぜひこの早稲田からそういう人材を多数送り出したいですね」。



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【教科書1】
2015年 中央経済社刊
『ROE革命の財務戦略』
柳 良平 著




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【教科書2】
2017年 中央経済社刊
『ROE経営と見えない価値』
柳 良平 著




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【参考英文著書】
2018年5月 Springer社刊
『Corporate Governance and Value Creation in Japan』
早稲田大学の学生・教職員は、早稲田大学契約データベースSpringer Linkより無料でダウンロードできます。
学術情報検索」の一番上の検索窓「図書や論文を探す(WINE Plus)」より「Ryohei Yanagi」または「Corporate Governance and Value Creation in Japan」で検索してください。
※大学外のネットワークからアクセスする場合には、学外アクセスによる認証が必要です。



【講義概要動画】

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