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早大教員の授業における Good Practice &Tips 集

2018年8月10日 00:00

「逆さ質問」「クイズ」などで発想の転換を促し、未開地を歩む者としての自覚を高める

⑦篠原尋史先生.jpg【早稲田大学ティーチングアワード2017年度春学期総長賞受賞者インタビュー】

対象科目:省エネルギーLSIシステム
受賞者:篠原尋史(情報生産システム研究科 教授)
海外出身の学生から高評価を得た「超アナログ」スタイル
 今回、2017年度春学期ティーチングアワード総長賞を受賞した省エネルギーLSIシステム情報生産システムは、北九州キャンパスの大学院情報生産システム研究科の専門科目である。受講している学生は年度にもよるが、留学生が多く、そのため他学部に比べて秋に入学する学生が非常に多いのが特徴の一つである。

 秋学期でも同内容の講義を行っているが、人数は春学期の方が少なくなることが多い。2017年度春学期は、13名が受講し、全員がアジアからの留学生であった。そのためほぼすべてを英語で行った。

 2017年度は、篠原教授が北九州キャンパスで教鞭を取って3年目であったが、年によって学生の出身国の構成や人数が違うため、日本語・英語のどちらを使用するかの割合は様子を見て決めている。1年目は日本語も使っていたが、現状では英語の比率が高くなっており、今後もこの傾向は続くだろうと篠原教授は予想している。「英語で講義するかどうかや、講義のレベルなどは、一人ひとり講義で顔を合わせてから反応を見つつ微調整しています。オーソドックスな講義が中心の授業で、自分では『超アナログ』な講義だと思っています」。

 そういったスタイルが学生の心に響いているのだろう、評価項目アンケートでは「総合的に見てこの授業は有意義だった」が6点満点中5.7点、「この授業の内容をよく理解できた」「教員は効果的に学生の参加(質問や発言など)を促した」「優れた講義に与えられる表彰に推薦しますか」の3項目では6点満点中6.0点という高評価を得た。
学生の間をダイナミックに動いて注意を引く
 講義の内容としてはLSIのエネルギー効率の概念、素子ばらつきと回路動作への影響、省エネルギー回路とシステムの基本を理解することを目的として、LSIの省エネルギー技術を総合的に解説している。カリキュラムはボトムアップ形式で、エネルギー効率の概念やトランジスタから始まり、デジタル回路、メモリ回路、アナログ回路などの要素回路、そしてシステムLSIチップ統合へと続く。基本原理を使って、最近のLSIではどんなことがなされているのかということまでバランスよく取り入れている。「ざっくり言うと、基本3、ここ10年くらいの動向が3、最新の話題2の、3:3:2くらいの割合でしょうか」。

 授業の進め方としては、スクリーンを使ってパワーポイントで作ったスライドを映写、補足をホワイトボードに書くスタイルだが、説明しながらダイナミックに学生の間を動くことで、注意をひいたりすることも多い。また、学生の意表をついて通常とは違った角度から質問を投げかけることに工夫を凝らしている。配布したハンドアウトにクイズを仕込んである場合は、学生たちがそれを問いている間に見回りながら回答の様子を確認することがあり、そういった時間に、学生たちから気軽に質問などを受けることがあるそうだ。

 もともと留学生が多い講義ということもあり、学生たちの参加態度も積極的で、学生からの質問や、時には板書の間違いの指摘、意見などもある。「質問などがある場合はいつでも来なさい、と言ってあるので、『私はこう思うんですが』など学生の持論を聞く機会もあります」。このように学生とのコミュニケーションが円滑に行われていることが、今回の学生授業アンケートでの高評価につながったことは間違いないだろう。
意表をつくクイズなどにより発想の転換を促す
 学生にとっての研究というものについて、篠原教授はこう語る。「例えて言うなら高校まではバス、大学学部は自動車、大学院は未開地」。

 高校までは運転手がいて、通る道も決まっている。大学では自由度が増して、自分で運転もするし道を選んだりもできるが、まだまだ、人が作った道を通っているようなもの。しかし、大学院では今までとは違い、人が入ったことのない場所を探検することになる。法則や公式を知り、それを当てはめて問題を解けばよかったのが、大学院ではその法則や公式を発見する側に回る。そのことを、「逆さ質問」や「クイズ」といった形で授業に取り入れることで学生に伝え、発想の転換を促しているそうだ。

 例えば、データをコンピュータに分析させてグラフを描くことは学生たちも経験があるが、コンピュータに頼らずにデータを自分でよく見て「こうなるのではないか」と推測してスケッチしてみて「直観力」を鍛えてみる。

 さらに身近な例として「1W当たりにはいくらコストがかかるでしょう」というようなクイズを出して考えさせてみることも。普通の100ボルトのAC電力だったら? 乾電池だったら? 充電式の乾電池だったら? ボタン電池だったら? キャンディ1個分のカロリーをW換算したらどうなるか? 水の蒸発する気化熱で発電するときの1W当たりのエネルギーコストはどうなる? など、身の回りのさまざまな現象をW換算して比較することで、発想が転換するきっかけとなるような工夫を盛り込んでいるそうだ。

 「クイズの内容ももちろん意味を持たせていますが、学生がクイズの回答を書いている間に机の間を回ったりするので、物理的に近くに行くことになり、『先生ここはどうなりますか?』などと声がかけやすくなる効果もあると思います」。
学生との垣根を低く保ちつつ、研究者としての意識を持たせることを目指す
 クイズのようなものだけではなく、毎週の課題はできるだけ考えさせるようなものを出して、それに対するフィードバックもTAと共にきめ細かく行っている。また、繰り返しにより知識や技能を定着させることを重視していて、講義の最初に前回のサマリーを行う。理解度確認試験は2回(中間・期末)行い、しっかりと知識を定着させていくことを意識している。

 さまざまなバックグランドを持つ学生が集まる教室で、それぞれの学生の反応を直接確かめつつ、丁寧な授業運営を行っている篠原教授。今後はリアルタイムで反応が得られる「わせポチ」の利用などにも興味があるという。「私の講義の基本姿勢はやはり学生との距離を近く保つことと、学生がこれまで習ってきた公式を当てはめて解く側から、公式を生み出す側に回るきっかけを生み出すこと。いずれは、原野で自分で道を切り開ける研究者になってくれることを願っています」。

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