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早大教員の授業における Good Practice &Tips 集

2018年8月10日 00:00

単なる知識ではなく、「どこがおもしろいか?」を意識して学んでほしい

⑥窪薗先生00.jpg【早稲田大学ティーチングアワード2017年度春学期総長賞受賞者インタビュー】

対象科目:対照言語研究B
受賞者:窪薗 晴夫(早稲田大学非常勤講師/国立国語研究所 副所長 教授)

自らが感じている学問の魅力を学生にも伝えたい。そんな教員の思いはどうすれば実現するのだろうか。窪薗教授が36年間の教員生活でたどり着いた授業スタイルは、その答えのひとつとなるかもしれない。
身の回りの「なぜ?」を意識することが学問の出発点
 受賞対象の「対象言語研究B」という科目は、日本語の音韻構造を、英語をはじめとする他言語と比較して理解するという日本語教育研究科の授業だ。将来日本語教育に携わることを目指す学生に対して、単に知識を深めるだけではなく、日常生活の中にある日本語の構造を実感し、言語への直感と気づきを養わせることを目的としている。

 「自分自身がおもしろいと思っていることを学生に伝えること」を大事にしていることから、質問や討議の時間を十分にとっているのが特徴だ。そのため、教科書の内容を教えることにこだわりすぎず、身近な実例を数多く出して、学生たち自身に考えさせるよう導いている。

 たとえばアクセントの法則について学ぶとき、教科書に載っている例ではなく、自分のまわりの地名や人名など身近な例で考えさせる。「法則というと抽象的なものに感じがちですが、実は身の回りのさまざまな言葉の中にあるのだと気づき、それまで考えてもみなかったことを意識する。それがとても大切だと思っています」。

 授業では、これまでの講義やさまざまな場で受けた質問の中から、特に答えの分からないケースについても話すようにしている。「答えが出る謎もあれば、出ない謎もたくさんあります。データを集めて調べながら、<こうではないか?>と自分で考えることがとても大事なのです。日常の中にそういう言葉の不思議な現象があるという点に、まずは気づいて意識すること。身の回りのことに常にアンテナを張って<なぜだろう?>と考えることが学問の出発点なのです」。
留学生が母語を意識する新鮮な機会にもなる
 この授業には留学生も多く参加しており、「自分の母語についての考えを深める機会となった」という感想も聞かれた。窪薗教授自身、若い頃英語研究のためにエジンバラ大学に行ったことが契機となり、日本語研究の道に転じたという経験を持つ。「日本語のリズムやアクセントなどそれまで考えもしなかったことに、初めて意識を向けるようになったのは、とても新鮮な体験でした」。

 留学生に自分たちの母語での例を挙げてもらうことも多いため、留学生が多いと授業中に具体的に比較できる言語の種類が増えることにもつながる。「いろいろな学生がいるほど、授業としてはおもしろくなりますね」。

 この授業は集中講義として設置されており、7月下旬に終日授業を4日間連続で行うというスタイルになっている。参加人数は聴講生を含めて10数人程度と少人数であることもあり、授業後はそのままみんなで食事に行くこともある。「1週間に1度の授業ではその間に他の授業もたくさんあるので熱も冷めてしまいがちですが、集中講義だと参加者同士の関係も密になり、授業でのディスカッションが盛り上がる傾向はありますね」。学生アンケートでも、「総合的にみてこの授業は有意義であった」「教員は効果的に学生の参加を促した」の項目で満点を獲得するなど、大変満足度の高い結果となっている。
「何をおもしろいと思うか」を意識する
 討議や質問の時間を多く設ける手法は、長い教員生活の半ば頃から経験的にたどりついたものだ。「昔は教科書中心にやっていましたが、今は自分が楽しいことを伝えるのが一番だと思っているので、教科書の最後まで行かなかったとしても、おもしろさを理解してくれればそれだけで十分だと思うようになりました」。

 以前は授業の冒頭に行っていた前回の復習となる小テストも、現在はやめて質問タイムに当てている。あるいは「前回の授業では何が一番おもしろかったか」を尋ねる。それを意識することも大事だと考えているからだ。

 2017年度は試験でも「自分が一番おもしろいと感じたこと」をテーマに設定して書かせるという問題を出題した。学んだことを単に知識としてインプットするのではなく、何が一番おもしろかったかを自分で考えて、これなら書けるという形で書いてもらおうという意図による。「選んでくるテーマは学生によってさまざまで、答案を見ることでどのテーマに興味を持ったのかが分かるのも楽しみですね」。

 「何がおもしろかったかを意識する」ことは、授業の最初の段階から学生には繰り返し伝えている。「この授業で学んでほしいのは知識ではないということです。知識は時間が経てば忘れてしまうけれど、自分がおもしろいと思ったことはずっと覚えているので、そういう勉強の仕方をしてほしい。そのためには意識して<おもしろさ>を感じてくださいと話しています」。

 この授業を受けた学生の多くは将来日本語を教える立場になる。そんな彼らに望むことは「いろいろ分からないことがあるから日本語はおもしろい。分かったことだけでなく、分からないことも教えられる教師になって欲しいですね。そして、学問の素材は身近にあるのだということも、ぜひ現場で伝えてもらいたいと思います」。

【授業動画】

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