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早大教員の授業における Good Practice &Tips 集

2018年7月 2日 16:50

自分は不得意でも、他の授業と連携してICTを積極活用

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震災後を考える
(グローバルエデュケーションセンター設置科目)
脳科学を活かしたインクルーシブ教育
(教育学部/教育学研究科設置科目)
       本田恵子 教育・総合科学学術院 教授

めざましいICTの進歩は、言葉や距離の壁、そしてさまざまなハンディキャップへの対応において大きな手助けとなる。最新の技術をいかに手軽に取り入れて活動に活かしていくのか。本田教授の事例は、誰もが身近にICTを使えるようになることで無限に可能性が広がることを示している。

講義の音声をリアルタイムで翻訳しテキスト表示
 今回のエントリー対象となった2つの科目のうち「震災後を考える」は、2011年の東日本大震災の経験を踏まえて、現場で役立つ防災の基礎知識と実践力を育むことを目指したオープン科目だ。「大震災後に本学の先生方の論文をまとめたものを出版したのですが、これをそのままで終わらせるのはもったいないということで、教務部に掛け合って、各分野の先生方を集めたオムニバス授業を設置しました」。

 参加する教員は、理工学部、法学、教育、人間科学、WAVOC(早稲田大学 平山郁夫記念ボランティアセンター)など各分野から8名。多忙な教員に参加してもらいやすくするために、それぞれ約30分の講義動画を収録。初年度はそれを教場で試聴し、本田教授がコーディネーターとなってディスカッションするという形で授業を行った。

 ユニークなのはこの動画を再生するときに字幕が出るようにした点だ。「グローバルエデュケーションセンターの科目ということもあり、当初はすべての講義を英語で話してもらう予定でした。ただ、実際には日本人学生が7割だったこと、日本語で話したい先生もいたので、日英どちらの言語でも理解できるように字幕を付けることにしました」。

 字幕作成に使っているのは「UDトーク」というアプリだ。その場で流れる音声を即時にテキスト化して表示するというもので、指定した言語に翻訳して表示するということも可能だ。この授業は3号館のCTLT教室でやっているので、スクリーンが2つ同時に使えることを利用し、片方には英語字幕、もう片方には日本語字幕を付けることで、どちらの言語で話している講義動画でも、学生は得意な言語で理解できるようにした。「聴覚にハンディのある学生のためのバリアフリーにもなります。授業でこういうものを使うことで、通訳がいなくてもいろいろな言語の人と会話ができるということを知り、ボランティアの現場での外国人との意思疎通に役立てて欲しいですね」。

 現場で有効なツールとしては、iPadのカメラを通して文字を翻訳表示できる「Google翻訳」のリアルタイムカメラ翻訳機能も紹介している。これを使えば、たとえば配付された書類を読めずに困っている外国人を手助けするなどの活用法が考えられる。「せっかくこの授業を受けたのなら、実際にどこにでも行ってほしい。こういうツールを紹介することで、ボランティアに二の足を踏んでいる人の背中を押してあげたいと思います」。

講義動画を事前に試聴し、ディスカッションを深める
 この授業は2016年度から始まったが、初年度は担当教授に教場で授業をしてもらったものを動画にして、授業後に復習で見ていた。しかし、講義を聞いた後に行うディスカッションや体験の時間が足りないし、復習の形だとそれを活かす場がないと感じたために、次年度の2017年度には、これを事前の予習とさせることにした。学生たちは事前に講義動画をCourse N@viから試聴し、さらに該当する論文やアップロードされた資料を読み込んで授業に臨む。その上で、教場ではそのテーマに関する模擬体験をしたり、ディスカッションを行ったりするという流れだ。

 「講義の残り時間だけでは話し合うテーマも広がらないので、結局は理解するだけで精一杯という感じでした。思い切って反転授業にしてみたら、事前に十分理解してから臨むことで議論が深まるなど、学生の反応がまったく違ってきたんです。時間を十分に取れば、こんなにみんな語りたいことがあるんだなと実感しました。授業終了後も定期的に集まろうという声も出るほどの盛り上がりです」。

 終了後は、その日に学んだこと、自分が考えたこと、そしてそれを今後どう活かしていきたいかを書かせて提出させている。「議論をすることに集中してたっぷり話してもらいたいので、内容の記録はグループに一つディスカッションボードにキーワードでメモを書いてもらい各自は写メでそれを記録します。キーワードにしているのは、自分の考えを書くときにディスカッション内容を思い出しやすいようにするためと、キーワードから自由に意見を展開できるようにするためです」。提出物はその場で書き上げて帰るように促し、それをまとめて、その回の担当教員に届ける。質問があればそこに書いておけば各教員から回答がもらえることになっている。

 なお、2年目も担当教員のうち4名は授業時間に教場に来てさらにライブでも話をしてくれた。その場合もその模様を録画しておき、授業後にCourse N@viに動画をアップロードしている。「自動録画されたものをチェックして、著作権など問題がある場合は編集して1週間後ぐらいには公開できるようにしています」。動画の公開によって、ライブでは言語が聞き取れない箇所があった学生も、自宅で何度も繰り返して試聴でき、分からないところを確認できるのもメリットだ。

ICTを使ってオリジナル教材をつくらせる
 もうひとつのエントリー科目「脳科学を活かしたインクルーシブ教育」は、文科省から委託された「発達障害のある児童生徒に関する教職員の専門性育成授業」の一貫として設置された8つの授業のうちのひとつだ。この授業では、最新の脳科学知識を学んだ上で、インタラクティブな授業を展開できるようなICT技術を体験し、アクティブラーニングのための教材を作成する。

 「多様な障害を持つ子供たちがみんなと同じ教室で学べるようにするには、黒板に書いたり、一方的に説明したりするだけではダメで、その子の状態に合ったさまざまなアクティブラーニングの手法が必要です。この授業ではそれを実際に体験して、ICTを使って自分で教材を作ってもらいます」。

 授業で作成した教材は、今回のプロジェクトを機に立ち上げられた「早稲田大学インクルーシブ教育学会」の学生部会のサイトにアップロードする。「Course N@viに載せただけではこの授業を履修している学生しか見えません。せっかくつくったものなので、どんどん積み上げていって、社会に出た卒業生たちにも現場で教材として使ってもらいたいと考えています」。

ICTスキルは他の授業で学んでもらう
 この授業で注目したいのは、ICTのどんな機能をどう使ってつくるかという技術的な点に関しては、本田教授が直接教えるわけではないということだ。たとえば、ある学生は教育学部の三尾忠男、武沢護両教授の「特別支援教育におけるIT実践演習」という授業を履修し、そこで学んだ技術をオリジナル教材づくりに応用した。この学生に話を聞くと、「この授業ではタブレットやスマートボードという電子黒板などが用意されていて、自由に使える環境にあります。他で学んできた知識を活かす場として有効活用できるのがうれしい」という感想を聞かせてくれた。

 こうした授業連携が行われている背景には、オリエンテーションの時点でこれらの関連授業についても並行して履修することを奨励しているという事情がある。「私自身は技術系が苦手です。履修できなくても聴講だけでもいいから勉強してきなさいと伝えています。大学や学生の身近にあるものは全部使って、各自が学んできたことと、私の授業での脳の機能など理論的な知識とを結びつけてもらいたいのです。技術や知識をどう現場に役立てるか、私自身はそのつなぎ役みたいなものですね」。

 もっと高度なものをつくりたいという要望に応えて、次年度は初歩のプログラミングを担当する教員にも協力してもらうことを検討している。「学生が外に学びに行ってもいいし、外から招聘講師として招くのもいいし、やり方はいろいろあると思います」。

 どちらの授業においても、ICTをツールとしてごく自然に、かつ積極的に取り入れている本田教授だが、「自分自身はICTが苦手でも大丈夫というお手本のようなもの」と笑う。「学生の方がよほど慣れていますから、知識をちょっとつないであげれば、あとは自分たちでどんどんやっていきます。そうやってみんなで学び合っていけるのがこの授業のおもしろいところかなと思っています」。

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