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早大教員の授業における Good Practice &Tips 集

2018年3月15日 17:25

産学連携の集中講座で、SE業務プロジェクトを模擬体験

ohkubo01.jpg ★早稲田大学ティーチングアワード総長賞

科目名:システム開発プロジェクト基礎
教員名:大久保雅司 早稲田大学非常勤講師
    鷲﨑弘宜 理工学術院教授

 経済産業省で平成21年度から実施している「IT人材育成強化加速事業」における情報処理推進機構(IPA)による「大学における連携教育」事業。その一環として、本学の基幹理工学部に設置されている授業の1つが「システム開発プロジェクト基礎」だ。産業界からも講師を迎えた実践的な内容で、他では得られない経験が積める点が非常に有意義だったと、受講生から高い評価を獲得している。

産業界の講師と2人体制で、実践と理論を充実させる
 この授業は、情報理工学科と情報通信学科の3年生以上を対象に、情報システムの開発をプロジェクト形式で学ぶもので、SE業務の概要・開発の各フェーズにおけるメンバーの役割と重要性を理解することを目的としている。「この授業を受けるまでの間に、基礎的なプログラミングやソフトウェアシステムの設計の仕方など、一通りの作り方については学んできています。それがなぜ必要であるのか、どう社会で活かしていくかを身に付けてほしいと思っています」。

 「IT人材育成強化加速事業」は、高度IT人材の育成という共通の課題に向かって、大学と企業が協力を行うものだ。この授業は、NECマネジメントパートナーの人材開発サービス事業部の大久保氏を迎え、鷲﨑教授とタッグを組む形で運営されている。15回の授業ほぼすべてに2人が教員として参加。主に理論の講義を鷲﨑教授が担当し、演習題材の補足説明や質疑対応、さらに顧客役としてのヒアリング対応などを大久保氏が行うという形で、理論と実践の両面教育を充実させている。

 座学とグループワークの比率は、時間的には1対3ぐらいで演習中心だ。それも演習は学生が主体的・自律的にグループで進め、教員の関与は質問回答のみとすることで学生自らに考えさせる。「演習だけだと、いろいろやった気にはなっても体系化して活用していくのが難しかったりします。そこで、この授業では座学できちんと理論を学ぶ時間も確保した上で、演習中心のプロジェクト型授業を展開しています」。

5日間の集中講座で、姿勢や態度が大きく成長する
 この授業は、夏期休暇中に1日3コマ、5日間連続の集中講座として実施されている。週1回の通常授業と違って細切れにならないので、実務に近い形で集中して取り組めるメリットがある。「一方で、学んだことを自分で深掘りして勉強する、他の本を読むといった時間が不足するのがデメリットです。そこは集中講義を終えた後に自習や他の科目で自ら深めて欲しいですね」。その思いから、結果や気づき・疑問点を学生に毎日振り返りさせるとともに、学科内での他の関連科目を推奨するほか、社会で求められる人材像や、学んだことをどう活かしていけば良いかなどの情報提供も、意図的に行っているという。

 3年次の夏という時期にも意味がある。「ここまでの時点で情報システム開発の基礎を学び終え、これから自分の進路を考えていくという、ちょうどいいタイミングだと思います」。
 実践形式の授業は、「他の授業では学べないことが体験できた」と学生の満足度が高いだけでなく、教員としても、期待以上の成長を感じているという。「知識や技術以上に、学生の姿勢や態度が変わります。業種への理解が深まり、自分なりの思いをきちんと持ってそれを意見として言えるようになる。たった5日間の間に目に見えた変化が感じられるのはうれしいですね」。

個人の特性をデータ化し、グループ構成や指導に活かす
 この授業のユニークな点として、学生の個人特性を考慮してグループ分けおよび教育の改善に役立てていることが挙げられる。これは、受講前に実施したアンケートの回答を元に、Five Factors & Stress(FFS)理論(※注1)やBig Five / Five Factor Model(FFM)理論(※注2)に基づいて定量化し、その組み合わせや偏りが学習にもたらす影響を、発言数や理解度などと照らし合わせて明らかにするというものだ。人間には、リードしていくのが好きな人、一歩引いて意見を言いたい人などさまざまなタイプがいる。「ビジネスの世界で言われているのは、多様なタイプの人が混ざった補完型チームが強いということです。我々も5年以上データを蓄積する中で、教育の場においてもその傾向があると掴みつつあり、授業の改善に活かしていこうと考えています」。 

 個人特性を考慮することで、コミュニケーションが活発になる、議論が行き詰まることが少なくなるなどの効果が期待される。「この授業は実践に近い形で行っているので、単にペーパーワークに取り組むだけでなく、アイディアを出す、議論をまとめるなど、さまざまな場面があります。学生のタイプが偏っていると、どこかが強くても別の状況では急に行き詰まってしまうこともありがちですが、違うタイプの学生が補完し合うことで、いろいろなアクティビティでうまく進むことが期待されます」。

 現状はようやく傾向が見えてきたという段階で、チームの構成の仕方や個々の場面での助言の仕方などに活かしていくのは、次の5年の目標だという。
 教育におけるビッグデータ活用が期待される今日、個人特性のような見えにくいところをデータ化し、教育の改善につなげていくという手法は、他の学科でも活用が可能だろう。
 「国内外の他大学でも活用事例があります。データが集まればさまざまな知見が得られます。それを共有してみんなで改善するきっかけにしていきたいですね」。 


注1:Five Factors & Stress)(FFS)理論:性格やストレスに着目して人の考えや行動のパターンを5つの因子で分析する。組織の生産力最大化のために開発された。

注2:Five Factor Model(FFM)理論:人の個人特性を5つの因子で分析する。


【講義概要動画】

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