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早大教員の授業における Good Practice &Tips 集

2018年3月15日 17:25

自ら問い確かめる体験型授業で、学ぶ意義と喜びを伝える

tsuyuki01.jpg★早稲田大学ティーチングアワード総長賞

科目名:自然学のすすめ
教員名:露木和男 教育・科学総合学術院教授

 子供たちの理科離れ、学生の理系離れが指摘されている。先進国共通の現象とも言われるが、その原因はどこにあるのか。露木教授は、文系の学生にも科学や実験のおもしろさを理解させながら、自然の背後に潜むものに触れる体験を通して、人間のあり方や生き方を考える授業を展開している。

身近な自然を題材に、自ら考えた方法で実験する
 長年小学校の現場で教えていた露木教授が本学に招かれたのは9年前のことだ。「前職の筑波大附属小学校では、オリジナルなことをやるのがひとつのミッションとされていました。おかげで、新しい教材や指導法にどんどんチャレンジできました」。学校外の場や著書で独自の教育法を公開していたこともあり、本学の教育学部で初等教育に関する授業を担当するようになった。 

 今回受賞対象となった「自然学のすすめ」は、本学に来て3年目から実施している科目だ。グローバルエデュケーションセンターに設置されているため、履修する学生の学部や学年は多岐に渡り、多くは理科に苦手意識を持つ文系の学生だという。  この授業では、毎回植物や昆虫、化石、雪など身近な自然をテーマに取り上げ、地球史や科学史と絡めながら行う実験を中心に進められる。昨今の理科離れの原因は身近な自然に触れなくなったことにあると感じ、身の回りの自然を理解することから高度な知識につなげていくことを重視しているという。「よく見れば知らないことはたくさんあるということを自覚して、それを知りたい、学びたいというワクワクする気持ちを大切にしたいのです」。 

 毎回与えられた課題に対してまず各自で予想を立て、それを確かめるための実験方法をグループごとに話し合う。そして、1グループずつ実験する様子を全員で観察する。「実験の方法も準備もすべて学生たちに任せています。失敗しても自分たちの責任で、なぜうまくいかなかったかを考えることも大きな学びです」。 

 実験がすぐに終わってしまい説明の時間が長くなると、学生は受け身になってしまいがちだ。「なるべくアクティブに参加させるには、一方的に見たり聞いたりするのではなく、自らが問いを持てるような観察をさせる必要があると感じています」。

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納得する喜びと、問題解決力を育みたい
 このような体験型授業を行う背景には「学ぶ意義や喜びを感じてもらいたい」という小学校教諭時代からの思いがある。「教科書にある知識は身近なものとかけ離れたものばかりで、いきなり抽象的なことを勉強しても興味は持ちにくいし、学ぶ意義が分かりません。身近なものと学ぶべき知識とをつなげる役割をしたいと考え、さまざまな事例を使った実践を心がけてきました」。知識として大事だから覚えるのではなく、「ああ、そういうことだったのか」と納得する喜びを感じさせたい。そんな願いが形となったのが、この体験型授業だった。まさに、子供相手の現場で培われた「教えるスキル」の結晶と言えるだろう。 

 教諭時代の経験に加え現在も江戸川区の子ども未来館で出前授業を行うなど、小学生対象の体験型授業を数多く実施してきたが、反応は大学生も小学生も大きな違いはないという。「大学生にも同じように授業ができるのは、私自身にとっても大きな発見でした」。 

 授業中は学生の発言を促しているが、小学生のようには活発に手が挙がらない。そこで選択肢から選ばせ、それを確かめるために自分たちで考えた実験をさせる。その結果、自分の選んだ答えが正しくても違っていても学生はおもしろいと感じる。「ものを良く見て、自分で選択して、自分の意見を持つ。その上で他人の意見を聞いて自分の意見をどう変えていくか、そのためにどんな話し合いができるか。そうやって問題を解決する力は、一般社会においても大事なことです。この授業を通して、単に理科の知識だけではなくそういう力も身に付けて欲しいと願っています」。

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知識よりも、楽しく学ぶプロセスを経験させたい
 この授業では試験は実施していない。毎回の授業に積極的に参加することが基本であり、成績は出席とレポートのみで決まる。「学生たちには何かを覚える必要はないというメッセージを伝えています。興味を持てば必要な知識は自分で手に入れることができるのですから」。

 15回の授業を通じて、学生たちの理科に対するイメージが変化し、理科好きになっていく手応えを感じているという。ある学生のレポートには、この授業では科学の知識を身に付けるだけでなく、「ワクワクすること」と「驚くこと」の大切さを学んだのが収穫だと書かれていた。「私が目指していたのはそれだったのだと、大変うれしく思いました」。

 扱うテーマや教材については毎年ブラッシュアップを重ねているという露木教授。「最近アクティブラーニングが注目されている中で、そういう点が評価してもらえたのかなと受け止めています。定年まであと2年ですが、まだまだ新しい教材を開発していろいろなことに挑戦してみたいですね」。

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【授業動画】

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