QuonNet(クオンネット) まなぶ・つながる・はじまる・くおん




早大教員の授業における Good Practice &Tips 集

2017年6月 5日 00:00

データを豊富に扱い、データ分析力を身に付けさせる

170121_小枝先生顔写真.png★早稲田大学ティーチングアワード総長賞

科目名:MacroeconomicA01
教員名:小枝 淳子 政治経済学部 准教授

 EDESSA (English-based Degree Studies September Admission Program)は、政治経済学部が2010年9月より導入している英語学位プログラムだ。国際社会で活躍するリーダーの育成を目指し、世界水準の質の高い授業を英語で提供し、英語による授業履修のみで学位を取得することができるようになっている。このEDESSAにおいて高い評価を受け本賞を受賞したのが、小枝准教授だ。

できるだけ多くのデータに触れさせる
 受賞対象となったMacroeconomicA01は、学部におけるマクロ経済学の中級レベルを対象としたEDESSAの必修科目だ。受講生の中には帰国子女など通常の日本語プログラムに属する日本人学生もいるが、授業はすべて英語で行われている。 

 この授業において小枝准教授が工夫しているのは、実際のデータやその分析・推計結果を、グラフや表という形でできるだけ多く講義資料に入れることだ。「グラフや表を見せると学生の注意を引きやすい、印象に残りやすいという効果もありますが、本来の狙いは、受け身ではなくアクティブに情報やデータを分析できる人になってほしいということです」。そのためには、まずグラフや表を読み取る能力を、そして自ら作れる能力を身に付けてほしいと考えている。「受講生の中で将来経済学者になる人は少ないとしても、これはアナリストはもちろん一般企業で働く上でも必要なスキルだと思います」。 

 授業で使っている教科書はアメリカの本であるため、収められている例はアメリカのものが多い。そこで、授業ではできるだけアジアや日本の例を見せることも意識しているという。「経済的な指標を見るとその国の特徴が見えてきます。受講生はアジアからの留学生も多いので、アジアの例を取り上げると興味を示します。日本に留学するからには日本に関心のある学生も多いですから、日本の事例もどんどん入れるようにしています」。

 授業の組み立てについては事前に入念に準備し、当日使うデータや図表を含め、講義資料のハードコピーを配布している。「話している私も聴いている学生も英語ネイティブではないので、紙の資料で補足するようにしています」。

 授業では、グラフなどはあらかじめパワーポイントで用意しておきスライドで見せるが、計算やモデルの動きなどを説明する際には黒板を使うなど、見せ方を使い分けている。「すべてをスライドにすれば短時間にかなりの量をカバーできますが、それでは学生に響かないので、あえて板書する時間も設けています」。配付資料には要点を箇条書きで書き出しておいたり、自分でメモを書き込めるスペースをつくったりする工夫もしてある。

100人の前でも発言できる力を養う
 配布資料の中には質問形式の文言も入れておき、自ら考え、それを発言させるよう促しているだけでなく、授業中に発言した学生には加点するというインセンティブも与えている。「ただ聴くだけではなく自分も発言するという前提があると、話を一生懸命聴いてくれるという効果もありますね」。 

 受講生数は100人を超える中で、マイクを回しての発言は学生にとっては勇気が必要となる。それをあえて求めているのは、きちんと発言できる力を身に付けてほしいという思いがあるからだ。「社会に出てから、言うべきことや自分の考えをきちんと理論武装して発言できることは重要です。それができるためには、100人の前でも臆せず話せる練習をしておいてもらいたいのです」。 

 学生アンケートでは、明確で分かりやすい表現で、学生の質問に何度も答える姿勢が高い評価を受けている。「学生からはあまり怖い先生だと思われていないようで、授業後にいろいろ質問してくることが多いですね。それに対しては、できるだけ辛抱強く一生懸命答えたつもりなので、そこが良かったのかもしれません。明確に分かりやすくというのは、常に努力していきたいと思っているので、そこを評価してもらったのはうれしいです」。

一生懸命教えることは自分の糧にもなる
 教壇に立つ前は、IMF(国際通貨基金)での職歴もある小枝准教授。実務では目の前の締め切りに追われて深い分析ができないという悩みがあったという。「その点大学では時間をかけて深く追求できるのがいいですね。この仮定だとこうなるが、違う仮定だとどうなるかというようなものも、なるべく授業に取り入れるようにしています」。

 実務の経験から感じた経済学を学ぶ意義を、学生に伝えたいという思いもある。「経済学なんて怪しい、使えないと思われることもありますが、そんなことはないと私は考えています。実際にIMFでもマクロ経済学に基づいた議論をしていましたし、それを知っていれば強みになります。私自身が自分の実務経験で感じたことは授業の中でも強調するようにしています」。

 教えるということに対してやりがいも感じているという。「将来活躍してくれるといいなと思いながら教えるというのは、実務では経験できない喜びでもあります。一生懸命教えることは学生のためでもありますが、私自身のプラスにもなると感じています。もっと良くしていこうという過程で思いがけない受賞でしたが、一層がんばろうという励みになりました」。



ページトップへ

プロフィール
大学総合研究センター
大学総合研究センター
教育方法研究開発部門(CTLT)
CTLTでは早稲田大学における優れた教育事例を収集し、Good Practice、
Tipsとして公開、教員間の活用を促す取り組みを行っていきます。
カテゴリーアーカイブ
01 政治経済学部 (12)
02 法学部 (2)
03 文化構想学部
04 文学部 (1)
05 教育学部 (12)
06 商学部 (5)
07 基幹理工学部 (10)
08 創造理工学部 (4)
09 先進理工学部 (4)
10 社会科学部 (3)
11 人間科学部 (9)
12 スポーツ科学部 (2)
13 国際教養学部 (2)
14 グロバールエデュケーションセンター (14)
15 日本語教育研究センター (6)
16 日本語教育研究科 (7)
17 高等学院 (5)
18 商学研究科ビジネス専攻 (2)
19 国際コミュニティセンター (1)
20 会計研究科 (3)
21 経営管理研究科 (2)
22 情報生産システム研究科 (1)
月別アーカイブ
2017年6月
2017年3月
2016年10月
2016年4月
2016年2月
2015年10月
2015年3月
2014年3月
2013年3月
最新記事
実際のデータを扱う体験型授業で、既存の手法を疑う目を育てたい
データを豊富に扱い、データ分析力を身に付けさせる
学ぶ意義と目的を明確にし、研究の内容と手法を能動的に学ぶ
中身の濃いコンテンツで、社会人学生の高い要求に応える
授業の振り返りにもつながる「つぶやき」欄と、全体のレベルを向上させるための工夫