QuonNet(クオンネット) まなぶ・つながる・はじまる・くおん




早大教員の授業における Good Practice &Tips 集

2017年6月 5日 00:00

実際のデータを扱う体験型授業で、既存の手法を疑う目を育てたい

161226_顔写真(酒井先生).png★早稲田大学ティーチングアワード総長賞

科目名:情報アクセス評価基盤
教員名:酒井哲也 基幹理工学部情報理工学科教授

 最近よく耳にするようになった反転授業は、授業外での自主学習を促すことで教場での学びをより深いものにしようという試みである。酒井教授は大学院の授業において、講義と併用する形でこれを取り入れたハイブリッド形式の授業を行い、顕著な効果を上げている。

最先端の研究を調査して発表する
 「情報アクセス評価基盤」というこの科目は、情報検索システムの評価指標や統計的検定とその限界、さらに同分野における最新動向を論じることを目的としている。国際コースの学生にも開放しており、講義は英語で行われる。 

 この授業の特徴は、15回の内の約半分の回を学生による発表に当てている点にある。たとえば、評価ツールを使ってあるシステムの優位性を実証したり、あるいは最先端の研究で発見された新しい知見を調べたりという調査に学生が各自で取り組み、それをひとりずつ発表する。学生自ら手と頭を使うことで、研究者としての思考やプレゼンテーションスキルを学んでもらおうというものだ。「発表する内容自体は学生本人の成果ではなくても、模擬的に新しいことを発表するという意味で、研究者としてのシミュレーション体験をする感じですね」。

講義の回は課題提出を必須とし、理解度を把握する
 発表前の準備段階として、この分野の歴史や研究のアプローチ、従来手法との比較方法などの講義を行っている。講義に使うスライドはすべて学期の開始と同時に公開しており、学生はそれを予習してきた上で授業に臨むことを前提としている。さらに、毎回課題を出し、Course N@viのレビューシートを通してそれに解答することを課している。

 この授業では試験を実施していないため、発表の内容に加えて、この課題の点数の蓄積により成績を算出することにしており、その旨シラバスに明記している。「授業に出ていないのに試験の一発勝負で良い点数を取る学生ではなく、毎回きちんと授業を、聴き課題を解くことにより知識を積み上げる学生に高い評価をつける仕組みです」。 これにより、コースの初期段階から学生からのシグナルを受け取り、理解度が確認できるのもメリットだ。

 「課題の反応を見て、あまりに理解度が低ければ残りの出題は難易度を下げたり講義の内容を調整したりするなど、柔軟に対応することができます」。 

 2~3回の授業の後にいくつかのテーマ候補を提示し、学生にその中から各自興味のあるものを選び調べさせて、次の授業でひとりずつ発表させている。

既存のやり方を鵜呑みにせず、新しい意見が持てるように
 この講義を始めた2014年度はすべてを講義で展開し、学生が参加する場面はなかったという。しかし、情報企画部の副部長を兼務していることから、大総研が取り組んでいるさまざまな新しい教育の取り組みに触れる機会があったこともあり、学生が自分でデータを扱って調査を行ったり、最新の研究に触れたりする体験ができる授業手法を取り入れてみようと考えた。

 翌年度から学生が参加する機会を増やしながら、2016年度は授業の半分を学生が発表するスタイルで実施。学生からの反応も上々で、手応えを感じているという。

 現状の課題として感じているのは、学生が他人の発表をどう思ったのかが分からないこと。そこで、2017年度からは、課題の点数に加え、他人の発表に対するフィードバックも成績に反映することにしている。

 また、同じテーマを複数の学生が担当した場合、それぞれの個性が出て興味深いこともあるが、似たような発表が続いてしまうこともある。そこで、何人ぐらいに同じ課題を与えて共有するのがベストなのか、試行錯誤しているところだという。「現状は同じものが多すぎる傾向があるので、もう少し課題を変えて、学生から見ても違う結果が見られるようにすると、もっとおもしろくなるかなと考えています」。

 発表という形を取ることで、さまざまなテーマを幅広く学生に担当させること自体にもメリットがある。「この授業は最先端の研究を扱っていますが、私ひとりですべてを網羅するのは無理があります。その点、優秀な学生が手分けして調べれば、より幅広い研究をカバーすることが可能になります。学生たちにとっても教員に一方的に提示されるよりも勉強になるはずです。研究の分野では複数の研究者が手分けして調査するということはありますから、その疑似体験にもなります」。 

 システムを評価するというこの分野において、学生たちには <その評価方法で本当にいいのか?> という疑問を持ってほしいと考えている。「デファクトスタンダードとなっている手法を鵜呑みするのではなく、学生ならではの柔軟さを活かして、初心者なりの奇譚のない意見を持ち、新しい提案ができるようになってほしい。講義や課題、そして調査や発表を通じて実際に自らデータを触るという体験型の授業を行うことで、本当に今のやり方が最適なのかという議論にまでつなげていきたいと考えています」。

ページトップへ

プロフィール
大学総合研究センター
大学総合研究センター
教育方法研究開発部門(CTLT)
CTLTでは早稲田大学における優れた教育事例を収集し、Good Practice、
Tipsとして公開、教員間の活用を促す取り組みを行っていきます。
カテゴリーアーカイブ
01 政治経済学部 (15)
02 法学部 (3)
03 文化構想学部
04 文学部 (2)
05 教育学部 (15)
06 商学部 (5)
07 基幹理工学部 (16)
08 創造理工学部 (9)
09 先進理工学部 (8)
10 社会科学部 (5)
11 人間科学部 (10)
12 スポーツ科学部 (3)
13 国際教養学部 (2)
14 グロバールエデュケーションセンター (16)
15 日本語教育研究センター (6)
16 日本語教育研究科 (10)
17 高等学院 (5)
18 商学研究科ビジネス専攻 (2)
19 国際コミュニティセンター (1)
20 会計研究科 (6)
21 経営管理研究科 (5)
22 情報生産システム研究科 (5)
23 理工学術院 (1)
月別アーカイブ
2018年10月
2018年9月
2018年8月
2018年7月
2018年6月
2018年3月
2017年6月
2017年3月
2016年10月
2016年4月
2016年2月
2015年10月
2015年3月
2014年3月
2013年3月
最新記事
学生に身近なゲストスピーカーを招聘し、社会貢献のイメージを具体化。学生たちの「モヤモヤ」に寄り添いたい
演習重視の講義で、現状把握と改善点を学生同士で議論させる。学生が自分で研究課題を見つけることをサポート
学生からの「質問」を活用して、クラス全体の理解度向上を図る
大学院生としての研究と日本語教育の実践、両方で生かせる授業を目指す
課題の提出や小テストの実施を通して、覚えた知識を定着させる