QuonNet(クオンネット) まなぶ・つながる・はじまる・くおん




早大教員の授業における Good Practice &Tips 集

2017年3月 6日 00:00

学生が、より説得力のあるディベートを行えるように自動収録システムで録画した映像の活用を推奨

上野達弘 法学学術院教授ueno01.jpg

模擬裁判風のディベートを授業に取り入れている、上野達弘教授の「法学演習(知的財産権法)」。ディベートをやりやすい教室ということで、椅子や机の配置を自由に変更できる3号館のCTLT roomに注目し、教室の利用開始に伴い設置されている自動収録システムも使い始めるようになった。まだそれほど使いこなしているわけではないと話す上野教授だが、自動収録システムには可能性を感じているという。

【自動収録システムの活用法】
(1)自分たちのディベートの振り返り
(2)今後のディベートの予習
(3)OB・OGへの活動報告

弁護側と検察側に分かれて、模擬裁判風のディベートを行う
ueno02.JPG

 まず、ゼミの概要から見ていきたい。上野教授のゼミでは、著作権法など知的財産法に関わる実際の事件をテーマに、学生が原告側・被告側に分かれて模擬裁判風ディベートを行っている。もともとロースクールなどでは、授業に「模擬裁判」を取り入れる場合が少なくないという。

 「ただ、本格的な模擬裁判となると、口頭での議論というよりは形式的な手続きを勉強するような側面が強いです。一方で、ディベートといっても本格的な競技ディベートになると細かいルールが定められているなどして、自由度に欠けるところがあります。そこで、私のゼミでは、『模擬裁判風ディベート』と呼んで、模擬裁判と競技ディベートの中間のようなイメージで行っています」。

 ゼミでディベートを行う意義は2つあると上野教授。一つは、競争させることで、学生たちが自然と意欲的になることだ。「一人ずつ研究発表させる形式も有意義ですが、対戦形式にすると、ディベート担当者は相手に負けたくないのでしっかり準備もするし、自然と一生懸命取り組むようになります」。

 もう一つは、学生同士が評価し合うことによる活性化。ディベーター以外の学生はジャッジメントに回るが、「仲間が目の前で議論を戦わせているので、単なる発表を聞くより興味をかき立てられることはもちろん、お互いにジャッジし合うので、自然と真剣に聞くようになります」。

約10年分の授業を録音して、ディベートの予習と振り返りに活用中
ueno03.JPG

 上野教授は、他大学と早稲田大学で合計12年間、こうした模擬裁判風ディベートを取り入れた授業を続けているが、実はそのうちの約10年分については、ディベートとその後のジャッジの音声をすべて録音して、インターネット上のアーカイブに保存している。音声のみとは言え、「授業を記録して残す」という行為を長年続けてきた。

 音声を残す目的の一つは、同じようなテーマを取り上げる際にディベーターの学生に参考にしてもらうためだという。「こんな風に議論してうまくいったのかとか、あるいはこの論理ではこうした課題があるんだなど、過去の音声を聞くことでよりよいディベートが可能になるからです」。

 また、もう一つの目的は、学生にディベートを振り返ってもらうことだ。「ディベートで負けると、『どう考えても自分たちのほうがよかったのに負けたのは納得できない』といった主張をする学生がときどきいます。でも、自分たちのディベートを聞き直させると、伝え方が悪かったり、論理的に飛躍があったりなど、よくなかった点を確認、検証できます」。

音声だけではわからない動作のクセなども、映像では確認できる
 「映像であれば、この振り返りをより効果的に行うことが可能です」と、上野教授は自動収録システムのメリットを語る。「映像の場合、音声を聞き直すだけではわからない、身振りや手振り、動作のクセなども、目で見て確認できるのがいいですね」。

 プレゼンテーションは、話の内容(コンテンツ)と構成(ストラクチャー)、そして伝え方(デリバリー)が重要と言われるが、伝え方というのは、しゃべり方だけでなく、体や顔の向き、視線の移動や手足の動作など、立ち居振る舞いも大事な要素だという。

 学生が自分のディベートを振り返ることが重要なのは、ジャッジの判定にも影響するためだという。「ジャッジをする際の判断基準となるのは、理論的な側面と、その理論をわかりやすく魅力的に伝えられているかというプレゼンテーションの側面の2点です。録画した映像を見直すと、自分が思いもよらない挙動をしている様子に驚くことがよくあります。説得力のあるプレゼンの練習にとって、映像は一目瞭然で、何より効果的なものと考えます」。

 また、過去のディベート映像を見ることは、振り返りだけでなくディベートの「予習」にも役立つと上野教授。さらに、「現在は、ゼミ内でのみ視聴可能ですが、たとえば最近卒業したOBやOGに今のゼミの様子を報告するために利用するといった活用法も考えられるのではないでしょうか」。

収録した映像は、翌日には指定の場所にアップされる
 自動収録システムを使った映像の活用にはさまざまな可能性があると考える上野教授だが、今のところ見る・見ないはあくまで学生の判断にゆだねている。

 「録画を見ることは非常に勉強になるので、学生には『見たほうがいいよ』とか『ディベート直後に見返すと勉強になるよ』とは事あるごとに伝えています。授業時間に余裕があれば、授業中にみんなで映像を見て議論することもよいとは思っていますが、今のところはその時間を取れていません」。今後は正規の授業時間だけでなく、学生から要望を聞きつつサブゼミ(自主ゼミ)を開くことなども検討していきたいという。

 「収録された映像はCourse N@viやBox(オンラインストレージ)などアップする場所を指定することができ、また収録の翌日にはアップされます。私が今も続けている録音のアーカイブは、音量の調整などでアップするまでに時間がかかってしまっていますので、その意味でも、このシステムは非常にスピーディで助かっています」。

 後は、なるべく多くの学生に映像を見てもらうために、ゼミ生への呼びかけを続けていく予定だ。「これまで通り『見て欲しい』と伝えることに加えて、随時アップされたことを知らせるメールを送るなどすれば、ちょっと見てみようというきっかけになると考えています」。

ページトップへ

プロフィール
大学総合研究センター
大学総合研究センター
教育方法研究開発部門(CTLT)
CTLTでは早稲田大学における優れた教育事例を収集し、Good Practice、
Tipsとして公開、教員間の活用を促す取り組みを行っていきます。
カテゴリーアーカイブ
01 政治経済学部 (13)
02 法学部 (2)
03 文化構想学部
04 文学部 (1)
05 教育学部 (12)
06 商学部 (5)
07 基幹理工学部 (11)
08 創造理工学部 (5)
09 先進理工学部 (5)
10 社会科学部 (3)
11 人間科学部 (9)
12 スポーツ科学部 (2)
13 国際教養学部 (2)
14 グロバールエデュケーションセンター (15)
15 日本語教育研究センター (6)
16 日本語教育研究科 (8)
17 高等学院 (5)
18 商学研究科ビジネス専攻 (2)
19 国際コミュニティセンター (1)
20 会計研究科 (3)
21 経営管理研究科 (3)
22 情報生産システム研究科 (2)
23 理工学術院 (1)
月別アーカイブ
2018年3月
2017年6月
2017年3月
2016年10月
2016年4月
2016年2月
2015年10月
2015年3月
2014年3月
2013年3月
最新記事
自ら問い確かめる体験型授業で、学ぶ意義と喜びを伝える
顔と名前を覚え、多面的なアプローチで積極性を促す
留学生同士の教え合いで、授業に活気が出た
並行した2つの授業で、日本語教育を実践と理論の両面から学ぶ
「生物化学」に興味を持ち、考えるプロセスを学んでほしい