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早大教員の授業における Good Practice &Tips 集

2016年10月 1日 00:00

「聴く」「見る」「歌う」――さまざまな「体感」を通して、西洋音楽の歴史を豊かに学ぶ

160830(池原先生)_顔写真.jpg★早稲田大学ティーチングアワード総長賞

科目名:西洋音楽史(グレゴリオ聖歌~ベートーヴェン)02
教員名:池原 舞(グローバルエデュケーションセンター 助教)

学部や学年の枠を超えて、すべての学生が受講可能なグローバルエデュケーションセンター(GEC)の科目。そのひとつである「西洋音楽史(グレゴリオ聖歌-ベートーヴェン)02」では、多様な学生が音楽を楽しみつつ深く学べるように、授業を担当する池原助教がさまざまな工夫を施している。

音楽を学ぶには、講義だけでなくまず「体感」することが重要
 この科目では、西洋音楽史の前半として、グレゴリオ聖歌の誕生からベートーヴェンまでを学ぶ。「単に音楽の歴史というより、政治や宗教などとの関わりの中でどのように音楽が形成されていったのかを学んでいきます」と池原助教。ベートーヴェン以降は、学期後半の「西洋音楽史(ベートーヴェン-現代音楽)02」へと続く。全8回の科目2コマを通して、西洋音楽史全体が理解できる構成になっている。

 全8回と回数が限られているため、授業では駆け足で網羅的に説明するより、トピックを絞り込んで深く掘り下げることを意識しているという。授業で触れられなかった部分は、レジュメでフォローする。「毎回、オリジナルのレジュメを6~7ページ作成していますが、レジュメの中ではより深く知るための参考文献や楽曲などを必ず挙げるようにしています。やる気のある学生が自分で学ぶことができる『ガイド』的な存在でありたいと考えているからです」。

 さて、授業の大きな特徴のひとつが、「聴く」「見る」「歌う」といった、音楽を「体感」することを重視している点だ。具体的には、CDを聴いたりDVDを見たり、またプロの演奏家を呼んで実際に演奏してもらうこともある。「第1回目の授業では、グレゴリオ聖歌をいきなりみんなに歌ってもらいました。音楽を学ぶには、まず『体感』することが重要だと考えています」。

 もちろん、ただ音楽を聴いたり、楽しく歌ったりすることが目的ではない。CDで音楽を聴いた後は、池原助教がその曲の一部分だけをピアノでゆっくり弾いてかみ砕いて解説したり、演奏家を呼んだときには演奏家同士のやり取りを見せて、どうやってよい演奏を作っていくのかを実感してもらったりする。「『体感』を踏まえて、音楽を考えて理解してもらうというステップで進めています」。

音楽的な知識の有無に関わらず、満足度の高い授業を工夫する
 池原助教は、8回の授業をできるだけバラエティに富んだものにしたいと、他にも授業時間のほとんどを使ってクイズをやる回なども設けている。「ヴィヴァルディの『四季』にはソネットという詩のようなものが付いていますが、ソネットを読んで曲のどの部分なのかを当ててもらうという内容でした」。クイズ形式にすることで、全員が能動的に授業に参加して楽しく学ぶことができたという。

 また、履修している学生全員が内容をよく理解して、満足度の高い授業にするために、学生の音楽的な知識の有無にも留意している。「たとえば、授業では楽譜を見る回もありますが、楽譜を読める人もいればまったくわからない人もいます。そこで、全員が理解できるような説明の仕方を工夫しています」。楽譜を提示する場合には、拡大して音の上げ下げを示す矢印を書き込むといった方法を用いて、楽譜の読めない学生でも音の流れを追えるようにしている。

 一方で、音楽の素養がある学生への対応も忘れない。授業内で課題を与えるときには、全員に解いて欲しいレベルをまず設定した上で、「できる人」のためにプラスαの課題を出すこともあるそうだ。「できる人はここまでやってみて、と高度な問いを用意しておくことで、『できる人』にとってもつまらない授業にはならないよう心がけています」。

授業の改善にも役立てている、リアクション・ペーパーの存在
 毎回の授業の終わりに全員に提出させる「リアクション・ペーパー」も、池原助教の授業に欠かせない重要なツールのひとつだ。A4サイズ1枚の用紙に設問が2~4問程度。「その回でいちばん大切なポイントを設問にしています。また、授業中に出した課題に関することや授業の感想なども書いてもらっています」。リアクション・ペーパーに書かれた内容は、次の授業の冒頭で「復習」という形で取り上げる。

 「リアクション・ペーパーには、前の授業の中では取り上げ切れなかった意見などが書いてあるので、できるだけ紹介しています。また、意見があっても、授業中にはなかなか発言しない学生もいます。リアクション・ペーパーがあることで、そうした学生をフォローすることもできています」。リアクションペー・ペーパーは、学生の平常点の評価にも活用しているという。

 さらに、授業の改善にもリアクション・ペーパーを役立てている。すべてのリアクション・ペーパーを、授業の記憶がリアルに残っているその日のうちに読み終え、同時に池原助教用のレジュメに反省点などを赤字で書き込んでいる。「リアクション・ペーパーと赤字を書き込んだ自分用のレジュメを見て、この設問では伝わらないからここを変えようというように、どこを改善すればよりよい授業ができるかを常に考えています」。次回の授業に反映するのはもちろん、次学期の授業を組み立てる際にも大いに参考にしているという。

マイク使用を辞めることで、学生との距離をもっと縮めたい
 工夫と熱意に富んだ池原助教の授業は、「音楽をただ聴くだけではなく、もう一歩踏み込んで論理的に学びたい」と考える多くの学生に支持されている。定員50名に対して、志望者は100名以上。2015年度秋学期までは抽選で選んでいたが、2016年度春学期からはより熱意のある人に学んで欲しいと、400文字程度の志望理由を書かせての選考に変更した。「意欲の高い学生が集まるようになり、実際、単位取得率もアップしました」。

 今後は、もっと学生との距離を縮めることで、授業中の議論をよりよいものにしていくことが目標だ。そのために検討しているのが、「マイクの使用を辞めること」。「マイクを使うと少し声質が変わって、それが学生との間に『壁』を作ってしまう気がします。30人規模の別の科目では、すでにマイク使用を辞めていますが、よい効果が出ていると感じています。また今後は、時間的な問題はありますが、グループワークも積極的に取り入れていくことでさらに授業を活性化したいと考えています」。

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