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早大教員の授業における Good Practice &Tips 集

2016年10月 1日 00:00

高校での物理未履修者のモチベーションを高めて、挫折をさせない授業を工夫

160830(若尾先生)_顔写真.jpg★早稲田大学ティーチングアワード総長賞

科目名:電磁気学B (3クラス)
教員名:若尾 真治(理工学術院 教授)

「電磁気学B」は、先進理工学部 電気・情報生命工学科の主に1年生が学ぶ専門選択科目だ。3つのクラスがあり、そのうち「電磁気学B(3クラス)」は、高校で物理を履修しなかった学生を対象としている。2015年度秋学期にこの科目を担当した若尾教授は、物理を学んで来なかった学生が挫折せずに学び通せるように、さまざまな方法でフォローアップを行ってきた。

社会での活用例や実験を通して、電磁気学への興味を高める
 そもそも1年生の前期には「電磁気学要論」という専門必修科目があり、「電磁気学B(3クラス)」はその「続編」に当たる。「後期に関しては選択ですが、前期で学んだ学生の9割以上が後期の『電磁気学B(3クラス)』も受講していて、その点では電磁気学にすでに興味を持ってくれている学生が大半だと言えます」と若尾教授。

 とは言え、高校では物理未履修であり、電磁現象には馴染みのない学生が多い。そこで、授業の最初には社会において電磁現象がいかに重要な存在であるか、具体的な活用例を取り上げて説明するという。「たとえば、エレベータや電車が動くことも、MRIなどの医療機器の多くも、電磁現象がベースになっているといった話をします。大学の最先端の研究などにも触れて、学生たちに将来の研究の道筋をできるだけ見せることも心がけています」。

 また、言葉での説明だけではなくデモ実験を通じて電磁気を「実感」してもらうことも重視している。具体的には、授業がスタートして間もない時期に、実験装置を持ち込んで教室で電磁現象を見せる。さらに、ある程度理解が進んだ段階で、電気工学実験室を借りて大規模な装置による電磁現象の実験も行う。「百聞は一見に如かず」で、実際に目で見ることで学生たちは俄然興味を持つようになるという。

 もちろん、電磁現象を実感すること自体が授業の最終目標ではない。あくまで、実感を踏まえた上で、電磁現象を体系的に数式として記述できるようになることが重要だと若尾教授は語る。「実際に見て触れて実感することでモチベーションを高めて、次に数式ではどのように表現していくのかを学んでいくというアプローチを取っています」。

パワーポイントをあえて使わず、五感をフル活用する授業を行う
 若尾教授の授業で特徴のひとつと言えるのが、パワーポイントで作成した資料の配布やスライド投影を行わないことだ。教科書などを口頭で説明しながら、ポイントとなる箇所は板書していく。その理由は、板書のほうが考える過程が伝わるからだという。「パワーポイントで作った資料は整理はされていますが、画面が切り替わると前の部分が見えなくなってしまい、理論構築の流れが見えにくいのが難点です」。

 パワーポイントで作成した資料を事前に配布すると、一時的には知識を得た気になるが、結局は頭に残らないのではないかという懸念もある。「実験を見て、説明を聞いて、ノートで手を動かしてというように、五感をフルに使う授業をしたほうが学生たちの頭が活性化すると考えています」。

 さらに、電磁現象や数式の説明をするときには、電磁気学とは関係のない「たとえ話」を用いたり、クイズを出したりして、学生の興味を引きながらわかりやすく説明する機会も多いという。こうした工夫は、ティーチング・アワードの学生アンケートでも「板書や説明がわかりやすい」と高く評価された。

授業で学んだすぐ後に課題を解くことで、理解度を上げられる
 「電磁気学B(3クラス)」は3限の授業だが、続けて4限には同じメンバーで演習に取り組む「電磁気学B・演習(3クラス)」がある。若尾教授は、演習がセットになっていることが学生の理解度を上げる効果をもたらしていると語る。「教員の説明を聞いていると、なんとなくわかった気になりますが、続けて実際に手を動かし、課題を解くことで理解が深まります」。

 演習では、毎回授業に関する課題を5~6問出題。学生は、自分ひとりで解いてもいいが、若尾教授はグループで取り組むことも勧めている。「強制はしていませんが、グループのほうが精神的にリラックスできますし、教え合うことで自分も理解できるようになるからです」。グループ分けなどは特にしていないが、演習時間には仲のいい数人で話し合って課題を解く様子が見られるという。

 また、3名のTA(ティーチング・アシスタント)も常駐しているので、わからないことがあれば、いつでも若尾教授やTAに質問することもできる。解答は、授業中に書き終えたものは授業の終了時に提出し、終わらなかった課題については翌週の授業の前日までに提出させている。

気軽に質問できる環境を整えて、「わからないまま」にさせない工夫
 さて、演習課題の提出先となっているのは、若尾教授の研究室のポストだ。実は、ここにも若尾教授のある工夫が隠れている。「学生が研究室に来るきっかけを作りたいという狙いがあります」。若尾教授は常々、「わからないことがあれば、いつでも直接質問に来てほしい」と学生たちに伝えている。

 「研究室に来たら、私やTAはもちろん、研究室の誰にでも質問して構わないと言ってあります。授業でわからなかったことをそのままにせず、その都度解決していくことが挫折をしないためには非常に重要です」。特に1年生の場合、「何がわからないかもわからない」状態ということが少なくないそうだが、研究室で顔を突き合わせてやり取りする中で、まずは「自分は何がわからないのか」が見えてくる。

 また、研究室を訪れてTAや院生とやり取りすることで、将来自分たちが研究に携わる際のイメージを持つこともできるという。「授業を聞いて、演習に取り組んで、それでもわからなければ質問をする――。そうやってどんどんキャッチアップしていけば、自ずと勉強の仕方もわかり、試験にも対応できるようになります。いちばん大切なことは、当然電磁気学を学ぶことですが、主に1年生が学んでいる科目ということもあり、この科目を通じて大学での勉強の仕方を伝えることも意識しています」。

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