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早大教員の授業における Good Practice &Tips 集

2016年10月 1日 00:00

2カ国語で説明を行いながら、大学院レベルの高度な内容を効果的に学ばせる

★早稲田大学ティーチングアワード総長賞

科目名:ディジタルシステム設計
教員名:戸川 望(理工学術院 教授)

「ディジタルシステム設計」は、学部4年生と大学院1年生の合併科目であり、また英語による授業で単位を取得できる国際コースの科目にも指定されている。大学院レベルの高度な内容を、日本人・外国人どちらの学生にも効果的に学ばせるための取り組みについて、担当する戸川教授に聞いた。

スライドは英語のみだが、2カ国語の説明で日本人学生をフォロー
 合併科目であることに加えて、学部生のうちに大学院の講義を受けられる「先取り履修科目」にも指定されている「ディジタルシステム設計」。「電気電子情報系の1~3年生が学んできたことをベースに、さらにその上のレベルの内容を学ぶ科目です」と戸川教授。通常の学部生向けの科目と比べると、研究室で取り組んでいる研究の一分野を学ぶような高度な内容になるため、わかりやすく伝えることには気を配っているという。

 履修人数は約40名で、大学院生と学部生の割合は半々。また、国際コースの科目に指定されていることから、10名弱の外国人学生も学んでいる。「科目自体は10年ほど前からありますが、5年ほど前に国際コースの対象となったことで、講義のやり方を大きく変更しました」。

 まず、講義の資料スライドをすべて英語に変えた。しかし、学生の大半は日本人のため、英語のスライドだけでは理解しやすいとは言い難い部分もある。そこで、口頭での説明は英語と日本語の両方で行うようにした。ただし、2つの言語で説明すると時間も2倍かかるため、「冗長な部分を極力削り、本当に伝えるべきことがしっかり伝わるように、講義の内容を再構成しました」。結果的に、よりよい講義ができるようになったと戸川教授は語る。

 2カ国語で講義を行うメリットもあるという。具体的には、英語と日本語の専門用語をすぐに結びつけられることだ。「外国人学生の多くはある程度日本語もわかるので、両方を聞くことでより理解が進みます。特に、日本で就職を考えている外国人学生にとっては日本語での専門用語の語彙が増えてプラスになっているようです」。

「エクササイズ」の時間を設けて、その日の要点を確認させる
 講義は2コマ連続して行い、毎回2コマ目の最後に「エクササイズ(Exercise)」と呼ぶ演習の時間を設けている。「学生たちが、その日の要点を理解しているかどうか把握するためです。スライド上で、講義で取り上げた重要なキーワードの意味などを出題して、10~15分程度で解答用紙に答えを書かせて提出させています」。ちなみに、エクササイズの提出で出欠の管理もしている。

 答えは基本的にすべてスライドの中にあるため、自分の頭で考えて書くのはもちろん、わからなければその日のスライドのプリントアウトなどを見返してもよいとのこと。戸川教授は、集めた解答から、学生が理解できているか、あるいはどこで躓いているのかなどを確認。翌週の講義の冒頭10分ほどで、エクササイズの解答を説明しながら前回の講義内容を復習するという。

 つまり、エクササイズがあることで、学生は時間中に講義の要点を確認できるだけでなく、翌週の講義では1週間前の講義内容を振り返って、スムーズにその日の講義に入っていくことができる。また、「エクササイズで誤解や間違いが多かった部分については、次年度はもっとわかりやすく説明しようと、私が講義の改善を試みるためにも役立っています」。

講義資料は早めにCourse N@viにアップ、予習をしやすくする
 講義の資料スライドは、1週間前までに必ずCourse N@viにアップしている。予習をしたいと考える意欲の高い学生に応えるためだ。ただし、現時点では予習を前提とした「反転講義」は考えていない。「将来的には、学生が主体的に予習をするのが当たり前になると考えていて、そうなったときには反転講義も導入したいと考えています。ただ、今はそこまで学生の意識改革が進んでいないため、予習していなくても時間中にしっかり理解できるような講義を心がけています」。

 講義の際にはフルサイズではないが、プリントアウトしたスライド資料を全員に配っている。学生は、スライドを見ながら気になった点をプリントアウトにメモ書きするといった使い方ができる。「たとえばPCなどを持って来るのを忘れて、自分でプリントアウトもしていない場合、教室のスライドだけしか見られないと学生の学習意欲をそいでしまう可能性がある。できるだけやる気を持って授業に臨んで欲しいので、あえて紙の資料も配布しています」。

今以上の教育効果を上げながら、インタラクティブ性を高めていきたい
 現状の講義のスタイル・進め方で、一定の教育効果を上げられているという戸川教授。実際、それが「ティーチング・アワード」での高い評価にも結びついた。ただ、検討していきたい課題もあるという。そのひとつが、「プロジェクト」の評価をどうフィードバックするかという点だ。成績は「プロジェクト」と呼んでいる大学院レベルの課題により評価しているが、講義の最後に提出させるため、採点はしていてもフィードバックの機会がない。「たとえば、講義の中間あたりでプロジェクトを提出させれば、講評することも可能です。中間と最後の2回、プロジェクトをするといった方法もあるかもしれません」。

 また、講義のインタラクティブ性をもっと高めたいという思いもある。現在は、前述のエクササイズの時間に学生の席の間を歩いて、質問を受けるなどのやり取りをするくらいだが、たとえばグループワークを取り入れたり、チームでプロジェクトをやるといった方法も考えられるという。「ただし、グループで何かをする場合には、日本人・外国人学生を混在させるべきかどうかなどを検討する必要があります。そもそも、2カ国語で説明していることで時間的な制約もあります。インタラクティブ性を取り入れる以上は、今よりも教育効果を上げないと意味がないので、どんなやり方がベストなのかを今後、慎重に検討していきたいと考えています」。

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