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早大教員の授業における Good Practice &Tips 集

2016年10月 1日 00:00

留学生の発音指導を担当し、実践的指導力を身につける

toda.jpg★早稲田大学ティーチングアワード総長賞

対象科目:日本語教育実践研究(10)
受賞者:戸田 貴子(大学院日本語教育研究科 教授)


戸田教授は日本語教育研究科の発音指導の実践授業において、自らが受け持つ留学生対象の日本語発音授業と連動させることで、双方に大きな学習効果を上げている。Course N@viを通じて非対面で発音を指導するという手法が、距離的時間的制約を解消するだけでなく、実践力の獲得に大いに役立っている。

「知的レベルにふさわしい日本語発音」のニーズに応えたい
 日本語の能力が高いにもかかわらず、発音が悪いと日本語が下手だと思われるだけではなく、知的レベルまでも低く見られてしまいがちだ。「特に日本語を使って、就職や進学など、活躍の場を広げていきたいと願う学習者にとっては、『とにかく通じればいい』という問題ではありません。なめらかで自然な発音を身に付けることで、社会の中で、自信を持って活躍できるようになります」。

 発音指導には母語話者といえども音声学の専門知識が必要で、対応できる教員は少ない。そんななか、2000年に早稲田大学に赴任し日本語教育研究科の設立にも関わってきた戸田教授は、日本語音声研究の専門家として音声指導のための教育にも力を入れてきた。

 今回受賞対象となった「日本語教育践研究(10)」という授業は、まさに、日本語音声教育の方法を学びたいという院生たちに、実践の場を提供している。その最大の特徴は、実際に日本語を学んでいる留学生の発音指導を担当する点にある。戸田教授自身が日本語教育センターで開講している「なめらか!発音3-4」という授業では、様々な国や地域から早稲田に留学し、日本語を学ぶ学習者たちが、自分の発音を録音し、音声ファイルをCourseN@viに毎週提出する。それに個別にコメントをつけてフィードバックするというプロセスを、「日本語教育実践(10)」の大学院生が担当しているのだ。

実践指導の経験から、知見と責任感が身につく
 事前課題として留学生の音声ファイルを聞いてフィードバック用のコメントを書き、授業内でそれを発表し教員と学生全員で意見を交わす。理論的な補足としては、テキストやCourse N@vi上にある各回のポイントごとに解説したコンテンツ動画を、ニーズに合わせて参照することができるように工夫されている。コメントの書き方についてのガイドラインは用意してあるが、個々のコメントに対して教員が直接介入・修正することはなく、学生が責任を持って対応する。「学生にとって、それぞれの国のなまりがある発音を実際に聞けるチャンスは貴重です。担当する学習者に対しての責任感も生まれ、将来世界のどこに行っても発音指導できる実践力を養えるのが、この授業ならではのオリジナリティです」。

 授業内では意見交換が活発に行われる。実際に体験した情報を共有することで、「どこがむずかしいのか」「その理由は何か」など、さまざまな気づきや問題意識が生まれ、それが研究に発展していくケースも多いという。受講した学生の授業アンケートでは、有意義度、理解度、学生の参加を促したかを問う設問で、すべて満点を獲得している。「実践と議論の中から自ら問題を発見し解決していくことで、教員の一方的な講義では生まれてこない、真の学びにつながっていると感じています。」。

 発音指導の実践にはBBSも活用されている。大学院生がメンターとなり「なめらか!発音」の留学生向けのBBSを運営するのだ。メンターとなった学生が工夫をこらして留学生たちの参加を促す仕掛けを考えることでBBSが活性化し、有効に機能しているようだ。

 発音フィードバックもBBSもCourse N@viを通じて行われるため、大学院生と留学生が直接対面することはない。「非対面であっても、こうした交流を重ねることで両者の間に一種のラポール形成が見られ、双方の学びを深めているようです」。

柔軟な発想で、主体的な学びの機会をつくりたい
 留学生にとって、個別に発音指導を受けられるのは大きな魅力だ。「なめらか!発音」は基本的にオンデマンドの授業であるにも関わらずそれを可能にしたのは、Course N@viを活用して音声ファイルを送信するという斬新なアイディアだ。始めてみると、むしろ他のクラスメートの前で教師に発音を直され、恥ずかしい思いをすることなく発音指導を受けられるなど、非対面ならではのメリットもあった。「当初は、非対面で発音指導がうまくいくのか不安もありました。でも、チャレンジしないと何も始まりません。いかに学生に主体的に学ばせることができるか、教育には柔軟な発想が大切なのだと感じています」。

 この授業を始めて15年目となる今では、卒業生たちが各国の大学で実際に指導者として活躍するなど、大きな成果を挙げている。2016年秋からは、ハーバード大学とマサチューセッツ工科大学(MIT)が共同で設立したオンライン授業配信プラットフォームedXにおいて、全世界の日本語学習者に向けた発音の公開講座 'Japanese Pronunciation for Communication' を開始。「その収録のとき、参加してくれている複数の日研修了生で、現在日本語教育の専門家として世界で活躍している先生方の間から『昔この実践10の授業を受講した』という話が出てきたんです。蒔いた種が確実に育っていることを実感できて、感慨深いですね」。

 夢は「世界中の日本語学習者に学習機会を提供すること」と語る戸田教授。「誰もが日本に来て勉強できるわけではありません。こうした講座を通じて一人でも多くの方に日本語学習の楽しさを知ってもらうことが、日本と諸外国を繋ぐ人材の育成にもなり、社会的貢献になると考えています」。

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