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早大教員の授業における Good Practice &Tips 集

2016年10月 1日 00:00

最新情報を盛り込み、見せ方を工夫したスライドで、学生の興味を引く授業を展開する

morimoto2016.jpg★早稲田大学ティーチングアワード総長賞

森本章倫 理工学術院教授

交通工学の基礎を学ぶ専門選択科目の「交通システム工学」。交通事情や交通を取り巻く技術は日々進化していて、教科書には載っていない情報も多いという。担当する森本教授は、学生たちが興味を持って授業に臨めるよう、そうした最新情報を授業の中で積極的に取り上げている。

最新の情報を積極的に紹介することで、授業に興味を持たせる
 授業は、教科書である『道路交通技術必携2013』に沿って進めていく。この教科書は、交通技術資格者/交通技術上級資格者(TOP/TOE)資格試験の出題準拠書籍となっていて、教科書の内容を理解すると最終的にこの資格試験を受けられるレベルに達するという。「資格の取得を目的に履修している学生もいるので、授業では資格試験に関するアドバイスもしています。ただし、現状では実際に受験する学生の人数はそれほど多くありません」。

 また、教科書を補足する形で、パワーポイントで作成した独自のスライド教材も用意している。スライドはCourse N@viにアップして、授業前に学生がダウンロードできるようにしている。ただし、予習までは強制していない。「やる気があって予習をしてくる学生は歓迎しますが、きちんと授業に参加して授業の中で理解してもらうことを一番に考えています」。

 独自のスライド資料を用意するのには、いくつかの理由があると森本教授は語る。「ひとつは、できるだけ最新の情報を伝えたいと考えているからです。専門用語の解説や数値の説明は、もちろん教科書が基本です。ただ、教科書の内容は数年前の情報がベースになっています。そこで、スライドでは最新のデータや研究事例などを豊富に紹介しています」。

 最新の情報を取り上げることで、学生は興味を持って授業に参加するという。インターネットを駆使すれば多くの情報にアクセスできる時代だが、研究者レベルでなくては入手できない情報もある。「ときには、学会用や行政機関向けの講義資料などを見せることもあります。『ネットにも載っていない情報です』と伝えると、学生はいつも以上に熱心に話を聞きます」。

スライドを使った視覚から得られる情報で、学生の理解を促す
 スライドの活用は、学生の理解を促すことにもつながっていると森本教授。「教科書はほとんど文字と数式だけですが、読むだけで理解するのはなかなか大変です。視覚から入る情報は印象に残りやすいので、スライドでは写真や図版を多用することで、わかりやすく説明しています」。

 さらに、スライドでグラフなどを見せる際には、パワーポイントでの作成段階で一工夫を加えている。具体的には、一気にグラフ全体を表示するのではなく、説明に合わせて徐々に見せるようアニメーション効果を付けている。動きがあることで学生の興味を引き、少しずつ見せることでより理解しやすくなるとのこと。「ちなみに、学生がダウンロードできるファイルはPDF形式なので、アニメーション効果は付いていません。ただ、一度授業で理解できれば、復習するときに動きがないことは特に問題にならないと考えています」。

頻繁にディスカッションを行うことで、学生の思考力を鍛える
 授業は基本的には講義形式で進めるが、一方的に話すのではなくできるだけディスカッションの機会を設けるようにしている。「たとえば、海外の交通事情の事例をスライドで見せて、『この写真を見てどう思いますか』と意見や感想を聞くところから始めて、話を広げていきます」。ディスカッションを重視する理由は、「ただ話を聞くだけでなく、実社会で起きている問題やその影響、それに対してどのような技術や理論を使えば解決に導けるのかなどを、学生自身に考えて欲しいという思いからです」。

 椅子や机を動かし、グループを組んでのディスカッションという形はこの授業ではとっていない。代わりに、授業中は森本教授が学生の間を歩き回って、日常的に学生と「言葉のキャッチボール」をしている。履修人数は約50人とそれほど大人数ではないため、この方法でも十分クラス全体に目が行き届き、活発なやり取りが可能だという。

 授業では実社会の問題をとらえて考える力を養う一方で、試験では交通工学の基本的な知識をしっかり習得できたかどうかを確認する。成績評価は期末試験90%+平常点10%で、期末試験はマークシート形式だ。「マークシート形式を採用しているのは、交通技術資格者の試験がマークシートだからです。資格試験の受験は強制ではありませんが、期末テストである程度の点が取れれば資格試験も合格できるレベルだという、ひとつの目安になっています」。

学生にきちんと理解させるためには、教員の側にも話術が必要
 ここまで見てきたように、森本教授の授業では学生に興味を持たせて、理解させる工夫が随所に施されている。その結果、ティーチングアワードの学生アンケートでは、「(授業の)有意義度」「理解度」「学生の参加を促したか」といういずれの設問でも高い評価を得た。

 森本教授は、学生に興味を持たせることの重要性を次のように話す。「どの学問分野でも同じだと思いますが、興味が持てなければ理解も深まりません。『やらなければいけない』という義務ではなく、学生が自ら『知りたい』と思うことで理解が進み、一度理解したらそれがしっかり記憶に残っていくのではないでしょうか」。

 また、教員が自らの話術を磨くことも必要だという。「私の専門である都市計画や交通計画では、地域の住民に計画の必要性などを説明する機会がしばしばあります。その際は、年配者や子供でも理解できる言葉で話さなければ伝わりません。同様に、今後は大学の授業でも『学生にわかるように話す』ことがこれまで以上に重要になっていくと考えています」。

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