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早大教員の授業における Good Practice &Tips 集

2016年2月25日 00:00

Course N@viの活用により高い学習効果が望めるフルオンデマンド授業を実現―堀井俊佑 GEC助教

堀井俊佑 グローバルエデュケーションセンター助教

 グローバルエデュケーションセンターの「統計リテラシーα」「統計リテラシーβ」「統計リテラシーγ」は、ガイダンスから、講義、小テスト、最終試験に至るまで、すべてをCourse N@vi上で実施するフルオンデマンド科目だ。フルオンデマンドという環境下で、学生たちが効果的に学ぶためのさまざまな取り組みについて、堀井俊佑助教に話を聞いた。
授業ビデオを見るだけでなく実際のデータで作業もさせる
 「統計リテラシー」の「α」「β」「γ」はいずれも全学部全学年を対象とした科目で、フルオンデマンド授業という現在の形では2014年度春学期にスタートした。3科目の延べ受講者数は、2年間ですでに2000人を超えている。久保沙織助教、星野匡郎助教と共に科目を担当する堀井助教は、「統計データから必要な情報や主張を読み取り分析することは、かつての『読み・書き・そろばん』と同様に現代社会では必要なリテラシーと言えるのではないかと考えています」と話す。実際、商学部では1年生の必修科目にもなっていて、統計リテラシー習得の重要性が広く認識されつつあることがわかる。

 Course N@vi上で行うビデオ授業では、一方的に講義するだけにならないよう気を配っているという。

 「単に、統計学の知識を持てればよいということではなく、実際にデータを分析する能力を身につけて欲しいと考えているからです。そこで、授業のビデオを見ながら自分でコンピュータを操作して、データを分析するような授業を心がけています」。

 たとえば、記述統計を学ぶ「統計リテラシーα」では、学生にExcelで作成したデータファイルをダウンロードさせて、授業ビデオと同じようにデータ解析などの作業をさせている。データを解析したExcelファイルの提出が出席票代わりになっているため、提出率もかなり高めだという。

 また、推測統計学の基本を学ぶ「統計リテラシーγ」では、スライドの説明の一部をあえて空欄にしている。学生がビデオを見ながら空欄を埋めて、スライドを完成させることが狙いだ。「こちらは、提出させるわけではありませんが、空欄補充があることで、ビデオ視聴で陥りがちな『集中できずに聞き流してしまう』という事態を避けることが可能になると考えています」。
空欄補充やレポート課題など試行錯誤しながら授業を改善
 統計リテラシーの3科目では、学生たちの学習効果を高めようと、スタート以来、さまざまな試行錯誤を重ねてきている。「一例を挙げると、前述の空欄補充は当初はやっていませんでしたが、授業を始めてみて空欄があったほうが学生たちがビデオに集中できると判断したため、後から導入しました」。

 また、3科目のうち「統計リテラシーα」のみ、毎回の小テストに代わって学期中一度だけレポート課題を提出させているが、受講者数が数百人規模と非常に多く、教員やTAの採点の負担が大きいとして、一度は取りやめたことがあった。「しかし、学生が分析能力を身につけるにはやはりレポート課題があったほうがよいと考え、TAの人数も徐々に増やすことができたので、再検討して復活した経緯があります」。

 TAの人数を増やしたことに加えて、復活にあたっては採点の方法にも工夫を凝らした。たとえば、統計処理の正しいやり方を理解しているかを確認する問題など、客観的に採点可能な問題を複数用意してTAでも容易に採点ができるようにした。

 「ただし、統計データを分析できるようになるためには知識を問う問題だけでは不十分なので、レポート課題の中には『自由に分析して考察せよ』という問題も必ず用意しています」 「何をすべきか」から考えるという行為に慣れていない学生にとっては、「自由な分析・考察」は簡単ではないというが、毎回実施している授業アンケートでは「難しくて何をすればわからなかった」という声もある一方で、「大変勉強になった」「自分で自由にデータを分析することは楽しいと思った」などの感想も寄せられているという。

 確率について学ぶ「統計リテラシーβ」は計算問題が中心になり、レポート課題は特に必要を感じていないそうだが、「『統計リテラシーγ』では、できれば今後は期間中に一度くらいはレポート課題を導入していきたいと考えています」。
フルオンデマンド授業だからこそ学生の声に耳を傾ける工夫が大切
 教員と学生が顔を合わせる機会のないフルオンデマンド授業では、学生とどのようにコミュニケーションを取っていくのかも重要なポイントになる。堀井助教らは、掲示板の設置やアンケート実施といった方法で、学生の声を受け止めようとしている。

 「まず、Course N@viに質問用の掲示板を設けて、疑問や質問がある学生はいつでも書き込めるようにして、教員が返答するようにしています。書き込みの数は時期によってまちまちで、学期の最初には活発に質問が寄せられますが、普段はそれほど多くはありません。質問の総数は、一学期間で30件程度ですね」。

 また、直接顔を見て質問したいという学生のためにキャンパス内に対面指導室も用意している。「指導室ではTAが待機していますが、さまざまな人が来るというよりは、現状では同じ人が繰り返し利用することが多くなっています」。

 学生の意見や感想を吸い上げる方法としては、すでに述べた通り、授業後に毎回Course N@vi上で実施するアンケートも活用する。授業アンケートで寄せられた感想を反映して、実際に講義ビデオの内容を一部変更したこともある。「学生が難しいと感じているポイントがこちらで想定した箇所とは異なることがわかったため、ビデオでの説明量や例題を増やす変更を加えて、より理解しやすいものに改めました」。

 授業のビデオは、Waseda-net Commonsを使って助教が自ら作成しているため、部分的な差し替えが発生しても、比較的気軽に修正ができる点はメリットだという。
TA専用の掲示板を設置してTAの能力向上にも努める
 受講人数が多いため、「統計リテラシー」には3科目合計で約30名前後のTAがいる。そこで、Course N@vi上にTA専用の掲示板を設けて、TAや教員間の情報共有とTAの教育に役立てている。

 「この掲示板は、TA業務用の非正規科目という位置付けです。情報共有のほか、たとえば授業の課題を事前にやってもらって気になる点があれば掲示板上で指摘してもらったり、また課題の類題をTAに作成してもらって掲示板に投稿してもらうなどして、TAの能力向上につなげようとしています」。

 作成したもらった類題については、使えそうなものがあればアレンジを加えた上で実際の授業に活用することもあるそうだ。「TAを採用する際の面接で、統計学に関する質問をいくつかして理解度を確認しているため、一定のレベルは確保しています。また、3科目とも比較的入門的な内容なのでそこまで専門知識は必要ありませんが、TAのさらなる能力向上を図ることで、効率的に学生をフォローできる環境を整えることが狙いです」。
担当教員の任期後も長く使える良質のコンテンツ作りを目指す
 現在、堀井助教らは、授業のコンテンツを長期間利用できるものにしていこうという新たな取り組みも始めている。

 「統計リテラシー3科目の担当教員は任期付きの助教ですが、その人の任期が終わったらビデオや課題などをイチから作り直すのは、非常に無駄なことだと言えます。また、教員が一人で作成にあたっていると、コンテンツのクオリティにどうしてもバラつきが出てしまい、結局は受講する学生が不利益を被ることになってしまいます。そこで、助教や助手でチームを作り、質のよいコンテンツを作成し、長期で利用することに取り組んでいます」。

 その際、まず「コンテンツ仕様書」のようなものを作成して、たとえば一つ一つのスライドで何を伝えるのか、どのような目的で作成するのかといったことを記録に残している。
「仕様書があれば、コンテンツの一部を変更する際にも仕様書を確認してそれに沿った形で修正できるので、質を一定に保つことができます。もちろん、必要があれば、コンテンツの変更に合わせて仕様書のほうも更新していく予定です」。

 さらに、大学総合研究センターの「統計教材モジュール展開プロジェクト」として、統計リテラシーの授業コンテンツをこれまでの枠を超えて提供していくことも検討中だ。

 「たとえば、卒論執筆で急にデータ分析の知識が必要になった学生に、最低限見ておくべき項目だけを提供したり、また各学部には統計学の授業がすでにありますが、そうした授業の予習復習用に我々の授業コンテンツを使ってもらったり、さまざまに活用して欲しいと考えています。現在は、すでにあるコンテンツの整理を進めていて、今後はプラットフォーム作りなどにも着手する予定です」。 

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統計リテラシースタッフ。後列左から池原助手、鎌塚助手。前列左から堀井助教、星野助教、久保助教。スタッフにはその他30名前後のTAがおり、3号館2階にはTAが常駐する対面指導室もある。 

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学生には、授業ビデオと同じようにデータ解析などの作業をさせている。データを解析したExcelファイルの提出が出席票替わりとなる。 

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レポート課題では、知識を問う問題だけではなく、「自由にデータ分析をする」課題を課している。

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