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早大教員の授業における Good Practice &Tips 集

2016年2月25日 00:00

国際コースとの共同授業開始を契機にオンデマンド授業を導入。演習時間の大幅増も実現できた―高安研究員・関根助教・森倉助教(基幹理工学部)

morikura1.jpeg高安 亮紀 理工学術院総合研究所 次席研究員
関根 晃太 基幹理工学部 助教
森倉 悠介 基幹理工学部 助教
(写真)

 2015年度から、日本人学生向けと国際コースの学生向けの授業を同時に行うことになった「Cプログラミング入門」などの科目。そこで、いわゆる「授業」をすべて日本語と英語のオンデマンド授業へと変更した。これにより、授業中の言葉の問題を解決できただけでなく、不足気味だったプログラミングの演習時間を大幅に増やすことが実現できた。
日本人学生と国際コースの学生が同時に学べるように反転授業を導入
 高安研究員と森倉助教が担当する「Cプログラミング入門」、「Introduction to Programming」(共に春学期)、「Cプログラミング」、「Intermediate Programming」(共に秋学期)において、大石 進一教授,関根助教の協力のもと,2015年度からすべての回に「反転授業」を取り入れた。

 具体的には、日本語と英語でオンデマンド授業用のビデオを制作。学生は毎回、事前にCourse N@viでオンデマンド授業を視聴した上で授業に参加し、授業では各自で演習問題に取り組む。

 反転授業を導入するきっかけの一つは、授業の対象が国際コースの学生に広がったことだという。「国際コースの学生に向けた科目を増やしていきたいという大きな流れの中で、2015年度は日本人学生・国際コースの学生が一緒に学ぶ科目として『Cプログラミング入門』と『Cプログラミング』を新たにスタートさせることになりました」。

 しかし、国際コースには日本語がほとんどできない学生がいるため、前年度までと同じように「日本語で授業」というわけにはいかなかった。「かと言って、英語の得意でない日本人学生もいますから、英語で授業をするというのも現実的ではありません。そういった状況を補う方法として、日本語と英語でオンデマンド授業用のビデオを作り、授業中は演習中心に進めてみては」と,大石 進一 教授からご提案を頂戴し反転授業を導入した。この方法であれば、日本人学生と国際コースの学生を同時に教えなくてはならない教員の負担を軽減できる。

 さらに、反転授業を活用することによって、学生の演習量を増やしたいという思いもあった。「プログラミング言語は、話を聞くだけではなく実際に書くことで覚えられる」と話す森倉教授だが、前年度までは授業中にプログラミング演習のために、長い時間を確保することは難しかったという。「以前は、1コマ90分の中で、たとえば60分は説明をして、残りの約30分で学生に演習をやってもらうという流れで進めていました。ただ、内容によっては説明に時間がかかってしまい、演習にかけられる時間が減ってしまったり、まったく時間を取れなかったということもありました」。
プログラミング演習の時間が増え学生とのコミュニケーションも密に
 反転授業を取り入れてからは、ほとんどの時間をプログラミング演習に充てられるようになった。事前にオンデマンド授業で予習してもらい、対面の授業の冒頭5~10分で単元のポイントを説明した後は、学生が各自でCourse N@viの講義ページにある演習問題を解いていく。演習時間を長く取れるため、学生は授業時間中にプログラミングをしっかり学ぶことができる。

 「学生が演習問題に取り組む時間が増えたことが、反転授業を取り入れたいちばんのメリットですね。また、オンデマンド授業のビデオは繰り返し視聴できるので、わからないことがあれば何度も見て確認したり、後から復習に用いることも可能です」。授業中、教員はTAと共に教室内を回って、学生の質問や疑問に答えていく。学生の様子をじっくりチェックできるので、全体に進み具合が遅いときなどには、途中で問題のヒントを出すようなこともあるという。

 また、国際コースの学生も、英語のオンデマンド授業で事前に内容を理解しているので、スムーズに演習問題に入っていける。授業時間中にわからないことがあった場合は、教員に加えて、英語を話せるTAがフォローすることで対応できているという。

 反転授業によってプログラム演習をメインにしたメリットは、他にもあると森倉助教。「プログラミングは、早くできる学生もいれば、時間をかけてやるという学生もいます。そこで、演習時には比較的簡単な問題を数問と難しい問題1問を出しておいて、早くできた学生には難しい問題まで取り組んでもらう、というようにしました。学生が自分のペースで進められるのは、演習がメインの授業だからこそで、それも反転授業を取り入れてよかった点だと思います」。

 さらにもう一つ、森倉助教が非常によかったと考えている点が、学生と話す機会が増えたことだ。以前は、学生の顔と名前がなかなか一致しなかったそうだが、授業中に教室を回って学生と話すうちに、自然とコミュニケーションが深まったという。「学生のほうからも気軽に声をかけてくれるようになり、反転授業のおかげで学生ともよい関係が築けたと思います」。
プログラミング画面を挿入しわかりやすいビデオを作成
 このように、反転授業の導入はさまざまな面でよい結果をもたらしたが、新しい試みだけに準備段階では苦労もあった。「まず、ビデオの作成時には、どこまで詳しく説明すればよいかという点で悩みました。対面の授業なら学生の進度を見ながら進め方を調整できますが、ビデオではそれができないのが難しかったですね。また、それまで英語で授業をしていなかったので、日本語の授業を一から英語に翻訳するのも大変でした」。

 ビデオ作成で特に工夫したのは、実際にプログラミングをしているシーンを入れたことだ。「収録ブースでは機材の関係で撮影が難しかったので、プログラミングの動画だけ別撮りして、後からビデオに差し込みました。少々手間はかかりましたが、わかりやすいものができたので、入れてよかったと思っています」。

 大学に入ったばかりで、ほとんどが初めて「反転授業」という言葉を聞く1年生に、反転授業がどういうものかを理解してもらい、ビデオを見て予習をした上で授業に来るということを定着させるのも心を配ったという。「1回目の教室の授業では、かなり時間を取って、反転授業とは何か、具体的にどう勉強していけばよいのかを丁寧に説明しました。ただ、学生によっては、プログラミングの経験もなく、パソコンもあまり使ったことがないので、反転授業以外にも覚えることが多く、慣れるまでは大変だったかもしれません」
スマートフォンでも快適に見られるように秋学期からフォーマットを改善
 ところで、オンデマンドビデオをスマートフォンで視聴する学生が少なくないそうだ。特に、授業中に演習問題を解きながらビデオを再確認する際には、スマホ率が高くなる。理由は、「パソコンにはプログラム画面や資料を表示させるので、スペースに余裕がなく、『ビデオはスマホで』となる学生が多いからです」。

 しかし、春学期の時点では、フォーマットや解像度の問題からスマホでビデオを表示させると「大きくなり過ぎて見にくい」「文字が読みづらい」といった意見が寄せられていたという。そこで、スマホの画面できれいに表示できるようなフォーマットも新たに開発し、秋学期から提供している。「現在は、Course N@viのほか、MACやUNIX環境でも見られるWaseda Course Channel、さらにスマホでの視聴に適した映像情報ラボ内のアップロード領域と3つのチャネルを用意して、誰でも快適にオンデマンド授業を見られるようにしています」。

 反転授業については、今後も改善をしていきたいと森倉助教。「たとえば、1本のビデオの長さです。学生の集中力が続くようになるべく10~15分で作成していますが、回によっては40分を超えるものもあります。次年度は、時間を短めにして、その分、ビデオの本数を数を増やしていきたいと考えています」。

 また、演習課題の解答を解説する「補助ビデオ」のようなものも制作していきたいとのこと。「現在は、授業での演習課題についてはCourse N@viに解答を掲示している程度ですが、詳しい解説ビデオがあればいつでも復習ができて、学生がより勉強しやすくなると思います」。

 2015年度の経験を踏まえて、2016年度からはJavaやFortranといった科目でも反転授業がスタートする。「今回の経験から、プログラミングの科目は反転授業に向いていると実感しました。反転授業によって、学生のプログラミング能力が向上して、自分で作りたいものを作る助けになれば非常にうれしいですね」。
 
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日本語と英語でビデオと資料を用意、国際化に対応すると同時に教員の負担を軽減 オンデマンドビデオをスマートフォンで視聴する学生も多い。
 
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スマホ画面でもきれいに表示できるフォーマットで秋学期から提供している。
 
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Course N@viのほか、Waseda Course Channel、映像情報ラボのアップロード領域と3つのチャネルを用意して誰でもオンデマンド授業を見られるようにしている。

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