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早大教員の授業における Good Practice &Tips 集

2016年2月25日 00:00

Webクリッカーなどを活用して大人数クラスで学生の主体性を促す―畠山卓朗 人間科学学術院教授

hatakeyama1.jpeg畠山卓朗 人間科学学術院教授

 履修生が数百名にも及ぶような大人数の授業においては、学生が受け身になってしまいがちだ。人数が多くても一人ひとりが主体性を持って参加できるようにするため、畠山教授はグループワークやWebクリッカーなどを用いるなど、授業設計における工夫を重ねている。

学生の意識を授業に引き込むため
授業の「マクラ」を用意する
 今回対象となった「生きるためのデザイン論」は、障がい者や高齢者など誰もが安全・安心・快適に生活していくには、どんな社会を創ったらよいのかを考えるという授業だ。「誰もがいずれは高齢者になるわけですし、突然の事故などに遭って障がい者になるかもしれません。自分もそういう立場になるかもしれないという当事者の視点を持って物事を考えられるようになって欲しい。特に早稲田の学生にはそれを学んで社会を創っていける人になることを願っています」。そうした考えの基に、この授業では学生自らが考え、気づくことに重点を置いている。履修登録者数が330名という大人数の授業で、いかに学生一人ひとりに主体性を持って授業に向かわせるか。この課題に向き合うため、畠山教授はさまざまな工夫を施している。

 まず、毎回の授業の冒頭には教室内を暗くし、ブザーを鳴らす。これは映画館で上映時間を告げるときのような雰囲気を醸し出し、教室内のざわつきを落ち着かせるためだ。そして、その日の内容に関連する数分間のショートムービーを投影し、学生の意識を授業に誘う。

 その後、前回の授業の内容をフォローしつつ、その日に扱う内容について説明し、「それに関連して皆さんに聞きたいことがあります」という形で設問を提示し、学生にスマートフォンからWebクリッカーのサイトにアクセスして回答させる。

 「これらの仕掛けは、いわば落語でいうマクラのようなものです」。落語の世界におけるマクラとは、その日の演目に関連する小咄をしたり、演目の中で出てくるキーワードのうち分かりにくいものについての知識をさりげなく伝えたりするものである。これを挿入することで、本題である授業の内容へスムーズに導入し、より理解を深めてもらおうという意図によるものだ。「大事なのは、学生をお客さんのままにせず、いかに当事者として引き込んでいくかということです」。

クリッカー利用で重要なのは
学生に思考を促す設問内容
 Webクリッカーでは、たとえば「高齢社会に対するイメージ」「歩きスマホの実態調査」など、学生自身の考えや実態を尋ねる設問を用意し、選択肢の中から回答を選んでもらう。回答結果はすぐに自動集計されグラフとしてスクリーンに表示される。学生たちはこれを見ることで、自分の選んだ回答が全体の中でどんな位置にあるのかを理解できる。「少数派だからダメということではなく、自分と他者との位置関係を知ることに意味があるのです」。

 Webクリッカーによる質問はほぼ毎回の授業で行っているが、学生たちも飽きてくるのか、初回は100%近くあった回答率も次第に減少し、4回目を過ぎたあたりからはほぼ半数程度になってしまった。そこで取り入れたのが、回答をすると点数が加算されるという形でインセンティブを与えることだ。「1点2点という小さな点数ですが、学生によってはそれで救われることもあるかもしれません。これを取り入れてからは、回答率が明らかに上昇しました」。

 だが、このことに対しては多少複雑な思いも抱いていると言う。「回答率が上がって多くのデータが得られるのはうれしいのですが、そこまでして答えさせなくてはいけないのか、もっと学生が自主的に回答したくなるような方法はないのかと自問しています」。インセンティブを与えなくても、常時100名程度の学生は回答をしてくる。「これだけの数の学生は回答をしてくれるということの価値も前向きに考えるようにしています」。

 クリッカーの利用については、むしろ回答数の問題よりも「どう尋ねるか」という質問内容の方を意識していると言う。「尋ね方によって回答は異なるので、そこが自分にとっての課題でもあり、おもしろい部分でもあります。できれば、他の教員とも情報を共有しながら、どんな聞き方がよいか、この聞き方についてはどう思うか?などと意見を交換できるといいですね」。

 回答結果を学生に見せる教育効果という意味でも、どんな質問をするかは重要だ。「教員が知りたい、研究に使いたいというのではなく、学生たち自身が興味を持てる内容を引き出すような質問を心がけています」。回答結果はその場で見せるだけでなく、Course N@viにもアップロードしておき、各自が自由に使って良いことにしてある。「これをきっかけにして、ゼミや卒論のテーマを考えるヒントにして欲しいと思っています」。

 クリッカーでは、質問への直接の回答だけでなく、自由記述欄を使ってその場で感じたことを自由にコメントできるようにしている。「もう少し大きな声で話してほしい」など、その場で挙手して言う代わりに使う例もあれば、そのときの状況での感じたことを書いてくることもあり、学生たちのリアルタイムな反応が分かることは興味深いという。

 以前は、スマートフォンやPCを授業中に使わせることに抵抗を感じていたという畠山教授。ゲームなど授業とは関係ないことをやっていても分からないからだ。「実際に使わせてみるとなかなかおもしろいので、少し考えを改めています。他のことをしている学生もいるかもしれませんが、そこは学生自身の問題であり、さらに学生の興味を惹き付けられない私の問題でもあるでしょう。それをどう改善していくかは今後の課題です」。

ツールは単なるトリガー
重要なのは授業全体のつながり
 学生の主体性を重んじるため、この授業は15回のうち知識について講義をする回とグループワークをする回とがほぼ半々で構成されている。講義の回で次回の課題を伝え、その翌週でグループワークを行うという流れだ。グループワークでは20分話し合った後、その内容をまとめ用紙に書き込み、授業後半は発表タイムとする。

 時間の制限もあり、発表は55グループ中7つ程度が限度となる。そこですべてのグループのまとめ用紙を回収し、スキャンしたデータをCourse N@viにアップロードしている。このデータを含め、授業の前後にCourse N@viにアップロードした資料をどのぐらい閲覧しているかを見てみると、授業中に積極的に発言するようないわゆるアクティブな学生よりも、授業中はおとなしいと感じられる学生の方がじっくり見ている傾向があるという。「見てくれる学生は限られているとしても、意欲のある学生に材料を提供できているという意義はあります。見ない学生はダメだというのではなく、見たいと思われるようなものを提供していけるようにしたいと思います」。

 以前から毎回授業終了後に出席カウントも兼ねて、「Minute Paper」として授業評価や自己評価を書かせて提出させていた。この授業では人数が多いこともあり、これをCourse N@viのレビューシートを使って行っている。書かれた内容には「クリッカーでの質問について、最初はなぜこんなことを聞くのだろうと思ったけれど、授業を受けてみたらその意味がよく分かりました」という意見もあった。「重要なのは全体のつながりなのです。クリッカーはあくまでツールであって、学生の主体性を引き出すためのトリガーにすぎません。最初は珍しくても飽きてくる部分もあるでしょう。"場"を組み立てることができるのなら、ツール自体はやめてしまってもかまわないのです」。

 学生が主体性を持ってワクワク参加できるような授業を実現するために日々模索を続ける畠山教授だが、先日,経済学部の若い教員に授業を見学してもらう機会を得たことで、「自分では気づかなかった問題点が分かったり、意識していなかった点を評価していただけたり、とても参考になりました。今後もいろいろな方に見ていただいて、率直なご意見を伺って改善していけたらいいですね」。 


hatakeyama3.png
まずは発表したいグループに挙手してもらう。
出尽したらビンゴを使ってグループ指名、学生は最後まで集中状態に。 


hatakeyama2.jpg
スクリーンには課題とカウントダウンタイマーを提示。 

hatakeyama4.png
Webクリッカー回答数推移。
黄色で囲んだところが゙インセンティブを与えた回。

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