
2010年1月11日 10:20
帝京戦の終了後、チームの育成方針が明確になる。「自分たちで全てを決めていく」選手主導―。ハイリスクハイリターンなこの方針は、スローガンに「Explosion」を掲げる早田組にとっては、ある意味なるべくしてなるものだったといえるかもしれない。日体大戦から早慶戦まで
方針は「選手主導」
帝京戦後、LO中田英里、SO山中亮平(ともに3年)の二人が日本代表合宿に参加。これに伴い、星野泰佑、村田賢史(ともに4年)がそれぞれAチームに上がった。帝京戦は、「ブレイクダウンで流れを切られ、自分たちの目指す展開ラグビーが出来なかった」(中竹監督)。その反省を踏まえ、翌週から早速、ブレイクダウンに焦点を当てた練習が始まった。ボールキャリアの倒れ方からサポートの入る角度、スイープの際の身体の低さまで、基礎から徹底的に弱点を洗い直す作業が、次戦・対日体大まで連日続いた。
11月8日、日体大戦。この試合のテーマは「クリーンアウト」。ラックからの素早くかつ綺麗な球出しを狙い、帝京戦で阻止された展開ラグビーの実現を図った。結果は、「こだわりきれなかった」(No.8大島佐利、4年)、「良いところと悪いところがあって、完全というわけにはいかなかった」(SH榎本光祐、3年)と反省が出たものの、圧倒的なボール支配率を誇り、82-0と完勝を収めた。BKが9つのトライを奪っており、この点、確かな収穫があったといえそうである。
また、この試合に際して一つの試みがあった。「前戦の反省含め、練習のメニュー、スローガンの決定に至るまで全て学生にやらせた」(中竹監督)。この試合を機に始められた学生主導のチーム作りは、シーズン終了まで続く。ここにおいて、チーム方針が完全に明確化した。次は早慶戦。この時点でワセダと慶應は同率1位。勝った方が優勝に大きく近づく一戦である。
日体大戦3トライのWTB早田健二主将
対慶應、選手主導の難しさ
11月23日、東京・秩父宮ラグビー場は超満員。久しぶりの「優勝が懸かった」早慶戦とあって、多くのファンの注目を集める一戦となった。試合は前半、圧倒的な慶應ペースで進んでいく。ワセダは4分にFB田邊秀樹のPG成功で3点を先制したが、2分後に慶應の華麗なパスワークからトライを奪われ、逆転を許す。すぐさまPGで応戦したワセダだが、直後にまたしても大外を突かれ失点。悪い流れは続く。23分、田邊が相手選手との接触で脳震盪を起こし、無念の負傷退場。チームの大黒柱を失う緊急事態に陥る。WTB中濱寛造(3年)をFBに据え、田邊の代わりにWTB中鶴隆彰(1年)が入るスクランブル体勢となる。既に秩父宮に敗戦ムードが漂ったが、30分過ぎ、SO村田賢のキックを慶應がノックオンしたことで俄に空気が変わる。榎本がクイックでゲームを再開すると、村田賢がFL山下昂大へ3人飛ばしのパスを繰り出し、トライへ繋げる。CTB坂井も難しい角度からゴールを決め、なんとか同点で前半を折り返した。
迎えた後半、ファーストトライはまたしても慶應。ワセダは前半と同じようにリードを許す苦しい展開に追い込まれる。しかしその後は、「この日のテーマだった」(WTB早田)というタックルで慶應の出足を刈り取り、敵陣で過ごす時間が多くなる。怒濤の攻撃でゴールラインに迫るワセダ。慶應ゴール前で何度かペナルティを得たが、ことごとくセットプレーを選択し、これが裏目に出た。10分以上も慶應陣にいたが、一向にスコアは動かない。ようやく均衡を破ったのは35分、後半20分から途中交代したSO山中がDFラインをこじ開け、ようやくトライをものにする。しかし時既に遅く、20-20のまま試合は終了。トライ数差で慶應に勝ち点を奪われた。
この試合は、選手主導でチーム作りをすることの難しさを実感するゲームだったのではないか。前半に大黒柱を失った状態からチームを建て直せたのは、やはり「選手主導」の功績によるところが大きい。しかしながら後半のアタック時、ここぞという場面で冷静さを欠いたのも「選手主導」で進めてきたことに一因するだろう。こうしたチーム作りにおける難しさとは、経験値の差が成長の程度を左右するところにある。それでも、「グラウンドに出てる自分たちが全てを決めていくことで覚悟は違うと思うし、今後の伸びしろは大きくなるはず」(PR瀧澤直)。リスクを取ってでも「Explosion」に繋げることを、選手達は前向きに受け入れていた。
そうした意味で、この早慶戦は最高の経験だったといえるはずだ。「今年は、この方針で行くと決めた」(中竹監督)―。
この先大学選手権2回戦で散ってしまったワセダだが、あの帝京戦を乗り越え更なる経験を積んでいれば、どんなチームになっていただろうか。
チームの窮地を救ったJAPAN帰りのSO山中。後方はWTB/FB中濱
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