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地域の元気講座~NPOフュージョン研究所所長日記~

2010年2月 2日 10:27

ブルーゴールド-水の政策思想が必要だ

■映画「ブルーゴールド:狙われた水の真実」
 2003 年に集英社から『水戦争の世紀』という新書が発行された。原書のオリジナルタイトルが「Blue Gold」(2002)。水の商品化を押し進める企業を非難し、水を地球の共有財とすることを強く主張している。
 この書の内容を、著者であるモード・バーロウ、トニー・クラーク、その他にもヴァンダナ・シヴァといっ た世界各国の水研究者や市民を登場させることでドキュメンタリー映画としたのが「ブルーゴールド: 狙われた水の真実」だ。
 現在、東京では渋谷で公開していると聞きつけ、見に行ってきた。


20100203.jpg

 ドキュメンタリーといっても、マイケル・ムーアのようなあざとさは無く、水の商品化がもたらした現実の姿を解説とともに淡々と流していく。
 ちなみに、ナレーションはマルコム・マクダウェル。「その人、誰?」という人も、スタンリー・キューブリック監督の『時計じかけのオレンジ』で悪逆をつくした恐るべき青年アレックスと言うと「あー、あの 役者か」と思い出す人もいるかもしれない。1943 年生まれだから、66 歳か。こちらも歳をとるわけだ。これは余談。
 映画では、原作出版後もさらに進んだスエズやヴェオリア、ネスレなどといった水企業による水道民営化の負の側面を描いており、映画としての出来云々よりも、水に関心のある方はぜひ見ておくべきだろう。

■水へのアクセスは基本的な権利だから、水はタダであるべき 
「見ておくべき」という意味は、「この映画の主張に全面的に賛成しているから」という意味ではない。水はコモンズ(共有資源)であるべきという主張は同感だし、私自身、このことは2002 年頃から ずっと言い続けてきた。ただ、「水をコモンズとして守る」というのはゴールであって、そこに至る道は 多数ある。そこには、企業協力が欠かせないケースもあるし、政府を市民が監視しなければならない ようなケースもあるだろう。譬えれば富士登山に登山経路がいくつもあるようなものだ。
 この映画で描いているのは、水が公正に分配されない事態だ。といっても、望む人に最も効率的に 資源が分配される価格メカニズムがうまく機能していない(市場の失敗)ということではない。それ以 前に、商品経済が暴力的に持ち込まれた地域で暮らす貧困層から、生きる術を奪い取るという、かつてマルクスが問題視した収奪の世界像である。
ではどうすればよいのか?
 この映画では最後に、「水循環を自分たちで守りいたる所で涵養して、稀少な商品でなくなるようにすればよい」という発言を紹介していた。
 つまり「水は基本的人権だからタダが良い」ということで、バーロウやクラークにとって日本はよい国と映っているのだろうか?


■人は水に価値を見いださないと守る気にならない
 私たちは、水が豊富で「水はタダ」と思ったために、水をゴミ箱のように汚染したり、過剰揚水で地盤沈下を起こした経験をもっている。さらに公営水道が場合によっては効率的ではないこともよく知っている。
 実は、水問題は「ブルーゴールド」が企業悪玉論の二項対立で描くような単純問題ではない。
 水の商品化が悪なのではなく、企業・政府・市民の三者が共有資源としての水を守る制度を状況に 応じてつくりえなかったことが問題なのだ。行きすぎた水ビジネスはその一つに過ぎない。
 したがって、水をどのように守るか、という政策思想にはいくつもの立場がありえる。「水商品化絶対 反対論」と「水ビジネス振興論」という両極の間に、解くべき課題に応じて様々な思想が広がってい る。そのことを注意深く腑分けしていかないと、政策立案はできない。
 ただ一つわかっていること。
 それは、現代人は水に価値を見いだすから守る誘因が生まれるし、それ故に囲い込みたい欲求に もかられるという様々な当事者による課題の構造をもっているということ。
 構造を踏まえない政策は意味をなさない。
 水の政策思想が必要だ。

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プロフィール
中庭光彦
中庭光彦 NPOフュージョン研究所所長・多摩大学総合研究所准教授
1962年生まれ。大田区居住ながら、1998年から多摩ニュータウンに通い続けている。経営の視点から、全国の地域づくりケースを収集。「コミュニティはツールだ」「水文化を知るとコミュニティがわかる」が持論。
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