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大西良雄ニュースの背後を読む

2018年6月

2018年6月25日 14:28

老朽・水道管路の更新か、陸上イージスの配備か

(2018年6月25日筆)

 最大深度6弱の大阪北部地震で水道管が破裂した。破裂したのは高槻市内に埋設され55年経過した水道管と吹田市内の53年経過した水道管だった。この水道管を利用する高槻市、箕面市あわせて約2万8600戸が断水に見舞われ、ライフラインの危機が再現された。


耐用年数を超す老朽・水道管が破裂、高まる老朽化率

 水道管の法定耐用年数は40年だが、2つの水道管は耐用年数を10年以上超えた老朽水道管だった。中規模の水道管だったためか、これを管理する大阪広域水道企業集団の更新計画には含まれていなかった。もちろん耐震化工事も施されていないという。

 水道管の敷設は1970年代の高度成長期に急速に進み1978年には普及率が90%を超えた。以来すでに40年が経過、厚労省によると法定耐用年数を超えた老朽・水道管路の比率は全国平均で2015年度13.6%に達している。老朽化の比率は今後どんどん上昇、2045年度には59.5%にもなるという。

 高槻、吹田の破裂した水道管は1960年代に敷設されたものだ。両市が属する大阪府は耐用年数を超えた老朽・水道管路の比率は28.3%(15年度末)と全国で一番高く平均を大きく上回る。大阪府に続いて老朽化比率が高いのは神奈川県21.7%、山口県20.5%、宮城県18.8%だ。

 法定耐用年数を過ぎた水道管路は更新期を迎えるが、その更新率は年々低下、2015年度は全国平均でわずか0.74%にすぎない。厚労省では0.74%の更新率で単純に計算すると「すべての管路を更新するのに130年以上も要する」(厚労省・2017年8月「最近の水道行政の動向について」)と人ごとにように書いている。

 もう一つ、水道管の耐震性はどうか。厚労省によると耐震適合性のある水道基幹管路(家庭等への支管、給水管を除く)の割合は全国平均で37.2%にとどまっている。鹿児島、和歌山、愛媛、秋田、沖縄など過疎県の耐震適合率は全国平均を大きく下回り、25%以下だ。


人口減少で料金収入が漸減、水道管の更新どころではない

 なぜ、老朽・水道管の更新が進まないのか。2020年代には水道管路の更新に年間1兆円が必要となると予想されている。だが水道事業を運営する地方自治体やその傘下の広域企業集団は、更新するための財政資金が大いに不足している。カネがなければ更新が進むはずがない。

 水道事業は独立採算制だ。収入は水道料金がほとんどで地域人口の減少で給水量が減少、料金収入の減少が止まらない。一方、給水量の増減に関わらずほぼ固定されている。人口が減ったからといって水道管路設備を止めるわけにはいかず一定の維持・管理の費用が掛かるからだ。

 水道管路の維持運営費用は減らないのに料金収入がどんどん減って水道事業の収支が悪化、水道管路の更新費用を捻出できないのが現実だ。更新費用の捻出どころか、通常の維持管理すら賄えず水道料金の大幅な引き上げに追い込まれた地方自治体も少なくない。

 厚労省は「すべての水道管路を更新するのに130年以上も要する」というが、その130年間に何回激しい地震が日本列島を襲うのか。強い地震が発生するたびに老朽・水道管が破裂、長期間の断水が発生、生活に不可欠な水道というライフラインが途絶えることになりかねない。

 地方自治体傘下の事業体が水道管路の更新費用を捻出するには水道料金をさらに大幅に引き上げるしかない。しかし、円安などで原油や小麦など輸入財の価格が上昇、電気・ガスや食料品など生活必需財が値上がりする中、水道料金がさらに上がるのに国民は耐えられるだろうか。


バター(水道管の更新)か、大砲(軍備の拡充)か

 水道管路は電力、ガスと同様、国民生活に不可欠なライフラインだ。これを地震や台風など自然災害から守るのも立派な「安全保障」政策といえるのではないか。だが安倍政権では「安全保障」といえば第一に軍事力整備だ。水道管路などの「安全保障」には関心が薄いように見える。

 米朝首脳会談で北朝鮮が核ミサイルを封印する可能性が出てきた。安倍政権はそれでもなお、北朝鮮のミサイル攻撃に備えるとして陸上配備イージスシステムを配備する方針を変えない。陸上配備イージスシステムの導入費用は、装備する迎撃ミサイル分を含め2基で3000億円以上かかるといわれる。対北朝鮮という意味では無用の長物となるかもしれないのに...。

 昨秋の日米首脳会談ではトランプ大統領は「日本が膨大な米国の最新兵器を追加で買う」と述べた。わが国は対米貿易黒字解消のためにいかほどの米国製兵器を買わされるのだろうか、安倍総理は知っていても語らない。

 一方、安倍総理を支える自民党からは防衛費をGDP比2%に拡大せよという提言が出た。これに従えば年間5兆円超の防衛費は10兆円以上へ年5兆円の増加になる。これも米兵器購入の受け皿になるのだろう。

 今後、水道管路の更新に年間2兆円、防衛費の拡充に年間5兆円の予算が必要となると、古くて新しい「バター(民生)か大砲(軍備)か」という命題が頭に浮かぶ。膨大な債務(借金)を抱え予算制約がきついわが国では「バターも大砲も」の予算は財政破たんに近づく道だ。

 限られた予算だ。同じ「安全保障」に関わるのなら大砲(軍備)よりバター(水道管の更新、耐震化)のほうに国税を投じてもらいたいと思う。ミサイル死より震災関連死のほうが小生には現実味があるからだ。

2018年6月11日 10:53

スルガ銀行はマイナス金利が生んだ異形のあだ花

(2018年6月11日筆)

 地銀の中堅、沼津市に本店があるスルガ銀行は日銀の超低金利政策(今はマイナス金利)が響いて多くの地銀が利益低下に悩む中、6年連続で増益を記録、金融庁の覚えもめでたい銀行として知られていた。6年前まで600円台だった株価も2600円台に上昇した。


「優良株」の株価が半値以下に、投資用アパマン融資に多額の焦げ付き

 ところが一転、スルガ銀行の株価は急落、1月高値2569円から6月8日終値1085円まで58%も下落した。下落の始まりは女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」の運営会社がオーナーに約束した賃借料の支払いができていないことが判明したことだった。スルガ銀行は「かぼちゃの馬車」のオーナーに建設資金を融資していた。

 オーナーの多くは副収入目当ての30~50歳のサラリーマンだったが、スルガ銀行は審査書類を改ざんして1億円~2億円もの建設資金を融資していたという。融資金の返済原資となる運営会社からの賃借料収入が途絶えてしまえばサラリーマン・オーナーは返済不能になる...。

 その後、「カボチャの馬車」の運営会社は破たん、シェアハウス・オーナーに返済不能者が続出した。スルガ銀行は融資焦げ付きに備え貸倒引当金を積み増さざるを得ず、前2018年3月期決算で異例の修正を行う結果となった。修正前210億円だった連結純利益を69億円に修正、84%もの大幅減益(17年3月期純利益426億円)となった。

 貸倒引当金はまず、シェアハウス・オーナー向け融資(総額2035億円)に対して420億円が計上された。さらにシェアハウス向け以外の投資用アパート・マンション融資にも問題融資があることが分かり、これに対しても155億円強の貸倒引当金が追加計上された。

 スルガ銀行の増益の牽引者となっていた融資案件に大きな疑念が生じ貸倒引当が急増したのだから、株価が半年で半値以下になって当然だった。


中堅のスルガが地銀最大・横浜銀行を上回って本業利益トップ、なぜ

 スルガ銀行のそれまでの業績は目を見張るものがあった。週刊東洋経済「銀行員の不安」特集(18年6月2日号)の「地銀105行本業利益ランキング」が興味深い。本業利益は預貸業務と手数料等役務業務の利益合計で示されるが、このランキングでスルガ銀行は16年度、17年度連続してトップだった。

 2017年度、スルガ銀行は643億円の本業利益を挙げた。2位は538億円の横浜銀行だが、横浜の17年度末貸出金残高は10.7兆円と地銀最大だ。これに対してスルガ銀行の貸出金残高は3.2兆円と横浜の3分の1程度に過ぎない。そのスルガ銀が規模で3倍の地銀の雄・浜銀の本業利益を100億円以上も上回ったのだ。

 本ランキングは地銀単体ベースの数値で持ち株会社ベースではわからない地銀105行の本業利益が示されている。ちなみに2017年度は105行のうち半分近い48行が本業赤字だ。経営に不安のない信用力が支えの地銀だが、その半数近くが赤字というのは由々しき事態だというほかない。

 スルガ銀行は東の地銀最大・横浜銀行、西の地銀最優良と称された静岡銀行(本業利益5位275億円、貸出金残高8.2兆円)に挟まれた、預金残高ランクで30位前後の中堅地銀に過ぎない。そのスルガ銀行がなぜ、浜銀、静銀という両隣の有力銀行を上回る本業利益を稼ぎ出すことができたのか。


貸出金利回りは地銀平均の3倍以上、高い貸出金利のアパマン融資で稼ぐ

 その秘密は、3.61%(18年3月末)にもなる高い貸出金回りにある。地銀平均の貸出金利回りは年々低下し現在は1%強に過ぎない。スルガ銀行は中小企業向けや自治体向けなど貸出金利引き下げ競争が激しい融資から撤退、高い貸出金利が期待できる個人向けローンに傾斜した。現在、個人ローン比率は90%超に達している。これが地銀平均の3倍以上の貸出金利回りを実現する原動力になった。

 スルガ銀行の個人ローンの主力は通常の住宅ローン(融資残高2兆円超)だが伸びが鈍化、それを補うため単身女性や転職者、非正規社員向け信用力は低いが高い貸出金利となる分野へも住宅ローンを拡充したという。その結果、通常の住宅ローンでも3.45%(17年9月末)の貸出金利回りを確保している。

 その一方、「パーソナルローン」と称する個人ローンを拡販、融資残高約9084億円(17年9月末)の規模に育て上げた。パーソナルローンの貸出金利回りは5.79%にもなる。その中核が「有担保パーソナルローン」と称する今回の問題となったシェアハウス向けを含む個人向け投資用アパート・マンション融資だった。この「有担保パーソンローン」は住宅ローンを上回る高い貸出金利となり、スルガ銀行の増益に貢献していた。


地銀の半数近くが本業赤字の中、スルガ銀行ひとりが儲けるなどあり得ない

 地銀の経営環境は厳しい。少子高齢化で地域人口が大きく減少、新規融資先が減っている。日銀の超低金利政策もあって地銀の平均貸出金利は直近0.95%と1%割れだ。国債への運用利回りもゼロ%近辺、前期は米国債の下落で国債等運用損益は大幅赤字となった地銀も少なくなかった。

 教科書には貸し倒れリスクの高い融資案件の貸出金利が高くなるのは理にかなっているとある。スルガ銀行がハイリスク融資先の審査・管理を徹底して貸倒れリスクを小さくして高収益を上げたのなら評価される。しかし実際、スルガ銀行は融資先の返済能力や担保を評価するための貸出審査書類を改ざんしてまで貸し込んできたのだ。高い貸出リスクを偽って高い貸出金利を設定してきたのだ。

 すべての地銀が苦しんでいる中、ひとりスルガ銀行だけが高利回りビジネスモデルで成功するなどあり得えるのか。都心部ですら空き家が問題になっている住宅の過剰供給時代に、高利回りアパート・マンション融資が持続できるか疑わしい。スルガ銀行のアパマン融資による高利回り経営は、日銀の量的金融緩和によるバブル融資の一角、マイナス金利がもたらした異形のあだ花だったようだ。
プロフィール
ニックネームさん
大西良雄(経済ジャーナリスト)
上智大学卒業後、東洋経済新報社に入社。記者を経て「月刊金融ビジネス」、「週刊東洋経済」編集長を歴任。出版局長、営業局長の後、常務第1編集局長を最後に独立。早稲田大学オープンカレッジ講師のほか講演・執筆活動。
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