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大西良雄ニュースの背後を読む

2018年3月

2018年3月23日 12:11

日米株価が再び急落、安倍内閣は支持率を回復できるか

(2018年3月23日筆)

 安倍内閣の支持率が再び急落した。財務省が森友学園への国有地格安払下げに関する公文書(決裁文書)改ざんを公式に認めた後に実施された4社の緊急世論調査では内閣支持率は共同通信を除き軒並み10%以上下落、不支持率が支持率を上回った。朝日調査では第2次安倍内閣発足以来の最低支持率となった。

 日経新聞3月21日電子版は、「過去の内閣支持率と日経平均との関係を振り返ると、40%を下回ると株価が下がる傾向がある」として「安倍政権下では15年7月と17年7月に40%割れとなったが、日経平均はそれぞれ直近高値から18%、4%が下落した」という興味深い分析を寄せている。

 菅官房長官は3月19日、支持率急落を問われ「支持率は高い時もあれば低い時もある」と意に介さぬ姿勢を示した。昨年17年7月の支持率急落時と同様、時が過ぎ国民が事件追及に飽きれば支持率は回復するとタカをくくっているのだろうが、今回は支持率40%を回復するのは簡単ではないだろう。


騙された国民が政権に深い不信感、安倍シンパのメディアにも変化

 第一に、国会での議論や選挙での判断の基礎になるデータや公文書が政府機関によって改ざんされ、国民は騙されたと感じ、政府に強い不信感を持ってしまった。今後、安倍総理、財務省などが森友学園への国有地格安払下げに関してどのような弁明を行っても、国民は容易にそれを信じないだろう。

 これまでも、安倍政権のもとで防衛省・自衛隊による南スーダン国連平和維持活動の日報隠蔽、厚労省による裁量労働データの不正作成などの事件が起きている。そのつど安倍政権は容易に事実を認めず担当大臣の責任を問うことがなかった。今回の決裁文書改ざんが、総理はじめ政府、官僚の言葉を国民が信じず、大いに疑い始める決定打となったようだ。

 第二に、読売新聞、産経新聞など安倍政権への支持、擁護の姿勢に終始していたメディアが朝日新聞による3月2日スクープ記事「森友文書、書き換えの疑い」以降、政府批判へ姿勢をやや変化させたことだ。

 安倍総理シンパのメディアといえどもファクト(事実)の確認は生命線だ。その生命線であるファクトが財務省によって歪められた。安倍総理、麻生財務大臣などは改ざんされた偽りのファクト(公文書)をベースに強弁してきた。政権は森友学園への国有地払下げ疑惑に関して味方のメディアも欺いたことになるわけで、彼らの怒りは大きかったのではないか。


安倍総理と親密な右派議員がひいきの引き倒し、足を引っ張る

 第三に、安倍総理を取り巻く自民党の政治家たちの胡散臭さに気づき、国民の多くがそれら政治家と親密な安倍総理にも疑いの目を向けて始めたことだ。

 まず総理の盟友・麻生財務大臣だが、自らの任命責任、監督責任を棚に上げ公文書改ざんの責任を理財局の一部、あるいは佐川宣寿前理財局長に押し付けようとした。傲慢この上ない麻生氏の記者会見での態度と合わせ反発が強まった。

 さらに、森友文書改ざんをめぐる集中審議では、自民党が安倍総理に極めて近い右派議員らによる一方的な官僚叩き(ひいては露骨な安倍擁護)に終始したことだ。右派議員らは誰の指示で質問者に選ばれたのか、知りたいところだ。

 加えて、前川喜平・前文部事務次官の中学校での授業に対する文科省と政治家の介入事件だ。詳細には触れないが、加計学園の獣医学部新設をめぐって「行政が歪められた」と安倍政権を批判した前川氏の言論を封じ込めようとする異常な政治介入といえる。

 文科省に質問という形で圧力をかけた自民党議員は「安倍総理の愛弟子」を自認、これを文科省に取り次いだ議員(自民党文科部会長)も総理出身派閥に属する右派議員だ。この事件でも安倍総理とその周辺の政治体質が現れた。

 自民党の伊吹文明・元衆院議長は「非常に自民党は傲慢だと。役人に対して国会議員になれば何でもできるという風に思っているのが、支持率が下がってきた原因だ」(朝日新聞3月23日朝刊)と語った。自民党の内部からこうした声が噴出し始めており、安倍政権を支える土台が崩れ始めている。


折悪しくNYダウも再暴落、安倍・トランプ「似た者政権」に咎め

 この記事を書いている最中、NYダウが前日比724ドルの急落となったとの報に接した。トランプ米大統領は、中国からの1300品目、年500億ドルもの輸入製品に対する25%関税賦課を表明、米中貿易戦争への突入を懸念してNY株は再び暴落した。

 トランプ大統領は異論をはさむ閣僚や側近を排除する一方、自らを支持する一部の選挙民だけに政策奉仕する姿勢を崩さない異形の大統領だ。関税引き上げによって被害をこうむる大多数の米国消費者の声など簡単に無視する。こうしたトランプ施政に対し株式市場は再び反乱を始めたといってよい。

 安倍総理は「日米は100%共にある」といってトランプに必死に取り入ろうとしたが、米朝交渉開始のトランプ声明を安倍総理が知ったのは発表直前、事前相談はなかったという。さらに鉄鋼、アルミの輸入関税の適用対象から韓国、EUは外れたのに日本は対象外にならなかった。国民から安倍外交とはこの程度のものかという悪評価が出かねず、外交も支持率回復の決め手にはなるまい。

 安倍政権は取り巻きの政治家、共鳴者の意見だけを取り入れ、反対者を叩いて政策を強行してきた。トランプ大統領はフェイク(偽)ニュースをふりまいて異論、反対論を排除、一部の支持を取り付けてきた、両者の政治手法はよく似ているように思える。

 そうした権力者の政治手法が国民に嫌われ、支持率の急低下につながった。その咎めが日米とも株価急落という形で再び表面化してきているように思える。

2018年3月12日 12:23

痛ましい近畿財務局ノンキャリアA氏の自殺

(2018年3月12日筆)

 高級官僚の不始末に絡んで下級官僚が自殺するなど松本清張の小説に出てくる昭和30年代の話だと思っていた。だが、安倍総理夫人が関与したと疑われる森友学園への国有地格安払下げに関連して下級官僚からついに自殺者が出た。

 自殺したのは近畿財務局の下級官僚、いやノンキャリアだった。自殺した日は3月7日だったが、これが報じられた3月9日に佐川宣寿国税庁長官(前財務省理財局長)は突然辞任した。佐川氏本人は否定しているが、理財局傘下のかつて部下の自殺を知って長官を辞任したと思われても不思議ではない。


キャリアを行政実務で支えるノンキャリアの死

 清張の小説に出てくるような高級官僚はキャリア、下級官僚はノンキャリアと呼ばれる。キャリアは国家公務員総合職試験に合格した少数のエリートで、政策の企画・立案、調査・研究を職務とする。キャリア組は最終的には審議官、局長、事務次官にまで昇進することができる。佐川氏はもちろんキャリアだった。

 キャリアはしばしば国会議員や大臣に政策をレクチャーする。時には権力者に都合の良いデータを作成し提供する。裁量労働者の残業時間データで明らかになったが、安倍政権下では官僚によるこの種のデータ作成が目立つ。さらにキャリア国会で無能な大臣の背後に控えて国会答弁を支えているのも彼らだ。

 ノンキャリアは国家公務員一般職試験に合格し採用される。「定型的な事務を職務とする係員」で昇進しても本省では課長止まりの官僚だ。ノンキャリアはキャリアを行政実務面から支え、キャリアは優秀で忍耐強いノンキャリアの支えがなければ出世はおぼつかないとも言われている。

 3月7日、神戸の公務員宿舎で自殺したのは、近畿財務局のノンキャリア、上席国有財産管理官のA氏だ。親族によるとA氏は「真面目で自分に厳しい一方、他人を責めない人柄だった」(朝日新聞デジタル3月12日)という。人柄がしのばれ痛ましい限りだが、A氏はなぜ自殺しなければならなかったのか。遺書があったといわれるが未公開だから、その理由は今のところよくわからない。


「汚い仕事をした人はみんな異動した。自分だけが残された」

 ただ、週刊朝日取材班がA氏の故郷、岡山県内で行われた葬儀場で聞いた遺族の知人の話を伝えている。遺族の知人は「奥さんは「『どうしてこんなことになってしまったのか』「一人で抱え込んでしまって、ずっと休んでいた』『あんな担当になり、巻き込まれてしまった』と泣いていた」(AERA dot.2018年3月11日配信)と語っている。

 「あんな担当」とは森友学園との国有地払下げ交渉の担当だ。A氏は、森友との国有地払下げ交渉がほぼ終わっていた時期に前任者から引き継ぎ、上司の総括国有財産管理官に仕え文書の作成・管理など行政実務にあたっていたという。

 3月12日朝の「羽鳥慎一モーニングショー」は、A氏は「汚い仕事をした人はみんな異動になった。自分だけが残された」「自分の常識が壊された」と親族に語っていたと報じていた。

 大阪地検特捜部は、佐川氏の「森友との交渉記録は破棄した」とする国会発言に抗する市民等からの告発状を受理、公用文書毀棄、証拠隠滅、背任などの容疑で捜査に乗り出している。昨年2月の森友問題の表面化以降、異動から取り残されたA氏は局内あるいは対本省との対応、大阪地検の事情聴取などに追われ体調を崩し昨年秋から一時休職に追い込まれていたのではないか。


「天の声にやらされて」という天の声とは誰のことか

 A氏は朝日新聞がスクープした国有地売却の決裁文書「書き換え」にも携わっていたと思われる。同じ週刊朝日は「もしウチ(近畿財務局)が文書書き換えに関与したのなら当然、Aさんの名前が浮かびます。『天の声にやらされて、休職に追い込まれてしまったのか』とずっと噂になっていました」という近畿財務局関係者の声を伝えている。

 決裁済み文書の書き換え・改ざんなどノンキャリアA氏らの独自判断で行えるはずはないし、A氏らには決裁文書を書き換える動機もない。近畿財務局関係者がいうように「天の声」にやらされたと考えるのが普通だろう。

 では書き換えを指示した「天の声」とは誰なのか。近畿財務局上層部なのか本省の理財局幹部なのか、ずばり国会答弁で「行政文書はすべて破棄した」「森友と価格交渉はしていない」「政治家の関与はない」といい続けた佐川理財局長(当時)の指示なのか、それもいずれ明らかになるだろう。

 森友への国有地格安払下げは安倍総理夫人の昭恵氏が一時、名誉校長を務め、「安倍晋三記念小学校」と謳って寄付金集めが行われた小学校での事件である。書き換えを命じた「天の声」は、官僚レベルからさらにその上、政治権力からのものなのか。あるいは官僚が権力者の意向を慮ったのかあるいは忖度したのか。

 この点に関しては、佐川宣寿氏などこれに関わった財務官僚が「昭恵夫人の関与」や「安倍総理への忖度」について口を割らない限り、真相は闇に葬られるかもしれない。

 しかし、決済文書の書き換えに連座した財務省のキャリア、ノンキャリアは懲戒処分を受けることは確実だ。大阪地検の捜査の結果、刑事罰を受ける財務官僚が出てくる可能性もある。麻生財務大臣は、自らが懲戒処分を下し、いつか刑事処分を受けるかもしれない財務官僚を出した任命責任、監督責任を問われる。

 麻生氏は「自分は決裁文書の書き換えを知らなかった」といって辞任を強く拒むだろうが、与党内からも責任を問う声が湧き出ている。麻生氏が財務大臣辞任に追い込まれるのは避けられまい。麻生氏が辞任を余儀なくされれば、安倍総理は菅官房長官と並ぶ政権の双柱の一つを失うことになる。

 小生、ノンキャリアA氏の自死が無駄死に終わらないことを切に望みたい。
プロフィール
ニックネームさん
大西良雄(経済ジャーナリスト)
上智大学卒業後、東洋経済新報社に入社。記者を経て「月刊金融ビジネス」、「週刊東洋経済」編集長を歴任。出版局長、営業局長の後、常務第1編集局長を最後に独立。早稲田大学オープンカレッジ講師のほか講演・執筆活動。
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