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大西良雄ニュースの背後を読む

2018年2月

2018年2月26日 10:15

「そだねー」のカーリング娘が大人気

(2018年2月26日筆)

 平昌オリンピックに出場した北海道北見市のカーリング女子チーム「LS北見」の人気が沸騰している。最後の試合、3位決定戦でカーリング発祥国の英国に勝ち銅メダルを獲得、日本が獲得した4つの金メダルにもまさる感動を与えた。

 カーリング女子はリード・吉田夕梨花、セカンド・鈴木夕湖、サード・吉田知那美、スキップ・藤沢五月、そしてリザーブでキャプテンの本橋麻里を含め5人のチームだ。吉田夕梨花、知那美は姉妹、鈴木夕湖は姉妹の親戚、本橋麻里を含め4人は北見市常呂町の出身、藤沢五月は常呂町に近接する美山町の出身だ。

 彼女らが試合中に交わす北海道なまりの「そだねー」という合槌は流行語大賞間違いなしといわれている。ハーフタイムに彼女らが食べていた北見・老舗菓子店のチーズケーキ「赤いサイロ」は完売、注文殺到で生産が追い付かないという。


誰にでもできる、親しみやすいカーリングの魅力

 大人気の秘密は、カーリングという競技の親しみやすさにあるかもしれない。

 冬季五輪の主な競技は、選手がスキー、スケート、スノーボードの用具を強く巧みに使いこなしスピードや飛型、飛距離などを競う。鍛え挙げられた筋力、優れた体力、それに高度な技術が必要だ。誰でもできるというものではない。

 カーリングの道具は20キロのストーンとブラシだけだ。ストーンを氷上に滑らせブラシで掃いて誘導、40メートル先の円の中心近くに置くことを競う。スピードや飛躍力よりショットの正確さ、ブラシのスウィープ力が大切で誰にもできる緩いスポーツと思われ親しみやすい。

 実際はカーリングもまた、陸上選手に劣らない激しいトレーニング、3時間のスウィープに耐える体力と筋力、将棋や囲碁に匹敵する読み、乱れぬチームワークが求められる高度なスポーツだ。しかし外国選手の中には若いとは言えない選手も少なくない。小生も50歳ぐらいであったら挑戦してみたいと思った。


トップカーラーでなくとも「グッドカーラー」であれば

 加えてカーリング女子の選手が魅力に富んでいる。彼女たちは雪国出身のせいか色白で素肌が美しくかわいい。化粧も薄く、健康的で温かい人柄がうかがえる。スタイル、体型もほかの普通の日本人娘と変わるところがない。

 しかも競技中、地元丸出しの北海道なまりで会話し笑顔が絶えず、何としても勝たねばという悲壮感がない。

 スキップの藤沢選手は、昨年のカナダ選手権で現地のファンが敗れたチームの選手を指さし「トップカーラーではなかったが、グッドカーラーだね」といった言葉で気が楽になったという(朝日新聞2月25日朝刊)。「ライバルにも尊敬される善良で好感の持てる」選手がグッドカーラーだとすれば、藤沢選手らはそれを見事に実践して見せた。それが素晴らしい。


北見市、北見市民、地元企業にあげたい金メダル

 もう一つ、彼女たちが故郷の北見市や常呂町の人々に支えられて銅メダルに輝いたのも特筆すべきだ。北見市は小中高校の冬季授業にカーリングを取り入れている。国際規格のカーリング場「常呂カーリングホール」(公益団体所有)もある。オリンピック選手を輩出させる環境を北見市は備えている。

 そして北見市の地元企業・組織の熱い支援だ。吉田知那美選手は自動車販売等の「ネッツトヨタ北見」、藤沢選手は保険代理店「コンサルトジャパン」、吉田夕梨花選手は医療法人「美久会」、鈴木選手は「北見市体育協会」で働いている。いずれも北見市の会社、組織だ。以上の選手の就職先を含む18社が「LS北見」のスポンサーとなり遠征費など選手たちの競技費用を支えているという。

 故郷に帰り地元で働いている普通の娘たちが地元の支援を得てオリンピックという大舞台で活躍した。地域振興、地方創生が叫ばれて久しいが、カーリングというマイナーだが知れば知るほど親しみが増す競技を育て上げ、地域振興の一助とした北見市とその市民に金メダルをあげたい。

 小生、オリンピック期間中、最も長い時間、観戦した競技はカーリングだった。日本選手の試合は予選だけで男女合わせ18試合、一試合3時間以上かかる対戦もある。日本男女の全試合を見たわけではないが、40時間ぐらいは観戦したのではないか。

 小生、普段は午後10時までには就寝する72歳の老人だが、夜8時頃から始まるカーリング観戦のせいで就寝は12時近くになってしまった。しかしそれも、ほんとうにうれしい、愉快な夜更かしになった。

2018年2月13日 13:37

NY株暴落は「健全な調整」か、趨勢下落に至るのか

(2018年2月13日筆)

 世界同時の株価暴落が発生した。今回の震源地は米国だ。2月2日、NYダウは長期金利の上昇を懸念して急落した。その後、1日1000ドル以上の乱高下を繰り返し、2月5日には1175ドルもの戦後最大の下げ幅を記録した。

 ただ下落率はまだ小さい。最大の下落率を記録した2月5日でも4.6%だ。2008年のリーマンショック時は、1日で7%を上回る下落を繰り返した。その後、趨勢下落となり半年間で暴落前の高値に比べ53%もの下落率となった。

 今回の暴落前の高値比の下落率は8.5%にとどまる。現段階での下落率はリーマン暴落時に比べまだ小さいといってよい。


無視され続けたNY株への「買われ過ぎ、割高」の警告

 暴落を機に趨勢下落となるのか、買われ過ぎに対する一時的な調整下落にとどまるのか。今のところ後者の説が有力である。後講釈になるが、NY株が買われ過ぎ、割高となっていることを示す株価指標はいくつもあった。

 ひとつは世界的な投資家・ウォーレン・バフェットが考案した「バフェット指数」だ。一国の株式の時価総額は名目GDPに収斂するという経験則から割り出された指数だ。急落前、1月18日の米株のバフェット指数は均衡値の100%を大きく超え149%に達し、買われ過ぎの警告が発せられていた。

 もう一つはノーベル経済学賞受賞のロバート・シラー教授が創案した「シラーPER」だ。PER(株価収益率)は株価を一株当たり利益で割って算出されるが、シラーPERは過去10年間の一株当たり利益の平均値をインフレ率で調整した実質値で算出される。

 米国株の代表指数S&P500ベースのシラーPERは16倍台が過去平均だ。25倍以上になると株式が利益に対して買われ過ぎ、割高と判断される。暴落前の2018年1月のシラーPERは32倍に達しており、株価は明らかに割高となっていたといえよう。


インフレ懸念で長期金利が急上昇、株式の割高感が際立つ

 しかし株価はバフェット指数、シラーPERの警告を無視する形で上昇した。その背景にあったのは低インフレと大幅な金融緩和がもたらした低金利だった。それが18年1月の賃金上昇を含む「強い雇用統計」で急変する。

 「強い雇用統計」の発表は賃金上昇によるインフレ懸念を市場にもたらした。インフレ懸念の台頭で買われ過ぎていた米国債が売られ長期金利(10年もの米国債利回り)が急上昇したのだ。

 長期金利の急上昇は株式投資には逆風だ。長期金利(債券利回り)と株式益回り(1株利益÷株価、PERの逆数)あるいは株式配当利回りを比べるイールドスプレッド(利回り格差)の考え方に従えば、長期金利が上昇すれば相対的に株式の益回りや配当利回りが低下、株価の割高感(買われ過ぎ)を際立たせる。

 投資家たちはインフレ懸念の増大に伴う長期金利のさらなる上昇を懸念して、バフェット指数やシラーPERが株式の買われ過ぎに警鐘を鳴らしていることに気が付き、慌てて株式を売った。さらにコンピュータによる機械的な売りが株価暴落を加速することになった。


トランプの財政膨張路線が金利上昇圧力を強めた

 ただ、米国の長期金利は年末の2.4%倍から2.8%台へ0.4%上昇したに過ぎない。問題は今後の金利上昇テンポにあるが、それを加速する新たな要因が米国経済に加わった。トランプ政権による財政膨張がそれだ。

 一つは10年間1.5兆ドル(約165兆円)ものトランプ減税だが、この功罪については前回ブログで述べた。もう一つはインフラ投資等による歳出拡大だ。トランプ大統領は2019会計年度の予算教書で今後10年間1.5兆ドルのインフラ投資を掲げた。議会は大幅減税、歳出拡大に備え2018年度、19年度の2年間で3000億ドル(約33兆円)の歳出上限引き上げに合意した。

 トランプ政権は、大幅増益基調の企業収益、最高値連続更新の株価、2000年以来17年ぶりに低い完全失業率、貯蓄率低下による消費拡大など景気拡張が続く環境下でなお大幅減税と財政出動(歳出拡大)を上乗せするのだ。完全雇用下、景気を過熱させインフレを煽る異常な財政拡張政策というほかない。

 米国の長期金利は、インフレ懸念を強める財政膨張政策、その結果としての財政赤字拡大による国債増発(政府債務の増大)の両面から上昇圧力を受けることになる。長期金利の上昇が加速すれば株式はさらなる下落を余儀なくされる。


パウエル新議長のFRBが抱え込んだ深刻なジレンマ

 異様な財政膨張の結果、慎重に金融正常化を進めてきたFRB(連邦準備制度理事会)は深刻なジレンマを抱え込む。財政膨張によるインフレ懸念を抑制するには金利引き上げを加速する必要がある。しかし、金利引き上げを急げば今回のような株価暴落が繰り返され景気減速(雇用悪化)につながる。インフレ懸念対応と株価暴落対応のいずれを優先するのかというジレンマだ。

 今回の株価暴落に対するFRB高官の判断は、「現段階では大したことはない」(ダドリー・ニューヨーク連銀総裁)という発言に代表される。イエレン前議長を筆頭にFRBは「NY株は高過ぎる」という見方を強めており、今回の株価暴落を「健全な株価調整」(カプラン・ダラス連銀総裁)と見ているようだ。

 FRBは、NY株価は健全な調整にとどまるとして、景気過熱によるインフレ懸念対応を優先する方針を変えていないと思われる。この方針に従えばFRBは年3回の政策金利引き上げ、保有資産縮小の拡大(米国債売りの拡大)を予定通り進めることになり、長期金利は上昇を続ける。

 本当にそうなるのか、2月末に行われるパウエル新議長の議会証言が注目される。ただ、潜在成長率2%近辺と想定される米国経済が3%(現在2.8%台)を上回る長期金利に耐えうるのかどうか試される。長期金利が3%台に突入すれば、少なくとも低インフレ、低金利によって築かれたNY株の「適温相場」は崩れることになりそうだ。
プロフィール
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大西良雄(経済ジャーナリスト)
上智大学卒業後、東洋経済新報社に入社。記者を経て「月刊金融ビジネス」、「週刊東洋経済」編集長を歴任。出版局長、営業局長の後、常務第1編集局長を最後に独立。早稲田大学オープンカレッジ講師のほか講演・執筆活動。
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