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大西良雄ニュースの背後を読む

2018年1月 9日 14:39

上放れた日経平均、日銀はETF買いを続けてよいのか

(2018年1月9日筆)

 日経平均は2018年の大発会が741円の大幅高、翌5日も208円上昇、2日間で949円(4.2%高)の急騰となった。約2か月間、上値の壁となっていた2万3000円を突破、高値保ち合いから上放れた。

 それだけではない。バブル時1989年12月に付けた最高値3万8915円からの下げ幅の半値戻し2万2984円を大きく上回った。兜町には「半値戻しは全値戻し」という格言がある。全値戻しには時間が掛かろうが、バブル崩壊後の戻り高値2万7146円(91年3月)への期待が強まることになった。


2018年度9%増益なら日経平均2万6448円の高値も

 今回の日経平均の急騰について「理屈なきバブル株価」と見る向きは少ない。1月5日終値2万3714円ベースでも日経平均の予想PER(株価収益率=株価が上昇すればPERは下がる、株価が下落すればPERは上がる)は15.6倍にとどまる。ここ数年、日経平均の予想PERは高値時16.0倍、安値時14.0倍のゾーンに収まっており、15.6倍は高値時のPERより低く、企業業績面からはまだ割高感はない。

 今後、株式市場は来期2018年度の企業業績を織り込みに行くことになる。下表上段に見るように、証券会社などの2018年度純利益予想では、世界的な好景気持続を背景に最低でも9%増益が見込まれている。

 5日現在、日経平均の一株当たり利益は1517円だが、9%増益となれば一株益は1653円に上昇する。1653円を前提にすればPER16.0倍まで買われれば日経平均株価は2万6448円の高値が想定される。PERが14.0倍まで下がっても2万3142円が安値限界ということになる(下表下段)。

大手企業(金融除く)の2018年度純利益予想=9%増益
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日経平均株価の高値安値ゾーン=9%増益・一株益1653円の場合
hyo2.JPG
 経営者による2018年度の株価見通しでは、主要企業の経営者20名のうち17名が2万5000円以上の高値を予想している。その高値予想の平均は2万5440円だった(日経新聞1月1日付)というが、こうした高値予想は経営者の企業業績への自信の表れといってよい。


NYダウは景気拡大とトランプ減税の後押しで上昇を持続か

 日本の株式市場をリードする米国株の見通しも良好だ。NYダウは1月8日終値で2万5283ドルだが2018年末にかけ2万8000ドルに達するという予想もある。その背景には景気拡大の持続とトランプ減税の効果がある。

 トムソン・ロイター集計(昨年11月末)によるとS&P500採用の米主要500社の2018年通年の利益伸び率予想は景気拡大の継続を織り込み+11.2%(17年+11.8%)と高水準を維持している。これに1月から法人税減税、所得減税を軸とする大規模なトランプ減税(10年間1.5兆ドル)が加わり、利益伸び率は8%以上上乗せされるというシナリオがウォール街では囁かれている。

 現在、S&P500の予想PERは20倍台を超え株価の割高感が顕在化しているが、トランプ減税実現に伴う8%以上の利益伸び率の上乗せを考慮すれば割高感は解消、NY株の先高は揺るがないとする見方が支配的だ。米国の景気拡張は2009年7月から始まり2017年12月で102カ月を数え戦後第2の拡張期間(戦後最長は120カ月)となっているが、米景気は2018年中も拡張を続けるという見方も強い。日本の株価はこれに連動する。


米欧の金融政策変更の累積効果をどう読むか

 こうした楽観論に対し、北朝鮮の核ミサイルをめぐる米朝緊張、エルサレム首都化をめぐる中東情勢など地政学リスクも懸念される。だが最も影響が懸念されるのは日米欧の金融政策の変更だ。

 FRB(米連邦準備理事会)は2018年も3回程度の政策金利の引き上げを継続、1月から保有資産の圧縮を本格化させ長期金利の上昇を促すことになる。今のところ金融危機引き締めのテンポが緩やかであるため、金利上昇が株価上昇の妨げになっていない。だが、どの段階で金利引き上げの累積(積み上げ)が米国や新興国の株価と景気に影響を与えるか、注意する必要があろう。

 FRBに続きECB(欧州中央銀行)も1月から資産購入額を半減、9月末までに資産購入を終了する計画だ。その後、2019年には政策金利の引き上げに踏み切ると予想される。米欧は金融引き締めへ足並みが揃ってきた。

 わが日本銀行もFRB、ECBの政策変更とは無縁であるまい。日銀が金利を低位に固定したままFRB、ECBが利上げに動けば日本と米欧の金利差が拡大、円の独歩安(日本輸出の一人勝ち)という事態を招きかねない。

 為替面から金利引き上げ圧力がかかり日銀は金融政策の変更を余儀なくされる可能性がある。日銀は「長短金利操作付き量的・質的金融緩和(イールドカーブ・コントロール)」に転じて以来、すでにステルス・テーパリング(密かな資産購入縮小)を開始、年間80兆円の国債購入額をおよそ半減させている。

 日米欧が揃って金融正常化の方向に舵を切れば、株価にどのような影響が生じるか、金融当局の検証が求められる段階を迎えることになる。


日銀のETF買いがなければ株価を維持できないのか

 日銀には年間6兆円の巨額に上るETF(上場株式投資信託)の購入削減が課題になる。ETF買いの狙いは「株式のリスクプレミアムを引き下げるため」と日銀は説明してきた。一般人にはわかりにくい説明だが、簡単に言えば「投資家の不安(リスクプレミアム)を緩和する」、つまり「下値を買い支え投資家の買い不安を解消する」ということだ。

 そもそも株式投資は投資家同士の相場や銘柄に対するリスク観測を売り買いするものだ。株価の暴落時を除き、リスクを軽減する目的の日銀によるETF買いは株式投資に原則に反する。しかも利益の拡大をバックに株価が上昇トレンドを続けているにもかかわらず、株価が下落する不安が遠のいているにもかかわらず、漫然とETF買いをつづける理由が見当たらない。上昇トレンドのわずかな下げ局面で株価を買い支える理由が小生には見当たらない。

 日銀はETF買いを縮小する、あるいは買いを止めるといった途端、支えを失って株価が急落するという不安を持っているのだろうか。それほど日本経済の底は浅く、株価が脆弱だと日銀が見ているとすれば、アベノミクスの成果が乏しいといっているに等しい。4月の日銀総裁人事が注目される。

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プロフィール
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大西良雄(経済ジャーナリスト)
上智大学卒業後、東洋経済新報社に入社。記者を経て「月刊金融ビジネス」、「週刊東洋経済」編集長を歴任。出版局長、営業局長の後、常務第1編集局長を最後に独立。早稲田大学オープンカレッジ講師のほか講演・執筆活動。
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