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2017年12月 4日 13:54

中国はAIなど先端技術産業で日本をすでに凌駕

(2017年12月4日筆)

 英FT紙は「AI 中国の決断と米国の油断」(邦訳)と題する記事の中で、「60年前、ソ連が世界初の人口衛星「スプートニク」を打ち上げて世界を驚かした。(中略)中国が7月、2030年までに世界の人工知能(AI)産業でトップに立つという計画を明らかにしたことは、今日のいわば『スプ―トニック・ショック』といえる」(日経新聞11月30日朝刊)と書いた。

 中国国務院は2017年7月、「次世代AI発展計画」を発表、計画ではAIソフト、機器、知能ロボット、自動運転車、仮想現実(VR)などを重点産業とする一方、政府は脳科学や量子コンピュータ、ロボット工学、ビッグデータ研究などの支援に取り組むという。そして、「2030年までにAIの理論、技術、応用で世界的なリーダーになりAI技術革新の中心地になる」とした。


革新的テクノロジーに優れる「スマート・カンパニー」に続々ランクイン

 現在のAIの理論、技術、応用の圧倒的リーダーはもちろんアメリカだが、中国は2030年まで今後13年間でアメリカに追い付き、追い抜くというのだ。模倣は得意だが独自の技術開発力は劣ると中国に先入観を持つ人は、最先端のAI分野でアメリカを凌駕するなど、そんなことが可能かと疑うに違いない。

 だが中国では先端企業が続々誕生、米マサチューセッツ工科大学(MIT)が発行する「MITテクノロジーレビュー」誌が発表した2017年版「スマート・カンパニー・世界トップ50」に次々にランクインしている(下表)。

「スマート・カンパニー・世界トップ50」に選ばれた中国の先端企業

6位・アイフライテック(人工知能・音声認識)、8位・テンセント(AI研究、ゲームAI等)、11位・メグビー(顔認証決済)、25位・DIJ(民生用ドローン)、41位・アリババ(クラウドコンピューティング、ビッグデータ等)、49位・アント・フィナンシャル(スマホ決済サービス)、50位・バイドゥ(国立AI研究所の運営、自動運転等)
 スマート・カンパニーとは革新的なテクノロジーと効果的なビジネスモデルを持つ先端企業のことで、50位のうち6割が米国企業だが中国企業は7社入った(2016年は携帯のファーウエイ(華為)、配車アプリの滴滴出行など4社だった)。日本企業は16年にはトヨタ、ファナック、LINEの3社がラインインしていたが、17年は残念ながらゼロになった。


ネット通販はアメリカの2倍、モバイル決済登録は延べ12億人

 中国には企業がAI分野で強くなれる土壌がある。ひとつは14億人の巨大消費市場でのインターネット取引の盛り上がりだ。世界の電子商取引の40%以上が中国国内で行われ、中国のネット通販の規模はアメリカの2倍近い。

 さらに日銀調べによると、アリババ系「アリペイ」、テンセント系「ウィーチャットペイ」の2社のモバイル決済登録者は延べ12億人に達し、中国では都市部消費者の98%が店頭でのモバイル決済を利用している(日米独のモバイル決済利用率は2~6%に過ぎない)という。

 中国の膨大なネット取引は人工知能が解析、制御指令を発するのに不可欠なビッグデータの宝庫になる。中国が半導体やスマホなど高機能携帯端末などAIに関連するほとんどの電子機器の生産基地になっていることも有利になる。

 AIをリードする中国のインターネット大手、アリババ、テンセントは世界の時価総額ランキングでトップテンに入り、上位を占める米国のアップル、アルファベット(グーグル)、アマゾン、フェイスブックを猛追している。携帯通信のチャイナモバイル(本社香港)も上位にランクされている。


科学技術論文の生産でも急成長、10年後ノーベル賞受賞輩出か

 習近平総書記は10月に開催された第16回中国共産党大会で中期的な経済政策である「現代化経済体系の構築」を示したが、その2番目に革新型国家(イノベーション強国)の建設加速を挙げた。さらに2020年~35年の間に科学技術力を大幅に向上させ「革新型国家の上位」に上り詰めるとした。

 中国では国家を挙げたイノベーション(技術革新)に本腰が入ることになるが、2015年策定の「メイド・イン・チャイナ2025」ではイノベーションの重点産業に人工知能、集積回路、量子コンピュータ、第5世代モバイル通信、電気自動車などを指定している。AI産業の育成、国家資金の投入は着々と進められてきたといえよう。

 中国はイノベーションの源泉となる科学技術論文の生産でも目覚ましい躍進を遂げている。10年後、アジアでは日本に代わって中国が科学技術研究でノーベル賞受賞者を輩出する国になるに違いない。

 文部科学省傘下の科学技術・学術政策研究所による「世界の注目度の高い論文(引用回数上位10%の論文)の生産」についての調査によると、中国の総合順位は1991年-93年の18位から2011年-13年調査では米国に次ぎ2位に浮上、現在も2位を維持し1位のアメリカを追っている。日本は2000年代前半の4位から現在は9位にまでランクを下げた。

 中国は、科学技術論文の分野別順位では化学、材料化学、計算機・数学、工学でアメリカを抜いて1位となった。計算機・数学の分野で1位になっているのは、スーパーコンピュータや量子コンピュータなどAI技術に関係の深い分野で中国が先行し始めた証拠でもある。

 トランプ米大統領は研究開発予算を大幅に削減する一方、研究開発の担い手である移民の削減に大わらわだ。日本では大学や研究機関は研究開発予算を減らされ研究員の大半が非正規の有期雇用だ。そうした間隙を縫って科学技術で後発だった中国はイノベーション強国への道を着々と歩むことになる。

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QuonNetコミュニティ | 2017年12月 4日 14:05

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プロフィール
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大西良雄(経済ジャーナリスト)
上智大学卒業後、東洋経済新報社に入社。記者を経て「月刊金融ビジネス」、「週刊東洋経済」編集長を歴任。出版局長、営業局長の後、常務第1編集局長を最後に独立。早稲田大学オープンカレッジ講師のほか講演・執筆活動。
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