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大西良雄ニュースの背後を読む

2017年11月 6日 12:23

求人倍率、就職率の改善はアベノミクスだけの成果か

2017年11月6日筆)

 今回の衆議院選挙では18歳以上の国民に新しく選挙権を付与されたが、興味深いのは彼ら若年層の政党支持だ。朝日新聞の出口調査によると、比例区では10歳代の46%、20歳代の47%が自民党に投票したという(下表)。

若年層は自民支持(年代別の比例区投票先、17年衆院選・朝日新聞出口調査)
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 同じ出口調査で10歳代の60%、20歳代の62%が「アベノミクスを評価する」と答え、10歳代の58%、20歳代の61%が「安倍政権が続くのが良い」と答えた。若年層のアベノミクスの成果への評価がきわめて高いといえる。

 若年層が実感できる「アベノミクスの成果」は、安倍総理が国会でも選挙演説でも繰り返し強調してきた完全失業率の低下や有効求人倍率(求職に対する求人の倍率)、就職内定率の上昇だろう。細かい数字には触れないが、これら雇用指標はいずれも改善が著しい。

 しかし、これら雇用指標の改善が「アベノミクス(第2次安倍政権の経済政策)の成果」であると総理に自慢されると、ちょっと待ってほしいといいたくなる。


雇用改善はアベノミクスのずっと以前から続いている
「アベノミクスの成果だ」とは手前味噌が過ぎる

 有効求人倍率など雇用指数の改善は、労働力人口のもとになる生産年齢人口(15歳以上~64歳)の減少が加速した2000年前後からすでに始まっている。アベノミクスの4年間だけの傾向とは言えない。

 例えば有効求人倍率は1999年の0.48倍を底に上昇に転じ、07年には1.04倍まで回復していた。完全失業率は2002年の5.4%をピークに下降に転じ、07年には3.9%まで改善していた。大卒の就職内定率(各年3月卒、4月1日現在の数値、厚労省・文科省調べ)も2000年の91.1%を底に上昇、08年には96.9%まで上昇していた。

 これら雇用指標の改善トレンドはリーマンショック後の2009年にいったん途切れた。有効求人倍率はリーマンショック後の2009年には0.47倍まで急落した。完全失業率は09年には5.1%まで再上昇した。大卒の就職内定率は少し遅れて2011年に68.8%まで低下した。


2009年リーマン危機が雇用改善を一時的にかく乱
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 しかし、上図に見るようにリーマン危機後、有効求人倍率は09年からすぐに回復に転じ、完全失業率も10年から下落に転じている。図にはないが就職内定率も有効求人倍率の回復とは多少時間差はあるが2012年から回復している。

 要するに、完全失業率や有効求人倍率、就職内定率もリーマンショック後の景気急冷(麻生政権下の2009年実質GDP成長率は▲5.42%)が響き急悪化したが、これは一時的な悪化だった。リーマンショック以降、民主党政権下での景気反転上昇に伴ってこれらの雇用指数は再び回復に転じている。

 完全失業率や有効求人倍率、就職内定率は2000年前後から趨勢的な改善を見せており、リーマンショックによる一時的なかく乱(悪化)を経て、民主党政権下もアベノミクス以降も改善傾向を続けている。総理が雇用指標の改善は「アベノミクスの成果だ」とするのは手前味噌が過ぎるといえよう。


就職適齢の若年労働力の減少から就職内定率が改善
退職適齢労働力の非正規雇用拡大で失業率が改善

 特に2000年以降、なぜ失業率や有効求人倍率、就職内定率などの雇用指数が趨勢的な改善傾向を続けているのか。その最大の理由は、下表の5歳階級別労働力人口の推移(労働力調査)で明らかだろう。

 15歳~19歳(中卒・高卒)、20歳~24歳(短大卒・大卒)の就職適齢の若年労働力人口は2000年から2016年までの16年間で211万人減少している。一方、60歳から69歳までの退職適齢の高齢労働力人口は300万人増加している。若年、高齢労働力の増減は少子高齢化に伴うものだ。

就職適齢の若年労働力が減少、退職適齢の高年労働力が増加(単位万人)
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 労働市場に参入する就職適齢労働力が減り、労働市場から退出する退職適齢労働力が増えればダブルで労働力が減少する。2016年の参入減、退出増合計は511万人を数え、役員を除く雇用者数の5500万人の9.2%に達した。

 この労働市場への若年層の参入減が若年層の就職内定率や初任給水準の回復につながった。一方、若年労働力不足が顕在化する中、これを補う高齢者への非正規雇用が増加し、非正規を軸に有効求人倍率が上昇、完全失業率も低下した。以上は、2000年来の労働市場における雇用指標改善の趨勢でもある。

 総理は「政治は結果がすべて」といって雇用指標の改善という結果をすべて自分の手柄にして選挙民の支持を得ようとした。しかし、リーマン危機後の一時的かく乱を除けば、有効求人倍率など指標改善はアベノミクス以前からずっと継続しており、アベノミクスだけの成果ではない。

 選挙後の記者会見でも総理は、相変わらず有効求人倍率や就職内定率の上昇という「結果」を自分の手柄のように語った。その姿勢からは、選挙後、総理が繰り返す「謙虚」という言葉が空しく聞こえるのは小生だけだろうか。

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QuonNetコミュニティ | 2017年11月 6日 17:05

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プロフィール
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大西良雄(経済ジャーナリスト)
上智大学卒業後、東洋経済新報社に入社。記者を経て「月刊金融ビジネス」、「週刊東洋経済」編集長を歴任。出版局長、営業局長の後、常務第1編集局長を最後に独立。早稲田大学オープンカレッジ講師のほか講演・執筆活動。
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