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大西良雄ニュースの背後を読む

2017年10月10日 10:02

「排除」の物言い嫌われ小池人気は早や賞味期限切れ

(2017年10月10日筆)

 小池百合子・希望の党代表は民進党リベラル派を排除したが、南京事件はなかったなどという典型的な歴史修正主義の中山成彬氏らを抱き込み右翼へ大きくウイングを伸ばした。中山氏は教育勅語を暗唱させた籠池氏の幼稚園に推薦文を寄せた人物だ。中山氏は自ら合流を希望する民進党員の「思想チェック」を担ったといい、希望の党からは九州ブロック比例名簿トップになるといわれる。

この一事をとっても希望の党は小池氏がいう「寛容な改革保守」からは程遠い。小池氏は関東大震災当時の朝鮮人虐殺事件を都知事として無視する挙に出たが、彼女も安倍総理、中山氏など歴史修正主義者のお仲間なのかもしれない。


「さらさらない」「排除する」で墓穴を掘った小池氏

 それはさておき、中山氏が、小池氏に希望の党の選挙戦の進め方を問うと、彼女は「選挙はテレビがやってくれるのよ」と話したという(朝日デジタル10月5日)。テレビが小池氏の一挙手一投足を絶え間なく報じてさえいれば小池人気は高まるとうそぶいたに等しい。

 しかし、その肝心の「小池人気」も急速に衰えた。特に希望の党の公認候補を選ぶにあたって、小池氏が「民進出身全員を受け入れるつもりはさらさらない」「民進リベラル派は排除する」と言い放った後、小池人気は一気に冷え込んだ。

 小池氏と小池人気にあやかろうとした前原誠司氏(民進党代表)氏の師匠筋にあたる細川護熙元首相(元日本新党代表)は、こういった。(リベラル勢力や首相経験者を選別することに)「排除の論理を振り回し戸惑っている」、「公認するのに踏み絵を踏ませるというのはなんともこざかしいやり方で『寛容な保守』の看板が泣く」(毎日新聞10月3日付)と。「なんともこざかしいやり方」という細川氏の言い方には小池氏への嫌悪感が漂っている。小生も同感だ。

 民主党創設時、鳩山由紀夫(元首相)氏に排除された経験を持つ武村正義(元新党さきがけ代表、元蔵相)も「政党をつくるなら排除よりむしろ吸収力、求心力を高めないと与党に対抗するパワフルな党は生まれない。排除の一件は希望の勢いをそいでしまう」(毎日新聞10月4日付)と話した。一人しか選ばれない小選挙区制のもとでは排除の論理は野党を弱くする。

 「さらさらない」「排除する」という、一時の人気に胡坐をかいた、こざかしい、思い上がった小池氏の言葉遣いに反感、嫌悪感を覚えた選挙民は少なくない。人気の衰えた小池氏にどんな価値があるのか。このままでは小池人気を当て込み希望の党に合流した旧民進党候補者たちは、大いに当てが外れることになる。


「小池新党」の支持急落、排除された旧民進勢力は支持拡大

 武村氏の見る通り排除によって「希望の勢い」はそがれてしまった。読売新聞が10月7~8日に実施した世論調査では衆院比例選の投票先では希望の党は衆院解散直後(9月28~29日)の調査の19%から13%へ6%急落した。

 排除の論理に反発して枝野幸男元民進党代表代行ら民進党リベラル派によって創立された立憲民主党は投票先としていきなり7%の支持を集めた。この調査では比例投票先として解散直後34%を占めていた自民党も立憲民主党党創設後は32%へ2%低下している。希望の党が減らした6%、自民党が減らした2%のほとんどが、立憲民主党への支持に回ったことになる。

 この世論調査の後、野田・元総理や岡田・元民主党代表など民進党前職が20名で無所属ネットワークを立ち上げたという。希望の党への投票先は彼ら排除された「総理経験者ら民進前職無所属」にも食われるに違いない。

 武村氏と一緒に鳩山由紀夫氏の民主党から排除された田中秀征氏(元新党さきがけ代表代行、元経済企画庁長官)は、「岡田克也、江田憲司など自民党を源流とするメンバーが政党をつくってリベラル系を包含すれば国民の渇望に応えて大化けする可能性がある」(朝日新聞10月5日付)と話し民進党前職の無所属ネットワークに大きな期待を寄せている。


戦後保守党思想の核心から遠い安倍総理と小池「希望の党」

 田中秀征氏は新党さきがけの理論的支柱であり、さきがけ当時、今回袂を分けた前原誠司、枝野幸男両氏に影響を与えた政治家でもある。彼は戦後保守思想について以下のように語っている(以下も朝日新聞10月5日付)。

「戦後保守党思想の核心は、憲法尊重と、先の戦争は間違いだったといった歴史認識。安倍首相の路線とは大きく違います。そして希望の党は基本的に安倍路線と同じです。」

「保守党思想にはリベラルな考えを尊重する特徴もあります。吉田茂、鳩山一郎、石橋湛山など戦後保守の先覚者はいずれも自身が第一級のリベラリストでした。リベラル系の民進党議員を排除する希望の党は、その点でも戦後保守の流れとは異質に見えます」

「国民の多くは、現在の自民党による政治に不安を抱き、もう一つの健全な保守の流れを渇望しています。言い換えると、大国主義に陥らず、言論の自由を守りリベラルな意見にも耳を傾ける、真の意味の寛容な保守の政治勢力が求められているのです。しかし、その渇望はどうやら今の希望の党では満たされそうにありません」

 戦後「保守リベラル」の源流の一つとなった石橋湛山(早稲田大学出身、元首相)は戦前、侵略に反対し植民地の放棄を訴える「小日本主義」を唱え、言論を武器に陸軍を筆頭とする国家権力に挑み、いち早く婦人参政権に賛成した人権重視の民主主義の政治家だった。田中氏は保守リベラルを継承した宮沢派に属し、「石橋湛山の孫弟子」と自ら言っていった。


国家主義か真の民主主義(民権主義)かの選択

 石橋湛山翁は小生の属した東洋経済新報社の先輩でもあり、小生もその政治思想に大きな影響を受けた。田中秀征氏は触れていないが、小生は「リベラル(自由主義)」の基本にはもう一つ、国家権力からの自由を訴え基本的人権を尊重するという「国民主権の思想」があると考えている。

 国民の内心の自由を取り締まる「共謀罪」を強行採決し、基本的人権を制限することを可能とする「緊急事態法」を準備している安倍総理が、民権より国権を重視する国家主義者であることは疑いない。小池氏の希望の党は国家主義なのか真の民主主義(国民主権)なのか、聞いてみたいところだ。

 安倍・自民党、小池・希望の党の間で、消費税や原発政策など政策に若干の差異が見受けられるが、公約は保守勢力内の権力争奪の道具に過ぎず、いつ変更されるかわからない。不確かな公約を信じて票を投じると後悔することになる。

 今回は、回り道だが、大国主義か小国主義か、国家主義か真の民主主義か、候補者の基本的な政治姿勢や政治思想を見極めて投票先を選ぶ時かもしれない。

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QuonNetコミュニティ | 2017年10月10日 10:05

この記事へのコメント

1. Posted by Anonymous 2017年10月16日 17:39

経済政策・少子化政策・教育無償化などの公約以前に「政治の貧困化対策」を選挙公約にしてほしいもんだ。

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プロフィール
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大西良雄(経済ジャーナリスト)
上智大学卒業後、東洋経済新報社に入社。記者を経て「月刊金融ビジネス」、「週刊東洋経済」編集長を歴任。出版局長、営業局長の後、常務第1編集局長を最後に独立。早稲田大学オープンカレッジ講師のほか講演・執筆活動。
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