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大西良雄ニュースの背後を読む

2017年9月19日 12:24

今なぜ衆院解散、10月総選挙に大義はあるのか

(2017年9月19日筆)

 ようやく9月28日から臨時国会が始まると思っていたら、安倍総理は議論もせず冒頭解散、10月22日あるいは29日投票の総選挙に踏み切る意向だと報道された。解散風が一気に吹き抜け代議士たちは選挙準備に入ったという。

 この報道を受け9月17日、萩生田・自民党幹事長代理は「政権をしっかり維持するために解散は一つの選択肢ではあるが、大義なき党利党略になってはならない。もしこの時期に解散するのであれば北朝鮮の脅威とどう向き合うかも含めて国民に説明する必要がある」と述べたという。

 総理の最側近である萩生田氏ですら、総理の突然の総選挙意向に対して「この解散に大義はあるのか」「党利党略になってはいないか」「北朝鮮の脅威が叫ばれている時期に政治空白をつくっていいのか」と疑問を呈している。発言は後で修正されるだろうが、萩生田氏のこの時点の発言は国民の多くが抱える疑問を代弁するまっとうなものだろう。


民進党は離党騒ぎ、新党は準備不足、北朝鮮のミサイル発射も味方?

 解散は総理の専権事項とされるが、総選挙には数百億円の公費が投じられる。総理が総選挙で国民に選択を迫る大義は何なのか。我々の貴重な税金を使ってなぜ今、臨時国会の開催直後に解散する必要があるのか、総理に問いたくもなる。

 ワケ知りの政治評論家などは、総選挙には勝たねばならない、総理が勝つために最も有利な時期を選ぶのが政治のリアリズムだ、解散の大義など後からこじつければいいといっている。安倍総理は勝つための時期を選んだのだと。

 実際、選挙のライバルとなる最大野党・民進党は、幹事長人事の失敗と細野豪志前幹事長など離党者続出で支持率が低迷している。都議選で大勝した小池都知事一派の国政新党は綱領も選挙準備もまだ整わない。

 幸い、森友学園、加計学園をめぐる不公正行政の疑惑などで警戒ラインの30%台前半まで急落した内閣支持率も40%台まで回復、支持が不支持をわずかだが上回ってきた。支持率は北朝鮮がミサイルを一発発射するごとに1%回復するといわれている。安倍総理は北朝鮮による核実験・ミサイル発射による国民の不安に付け込んで支持率を回復させていると解説する向きもあるが...。

 私利私欲といわれようとかまわない。総理は今こそ、選挙に打って出て勝ち、自らの政権を延命させる千載一遇の好機だと考えているのが本音だろう。

 安倍総理はそれでよいかもしれない。しかし、一般の国民には何のために投票場に向かうのか、その理由が見当たらない。何を判断基準に候補者を選ぶのか、その選択基準が分からない。政権は北朝鮮からミサイルが襲いかかってくるとJアラートを広範囲に鳴らし国民の恐怖をあおっている。その北朝鮮の脅威の最中に総選挙という政治的空白をつくる総理の神経を疑う国民もいるだろう。


総理の急造「解散の大義」は野党民進党・前原代表案のパクリ

 安倍総理といえども、さすがにそんな国民の疑問を無視して選挙に勝てると思っていないだろう。なぜ解散総選挙を行うのか、何らかの「理屈付け」を行うに違いない。その一端が安倍シンパのマスコミとされる読売新聞に載った。

 読売新聞9月18日朝刊は、「消費税率10%への引き上げ時の増収財源の使い道について、国の借金返済から幼児教育無償化など子育て支援の充実に変更することを争点に掲げる」「自衛隊の根拠規定を明記する憲法改正も訴える」といち早く書いた。翌19日までに同じ内容の争点(解散の大義=理屈付け)を毎日、朝日、日経各紙も相次いで報じている。

 急造りであれ、ないよりましだが、「消費増税の使途変更」という公約は前原誠司代表が今回の民進党代表選挙で掲げた公約のパクリ(盗むの隠語)だ。安倍総理は男・女、正規・非正規の雇用格差是正、同一労働同一賃金、子育て支援、教育の無償化など旧民主党以来の野党公約を平然とパクリ、権力保持の道具にしてきた。今回も同じパクリを繰り返して恥じることがない。

 ついでに民進党に一言いっておきたい。国民が支持しない最大の理由は、党が決めた方針に逆らい党内抗争の果てに離党、脱党を繰り返す体質にある。民主党政権時代の小沢一郎しかり、今回の細野豪志しかりだ。自民党には保守からリベラルまで様々な議員を抱えるが、その差異をうまく丸め込む技術がある。

 民進党は何を血迷ったのか、鳩山政権以来3年間の「失政」の反省を繰り返し語り、失敗が「政策」にあったかのような印象を国民に与えてしまった。政策が間違っているのなら安倍総理が旧・民主党公約のパクリを繰り返すはずがない。   

 民進党は安倍総理の「パクリ常習」に対し一言も抗議せず、政権担当時の「失敗」を詫びるだけの政党に堕してしまった。いくら失敗しても国民を偽っても、本心から詫びることのない安倍総理の爪の垢でも煎じて飲んだらどうか。


一石三鳥の「消費増税の使途変更」公約、民・共選挙共闘も崩壊

 「消費増税の使途変更」とは、5%から10%への消費増税に伴う税収増加約14兆円のうち国の借金返済など財政健全化に11.3兆円、社会保障の充実に2.8兆円振り向けるとした自民・旧民主・公明の3党合意の変更を意味する。

 2019年10月実施の2%増税の増収分5兆円の使途ついては、従来の3党合意から離れ教育の無償化など社会保障の充実に重点を置くというのが安倍総理の公約になる。

 しかしこの公約はアベノミクスの行き詰まりの結果でしかない。税収増加の半分以上を占める3%消費増税の効果はすでに一巡した。4年半も日銀に膨大な国債を買い込ませても成長率は高まらず自然増収は止まりつつある。このままではアベノミクスの目玉政策となった教育の無償化の財源が出てこない。こども保険案も教育国債発行案も批判が多く財源にはなれない。穴埋め財源には前原民進党代表案を盗むに然りというわけだ。

 さらに安倍総理は、消費増税分の使途変更を口実にして国際公約である2020年基礎的財政収支の黒字化目標を平然と放棄、先延ばしするに違いない。2%消費増税分を借金返済に回しても8.2兆円の基礎的財政赤字がある計算だったから、総理はどうあがいても実現できない赤字解消の国際公約を変更する絶好の機会を手にすることになる。

 それだけではない。「消費税の使途変更」の新公約は、総理が最も恐れる民進党・共産党の選挙共闘にくさびを打ち込む副次効果がある。民進党の前原代表は使途変更付きだが消費税引き上げに賛成、共産党は消費税引き上げに絶対反対だ。安保外交の基本政策だけでなく内政の基本政策でも民進・共産は選挙協力できなくなる。民進党と共産党が統一候補を立てれば60議席前後の小選挙区で自民から議席を奪えるという調査があったが、水泡に帰すだろう。

 安倍総理は、前回の総選挙では「消費増税の先送り」を公約して選挙に勝って新安保法制、共謀罪を強引に成立させた。今回は「消費増税の使途変更」を公約して選挙に勝ち国民の主権を制限する「非常事態条項」、憲法9条の改正(自衛隊の追認)に走ることになる。

 「野党なき総選挙」の結果、自公は再び圧勝、えこひいき行政を含む何でもあり、少数意見無視の「安倍一強」政治が復活する...。気が滅入るのは小生だけだろうか。

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QuonNetコミュニティ | 2017年9月19日 12:30

この記事へのコメント

1. Posted by Anonymous 2017年9月19日 17:33

大西先生にお願い:弱みにつけこんだ「火事場泥棒選挙」とでも命名しましよう。政治家の欲望の底辺を垣間見るようで虫酸が走ります。

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プロフィール
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大西良雄(経済ジャーナリスト)
上智大学卒業後、東洋経済新報社に入社。記者を経て「月刊金融ビジネス」、「週刊東洋経済」編集長を歴任。出版局長、営業局長の後、常務第1編集局長を最後に独立。早稲田大学オープンカレッジ講師のほか講演・執筆活動。
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