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大西良雄ニュースの背後を読む

2017年9月 5日 10:02

北朝鮮はどのような外交的解決を求めているのか

(2017年9月5日筆)

 北朝鮮による6回目核実験をめぐって、より威力が強まった水爆型だとか、核弾頭のICBM搭載も可能になったとか、それがワシントンにも1年後には届くようになるとか、軍事上の報道ばかりが目立ち、恐怖があおられている。テレビでは軍事評論家が大活躍だ。


北朝鮮もアメリカも戦争より外交的解決を望んでいるはずだ

 しかし戦争は外交の延長、外交的解決の最後の手段と言われる。北朝鮮による核・ミサイルという軍事的手段は、外交的解決を求めるための手段であり戦争を自己目的化したものではないはずだ。

 北朝鮮はアメリカ本土に届く核弾頭搭載ICBMを完成させていたずらにアメリカを核攻撃したいと思っているわけではないだろう。金正恩の北朝鮮は核弾頭搭載ICBMを保有することで対米交渉力を高め、来るべき米朝交渉でアメリカから金体制に有利となる条件を引き出したいと思っているに違いない。

 一方、アメリカが米韓合同軍事演習を繰り返し、日本海に原子力空母を派遣、演習と称してB1戦略爆撃機を飛ばすのも、石油禁輸に至る経済制裁、経済封鎖という圧力を加えるのも、北朝鮮を外交交渉の場に引き出し日米韓に対する核・ミサイルの脅威を取り除くためのものだろう。北朝鮮への圧力強化は戦争を避けるための懸命な外交手段だと理解したい。

 安倍総理は「対話のための対話に意味はない」と繰り返し、対北朝鮮への圧力強化に奔走しているが、最後は対話(外交)へ向かうための奔走なのだろう。


北朝鮮が求めるのは「金体制の存続保証」だけか

 しかし、肝心の、対話(外交)すべき内容が各種報道を見ても皆目わからない。水面下で米朝交渉は行われているのだろうが、金正恩委員長からも、トランプ大統領からも安倍総理からも交渉内容は明らかにされていない。

 これまで交渉内容をうかがわせる動きはあった。この春先、トランプ政権は北朝鮮が核・ミサイル開発を放棄すればアメリカは「4つの約束」を実行する用意があるといったと報道されたことがある。

 その内容は北朝鮮が核・ミサイル開発を放棄すれば、(1)北朝鮮の体制転換は求めない、(2)金正恩政権の崩壊を目指さない、(3)北緯38度線を越えて侵攻することはない、(4)朝鮮半島の再統一を急がない、というものだった。

 この「4つの約束」から推察すると、北朝鮮は「現体制(金正恩体制)の存続保証」を求めているということになる。

 しかし、トランプ政権が「4つの約束」を提示しても北朝鮮は交渉に乗ってこなかった。なぜだろうか。金正恩の北朝鮮には、核・ミサイル保有こそ「現体制存続」の最大の保証であり、これを放棄すればその後、米韓は金体制の転覆を狙うに違いないという疑心暗鬼があるのだろう。

 この金委員長の疑心暗鬼も推測でしかない。報道陣はだれも、金正恩氏の本心を聞いたことがないし極秘裏の米朝交渉内容を十分取材しているわけでもない。すべてはマスコミや専門家の推測の範囲を出ないが、金委員長はトランプ政権に北朝鮮が核保有国であることを認めさせ、同じ核保有国として米国と対等の交渉を進めようとしているという報道もある。

 北朝鮮は対等の米朝交渉によって、米朝平和条約を結んで朝鮮戦争以来の戦争状態に終止符を打つ一方、(1)アメリカに対し在韓米軍の撤退ないし縮小を求める、(2)経済封鎖を解かせるだけでなく多額の経済援助を引き出す、という交渉を望んでいるといわれている。

 トランプ氏の外交指南役と言われるヘンリー・キッシンジャー氏(ニクソン、フォード政権の大統領補佐官・国務長官)からは「北朝鮮の核放棄と在韓米軍の撤退を結び付けた交渉の提案も出ている」と韓国外国語大学ユン・ドクミン教授が指摘している(読売新聞9月4日朝刊)


アメリカに核保有容認論。だが北朝鮮の核保有は日韓、中ロへの脅威

 しかし北朝鮮が最大の交渉材料であり金体制存続の保証でもある「核保有国の地位」を放棄することはあり得ないという観測のほうが強い。これを受けてか、アメリカの中からはスーザン・ライス氏(オバマ政権の安全保障担当補佐官)のように「北朝鮮の核保有を容認すべきだ」という意見も出始めた(朝日新聞9月4日朝刊)。

 ユン教授も「正恩氏が賢明であるなら、ICBMの開発を放棄する代わりに核武装についての黙認を米国から得るため、平和協定を結ぼうとするだろう」と述べている。アメリカ本土に届くICBM開発さえ放棄すれば北朝鮮の核はアメリカの直接の脅威にはならない。北朝鮮はICBM放棄を対米交渉の切り札にするのではないかという観測だ。

 しかしアメリカによる北朝鮮の核武装容認論は、日本・韓国ひいては中国・ロシアを含む北朝鮮の近隣諸国には大きな脅威となる。脅威を受ける日韓は対北朝鮮の核抑止力を名目とする核武装を急ぐことになりかねない。しかし日韓の核武装は、その一方で中ロに対する脅威になるだけで世界の核拡散に結び付くことになりかねない...。

 北朝鮮の核武装を容認せず、日本と日本人も巻き込まれる米朝戦争を避けるための方策はないものか。北朝鮮問題の交渉による解決を主張している中国とロシアにその方策がないものか。

 世界のリーダーを自負する安倍総理には米韓の尻を叩いて北朝鮮への圧力強化を主張するだけでなく、トランプ氏にも中ロにも強く働きかけ「交渉による解決」の方策を引き出す最大限の努力をしてほしい。それに成功すれば安倍総理はノーベル平和賞の受賞者になれるかもしれない。

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QuonNetコミュニティ | 2017年9月 5日 10:10

この記事へのコメント

1. Posted by kodera etuko 2017年9月10日 13:11

北は朝鮮半島統一を目指していると思います。
大国の意志で、分断された第2次大戦後の3カ国のうち、朝鮮半島だけがまだ、統一していません。ベトナムは北により統一しました。朝鮮半島も可能性が高いのは北による統一でしょう。

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プロフィール
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大西良雄(経済ジャーナリスト)
上智大学卒業後、東洋経済新報社に入社。記者を経て「月刊金融ビジネス」、「週刊東洋経済」編集長を歴任。出版局長、営業局長の後、常務第1編集局長を最後に独立。早稲田大学オープンカレッジ講師のほか講演・執筆活動。
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