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大西良雄ニュースの背後を読む

2017年7月

2017年7月18日 10:23

「支持なし(無党派)層」が65%強 ――安倍一強の受け皿を築く時

(2017年7月18日筆)

 安倍内閣の支持率低下が止まらない。都議会選後の7月9日までに実施された世論調査では安倍内閣の支持率は読売新聞36%、NHK35%、朝日新聞33%,NNN(日本テレビ)31.9%と政権維持の危機ラインとされる30%に急接近した。不支持率も軒並み50%前後に急上昇した。


ついに危機ラインの30%を割り込んだ内閣支持率

 7月7日~10日に実施された時事通信による最新の世論調査では内閣支持率は29.9%とついに危機ラインの30%を割り込んだ。その後、15日~16日の実施されたANN調査でも内閣支持率29.2%と割り込んでいる(下表)。安倍内閣の支持率は戦後最低となったトランプ大統領の直近の支持率(36%)をも下回った。この調査結果に安倍内閣は震撼したに違いない。

2017年7月世論調査で安倍内閣の支持率が大幅低下、30%割れも
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 このうち時事通信の世論調査は個別面接方式で読売、朝日などの電話調査とは違い精度が高いといわれている。その時事調査の7月世論調査によると、2か月前の5月調査に比べ「支持なし(無党派)層」がさらに増加、実に65.3%に達している。「支持なし層」は歴史的な高率、大勢力となった。

 この2カ月で、通常国会で繰り返された森友学園、加計学園、共謀罪をめぐる安倍総理と自民党による反対論敵視、異論無視の強引な国会運営に嫌悪感が高まり自民支持層ですら安倍政権に愛想を尽かしたようだ。自民党のコア支持層の20%~30%が「支持なし層」に転じたとみられる(下表)。

自民支持が急落、支持なし(無党派)層が急増―時事調査では支持なしが65%超
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「とりあえずの受け皿」を得て「支持なし層」の山が動いた

 7月2日の東京都議選では「都民ファースト」という安倍一強に対する「とりあえずの受け皿」を得てこの巨大化した「支持なし層」の山が動いた。その結果、自民党は歴史的惨敗を喫した。

 今回の都議選は国政の代理選挙として戦われた感がある。その党派別投票数(下表)をつぶさに見ると、今後の国政選挙をめぐる自民党に対抗する「受け皿」勢力への期待が浮かび上がる。

都議選・得票大幅減の自民・維新と民進―受け皿は都民ファと無所属、共産
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 今回の都議選では自民党とその補完勢力の維新が約69万票減らすと同時にかつての受け皿政党・民進党が30万票減らした。国会の与党の主軸と野党の主軸がともに得票数を減らした。その一方で「とりあえずの受け皿」となった「都民ファースト」とそれに近い「無所属」が214万票も得票を増やした。

 都民ファーストなど「とりあえずの受け皿」勢力は、投票率上昇に伴う得票総数の増加分(106万票)と自民・維新、民進の既成与野党の得票減約100万票のすべてを吸収し大勝利したことになる。ちなみに投票率は13年6月選挙の43.50%から51.28%へ上昇した。


「受け皿」は安倍総理の国権優先、分配軽視に対抗する旗を

 与野党の既成政党が大敗、できたばかりの新党が地滑り的勝利を収める構図は、6月に行われたフランスの国民議会選挙に酷似している。選挙直前に創立されたマクロン新大統領の新党「共和国前進!」は既成政党である共和党、社会党を打ち負かし、577議席中308議席を獲得、過半数を大きく上回った。対して与党・社会党系は283議席から30議席へ泡沫政党並みに転げ落ちた。

 「共和国前進!」の候補者は既成政党からの鞍替え組も少なくなかったが中心は政治経験の少ない新人たちだった。小池百合子新都知事の「都民ファースト」にも民進党、自民党からの鞍替え候補者が含まれていたが多くは選挙経験のない新人だった。マクロンは社会党、小池氏は自民党、いずれも与党を飛び出し新党をつくった。国政と地方の違いはあれ、既成政党を忌避した点はよく似ている。

 日本の最大勢力である「支持なし層」は、国政レベルでも手垢がついていない清新な政治家、政党を求めている。都議選の投票結果はそれを明らかにした。こうした清新な「受け皿」を求める「支持なし層」の期待を取り込む与野党再編が始まると予想される。

 その「受け皿」の旗は、安倍総理とその周辺による歴史修正主義、国権・軍事優先、成長至上・分配軽視、金融放漫・財政均衡無視に厳しく対抗する旗になるはずだ。それを新保守リベラルと呼ぶか、中道リベラルと呼ぶか。いずれにせよ、遅くとも来年12月には衆院選挙が実施される。それに向け、かつての日本新党や新党さきがけのような清新な「受け皿」が誕生することを「支持なし層」の一員として小生は大いに期待する。

2017年7月 3日 12:20

安倍一強への嫌悪感が噴出――都議選で自民が歴史的惨敗

(2017年7月3日筆)

 東京都議選挙で自民党が現有57議席から34議席減らし過去最低だった38議席を大きく下回る23議席にとどまった。自民党は歴史的な惨敗を喫した。一方、小池都知事の「都民ファーストの会」は50候補中49候補が当選、無所属候補の追加公認を含め55議席を占め都議会第一党となった。


強引な国会運営と後進国顔負けの縁故主義に不満が積み上がり

 この結果をもって、「古い議会を新しく」と訴えた都民ファーストの会に「風が吹いた」と分析するのは誤りだ。都民の安倍政権に対する嫌悪感がここへきて一挙に表面化、「安倍一強」に逆風が吹きすさび自民党が敗れたといってよい。

 改めて言うまでもないが、特定秘密保護法、安保法制、共謀罪をめぐって強引な国政運営が繰り返された。いずれも国論を2分するテーマだったが、反対意見は安倍政権に完全無視された。こうした不満が選挙民に積み上がっていた。

 さらに、後進国顔負けの縁故主義(ネポティズム)への嫌悪だ。まず森友学園、加計学園をめぐる安倍総理による支持者、友人への「えこひいき疑惑」がある。さらに総理側近への優遇も反感を集めた。総理は度重なる失態にもかかわらず稲田防衛相を罷免しない、加計学園「選定疑惑」の萩生田官房副長官、加計学園からの闇献金疑惑の下村幹事長代行(元文科大臣)を断罪しない。稲田、萩生田、下村の三氏は総理の側近中の側近だ。「側近優遇」も目に余ると映った。


「安倍総理の他に代わる人」はとりあえず小池百合子氏

 前回も述べたが安倍内閣の支持率が高かった最大の理由は「他に適当な人がいない」「他に代わる人がいない」というものだった。選挙民は、「他に適当な人」「他に代わる人」が出てくれば安倍総理を取り換えることも厭わないという姿勢で一貫していた。量的緩和を含むアベノミクスはあまり評価されていない。

 「他に代わる人」は野党第一党の民進党であるべきだったが、民進党から魅力的なリーダーが出ない。そればかりか相変わらず内紛が絶えない。その弱みを突いて安倍総理は民進党(旧民主党政権)に対する「こきおろし・いびり」作戦が展開してきた。それが奏功して民進党は「他に適当な人」になれなかった。

 だが、今回の都議会選挙では都政の小池都知事が国政の民進党に代わって「他に代わる人」「他に適当な人」になった。都政と国政は異なるし、選挙民は小池都知事や都政ファーストの会の政治能力に多少疑問を抱いている。しかし、安倍総理への批判の受け皿にとりあえずなってもらいたいと思ったに違いない。


次の衆院選でも自民党が危うい―考えられる3つの仮説

 こうした中、来年12月の任期切れまでに予想される次の衆院選に対する影響を考えると、都議選の結果にはいくつか気になる点がある。ひとつは公明党が自民党と離れ都民ファーストと組んで都議選を戦った結果のことだ。

 これまで公明党票は当選ラインにある自民党候補者を支える役割を果たしてきたが、今回はこれがなく当選ラインすれすれの自民党候補者の落選につながった。公明党票のかさ上げを失った自民党の議席数を知る試金石になった。

 もうひとつは日本共産党が大健闘したことだ。共産党は複数選出区で最終議席をめぐって公明票の支持を失った自民党と競り合い、競り勝って19議席(2議席増)を獲得、自民党の23議席に次ぐ勢力になった。都議会では共産党は自民党と肩を並べる政党になったのだ。

 都民はよく見ていた。安倍総理の傲慢な国政運営に最も精密で、厳しい批判を投げかけていたのは共産党だった。それへの共感が議席増につながったようだ。朝日新聞の出口調査によると無党派層の投票先は都民ファースト35%、共産党17%、自民党13%、民進党10%、公明党8%だった。無党派層では共産党と民進党への投票率が自民党と公明党を上回った。

 民進党は現有7議席を2議席減らし5議席になった。ただ民進党から立候補予定だった15名が「都民ファーストの会」から公認ないし推薦を受けて立候補、そのほとんどが当選している。民進党という劣化した政党名を衣替えするだけで旧民進党議員が当選できたという点にも注意が必要だ。

 次の衆院選を占ううえで、3つの仮説を考えてみた。次の総選挙で、まず都民ファーストの会あるいはかつての日本新党のような新党が立ち上がり民進党と選挙協力(あるいは民進党員が新党に移籍)すれば、結果はどうなるか。第2に、新党とではなく民進党と共産党が選挙協力して戦えば、どうなるか。第3に国政レベルでも公明党票が自立、自民党議席の下支えを放棄したら、どうなるのか。

 以上3つの仮説が実現したら、いずれの場合でも自民党議席の大幅な減少は間違いない。場合によっては自民党過半数割れをもたらしかねない。そうなると安倍3選はあるのか、アベノミクスは続けられるのか、安倍改憲はできるのかが大いに問われる。

 どうやら都議選は、「安倍一強」に絡めとられた異様な安定政権の今後を揺るがす結果となったようだ。
プロフィール
ニックネームさん
大西良雄(経済ジャーナリスト)
上智大学卒業後、東洋経済新報社に入社。記者を経て「月刊金融ビジネス」、「週刊東洋経済」編集長を歴任。出版局長、営業局長の後、常務第1編集局長を最後に独立。早稲田大学オープンカレッジ講師のほか講演・執筆活動。
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