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大西良雄ニュースの背後を読む

2017年6月

2017年6月19日 15:26

安倍総理を信頼できない人が増え、内閣支持率が急落

(2017年6月19日筆)

 安倍総理が自画自賛する高い支持率に異変が起きたのは5月26日~28日に実施された北海道新聞の「全道世論調査」からだった。4月の前回調査に比べ支持率が12%も急落、41%となった。一方、不支持率が12%急騰、57%となり支持率を16%も上回る結果となった。

 北海道新聞は「組織犯罪処罰法改正案(注・いわゆる共謀罪法案)の衆院採決を強行したことや学校法人・加計学園の獣医学部新設をめぐる問題が影響したとみられる」と支持率急落の原因を解説した(6月1日付)。


内閣支持率が急落、支持が不支持を上回った世論調査も

 伝統的にリベラル色が強い北海道での支持率急落だから...と、タカをくくっていた与党関係者もいたに違いない。しかし、共謀罪法案が予算委員会採決を省略し参院本会議で強行採決された後、6月16日、17日から18日にかけて実施された各種の世論調査でも安倍内閣の支持率は急落を続けた(下表)。

安倍内閣の支持率――10%の急落(6月16~18日世論調査、最下欄は5月比下落率)
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ほかにNNN(日テレ)=支持39.8%(- 6.3)、不支持41.8%(+5.4)

 最大部数を誇る読売新聞では5月調査に比べ支持率は12%下落、逆に不支持率は13%も上昇した。読売新聞は安倍総理が自らの憲法9条での自衛隊の明記発言をめぐって野党に問われ「詳しくは熟読してほしい」と述べた新聞だ。安倍シンパの新聞として名高い読売新聞の世論調査で支持率が急落したのだ。

 支持率が1カ月で10%以上急落すれば黄信号、支持率と不支持率が逆転し支持率が30%を下回れば政権に赤信号が灯ったとされる。発行部数3位の毎日新聞の世論調査では内閣の不支持率が支持率を上回り、支持率は36%まで下がった。赤信号寸前だ。

 安倍内閣に批判的な毎日新聞の世論調査とばかり言ってはおれない。安倍総理に近いとされる読売新聞系列の日本テレビ(NNN)でも不支持率が支持率を上回り、支持率は40%を下回った。


今回は「首相が信頼できないから」が不支持理由のトップ

 第2次安倍内閣発足後、不支持率が支持率を上回ったのは2015年夏から秋にかけての一回だけだ。この時は集団自衛権など憲法解釈や安全保障という政策をめぐる反対論の高まりが不支持率の急騰となった。

 今回も国民の人権やプライバシーに関わる共謀罪法案という政策の賛否で世論が2分され支持率が急落した面はあるが、それとは別に安倍総理への信頼の大きな低下という新たな原因が付け加わった。これが安倍内閣の今後の支持率に影響を与えるに違いない。

 日経新聞も安倍政権から比較的中立の姿勢をとるメディアだが、その世論調査によると内閣不支持の理由の第1位は「政府や党の運営の仕方が悪い」だった。公認権をテコに異論を許さない党内運営、官僚を「忖度の塊」にする官邸の強引な行政運営、さらに安保法制に続く共謀罪をめぐる強引な国会運営などに不安を感じる国民が増えているのだろう。

 さらに、読売新聞の調査では「首相が信頼できないから」という理由が48%と内閣を支持しない理由のトップになった。第2次安倍内閣発足以降、最も高いい水準になったという。9日~12日に行われた時事通信(中立的メディア)の世論調査でも内閣を支持しない理由のトップは「首相が信頼できない」だった。

 総理夫人が名誉校長を務めた森友学園への国有地8億円値引き疑惑、総理「腹心の友」が経営する加計学園の獣医学部新設をめぐる「総理ご指示」疑惑が総理への信頼急低下に大きく影響したと思われる。


「他に代わる人」がいれば威張る、おごる安倍総理は要らない?

 安倍総理への信頼低下に関して、中谷元・前防衛大臣がうまい表現をしている。中谷氏は「もりそば(森友学園)、かけそば(加計学園)、忖度したのかという問題がある。政治に公正性がなければ国民の理解は得らえれない」と述べた(朝日新聞6月3日朝刊)。

 そのうえで、中谷氏は安倍総理に「あいうえお」の5文字を贈りたいといった。「あ」は焦らず、「い」は威張らず、「う」は浮かれず、「え」はえこひいきせず、「お」はおごらず、の5文字を贈るといった。正鵠を得た忠告だ。

 安倍総理が「浮かれ」、選挙に弱い少数党と人事を握られた官僚に対し「威張りちらし」、少数者の批判など蹴散らすことができると「おごる」、お友達や支持者、すり寄る官僚、事業家、ジャーナリズムを「えこひいきする」ことができるのは内閣支持率が高かった(次の選挙にも勝てる)からだ。支持率が下がれば威張ることもおごることも、えこひいきすることもできなくなる。

 これまで内閣支持率が高かったのは、安倍総理の手腕が高く評価されたわけでも彼の政策が積極的に支持されたためでもない。各種世論調査を調べればわかるが、「他に適当な人がいないから」「他に代わる人がいないから」「他の内閣よりよさそうだ」が支持する理由のトップをいつも占めてきた。

 世論は、安倍総理に代わる適当な人が見つかり、安倍内閣よりましな内閣ができそうなら、おごり、威張り、少数意見を踏みにじる安倍総理などいつ辞めていただいても差し支えないといっているように思える。

 小池百合子都知事は、世論が「他に適当な人」「他に代わる人」と思い込みたい政治家の役割を担わされているといえよう。その意味で7月2日に迫った東京都議会選挙で小池都知事の「都民ファーストの会」がどの程度の議席を占めるか、それが安倍総理の支持率の今後を占う重大な試金石になる。

2017年6月 5日 13:51

なぜ官僚たちは「巨大な忖度の塊」になるのか

(2017年6月5日筆)

 安倍総理の腹心の友が経営する加計学園・岡山理科大学の獣医学部新設・認可をめぐる「えこひいき」疑惑は、前川喜平・文科省前事務次官の証言によってさらに深まった。と同時に行政における「官邸主導」の実態が明らかにされた。


猛威を振るう「官邸主導」が生んだ?「総理への忖度」

 かつて「官僚主導」か「政治主導」か、が問われた。省益あって国益なし、国益をないがしろにして官僚が自らの属する省庁の利益(省益)のために行政を動かそうとするのが官僚主導だとされた。これに対抗して国民に選ばれた政治家が国益のために行政を動かすのが政治主導だという。

 しかし官僚が省益だけで動くというのは言い過ぎだ。官僚の中には国民に公平に仕える公僕として働いている人も少なくない。一方、政治家が国益を優先して公平に行政を主導するなどとは言い切れない。政治家の中には、自らの当選という利益のために選挙区と特定の支持者の利益のために働く者も少なくない。

 官僚を政治家が制御するという政治主導が行き着いた先が「官邸主導」だ。安倍内閣になってからその官邸主導が猛威を振るっている。強い官邸主導によって抑え込まれた結果、加計学園理事で元内閣官房参与(ユネスコ・世界遺産担当)の木曽功氏の言葉を借りれば、各省庁の官僚たちは「巨大な忖度(そんたく)の塊」(朝日新聞6月1日朝刊)になってしまったのではないか。


官邸主導の主役は総理官邸5階に執務室を構える6人

 官僚たちに「総理への忖度」を余儀なくさせるもとになった官邸主導について少し説明しよう。官邸とは内閣総理大臣が執務する「総理(首相)官邸」をいう。大統領が執務するアメリカの「ホワイトハウス」のようなものだ。

 千代田区永田町にある総理官邸の5階には、総理執務室のほかに総理を補佐する総理秘書官、総理補佐官、総理の女房役である内閣官房長官、それを補佐する官房副長官などの執務室がある。官邸主導とは総理と官房長官、官房副長官など総理官邸5階に執務室を持つ総理スタッフが主導する行政を意味するようだ。

 官邸に執務室を持つ主要スタッフ、安倍晋三総理と菅義偉官房長官、事務方トップの杉田和博氏(警察庁出身)、政務担当の萩生田光一氏(衆院議員)、野上浩太郎氏(参院議員)の3官房副長官、今井尚哉総理秘書官(経産省出身)の6人は「毎日のように10~20分ほど顔を合わせ、官邸内の根回しを行っている」(日経新聞4月19日朝刊)という。

 この官邸の6人はあらゆる行政課題の相互確認を行ない、それが総理や官房長官、与党の国会対策委員長などの発言に反映されているに違いない。加計学園をめぐる「えこひいき」あるいは「忖度」疑惑に対する菅官房長官の「そうした批判は全く当たらない」という決まり文句も6人で打ち合わせ済みなのだろう。


総理と官房長官に人事を握られ反抗できない幹部官僚

 官僚たちの「総理への忖度」が醸成されるようになったのは、安倍総理下で2014年5月に「内閣人事局」が創設されてからだといわれている。内閣人事局の創設による各省庁から官邸への人事の移行で官僚たちは政治主導への抵抗力を失ったという説が有力だ。

 内閣人事局は内閣官房の内部組織で審議官級から局長、事務次官まで各省庁の幹部職員約600名の人事を担う。3人の官房副長官のうちの一人、政務担当(政治家)の萩生田副長官が局長だ。各省庁から上がってきた人事評価をもとに内閣人事局が適格性を評価し幹部候補者名簿を作る。そこから任命権者である各省庁の大臣が候補者を絞り込み、総理と官房長官と協議して幹部人事を決めることになる。

 かつて幹部職員の人事は任命権者である各省庁の大臣と当該事務次官らが相談して決められた。総理など官邸はそれを追認するものとされた。だが現在は内閣人事局に人事情報が集約され総理と官房長官、つまり官邸の意向に沿う形で幹部登用が行われているという。逆に言えば官邸の意向に反する幹部は冷遇されるケースがあるということだ。

 その例として、毎日新聞6月3日朝刊は「2015年夏の総務省人事で高市早苗総務相がある幹部の昇格を提案したが、菅義偉官房長官が『それだけは許さない』と拒否」、断念に追い込まれたと紹介している。この幹部は菅氏が主導したふるさと納税創設をめぐる規制緩和に反対していたという。

 この例は氷山の一角だろう。他にも安倍総理や菅官房長官の意向に沿わない、反対する人物とみなされ、任命権者である各省庁大臣の推薦があっさり退けられたケースがたくさんあるのではないか。

 自ら国益に叶う正論だと思っても総理や官房長官のご意向に歯向かえば、昇格どころか左遷される。そうなりたくなければ官僚は官邸には面従腹背するしかない。さらにすすめば、正論を捨て、総理、官房長官のご意向を忖度して平然と「黒を白と言い募る」所業に出て恥じない官僚となる...。


幹部官僚の行動を調べ上げ、いざとなれば人格攻撃?

 官邸は官僚に対してさらに過酷だ。それが垣間見えたのが菅官房長官の前川前事務次官の「出会い系バー通い」をめぐる人格攻撃だ。前川氏はこの件で昨秋、杉田官房副長官から注意を受けていたという。恐いのは前川氏の極めてプライベートな事柄を杉田官房副長官が知っていたと言う事実だ。

 事務方トップの杉田副長官は警察庁出身で、公安警察を管轄する警備局長、日本のインテリジェンス(諜報)機関である内閣情報調査室(内調)の室長、これを管轄する内閣官房の内閣情報官などを経て安倍内閣の官房副長官になった人物だ。信じたくはないが、警備局や内調などを動かし前川氏の「出会い系バー通い」を突き止めたのでは...。内閣人事局による幹部職員の適格性評価などにも公安情報が使われているのでは...。そういう疑念を消し去ることができない。

 幹部職員ではないが、韓国釜山の総領事だった森本康敬氏(外務省のノンキャリア)が任期途中で事実上更迭された。その理由が「知人らとの会食の席で(領事館前の慰安婦像設置に関する)自らの一時帰国を決めた官邸の判断を批判したため」と各紙が報じている。官邸は知人との会食での森本氏の会話をどういう手段で知り得たのだろうか、不可解だ。

 信じたくはないが、官邸が警察官僚らを使って他官庁の幹部官僚の挙動を調べ上げ監視しているとすれば...。あるいは前事務次官・前川氏に対するように、いざとなれば激しい人格攻撃を加えて証言つぶしを図ることも辞さないとすれば官僚は「巨大な忖度の塊」にならざるを得ないと思うが、どうか。
プロフィール
ニックネームさん
大西良雄(経済ジャーナリスト)
上智大学卒業後、東洋経済新報社に入社。記者を経て「月刊金融ビジネス」、「週刊東洋経済」編集長を歴任。出版局長、営業局長の後、常務第1編集局長を最後に独立。早稲田大学オープンカレッジ講師のほか講演・執筆活動。
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