QuonNet(クオンネット) まなぶ・つながる・はじまる・くおん




大西良雄ニュースの背後を読む

2017年3月

2017年3月21日 14:09

若年層減少がもたらした過去最高の就職内定率

(2017年3月21日筆)

 文科省・厚労省調べによると、今年3月卒業の大卒就職内定率(2017年2月1日現在)が90.6%となり2000年の調査開始以来の最高を記録した。高校生の就職内定率も94.0%と24年ぶりの高水準となったという。


若年人口は10年間で14.6%の大幅減、長時間労働規制も事態を加速

 実質経済成長率は1991年度~2015年度平均で0.9%(安倍政権下の歴年4年間でも1%)にとどまっている。にもかかわらず大卒、高卒内定率が記録的な高さになっているのは労働力候補である若年人口の急減が最大の原因だ。

 15歳から29歳までを「若年層」とすると、「若年層」はこの10年間で318万人、14.6%も減少している。過去の少子化の影響が顕在化したことになる(総務省「人口推計」)。

若年層(15歳~29歳)は10年間で318万人減少(単位千人)
hyo1.JPG
(注)総務省統計局「人口推計」、006年は10月、2016年は9月確定値 

 15歳~19歳の人口減少は高卒の就職内定率、20歳~24歳の人口減少は大卒の就職内定率の引き上げの原因になった。25歳~29歳の人口減少(労働力不足の深刻化)は高卒、大卒など新卒の採用熱に拍車をかける結果となったと思われる。

 日経新聞3月21日朝刊によれば、主要企業の来年2018年春の大卒の新卒採用計画は今17年春実績(見込み)に比べ9.7%増(文系6.0%増、理工系14.8%)、高卒は4.0%増が見込まれるという。若年人口の減少が続く中、高卒、新卒の就職内定率上昇の勢いは止まらないだろう。

 こうした状態を加速しそうなのは、年間720時間(月平均60時間)を残業時間の上限とする長時間労働規制だ。この規制が確実に履行されるようになれば従業員一人当たりの労働時間は確実に減少、労働生産性の向上がなければ同じ売上、生産を維持するには従業員数をさらに増やす必要がある。


採用意欲旺盛なサービス産業だが新卒はソッポ向く?

 採用意欲が強いのは製造業(17年春実績比6.7%増)より人手不足が深刻化している非製造業(同11.1%増)だ。なかでも「保育、介護を含む外食・その他サービス」(同29.3%増)、ドラッグストアなどその他小売業(16.5%増)、運転手の疲弊が進む陸運などが採用意欲旺盛だという(日経3月21日付け)。

 学生側の売り手市場が続く中、新卒の若者たちの間では賃金、労働時間、福利厚生など労働条件への要求が高まっている。採用意欲が高い保険、介護、外食、陸運などのサービス産業が労働条件面で優れているとは決して言えない。

 サービス産業は世界的に見ても労働生産性は低い。売り手の新卒の要求にこたえるのはサービス産業側の労働生産性引き上げのための体質改革が急務となる。それが実現できなければ、新卒にそっぽを向かれ慢性的な人手不足状態を甘受せざるを得ない。

2017年3月 6日 14:15

「右翼政商」森友学園に利用された?政治家と官僚たち

(2017年3月6日筆)

 安倍総理夫妻まで登場する国有地の格安払い下げ疑惑が国会を騒がせている。テレビの情報番組でも築地の豊洲移転問題、キム・ジョンナム(金正男)暗殺事件と並ぶ頻度で連日報じられ、視聴率稼ぎの目玉になってきた。下手をすれば政権の支持率低下を招きかねない状態だ。


証拠を示さず口先で「払下げは適正だった」と言われても

 なぜ国有地が8億円以上も値引きされたうえ異例の手続きで森友学園に払い下げられたのか、なぜ教育基本法に違反する教育を行いかねない学校法人の設立を認可しようとしたのか、そこに政治家の関与はなかったのか。鴻池祥肇参院議員の秘書が書いた「陳情整理報告書」が明るみに出てから国民の疑惑はますます膨らんできた。

 こうした疑惑に対し、国有地払い下げの責任者である麻生財務大臣は「払い下げ手続きに瑕疵はない。法令に基づき適正な手続きをした」の一点張りで払下げ価格に問題はないという。部下の佐川宣寿財務省理財局長も「隠れた瑕疵(産業廃棄物の存在)を含めて免責するという特約付きで適正に時価を反映した」と適正な払い下げを強調したうえで、「政治家の方々の関与は一切ございません」と断言している。

 払下げの当事者である財務省が、「手続きに瑕疵はない」「適正に時価を反映した」「政治家の関与は一切ない」と断言するからには、その根拠(証拠)があるのだろう。しかしその根拠(証拠)になる森友学園との交渉記録、財務省・国交省間の会議録などは売買契約後ただちに「破棄した」(佐川理財局長)という。

 証拠を示さず口先で「払い下げ価格は適正だった」と言われても納得できるはずがない。お上(政府)の言うことに嘘はない、国民はこれに従いなさいと言わんばかりの麻生財務相の傲慢な姿勢に抵抗感を覚える国民も少なくないだろう。


総理と総理夫人の名前まで利用した平成の天一坊

 疑惑劇の登場人物は豪華だ。政治家からはピンは安倍総理夫妻、鴻池参院議員、松井大阪府知事、キリは大阪府議、兵庫県議まで多士済々だ。官僚からは麻生財務相配下の財務省官僚(近畿財務局)という超エリートから石井国土交通相配下の国交省官僚(大阪航空局)、大阪府教育委員会まで多段階に及ぶ。登場人物は今後さらに増えていくに違ない。

 劇の主役は、国有地の格安購入を見事に成功させ、「瑞穂の國記念小學院」新設の一歩手前までこぎつけた森友学園の籠池泰典理事長だ。籠池氏は、安倍総理シンパの保守系政治団体「日本会議」大阪支部の運営委員(代表ではないという。日本会議も迷惑げだ)という肩書を持ち、系列幼稚園の園児に軍歌を謳わせ教育勅語を暗唱させ、「安倍首相がんばれ」と言わせた。

 籠池氏の「森友学園」は一時、安倍昭恵「総理大臣夫人」を名誉校長に担ぎ、この小学校を「安倍晋三記念小学校」とするとして寄付金を集めた。総理と総理夫人の名前を利用して「日本唯一の神道小学校」を設立しようと画策したのではないか。将軍・徳川吉宗のご落胤を騙り騒動を起こした江戸時代の「天一坊騒動」に似ている。名前が利用されたとすれば総理夫妻のわきの甘さが責められる。

 それはともあれ、かりに財務省がいうのが本当で「払い下げ価格に問題はない」という結論になれば、保守系政治家、知識人、官僚らを手玉に取った籠池理事長の大勝利ということになる。


保守系論壇人の講演で箔付け、総理の昵懇財界人の学園も被害に

 勝利への籠池氏の仕掛けは巧妙だった。第一段階は安倍総理シンパの「日本会議」の肩書と教育勅語を暗唱させる超保守教育を携え、系列幼稚園に著名講師を呼び込み、箔をつけることだ。

 森友学園の系列幼稚園に呼ばれ講演した著名人は安倍昭恵総理夫人、鴻池参院議員のほか保守系論壇誌に頻繁に登場する百田尚樹氏、青山繁晴氏(現参院議員)、竹田恒泰氏(明治天皇の玄孫)らだ。

 いくら講演料を払ったのか定かではないが、全国に私立幼稚園は7,076(2016年度)ある。その一つに過ぎない幼稚園にこれだけの講演者を呼びつける籠池氏の才覚は尋常ではない。一方、誇り高い保守論壇のこれら講演者には自らが籠池理事長の箔付けに利用されたという自覚はないようだ。

 最近分かったことだが、森友学園は大阪府に提出した設立申請の中で新設小学校は愛知県蒲郡市にある「私立海陽中等教育学校」への推薦入学枠を持っていると記載した。だがこれが全くのウソ、海陽側は「森友学園と話し合いをしたことは一切なく推薦入学の話は事実無根だ」と完全否定している。

 海陽学園は英イートン校に範をとった全寮制の中高一貫校として有名で、海陽中等教育学校の理事長はJR東海の代表取締役名誉会長・葛西敬之氏だ。葛西氏は安倍総理に最も近い財界人の一人として知られる(安倍政権は大型景気対策として葛西氏が推し進めたJR東海リニア新幹線に3兆円もの財政投融資を決めた)。

 こともあろうに籠池氏は、葛西氏の海陽学園から「推薦入学枠をもらっている」とウソの記載をした。籠池氏は葛西氏が安倍総理と昵懇の財界人であることを見抜き、推薦入学枠をでっちあげて小学校認可の材料にしたのだ。この一事をとっても籠池氏が保守人脈を利用し尽くした、質の悪い「右翼政商」であることがわかる。


「右翼政商」に手を貸した?滑稽で哀れな官僚たち

 滑稽で哀れなのは官僚らだ。有力政治家の介入を受けたせいなのか、安倍総理をはじめとする政治家の意向を忖度したためなのか、よくわからない。だが、わざわざ証拠を破棄し、「法には触れない、手続きに瑕疵はない」と言い募って国民の財産である国有地の格安払下げを黙認しようとしているのだ。

 それどころか官僚らはこの「右翼政商」の小学校開校に支援の手を差し伸べているかのような感すらある。官僚たちは、小学校建設に必要な資金のない森友側に対し、国有地払い下げの手続きや法律、事務管理についての合法的な抜け道を教えたのではないか。

 この森友学園疑惑は、会計検査院が調べたとしても、これに関する官僚の内部告発、あるいは地検特捜部の捜査がなければ真相解明には至るまい。結局、「瑞穂の國記念小學院」新設の認可延期、あるいは不認可決定による払下げ国有地の森友学園からの買戻しという決着を経て、事態はうやむやのまま収束することになりそうだ。
プロフィール
ニックネームさん
大西良雄(経済ジャーナリスト)
上智大学卒業後、東洋経済新報社に入社。記者を経て「月刊金融ビジネス」、「週刊東洋経済」編集長を歴任。出版局長、営業局長の後、常務第1編集局長を最後に独立。早稲田大学オープンカレッジ講師のほか講演・執筆活動。
月別アーカイブ
2017年6月
2017年5月
2017年4月
2017年3月
2017年2月
2017年1月
2016年12月
2016年10月
2016年9月
2016年8月
2016年7月
2016年6月
2016年5月
2016年4月
2016年3月
2016年2月
2016年1月
2015年12月
2015年11月
2015年10月
2015年9月
2015年8月
2015年7月
2015年6月
2015年5月
2015年4月
2015年3月
2015年2月
2015年1月
2014年12月
2014年11月
2014年10月
2014年9月
2014年8月
2014年7月
2014年6月
2014年5月
2014年4月
2014年3月
2014年2月
2014年1月
2013年12月
2013年11月
2013年10月
2013年9月
2013年8月
2013年7月
2013年6月
2013年5月
2013年4月
2013年3月
2013年2月
2013年1月
2012年12月
2012年11月
2012年10月
2012年9月
2012年8月
2012年7月
2012年6月
2012年5月
2012年4月
2012年3月
2012年2月
2012年1月
2011年12月
2011年11月
2011年10月
2011年9月
2011年8月
2011年7月
2011年6月
2011年5月
2011年4月
2011年3月
2011年2月
2011年1月
2010年12月
2010年11月
2010年10月
2010年9月
2010年8月
2010年7月
2010年6月
2010年5月
2010年4月
2010年3月
2010年2月
2010年1月
2009年12月
2009年11月
2009年10月
2009年9月
2009年8月
2009年7月
2009年6月
2009年5月
2009年4月
2009年3月
2009年2月
2009年1月
2008年12月
2008年11月
2008年10月
2008年9月
2008年8月
2008年7月
2008年6月
2008年5月
2008年4月
2008年3月
2008年2月
2008年1月
2007年12月
2007年11月
2007年10月
2007年9月
2007年8月
2007年7月
2007年6月
2007年5月
2007年4月
2007年3月
2007年2月
2007年1月
2006年12月
2006年11月
2006年10月
2006年9月
2006年8月
2006年7月
2006年6月
2006年5月
2006年4月

ページトップへ

カレンダー
<< 2017年04月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  
最新記事
安倍総理を信頼できない人が増え、内閣支持率が急落
なぜ官僚たちは「巨大な忖度の塊」になるのか
トランプの愚挙――科学技術予算の削減に米議会が反抗
M&Aに失敗した経営者と成功し続ける経営者の違い
韓国は米軍の北朝鮮への先制攻撃に同意するか
最新コメント
安倍首相の昨日の記者...
Posted by 匿名
人権(笑) それを言わね...
Posted by 言ってる人々の信頼
習主席は言っている事...
Posted by まる
何故海外の投資家は日...
Posted by 杉本 小太郎
両者の相殺をしないと...
Posted by Anonymous
最新トラックバック
【記事】安倍総理を信頼できない人が増え、内閣支持率が急落
from QuonNetコミュニティ
【記事】なぜ官僚たちは「巨大な忖度の塊」になるのか
from QuonNetコミュニティ
【記事】トランプの愚挙――科学技術予算の削減に米議会が反抗
from QuonNetコミュニティ
【記事】M&Aに失敗した経営者と成功し続ける経営者の違い
from QuonNetコミュニティ
【記事】韓国は米軍の北朝鮮への先制攻撃に同意するか
from QuonNetコミュニティ