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2016年2月15日 09:23

円高株安に転じGPIFなど年金損失が膨らむ不安

(2016年2月15日筆)

 日銀のマイナス金利導入発表は、投機家たちのリスク回避姿勢をいっそうあおる結果となり、急激な株安円高を招いた。円高を阻止し株高に導くという日銀の目論見とはまったく逆の結果となった。


「株安円高」で投資信託は1カ月で4.3兆円の運用損失
 リスク資産運用の拡大が裏目に出たGPIFなど年金基金

 明日2月16日から日銀は当座預金にマイナス金利を適用する。その結果、円高株安は収まるのか、さらに円高株安が進むのか、注視しなければならない。円高株安が現状のまま推移すれば、株式や債券など各種の金融資産の大きな運用損失が見込まれるからだ。

 投資信託協会によれば、株安で国内株、円高で外国株・債券が目減りし1月の投資信託の運用損失は4.3兆円強に上ったという。1カ月の運用損失は12月末の運用資産残高97.7兆円強の4.4%になった。

 心配なのは、われわれ国民の年金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用損失だ。一昨年来、GPIFは資産運用の見直しを実行、リスク資産を買い増し、内外株式及び外国債券への運用比率は15年9月末には56.6%(見直し前の14年9月末47.4%)に拡大している。

 このリスク資産の買い増しが裏目に出た。GPIFは昨年7~9月期に7.9兆円の運用損失を計上した。この間、市場は第一次チャイナショックに見舞われ日経平均株価は8月ピーク比で17.9%下落した。対ドル円が3.8%の円高となったためだ。運用収益率は、株安で国内株式は▲12.78%、株安と円高で外国株式は▲10.97%、外国債券は▲1.26%のマイナスとなった。

 10~12月期は株価が戻し為替も円安に戻したのでGPIFの運用収益は多少回復しただろう。しかし16年初からの株安円高は急激だ。昨年末比で日経平均は21.4%下落、円は6.5%上昇した。株価下落率も円上昇率も7~9月期を上回る。新たに円高による外国株式、外国債券の目減り拡大が加わりGPIFの運用損失は7~9月期を大きく上回る可能性がある。


現状の株価・為替続けばGPIF運用損失10兆円以上?
マイナス金利への「国民の誤解、疑念、不安」に答えよ

 現状の株価・為替水準が続けば、運用損失は10兆円以上になるのではないか。年金支払いの減資になる3月末のGPIF年金資産はアベノミクス相場始動前の130兆円前後まで減少するのではないか(専門家の皆さん、1~3月期運用損失の推計値を出してください)。10~12月期の運用収益回復に気をよくして、GPIFが新運用基準の国内株式25%、外国株式25%、外国債券15%(計75%)までリスク資産の運用比率が高めていないことを祈るのみだ。

 国家公務員、地方公務員、私学などの共済年金(資産総額約51兆円)もGPIFの新運用基準に倣ってリスク資産への運用比率を拡大した。われわれ民間だけでなく公務員の年金資産も株安円高による目減りに直面しているはずだ。

 多くの国民がマイナス金利の導入で預金金利がマイナスになるのではないか、銀行の各種手数料が引き上げられるのではないかと怯えている。さらに年金資産の目減りが明らかになれば、年金保険料が引き上げられるのではないか、年金給付の削減につながるのではないかと心配している。

 マイナス金利の実施が円高を止め株高に導くのか、本当に賃上げにつながるのか、年金給付引き下げを止めることができるのか、多くの国民は疑っている。こうした国民の素朴な疑問が誤解に基づくものなら、安倍総理と黒田総裁はそれが誤解である理由を国民に丁寧に説明する必要がある。

 難しい金融経済のことはアベノミクスの「理論家」に任せろと言い張って、国民の誤解、疑念、不安を解消できなければ、個人消費は委縮するばかりだ。

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QuonNetコミュニティ | 2016年2月15日 09:25

この記事へのコメント

1. Posted by Anonymous 2016年2月26日 11:07

両者の相殺をしないと日本全体への評価は不明だが
円高=日本政府(所属企業)買い
株安=日本民間企業売り

NTTとか日本郵便とかを除く企業を売る
タイミングとして適切としたんだろう
株価が倍になるほど買ってたし
今後は「これから」の企業を買う準備金が欲しい
世界が不安な状況では特に『日本買い』は
日本政府買い中心にならざるを得ない

国民への分かる説明も当然義務だが
現状ではむしろ国内への説明より
海外への日本企業の売り込みを
官民の連携を取って進めたい
取り合ってもパイは増えないのだから

プロフィール
ニックネームさん
大西良雄(経済ジャーナリスト)
上智大学卒業後、東洋経済新報社に入社。記者を経て「月刊金融ビジネス」、「週刊東洋経済」編集長を歴任。出版局長、営業局長の後、常務第1編集局長を最後に独立。早稲田大学オープンカレッジ講師のほか講演・執筆活動。
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