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大西良雄ニュースの背後を読む

2014年12月

2014年12月24日 12:14

戦後70年、訪日外国人旅行客のさらなる増加を願う

(2014年12月24日筆)

 2015年、戦後70年を迎える。新年には2012年4月以来、歴史認識などをめぐって3年近く途絶えていた日中韓外相会議が開催される予定だ。これをきっかけに日中韓首脳会議が開催され、歴史認識や領土問題を超越して、日本と中国、韓国との外交関係が大きく好転することを心から期待したい。


日本と中韓、「親しみを感じない」が過去最高を更新
なのに、中韓からの訪日旅行客数も過去最高を更新

 12月20日、内閣府が発表した「外交に関する世論調査」は最悪だった。これによれば、中国に「親しみを感じない」と答えた日本人の割合は83.1%、韓国に対しては「親しみを感じない」と答えた日本人の割合は66.4%、いずれも1975年の調査開始以来の最高記録を更新したという。

 逆に、日本人に「親しみを感じない」とする中国人、韓国人も同じぐらいの割合になるのではないか。「言論NPO」などによる2014年「日中共同世論調査」によれば、日本に対して「どちらかといえば良くない印象を持っている」「良くない印象を持っている」と答えた中国人の割合は86.8%にもなる。2013年はこれが92.8%だったから多少好転はしたが、中国人の日本に対する悪感情は日本人の中国に対する悪感情と同じ高いレベルにある。

 ただこうした中韓と日本の間にある悪感情は、主として3国の政治家たちに向けられたものではないだろうか。国民同士はそんな政治家たちのいがみ合いから距離を置いて動き始めていると思える節がある。

中国、韓国からの訪日客数推移(単位万人、観光庁調べ)
中国、韓国からの訪日客数推移.PNG
 その証拠が、訪日外国人旅行客の急増(上表)だ。12月22日、訪日外国人旅行客数は1300万人(過去最高は2013年の1036万人)を突破した。台湾(訪日客第2位)、香港、タイ、マレーシア、フィリピンなどからの増加も寄与したが、訪日客第1位の韓国、第3位の中国からの訪日客の回復、増加が大きく貢献した。

 韓国からの訪日客数は11月までの累計(観光庁推計)で248万4400人となり、過去最高だった2013年の年間245万6100人を11カ月で突破した。中国からの訪日客数は前年比82.2%と倍増近い伸びを見せ、11カ月累計で221万9300万人に達した。最高記録は2012年の143万人だったから、2014年累計では過去最高を100万人上回る可能性がある。


対中韓関係の外交上の冷え込みの影響はほとんど解消
訪日客急増の背景にある過去の円高とアベノミクス円安

 中韓からの訪日客数は2011年に中国26%減、韓国32%減と大幅に減少した(上表参照)。この大幅減少は11年3月に発生した東日本大震災と福島第一原発事故の発生によるものだった。特に放射能汚染への警戒から訪日客数が激減したというのが実態だ。

 中国との間では2010年9月の尖閣沖中国漁船衝突事件、2012年9月の尖閣諸島国有化、韓国との間では2012年8月李明博前大統領の竹島上陸、加えて2013年12月の安倍総理靖国参拝とこの間、日本と中韓関係の外交上の冷え込みをもたらす事件が多発した。しかし、両国からの訪日客数減少の主因は福島第一原発事故による放射能汚染への警戒にあり、外交上の冷え込みは中韓訪日客数の伸びを抑えた程度にとどまった。

 その冷え込みによる影響も2014年にはほとんど解消、中韓両国からの訪日客数の最高更新につながっている。外交上の冷え込みを背景に日本に「親しみを感じない」と答えた中国人、韓国人が過去最高を更新したのとはまったく逆の現象が起きているのだ。

 訪日外国人旅行客の急増は、アジア諸国の所得上昇、LCC(格安航空)の新規就航拡大、2006年観光庁発足以来の「ビジット・ジャパン」作戦の浸透、ビザ発給要件の緩和などが伏線となった。これにアベノミクスに伴う大幅円安(訪日外国人の購買力拡大)が加わり、訪日客の急増をもたらした。

 皮肉なことに訪日客増加の要因の一つであるアジア諸国の所得上昇は、日本を苦しめた長期にわたる円高だった。日本企業が円高に伴って海外進出したことがアジア諸国の成長、所得上昇の大きな誘因になった。いわば円高の結果である訪日旅行客数の増加という成果を「アベノミクス円安」によって日本が刈り取るということになるのだ。


地方創生、農業再生、賃金上昇に効き目がある
戦後70年の「安倍談話」による訪日客累増に期待

 「アベノミクス円安」の最大の成果は訪日外国人旅行客の増加だといわれる。その最大の成果を今後も着実に伸ばし、東京オリンピック開催の2020年、訪日外国人旅行客数2000万人の目標を達成することが、以下の理由から大切だろう。

 第一に、中韓両国を筆頭とする訪日客数の増加は東アジアの人々との草の根交流を活発にさせ、政府間の無益な争いあるいはそれに導かれた極端なナショナリズムを緩和させる効果がある。日本を訪れた中国人が学校などで教えられた怖い、醜い日本人とまったく異なることに気付くことも少なくない。そのことはネット情報の「レコード・チャイナ」に度々紹介されている。

 第二に、訪日旅行客が、メイン観光ルートである東京都内、富士山、京都から離れ、九州や四国、東北・北海道にも足を延ばすようになれば「地方創生」あるいは{農業再生」に大いに貢献するだろう。日本の地方には外国人旅行客が興味を持つ埋もれた観光資源がたくさんあるに違いない。日本の農業、農産物もそれに含まれ、訪日客の食体験がきっかけとなり日本の農産物輸出につながるかもしれない。

 第三に、観光産業への雇用の誘導効果である。すでに観光産業では観光バスの運転手や観光ガイドの不足が表面化、飲食・調理、接客・給仕など観光サービスの求人倍率が2倍以上になっている。こうした労働需給のひっ迫が観光産業就業者の賃金引き上げにつながれば他の低生産性サービス業からの雇用誘導にもなる。人手不足を補うために、英語だけでなく訪日客に合わせた言語を話す外国人専門職の雇用強化も進めねばならないだろう。

 安倍総理は、戦前の植民地支配と侵略を謝罪した「村山談話」と従軍慰安婦に関する「河野談話」を踏襲すると明言している。戦後70年を機に、歴史認識に関する新しい「安倍談話」を考慮しているといわれるが、その「安倍談話」が訪日外国人旅行客の増加目標を妨げるような内容であってはならない。「アベノミクス円安」の成果を自らの手で無にする結果になるからだ。訪日旅行客の累増につながる「安倍談話」になることを期待したい。

2014年12月15日 15:54

2014年冬「衆院選」雑感-自公圧勝の背後を読む

(2014年12月15日筆)

 静かな、盛り上がりに欠けた衆議院選挙が終わった。選挙戦序盤(12月4日付朝刊)の各紙予測では「自民、300議席を超す勢い」(朝日新聞、毎日新聞)、「自民、300議席うかがう」というものだった。結果はどうなったか。

 自民党の獲得議席は序盤の各紙予測を幾分下回ったが、減少は2議席にとどまり291議席を獲得、4議席増の公明党35議席と合わせ連立与党は326議席を獲得、3分の2議席(317議席)を上回る大勝となった。


戦後最低の投票率、青森、徳島など9県で50%を割り込む
半数近く棄権の中、自民党は得票率48%で76%の議席を獲得


 残念ながら投票率は52.66%と前回2012年の59.32%を7%近く下回り、戦後最低となった。青森、宮城、富山、福井、石川、徳島、愛媛、福岡、宮崎の9県で投票率は50%を割り込んだ。栃木、福井、京都、大阪、兵庫、岡山、広島、香川、高知、熊本、鹿児島の投票率は50%台だった。日本海側を投票日に大雪が襲ったという事情もあるが、雪害のない県でも低投票率となっており「地方創生」への期待は当該地方ではまだ高まっていないようだ。

 一方、自民党の比例区得票率は、最高が安倍総理の地元の「中国」の38.2%、最低は維新が強い「近畿」の28.9%だった。最大の比例選挙区「東京」では32.1%だった。全国では自民党の得票率は35%前後だろう。自民党の比例区獲得議席数は68議席、議席比率は37.8%で得票率にほぼ比例する。

 一方、小選挙区では自民党の得票率は48%だったが、295小選挙区のうち223小選挙区で勝った。1人しか当選できない小選挙区で75.6%の議席を獲得した。これが291議席につながった。低投票率のもと多くの固定票を持つ連立与党・公明党の選挙協力が自民党の小選挙区での圧勝を支えたと思われる。


候補者も揃わず政策も整わない民主、候補者調整も不十分
安倍総理に確な対立軸提示した共産党に票が流れた


 小選挙区制は政権交代可能な2大政党制を想定している。しかし政権交代を競うはずの最大野党の民主党は295の小選挙区に178名の候補者しか立てることができなかった。民主党は2年の野党期間、政権担当時の失敗を反省するだけでアベノミクスに対抗する政策の立案を怠った。候補者も揃わず対抗政策も整わない民主党は、最初から政権交代の可能性を放棄したに等しい。

 小選挙区での野党間の候補者調整が急きょ実施されたが、民主党、維新の党、生活の党の連携は不十分のまま終わった。民主党は11議席増となったが、解党した「みんなの党」、議席を大きく減らした生活の党、次世代の党の受け皿になっただけだった。

 自民党の安倍グループより「右」を公言する次世代の党は、議席を19議席から2議席へ大幅に議席を減らした。これに対し、民主党よりさらに「左」の日本共産党が議席を大きく伸ばしたのも今回の特筆すべき選挙結果だった。

 日本共産党は小選挙区の沖縄1区で議席を獲得したほか比例区で20議席を獲得、総獲得議席は前回の8議席を大きく上回り21議席となった。共産党の比例区得票率は、「東京」(15.4%)、「近畿」(12.8%)、北海道(12.1%)、南関東(11.9%)、北関東(11.7%)、「北陸信越」(10.1%)で10%を越し、都市及びその近郊地域で票を伸ばした。若い世代からの投票も増えたという。全国では前回より共産党の得票率は5%増加し13.28%となり、比例区の議席比率は11.1%に上昇した。

 共産党は選挙公約として、消費再増税の中止、法人税引き下げの中止、富裕税の再開、所得税、相続税の累進税率引き上げ、原発再稼働の中止などアベノミクスへの明確な対抗策を示した。さらに、集団的自衛権行使の「閣議決定」撤回、秘密保護法廃止、武器輸出新原則の廃止、沖縄米軍新基地の建設中止、憲法9条を生かした平和外交など安倍総理の安保政策への対立軸をはっきり提示した。

 共産党の躍進は、その成否は別にして、安倍総理のアベノミクスと安保外交政策に対する対立軸を明確に提示したことによる。民主や維新は、安倍総理の政策に対する姿勢が半分賛成、半分反対、あいまいだと受け止められた。民主や維新は安倍政権批判の受け皿になり得なかった。その分、安倍政権への批判票は共産党に流れたといってよいだろう。

 安倍総理は選挙後、「今回はこの2年間の安倍政権の信任をいただいたと思っている。だからと言って慢心せず、丁寧に国民に説明しながら政策を進めていきたい」と語った。

 安倍総理は投票率が戦後最低になったうえ自民党の得票率が3割台だったことに思いをはせるべきだ。今回の投票率、得票率を見れば、国民が安倍総理に全面な信認を与えたとは言いがたい。棄権票や民主党や共産党など野党の獲得票の中には安倍政策批判の民意がたくさん隠れている。

 安倍総理にはご自身が語ったように、自公326議席の大勝に「慢心せず」、選挙民の5割近くになる棄権票、議席を得られなかった多数の死票(小選挙区では2540万票、全体の約48%)に込められた民意にも耳を傾け、「丁寧に国民に説明」しながら謙虚な政権運営を進めてもらいたい。

2014年12月 8日 12:22

野菜ジュースを飲み「ねばねば」を食べていますが...

(2014年12月8日筆)

 12月に入り急に冷え込んできました。40数年前、新婚旅行で訪れた青森の酸ヶ湯では、はや1メートルの積雪です。四国の徳島では珍しい大雪で集落が孤立する騒ぎになったようです。

 昨年2月、小宅を襲った大雪を思い出します。膀胱がん手術を終え病院から帰宅した日、道路沿いに植えた甘夏の木が二つに裂け折れているのを見てびっくりさせられました。入院前に甘夏の実を採取できず実の重さに雪の重さが加わったためでした。


夏の終わり、少量ずつですが野菜をたくさん植えました
癌予防には野菜ジュースと「ねばねば」食品が良いとか

 今年は、寒波が去年より早く襲来しているようです。霜が降り、氷が張ると植えた野菜が萎れてしまいます。家内は早速、霜封じのビニール製ゴミ袋を北側の庭畑に植えた「焼肉レタス」チマサンチュとベビーリーフに被せに行きました。

 この夏の終わり、ジャガイモやキュウリ、ナス、トマト、ピーマン、シシトウを植えていた後に、青ネギ、玉ネギ、チマサンチュ、ベビーリーフ、ホウレンソウ、ビタミン菜、小松菜、白菜、ラディッシュ、ルッコラなどの野菜を少量ずつですが植え込みました。白菜は今年が初めての挑戦ですが、今ようやく葉を撒き込み始めました。

 ネギ類は別にして、葉物野菜の多くは虫に食われて穴あき状態ですが、チマサンチュとベビーリーフだけは食われず育っています。家内は、虫に食われず健気に育ったチマサンチュとベビーリーフが「霜に負けては」と思って、ゴミ袋を被せに行ったようです。穴あきの虫食い野菜のほうはほったらかしですが...。

 家内が今年から葉物野菜にこだわるのには理由があります。小生が膀胱がん、甲状腺がんと2つの癌に襲われて以来、家内は癌予防には免疫力を高める「ねばねば食品」を食し「野菜ジュース」を飲むのが良いと書いた本をむさぼり読んでいました。そしてほとんど毎日、「ねばねば」食品と「野菜ジュース」が食卓にのぼるようになりました。

 「ねばねば」食品とは、納豆、オクラ、山芋、なめこ、めかぶ、モズクなど粘り気を持つ食品のことです。「粘り気」がなぜ癌に効くのか小生にはわかりませんが、本を読んだ家内が効くというのですから逆らうわけにはいきません。納豆は少し鼻についてきましたが、ほかは喜んでいただいています。


信州の知人が差し入れてくれる無農薬野菜などを入れ
「スムージー・ミキサー」で野菜ジュースを毎朝作る

 「野菜ジュース」はテレビ通販で買った「スムージー・ミキサー」(このミキサーは安価で操作が簡単、粉砕力、撹拌力が強力です)で作るようになってから毎朝美味しくいただいています。美味しいわけは野菜のほかにバナナ、リンゴなどの甘みが必ず入っているからだと思いますが。

 ミキサーに入れる野菜はスーパーで買った野菜が中心ですが、信州・上田に住む知人からの「差し入れ」野菜も含まれます。この方は上田から新幹線に乗って小生の早稲田大学オープンカレッジ「時事解説講座」に毎回通われている聴講生です。講座出席のたびに自分の畑で栽培された無農薬野菜を段ボール箱や買い物袋に入れて運び小生に差し入れてくださるのです。本当に感謝しています。

 小生の庭畑の、虫食い状態の小松菜やラディッシュの葉、ビタミン菜などがミキサーに入ることがあるそうです。家内はミキサーに混ぜ込めば虫食い野菜かどうか、わからないといっています。それにしても、同じ無農薬の小松菜なのに信州の知人のそれは大きく育った上、虫が食っていない。なぜ小宅の小松菜とこうも違うのか、育てるコツを教えていただきたいものです。

 ということで「野菜ジュース」と「ねばねば食品」のお蔭でしょうか、小生の体調は明らかに好転しています。何より頻尿が収まり、便通が格段に良くなってきました。晴れた日であれば、1時間程度の散歩も苦にならなくなりました。

2014年12月 1日 15:50

原油価格の急落は消費者には朗報だが、日銀には悲報?

(2014年12月1日筆)

 OPEC(石油輸出国機構)総会で最大の産油国サウジアラビアが減産見送りを表明したことから原油価格は急落した。世界の価格指標になる米WTI原油価格は6月13日の1バレル106.91ドルのピークから11月28日終値では65.99ドルまで下落した。この間の下落率は実に38.3%に達する。

 サウジアラビアの減産見送りの背後にはアメリカのシェールオイルへの対抗策があると囁かれている。米シェールオイルの採掘採算ラインは1バレル80ドル前後と言われている。サウジアラビアは減産見送りで採算ライン以下に抑え米国産シェールオイルのシェア拡大を阻止する方針だとささやかれている。

 加えて中国、日本、EUなど主要な原油輸入国の景気が悪化、原油の需給関係悪化も原油価格下落の背景にあり、原油価格はピーク比40%安のレベルで当分低迷を続けるという予想が支配的だ。


原油価格の下落は日本経済にも消費者にもプラス
だが円安進展で国内エネルギー価格の下げは鈍い

 原油価格の下落は日本経済と消費者にとっては朗報になる。ドル建て原油価格(それに連動するLNG輸入価格)の下落は、為替レートが一定とすれば、日本に輸入金額の大幅な減少をもたらす。輸入金額の減少は所得の海外流出の減少に直結、日本経済全体にプラスになるはずだ。

 原油価格の下落はガソリン代、灯油代、電力料金など家庭用エネルギー価格の値下がりをもたらし消費者物価上昇に悩まされている消費者にとっても朗報だ。  

 東京電力の家庭用電力料金は6月に8567円と最高値に達したが12月には8288円まで下がった。ガソリンの全国平均店頭価格は7月7日に1リットル169.7円の高値を付けたが11月25日には158.3円まで下がった。家庭用エネルギー価格の下落は減税に等しく消費増税の痛みを和らげるはずだ。

ドル建て原油価格と国内電力料金・ガソリン価格の今年ピーク比下落率
hyo1.JPG
(注)原油価格はWTI原油、家庭用電力は東京電力、ガソリン価格は全国平均店頭。

 ただ、この間のドル建て原油価格の下落率は6月ピーク比▲38.3%にもなる。残念なことに、家庭用電力料金の今年ピーク価格に対する下落率は▲2.1%、ガソリン店頭価格ではピーク比▲6.7%に止まっている(上表参照)。この間の家庭用エネルギー価格の下落率はドル建て原油価格の下落率を大きく下回っている。

 家庭用エネルギー価格の下落が鈍いのは国内価格がドル建て原油価格の後追い型である点もあるが、主たる原因は対ドル円レートの下落(円安)にある。この間、円は1ドル101.56円(7月1日)から118.15円(11月28日)ㇸ16円62銭、率にして16.36%下落した。このため円に換算したエネルギー輸入価格が下がらず、原油価格の下落の恩恵を日本の消費者はまだほとんど享受していないということになる。

 もちろん今後、円安のさらなる進展がなければという条件が付くが、家庭用電力料金もガソリン価格もドル建て原油価格の下落を後追いしてさらに下がるに違いない。消費者はエネルギー価格の下落分、実質所得減少を補てんすることになる。円安に伴う原燃料高に苦しむ中小企業にも干天の慈雨になるだろう。


消費者物価上昇率はどんどん低下、来春には「0%台前半」?
2%物価目標のために原油安メリットを消費者から奪う日銀

 では2%の消費者物価上昇率を目指す日銀にとって原油価格下落はどう映るのだろうか。それは日銀にも朗報なのか、それとも悲報なのか。

 日銀が物価目標の対象とする「生鮮と消費増税分を除く消費者物価上昇率」のピークは4月消費増税時の1.5%(消費増税分を4月は1.7%、それ以降は2%と算定、生鮮除く消費者物価上昇率から差し引く)だったが、直近の10月は原油価格の下落などが響いて1%を割り込み0.9%となった(下表参照)。

生鮮、消費増税除く消費者物価(CPI)上昇率は低下傾向
hyo2.JPG
 すでに消費者物価の先行指標とみなされている生鮮、消費増税分を除く東京都区部の11月CPIは0.4%に下落している。300店舗のPOSデータをもとに20万点の日次物価を調べて作成されている東大日次物価指数は6月からマイナスに転じ、11月27日現在▲0.26%に沈んでいる(上表)。 

 今後、ドル建て原油価格の下落を後追いして国内のエネルギー価格がさらに下落、消費者物価上昇率はもっと下がると予想される。ニッセイ基礎研究所の斉藤太郎氏は現状の円相場(1ドル117円)と原油価格(ドバイ原油で1バレル70ドル)が続けば、「4月以降、CPI上昇率0%台前半で低迷する」(日経新聞11月29日朝刊)と試算している。

 消費増税転嫁値上げの影響がなくなった来年4月段階で生鮮除くコアCPI上昇率が「0%台前半」というのでは日銀には厳しい。コアCPI上昇率2%の早期達成を目論む黒田日銀総裁はますます苦しい立場に追い込まれる。

 IMF(国際通貨基金)は「円安の影響を除くと日本の物価上昇率はゼロ近辺に止まっている」とする試算を日本の当局に示したと報じられている(朝日新聞11月13日朝刊)。IMFが指摘するまでもなく、日銀「異次元緩和」による物価引き上げの経路は、円安による輸入物価の上昇という経路しか機能していないというのが一般的な見方だ。

 したがって、日銀が2%物価目標を実現しようとすればするほど、さらなる円安が必要になる。しかし、日銀が円安進展を望めば望むほど、日本経済も消費者もドル建て原油価格下落という望外なメリットから遠ざかることになる。エネルギー価格下落による日本経済と消費者の実質購買力(実質消費支出)の回復も遅れる。

 奇妙なことだが物価上昇を望む日銀が日本経済と消費者が原油価格下落によって手にするはずの購買力を奪うのだ。

 それだけではない。日銀はコアCPI上昇率の低下(デフレへの逆戻り)に直面した結果、来春にはさらなる追加緩和に追い込まれるとする見方が市場に増えてきた。日銀は10月31日の追加緩和で長期国債買い入れ額を年80兆円まで膨らました。これをさらに膨らますとすれば、日銀の国債保有残高は信じられないほどの規模になり「量的緩和からの出口」がますます困難になる。どうなるのか、心配は募るばかりだ。
プロフィール
ニックネームさん
大西良雄(経済ジャーナリスト)
上智大学卒業後、東洋経済新報社に入社。記者を経て「月刊金融ビジネス」、「週刊東洋経済」編集長を歴任。出版局長、営業局長の後、常務第1編集局長を最後に独立。早稲田大学オープンカレッジ講師のほか講演・執筆活動。
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