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大西良雄ニュースの背後を読む

2014年8月

2014年8月25日 15:22

アベノミクス景気はピーク越え? 戦後最短に終わるか

(2014年8月25日筆)

 山高ければ谷深し。消費増税直前、2014年1~3月期の実質GDP(国内総生産)成長率は6.1%(年率換算)に跳ね上がったが、消費増税後の4~6月期実質成長率は▲6.8%の大幅減となった。


駆け込み需要の大幅な増減で景気の方向が見えにくい
7~9月期GDPも統計処理のアヤ(特殊要因)で嵩上げ

 政府は増税前の駆け込み需要の急増も増税後の駆け込み需要剥落も「想定内」だといい、7~9月期には成長率は回復、正常化するという。2014年7~9月期の実質成長率見通しは、先行き見通しに慎重な民間の「ESPフォーキャスト8月調査」ですら4.08%増(年率換算)となっている。

 ただし、日経新聞は、「7~9月期は統計処理に3つの特別の要因が働き、成長率は景気の実態以上に上振れする」(日経8月25日朝刊)と指摘している。3つの要因とは消費総合指数、個人消費デフレーター、公共投資に関する統計データ処理上の特殊要因を指す。その統計処理の結果、7~9月期の実質成長率が大幅に回復するように見えるというのだ。

 7~9月期の実質成長率は、2015年10月からの2%追加消費増税実施の判断材料になる。実質成長率2~3%増が追加増税実施の判断基準とされており、民間予想の4.08%増はこれを大きく上回り追加消費増税は必至となる。そんな大切な7~9月期実質成長率が統計処理上のアヤ(特殊要因)で嵩上げされるとすれば、看過できない問題といえる。

 1~3月期と4~6月期の実質成長率は、駆け込み需要の想定を上回る増減に攪乱され、続く7~9期は統計処理上のアヤでかさ上げされる。この9か月間の混乱したGDP統計を基にしてアベノミクス景気の実態とその方向を見定めるのは至難のワザと言わざるを得ない。


2014年1月、3月に景気の「山」、その後景気後退?
「アベノミクス景気」は拡張期間14カ月、戦後最短も

 不確かなGDP統計に代わってアベノミクス景気の行方を見定めるという意味で注目したいのは、内閣府の「景気動向指数」の動きだ。景気動向指数は先行指数(実質機械受注など11指数)、一致指数(鉱工業生産、大口電力使用量、商業販売額など11指数)、遅行指数(家計消費支出など5指数)の3つの指数からなる。このうち主として一致指数を用いて景気の「山」と「谷」の景気基準日付を有識者(景気動向指数研究会)が決めることになる。

 これによると直近の景気の「谷」(ボトム)は暫定的に2012年11月となっている。12年11月は野田・安倍の党首討論で衆院解散が決まり、安倍自民党総裁の「大胆な金融緩和」発言に誘導された海外ヘッジファンドが日本株買いに走ってアベノミクス相場の始まった月だ。

 12年11月の景気の「谷」から次の景気の「山」(ピーク)に向かって景気拡張(アベノミクス景気)が続くことになる。だが、前述の「フォーキャスト8月調査」では、「景気の転換点(山)はもう過ぎたか」という問いに対して3機関(回答42機関)が「もう過ぎた」と答えている。ほんの少数だが一部のエコノミストの間ではすでにアベノミクス景気は景気の「山」(ピーク)に達し、後退局面に入ったという説が出ているのだ。

 景気の転換点「山」の時期は、14年1月としたのが2機関、3月が1機関だった。景気動向指数の一致指数を時系列で追うと、2012年11月(景気の「谷」)の101.6ポイントから上昇を開始、2014年1月と3月に114.7ポイントのピークに達した後、4月、5月、6月と続落、6月は109.4ポイントに低下した。景気の「山」が過ぎたと判断した3機関は、1月と3月の一致指数114.7ポイントを景気の「山」としたことになる。

 今後も景気動向指数の一致指数が低下を続ければ、1月あるいは3月が景気の「山」だったと公式に認定されることになる。かりに14年1月が山だったと認定されれば、12年11月から始まった「アベノミクス景気」はわずか14カ月という戦後最短の景気拡張(過去最短は22カ月)となる。


企業業績の停滞で株高による消費刺激効果はほぼ消滅
実質賃金の大幅下落が一般消費回復の足かせに

 今後、景気動向指数が再び上昇に向かうかどうかは、これまでの景気拡張要因が持続するかどうかにかかる。アベノミクス景気は、(1)ヘッジファンドなど海外投資家がもたらした「株高」による消費刺激効果(主として資産家による高額品の消費拡大)、(2)2012年度補正予算、2013年度本予算にまたがる10兆円を大きく上回る公共事業の増額によってもたらされた。

 このうち株高の消費刺激効果(資産効果)は2013年5月のバーナンキ米FRB議長による量的緩和縮小の「示唆発言」による株価急落以降、順次減衰する方向にみせた。2014年以降は株価上昇を支えた海外投資家が売り越しに転じ株価は伸び悩み停滞色を強めた。その結果、株高の資産効果はほぼ消滅し高額品販売で潤った百貨店の売り上げはいまや減少に転じている。

 ヘッジファンド依存の株価上昇が限界に達した今、今後の株価上昇はひとえに企業業績の拡大にかかる。しかし3月期決算の全上場企業(金融含む1663社、日経調べ)の2015年3月期今期純利益予想はわずか1.8%増(2014年3月期は59.3%の大幅増だった)に止まる。

 前期の純利益の大幅増加は、その多くを円安による輸出代金増加による利益増加や外貨建て資産など資産評価差益の回復に依存している。しかし、円安は外国人による日本株買いの裏返し(為替リスクヘッジのための円売り)であり、外国人が日本株を買わねば円安はむずかしい。円安が一服すれば純利益拡大も一服、業績拡大による株価上昇がむずかしくなり、資産家の高額消費も一巡する。

 安倍政権は株高による高額消費に変わって賃金引き上げによる一般消費の拡大を目論んだが、それも空振りに終わりそうだ。春闘による賃上げは定昇込みで2%強、ベースアップだけだと0.4%増にとどまる。円安による輸入物価上昇と消費増税の転嫁値上げを合わせた消費者物価上昇率は3.3%(生鮮食品除く)に達し、実質賃金は4月以降3%以上の大幅なマイナスとなった。

 実質賃金の大幅な下落が一般消費の拡大を妨げていることは間違いない。物価上昇は賃上げの恩恵を受けられなかった都市の中・低所得者、年金生活者や地方の居住者のふところを直撃、スーパーやコンビニなど必需品消費産業の売り上げ減(ボーナス支給後の7月も前年同月比減収)につながった。

 今回は詳しく触れないが、円安にも関わらず輸出は増えず逆に円安によって輸入が急増、貿易収支赤字が拡大、景気の足を引っ張った。住宅投資、設備投資は消費増税前の駆け込み需要で一時盛り上がったが、その後、急冷している。

 残るはアベノミクス景気の陰の立役者である(1)の公共事業の拡大だ。2014年度予算の前倒し発注で7~9月期は公共事業がGDPに貢献するが、建設業界を襲うボトルネックインフレで建設費が急騰、人手不足もあり景気を支える公共投資の追加は容易ではない。財政事情もそれを許さないだろう。

 アベノミクス景気を支えたこれまでの要因が剥落したうえ、雇用増加や賃上げによる消費拡大の効果が消費者物価の急上昇でかき消される。伝家の宝刀・公共事業の積み増しも容易ではない。そうした予想の元では、景気の「山」をすでに越えたとする少数派の見方が当たる可能性を排除できない。そうなると、アベノミクス景気が戦後最短に終わるとする懸念が現実のものになる。

2014年8月 4日 14:25

女性が牽引した安倍内閣の支持率50%割れ

(2014年8月4日筆)

 「集団的自衛権行使容認」の閣議決定後に行われた各報道機関による7月世論調査では、安倍内閣の支持率が5%前後下落、軒並み50%を割り込んだ。支持率が軒並み10%前後急落した昨年12月の「特定秘密保護法案」議決後ほどではないが、2度目の大きな支持率低下となった。

軒並み50%割れ――7月の安倍内閣支持率(単位%)
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 第一次安倍内閣、福田内閣、麻生内閣、鳩山内閣、菅内閣、野田内閣と続いた過去6代の内閣は短期間に支持率を急落させ1年前後で政権の命運が尽きた。支持率の30%割れは内閣の危険水域だとされている。これに比べると発足後1年半経過してなお40%台の支持率を維持している安倍内閣は立派なものだという評価もあろう。

 しかし油断は禁物だ。7月調査では、安倍内閣の「不支持率」が上昇する一方「支持率」が急低下、支持率と不支持率の差が5~10%に縮また。最新の読売新聞8月調査でも、支持率は3%上昇、51%に回復したが、「不支持率」は低下せず41%に上昇、内閣発足以来の高さになった。「不支持率」の上昇は安倍内閣批判層の顕在化を表すものとして注目される。


女性の安倍内閣「不支持率」が「支持率」が上回った
川内原発の再稼働で女性の内閣支持率はさらに低下?

 安倍内閣「支持率」の低下、「不支持率」の上昇は女性に顕著だ。朝日新聞の7月世論調査によると男性の安倍内閣支持率は49%だったが、女性の支持率は35%(内閣発足時の女性支持率は60%)へ低下した。一方、女性の不支持率は37%に上昇、安倍内閣発足後初めて女性の不支持率が支持率を上回った(朝日新聞7月29日朝刊)。

 安倍内閣の支持率低下は女性が牽引したことになる。女性の支持率は、特定秘密保護法案議決後に急落した後、「集団的自衛権の行使容認」の閣議決定でさらに大きく下げた。女性は、「女性の活用」を熱心に説く安倍総理の甘言には乗らず、他国支援のために我が子や恋人を戦地に送り込みかねない集団的自衛権の行使容認に本能的に危機感を募らせた。東京都議会や国会での自民党議員による女性蔑視ヤジにも安倍内閣に潜在する女性軽視の本質を嗅ぎ取ったようだ。

 女性の内閣支持率は下がり始めると容易には回復しないというのが過去の経験則だという。今後も女性を喜ばすよほどの政策変化がなければ支持率は回復しないに違いない。それどころか、これから年末にかけ女性の支持率をさらに低下させる意思決定案件が目白押しだ。

 その第一は、九州電力川内原発(10月までには再稼働か)を皮切りとする原子力発電所の再稼働だ。再稼働に好意的な日経新聞の7月世論調査でさえ、「政府の再稼働方針」に対し「賛成」35%、「反対」52%で反対が過半数にのぼる。再稼働に慎重な朝日新聞の7月調査では「川内原発の再稼働」に対し女性の「反対」が70%(「賛成」は20%)に達する。

 女性は放射線被ばくによる子供の健康被害に神経質だ。これを無視して安倍内閣が川内原発の再稼働を決定すれば内閣支持率はさらに低下するに違いない。


増税後の消費者物価上昇で実収入、実質賃金は大幅減少
社会保障給付の削減案、軽減税率導入なしにも違和感

 第二は、12月に予想される消費税率2%追加引き上げの決断だ。先行した3%消費増税に対する女性の理解度は高く、引き上げ時の4月内閣支持率は低下することはなかった。しかし増税を巡る状況は急変しており、2%の追加引き上げが女性の理解が得られるとは限らない。むしろ支持率低下の要因になる。

 女性には、アベノミクスは株価と物価を吊り上げるだけで、決して家計を預かる自分たちの味方にはなっていないことがわかってきたようだ。

 最新の家計調査によると、「二人以上の所帯」の6月実収入は前年比6.6%減(5月4.6%減)と減少幅を拡大させた。「毎月勤労統計」によれば、事業所規模5人以上の6月実質賃金指数は前年比3.8%(5月3.8%減)の連続低下となっている。安倍総理は「近年稀に見る賃上げ」と自賛したが、6月30日の本ブログ「なぜ実収入、実質賃金の急減に口をふさぐのか」で指摘したように、消費者物価の急上昇で実質的な生活水準は大きく切り下がったままだ。

 女性の多くは年金、医療、少子化対策など社会保障の維持、拡充のためだといわれて消費税率引き上げにしぶしぶだが納得した。しかし社会保障政策では年金減額・支給年齢引き上げ、高額医療費給付の圧縮など給付削減案が相次いで議論の俎上に上っている。社会保障費の負担増を求める法案も続出しそうだ。

 社会保障充実のためと言われ消費税引き上げに納得したのに、実収入、実質賃金が減少したうえ、肝心の社会保障の給付水準が切り下げられるのでは約束違反だと女性たちは思い始めている。

 税制面でも雲行きが怪しい。専業主婦所帯には厳しい扶養控除廃止や3号被保険者に対する社会保険料免除の見直しがはじまった。消費税10%時に期待された食料品などの軽減税率導入も納税業者の反対を受け困難になったように思える。

 その一方、法人税減税が安倍総理のゴリ押しで実現しそうだ。その法人税減税の財源として中小・零細企業を優遇している法人税特例措置の廃止が検討されているという。女性の労働・経営参加が多い中小・零細企業が増税となる一方、大企業と外資だけが潤う安倍内閣の法人税改革にも違和感がある――。


アベノミクスを「評価しない」とする世論が拡大
「アベノミクスは幻想だった」と女性は実感?

 産経新聞は安倍総理シンパの新聞として知られるが、その7月世論調査で意外な結果が出た。安倍首相の景気・経済対策を「評価しない」とする回答が47.1%となり「評価する」とする回答を7.7ポイント上回った。安倍内閣の社会保障政策についても6割超が「評価しない」と答えたという(7月21日、「MSN産経ニュース」)。 

 安倍内閣は景気・経済対策(つまりアベノミクス)への好評価を背景に高い支持率を維持してきた。その高い支持率は「特定秘密保護法案」や「集団的自衛権の行使容認」など人権軽視、戦争へのキナ臭さが漂う政策の強引な決定によって食い散らかされてきた。それでもなお40%台の内閣支持率があるのは、ひとえにアベノミクスへの幻想が残っているからだろう。

 しかし女性たちは少しでも豊かさを取り戻したいという期待を込めてアベノミクスを支持したはずだ。しかしその期待は現実の生活によって裏切られつつある。家計を預かる女性たちは「アベノミクスは幻想だった」と気付き始めた。支持のベースになっていたアベノミクスの好評価が剥げれば、内閣改造で目先人気を回復させたとしても、中期的に安倍内閣の支持率は回復しないということになる。
プロフィール
ニックネームさん
大西良雄(経済ジャーナリスト)
上智大学卒業後、東洋経済新報社に入社。記者を経て「月刊金融ビジネス」、「週刊東洋経済」編集長を歴任。出版局長、営業局長の後、常務第1編集局長を最後に独立。早稲田大学オープンカレッジ講師のほか講演・執筆活動。
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