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大西良雄ニュースの背後を読む

2014年3月

2014年3月25日 11:42

ベースアップ率0.4%台、春闘結果を手放しで喜べるのか

(2014年3月25日筆)

 安倍総理は3月20日の記者会見で「今春闘では幅広い業種で近年まれに見る水準の給料アップが実現しつつあります。先週時点での集計では平均で6500円近く月給が増える」と得意満面、ドヤ顔で自画自賛した。

 今春闘で企業収益の改善が賃上げに結びつかなければ、国民の多くは円安にともなう輸入物価の上昇、生活必需物資の値上がりによる実質的な生活水準の切り下げに見舞われることになる。そうなればアベノミクスは円安株高によって輸出企業と資産家を潤しただけという批判にさらされる。それを避けるため安倍内閣は「賃上げのための法人税減税」というニンジンをぶら下げる一方、政労使会議を立ち上げて労使に賃上げ実施を必死に要請していたのである。

 にもかかわらず、今春闘での賃上げが不首尾に終われば安倍内閣の政権基盤が揺らぎかねない状態だった。だから安倍総理は連合の第一回賃上げ回答発表をみて小躍りしたのだろう。その総理の心持ちは「近年まれに見る水準の給料アップ」という高揚した表現に表れている。


今春闘も定期昇給分依存の見掛け賃金アップ
生活水準引き上げのベースアップ率はわずか0.4%

 では、第一回賃上げ回答の水準は、はたして安倍総理が「近年まれに見る」と小躍りするような賃上げ率なのだろうか。安倍総理が「平均で6500円近く」と述べた賃上げ額は、連合が3月14日の公表した今春闘の第1回の回答集計結果から引用された。第一回集計結果では、回答を出した491組合の「定期昇給込み平均賃上げ額」は6491円、平均賃上げ率は2.16%となっている。

 これを昨春闘の第1回集計結果と比べてみよう。昨春闘の第一回集計結果の「定期昇給込み平均賃上げ額」(402組合)は5273円、平均賃上げ率は1.74%だった。昨春闘の1.74%に比べ今春闘2.16%の「定期昇給込み賃上げ率」はわずか0.42%上昇したに過ぎない(以下に述べるとおり、この0.42%分はベースアップ分だと推定される)。

 賃上げは定期昇給分とベースアップ分に分かれる。労働組合側の説明によると「定期昇給とは30歳の労働者が31歳の先輩労働者が得ている賃金と同じ賃金を得ることだから、定期昇給で労働者の生活水準が向上するわけではない。全体の賃金水準を引き上げるベースアップを行うことで初めて労働者の生活水準を向上させることができる」という。

 昨春闘の1.74%の「定昇込み賃上げ率」はベースアップがほとんどなかったから定期昇給分だけの賃上げ率だったと思われる。今春闘での定期昇給分が昨春闘なみの1.74%だと仮定すれば、今春闘のベースアップ率は2.16%定から定昇1.74%を差し引けば0.42%となる。労働組合の言うベースアップによる生活水準の向上分はわずか0.42%にとどまるのだ

 第一回の回答済み491組合のうち定期昇給と定期昇給を除く賃上げ分を分けて確認できるのは320組合だが、その定期昇給を除く平均賃上げ額(ベースアップ額)は1279円、平均賃上げ率(ベースアップ率)は0.44%となっている。昨春闘との比較で推計した今春闘のベースアップ率0.42%とほぼ一致する。


代表企業は35%増益なのに0.4%のベースアップ率
4278万人の未組織、1956万人の非正規はどうなる

 連合は、政府の2013年度平均の消費者物価上昇率見通し0.7%を前提にベースアップ率1%以上を今春闘の統一要求としていた。物価上昇分を上回るベースアップがなければ実質的な生活水準は切り下がるからだ。しかし第一回の集計結果では0.4%台のベースアップ率にとどまり0.7%の2013年度平均の消費者物価上昇率を下回った。実質的な生活水準は切り下がるのだ。

 第一回集計対象になった491組合は東証一部上場企業(約1800社、従業員総数約330万人)の組合の3割に満たない。円安株高による収益上昇を満喫した日本を代表する企業の一握りの組合だ。その恵まれた組合が属する主力企業の2013年度の予想経常増益率は35%に達する。0.4%台のベースアップによる人件費増加など35%増益の主力企業には痛くも痒くもないだろう。

 主力企業でも今春闘のベースアップ率は増益率を大きく下回る。その結果、労働分配率(労働側の取り分)は大きく低下するのではないか(定期昇給だけでは経営側の総人件費は変わらない。ベースアップ分だけが経営側の総人件費を増加させる)。

 今後、第2回、第3回と回答集計結果が発表されるにつれ定昇込み平均賃上げ率、ベースアップ率は低下するに違いない。円安株高の恩恵にあずかれず業績が冴えなかった2番手、3番手企業の賃上げ率が公表されるからだ。それでも賃金交渉力を備えた労働組合は幸せである。2013年6月末の労働組合の組織率(雇用労働者に占める組合員の割合)は過去最低の17.7%だ。賃金交渉の恩恵にあずかれる組合員数は日本の雇用者総数は5198万人(役員除く。2014年1月労働力調査)のうち920万人に過ぎない。残りの4278万人は賃金交渉の埒外ということになる。

 雇用者の37.6%、1956万人は賃金交渉力が弱い非正規の職員・従業員だ。安倍総理はほんの一握りのエリート組合の賃上げ率を自賛するのではなく、これら非正規従業員の今春闘における平均賃上げ率、ベースアップ率こそ公表すべきではないか。


賃金引き上げは物価上昇を後追いするものだ
14年度3.3%の物価上昇を来春闘で補てんできるか

 黒田日銀総裁は「物価が上がれば賃金も上がる」と力説するが、過去の経験からいえば賃金は物価を後追いするに過ぎない。今春闘のベースアップ統一要求もまた前年度(2013年度)に実現した消費者物価上昇率を補うはずのものだったが、実績は前述のとおり物価上昇を補てんできるベースアップではない。

 続く2014年度の消費者物価上昇率(生鮮食品除く)は日銀の想定によれば3.3%の上昇となる。このうち2%分は消費税引き上げによるものだというのだが、雇用者の生活にはこのような言い訳は関係ない。日銀が予想に従えば、3.3%の消費者物価上昇が賃金(ベースアップ)上昇に先行することになる。

 アナリストの予想に従えばアベノミクスによる円安株高効果が一巡するため2014年度の予想経常増益率は一桁台に低下するという(本ブログ「アベノミクス相場を揺すぶる2014年度業績予想」参照)。この低い増益率を前提に来春闘では3.3%物価上昇を後追いして補てんする3%以上のベースアップ率を実現することができるのだろうか。大いに疑問だ。

 このままだと2013年度も2014年度も雇用者の実質生活水準は切り下げることになり、「近来まれに見る給料アップ」などと自慢できる状況ではない。

2014年3月17日 11:47

アベノミクス相場を揺すぶる2014年度の業績予想

(2014年3月17日筆)

 先週、日経平均株価は一週間(3月7日終値~14日終値比)で946円下落の大幅下落となった。週間下落率は▲6.2%となった。この大幅下落は、クリミア半島情勢の緊迫化と中国の景気減速(民間債券のデフォルト懸念、影の銀行不安)という2つの海外要因が引き金になったという。


日経平均の下落率はロシアに次ぎ世界でも突出
外国人投資家の「アベノミクス離れ」が始まった?

 しかし、クリミア緊迫化の当事者である米欧の週間下落率は、米ダウ▲2.35%、独DAX▲3.15%と日本の半分以下だった。ウクライナへの軍事介入の当事者、ロシアRTSの週間下落率が外国資金の逃避発生で▲8.32%と主要国で最大となったが、日本の日経平均株価の週間下落率が▲6.2%とロシアに次ぎ世界でも突出した下落率になったのは意外だった。なお景気減速懸念の中国上海総合の週間下落率は▲2.47%にとどまった。

 なぜ日本が世界でも突出した下落率となったのか。第一に中国及びウクライナリスクの発生で逃避先通貨としての円買いが発生、円高と中国景気不安のダブルパンチで業績不安が台頭、輸出株が売られた。第二に東京市場を支配する外国人投資家がリスク回避から日経平均など株価指数先物買いを手仕舞う(株安)と同時に円先物売りを買い戻した(円買い=円高)ことから円高株安が加速したためだという。

 ただそれだけではロシアの下げに次ぐ大幅な下落を説明できない。昨年15兆円も日本株を買い越した外国人投資家は今年に入って2か月連続の売り越しに転じている(1月約1兆1696億円、2月829億円のそれぞれ売り越し)。日本の円安株高を支えた外国人投資家の「アベノミクス離れ」が始まっているのではないかという疑念が生じ始めている。

 かりに外国人投資家の「アベノミクス離れ」が進んでいるとすれば、その最大の要因は「円安株高」に牽引された日本の景気回復、企業業績の上昇が一巡したという判断が芽生えたからではないか。外国人投資家は自らが演出した「円安株高」に代わる景気回復、株価上昇要因を日本国内から発見できないでいるようだ。


日本の実質成長率は昨年7~9月期から急減速
「街角の景況感」は東日本大震災直後以来の悪化

 実際、日本の実質経済成長率の伸びは13年1~3月期4.5%、4~6月期4.1%をピークに急減速、7~9月期0.9%、10~12月期0.7%と大幅に伸びを鈍化させている。7~9月期以降の伸び鈍化は、民間消費支出の成長寄与度の大幅低下と純輸出(輸出-輸入)のマイナス寄与度の拡大が主因となっている。

 民間消費の寄与度低下は米FRBによる量的緩和縮小示唆による昨年5月以降の株価下落と無縁ではない。それまでの株価上昇による高額消費などの拡大、いわゆる消費への資産効果が株価下落で薄まったと推察される。純輸出のマイナス寄与度の拡大は円安に伴う化石燃料や電子機器、雑貨等消費財の輸入金額の累増が響いた。競争力の低下や海外生産の拡大が影響して円安にも関わらず輸出数量がなかなか伸びないことも誤算だった。外国人投資家主導による「円安株高」依存の景気回復の脆さが表面化したといえそうだ。

 気になるのは景気の先行きである。14年1~3月期のGDPは消費増税直前の駆け込み需要の盛り上がりで伸びが回復するとされるが、駆け込み需要の反動減が予想される4~6月期の落ち込みが懸念されている。その懸念は2月の「景気ウォッチャー調査」に色濃く表れた。

 経済現場の声を集めた「景気ウォッチャー調査」は「街角の景況感」と呼ばれ株価との連動性が高い指標だ。足元の「街角の景況感」は1月、2月と連続して低下した。一方、2~3ケ月後の景気を見る先行き判断指数は3か月連続悪化、2月の判断指数は40.0へ前月比9ポイントも低下した。下落幅は東日本大震災に見舞われた2011年3月以来となった。消費増税前の駆け込み需要の反動減を恐れ小売、飲食関連の先行き景況感が著しく低下したためだ。


アナリストの来期業績予想は軒並み大幅低下
6%前後の予想純利益増益率では上値は限定的

 先行き懸念は来期、2014年度の業績予想にも表れている。3月期決算会社に先駆けて発表された12月期決算会社の14年度予想経常増益率(野村証券予想)はわずか0.19%増(13年度実績は25%増)にとどまった。12月決算の主要企業にはキヤノン、ブリヂストン、キリンHD、アサヒGHDなど優良企業が含まれるが、その2014年度経常利益はほぼ横ばいと予想された。

 同じ野村証券が3月5日発表した3月期決算の業績予想(主要295社)によると2014年度予想経常増益率は8.4%(13年度予想34.3%増)と大幅に伸びが鈍化する。SNBC日興証券の業績予想(主要250社、2月25日発表)でも14年度予想経常増益率は10.5%増(13年度予想34.9%増)に低下する予想だ。最新の「会社四季報」2014年春号によると、全上場3138社を総合した2014年度予想経常増益率は7.9%増(13年度予想30.5%増)に減速する予想だ。

 「予想純利益」は株価に最も影響を与える予想PER(株価収益率)の算定基礎になる。その2014年度予想純利益の増益率に至ってはSNBC日興証券予想の12.1%増(13年度60.2%増)が最大で、野村証券予想は6.3%増(13年度予想64.8%増)、会社四季報予想では5.9%(13年度予想63.2%増)にとどまる。

 昨年一年間で日経平均株価は57.8%も上昇した。その上昇率は60%を超す2013年度の予想純利益増加率にほぼ符合する。昨2013年の株価は純益増加率を正確に織り込んだといってよい。では2014年の日経平均株価はどうか。6%前後の伸びにとどまる野村證券や「会社四季報」の2014年度純利益予想に従えば、2014年の日経平均株価上昇率は一桁台にとどまるという予想が成り立つ。

 外国人投資家には利益の伸びが低いと予想される日本株を買い越す理由はない。加えて安倍総理の靖国参拝、安倍総理周辺による国家主義的な発言、侵略戦争を謝罪した「村山談話」、従軍慰安婦問題を謝罪した「河野談話」の見直し問題など国際経済関係に軋轢をもたらす要因が噴出している。経済優先を忘れ、対中韓関係だけでなく対米関係をも悪化させかねない安倍政権を外国人投資家が日本株買いで支援する気になるはずがない。

 外国人投資家が日本株を見放せばアベノミクス相場は一巻の終わりとなる。

2014年3月10日 12:21

ロシアの「クリミア侵攻」と対ロ制裁の代償

(2014年3月10日筆)

 ロシアのウクライナ・クリミア半島への軍事力による実効支配、表現を変えれば「クリミア侵攻」が着々と進んでいる。プーチン・ロシア大統領は「反ロシア政権からのクリミア半島のロシア系住民の保護」が目的だという。クリミア住民の6割をロシア系が占めるからだ。

 たとえは悪いが、九州の住民の6割が中国系日本人だとしよう。日本に強烈な反中国政権が誕生したのに対抗、「反中政権から中国系日本人の保護」を名目に中国が軍事力で「九州侵攻」に踏み込んだようなものだ。軍事的侵攻、侵略の多くは現地居留民の保護をお題目に実施される。中国で発生した排外民族運動・義和団の乱(1900年)に際し、日本、ロシアを中心に8カ国が外国租界の居留民保護を名目に派兵した古典的帝国主義の歴史が思い出される。

 住民の6割がロシア系といっても彼らはウクライナ国籍を持つウクライナ人だ。残り4割のウクライナ人はロシアへの隷属を拒否している。クリミア半島も国際法で認められた明確なウクライナの領土だ。ウクライナに属する領土と住民をロシアという他国が侵略、実力で実質的に併合するという暴挙が許されるわけがない。

 ロシアはG8のメンバーとなり先進国の一角を占める。しかし、今回の「クリミア侵攻、ウクライナ侵略」でロシアが自由や人権、民主主義、国際法遵守の近代思想とは程遠い後進「独裁国家」であることを改めて知らされた思いだ。


深い相互依存関係にあるEUとロシア
ドイツのロシア産天然ガス依存度は39%

 このロシアの暴挙に対してアメリカ、EU(欧州連合)は対ロ経済制裁に踏み切ったが、ロシアがクリミア半島から撤兵する動きは全く見られない。「クリミア侵攻」を機にプーチン大統領のロシア国内での支持率は60%台前半から67.8%に急上昇したという。この勢いだとロシア系住民の多いウクライナ東部へのロシアの軍事介入すら懸念される。

 ロシアはアメリカとEU、日本の間にある対ロ経済制裁の足並みの乱れを見透かしているように思える。アメリカはロシアやウクライナ前政権当局者に対する米国内の資産凍結や米国への渡航禁止という制裁に踏み切ったが、EUは3段階の経済制裁を準備、第1段階ではビザなし短期渡航交渉の停止や貿易・投資関係強化の交渉停止など弱い対ロ制裁に止めている。対ロ経済関係が薄く、対ロエネルギー依存度が低いアメリカとEUとで対ロ経済制裁の度合いが異なって不思議ではない。

 EUが対ロ制裁に慎重な理由は、ロシアと経済の相互依存関係が深いからだ。EU・ロシア間の輸出入総額は3459億ユーロ(2012年、約38兆円)にのぼる。EUはロシアの成長とともに輸出を拡大してきたが天然ガスなど資源輸入が大きくなお大幅な輸入超過状態にある。ドイツのロシア産天然ガスへの依存度は39%にのぼり欧州全体のロシア産天然ガスは国内消費の約3分の1に達する。

 ロシアがEUによる対ロ制裁の段階的強化に対抗してロシア産天然ガスの供給停止に踏み切れば、原発稼働停止を決めているドイツは電力電源不足に直面する。欧州ではガス備蓄が約4か月分あり当面は電源不足に対応できるが、天然不ガス価格の上昇は必至で、その天然ガス価格はドイツだけでなく原発全面停止状態の日本をも直撃する。


経済制裁の応酬で欧州金融危機が再燃する恐れ
ウクライナが破綻すればロシアの銀行も危機に

 相互の経済制裁がエスカレートすれば金融不安が再燃する懸念もある。日経電子版3月9日付け「新冷戦でもつれるロシアと米欧経済の糸」によれば、ロシアへの外国銀行の与信(融資)総額は約2420億ドル(約25兆円)でインドやトルコ向けの与信総額に匹敵するという。主な貸し手は、フランス508億ドル、アメリカ367億ドル、イタリア285億ドル、ドイツ237億ドルなど欧米の銀行だ。経済制裁の結果、ロシアの債務不履行が表面化すれば、小康状態にあるフランス、イタリアなど金融危機が再燃する。

 ロシアの侵攻を受けたウクライナはすでに債務不履行寸前の財政状態にある。ウクライナ政府の対外債務は1400億ドル(約14兆円、GDP比80%)に達する。主な貸し手にはイタリアの57億ドル、ギリシャの14億ドルが含まれるが、イタリア、ギリシャなど南欧の重債務国の財政収支の改善はほとんど進んでおらず、ギリシャを筆頭に国債急落、金利急騰というEU金融危機の再燃が懸念される。

 一方、ロシアの銀行のウクライナへの与信額は280億ドルと最も多額だ。ロシアのウクライナ侵攻は、ウクライナの債務不履行を経由してロシアの銀行の経営不安に跳ね返ることになる(日経電子版3月10日付け「世界を襲う『無重力』の連鎖」)。

 いつの世も経済制裁の行き着く先は戦争だ。戦争は欧米日とロシアの経済金融の相互依存関係を破壊し世界同時不況を招くことになる。経済の相互依存関係が深まれば深まるほど、クリミア半島をめぐる欧米とロシアの戦争であれ、尖閣列島をめぐる日中戦争であれ、戦争は世界経済の連鎖を破壊し破局を招く。最後まで外交的な解決を図るしかない。


緊張激化で円高、外国人依存のアベノミクスに試練
北方領土に気を取られ日米同盟に背を向けるリスク

 そこで日本への影響だが、アベノミクスの第3の矢「成長戦略」への不満、農産物関税をめぐる日米TPP交渉の難航、安倍総理の靖国参拝への「失望」などが重なり、年初来、外国人投資家の日本株売りが浮き彫りになっている。

 そこにウクライナ緊張が加わり、経済制裁の応酬から金融市場で「リスクオフ(回避)」が強まる。そうなれば、「安全資産」としての円が買われ円高が進行、日本株が売られることになる。消費増税による景気急減速も間近だ。円安株高の終わりはアベノミクスの終わりでもある。

 安倍総理は就任後5回もプーチン大統領と会っている。だが、その親密ぶりにもかかわらず今回の「クリミア侵攻」を見れば、プーチンは第2次世界大戦の戦利品でありロシア人がすでに定住している国後、択捉など「北方領土」を日本へ簡単には返還しないと思われる。にもかかわらず北方領土返還に気を取られ安倍政権がオバマ米大統領の対ロ政策に背を向ければ日米同盟が危うくなる。日米同盟が危うくなって喜ぶのは尖閣諸島の実効支配の機を虎視眈々と狙う膨張主義国家・中国だけだ。

 最も大切な隣人、中国と韓国との外交関係を素通りし、ロシア、トルコなど未成熟な周縁国に接近する安倍総理の「ドーナツ外交」はロシアの「クリミア侵攻」で頓挫しかねない。

2014年3月 3日 12:33

表在性膀胱癌の「内視鏡手術」体験記

(2014年3月3日筆)

 2月19日、内視鏡電気メスによる表在性膀胱癌の切除手術を受けました。2時間半の手術中、カラーモニターに映し出された手術の模様をずっと見ていました。フィラメント状の電気メスで膀胱の内膜にある面的に広がった癌部分を焼き切ったり剥ぎ取ったりする手術をまるで他人事のように見ていました。

 術前に脊椎麻酔が施されていました(脊椎麻酔は非常に痛いと聞いていましたが、医療技術が進歩しているのでしょうか、痛みはそれほどでもありませんでした)ので手術の痛みはほとんどありません。膀胱内膜の癌部分切除後も痛みはほとんどありませんでした。下腹部切開手術ではなく神経の少ない膀胱内の内視鏡手術だったからでしょうね。


膀胱癌自体の術後は順調、1週間で退院できました
だが途中、腎盂炎の併発には泣かされました

 術後は膀胱内に残存する術後の血液や切除された内膜の残滓を尿道に施されたゴム状のパイプを通じて外部へ排泄するのが小生の仕事になりました。そのために水分を毎日1500ミリリットル以上(500ミリリットルのペットボトル3本)摂取するよう主治医に言い渡されました。水分を大量に摂取すれば術後の血液や残滓がパイプを通じて自動的にスムーズに流れ出すからです。流れ出した尿は排尿袋に貯められます。尿の色は最初、トマトジュース状の赤色でしたが、やがて薄いピンク(ワインのロゼのような)に変化していきました。膀胱の術後回復が尿の色の変化で実感できました。

 尿の色がロゼ色から通常の尿に近い黄褐色に変じようとしていた手術5日後の23日(月)には尿道に施された自動排尿用パイプが外されました。ここからは自力排尿となります。主治医からは自動排尿用パイプを外した時点で「もうすぐ退院です」と告げられています。自力排尿に当たっては、頻尿と排尿時の痛みが大いに気になりました。ただ、頻尿状態は続きましたが排尿時の痛みは徐々に薄れていき退院が近いと感じました。

 手術からちょうど1週間後の3月26日(水)の午前10時、無事退院となりなりました。帰りは渋谷(広尾)の日赤医療センターから家内の弟(義弟)の車で約2時間半、新所沢の自宅にたどり着きました。頻尿状態は継続していますのでプラスチック製の尿瓶(しびん)を携えて乗りましたが、途中、外食店で用を足すことが出来、尿瓶は不要となりました。入院は歴史的な大雪の直後、寒い冬の日(2月18日)でしたが退院の日の26日は4月上旬並みの暖かさでした。これも幸いしたようです。

 こう書くと術後の経過は至極順調だったように思えますが、途中苦しい場面もありました。手術前に膀胱癌が腎臓に転移していないかを内視鏡で調べたのですが、その際、腎臓を刺激したため腎盂炎を併発したようです。手術直後から左腰に強い痛みが走り37度後半の熱が断続的に続きました。腎盂炎は点滴で何とか収まりましたが、眠れない夜を二晩ほど過ごすことになりました。おかげさまで朝方放映のソチ五輪、浅田真央さんの素晴らしいフィギュアスケート・フリー演技を最後まで見ることができました。これを怪我の功名というのでしょうか。


家内は退院までずっと付き添ってくれました
医療費は8万円だけ、健康保険制度の素晴らしさ実感

 最後に家内同伴の入院生活について報告しておきます。当初、家内は恵比寿のビジネスホテルを予約、そこから通って入院から術後の3日間だけ朝から晩まで小生に付き添う予定でした。新所沢の自宅から広尾の日赤まで西武線、山手線、日赤までのバスを乗り継いで往復4時間近くかかるからです。

 しかし、小生が術後の腎盂炎併発で苦しんでいるのを見かねて、ビジネスホテルに1泊しただけでその後は病室に簡易ベッドを持ち込み(貸借料は毛布込みで1500円)、退院までずっと付き添ってくれました。奮発して1泊2万9500円の個室にしたことが幸いしました。個室とはいえ病室に退院まで1週間も寝泊まりした付き添いなど珍しいのでしょうか、看護師さんらも怪訝な顔をしていました。

 看護師さんは小生の無理難題を良く聞いてくれました。看護はほぼ完ぺきでした。これ以上、家内の付き添いなど要らないと思う方もいらっしゃるかもしれません。しかし、家内は、水分の補給のためのペットボトルの買い出し、まずい入院食の代替食料の買い出し(膀胱癌には食事制限はありません)などこまめにやってくれました。それ以上に家内は、痛ければさすり、頻尿を気遣い、幼児性の強い前期高齢者の心の支えになってくれました。ありがとうございました。

 さて手術費用ですが、小生が退職後も加入している出版健康保険組合から「健康保険限度額適用認定書」を発行していただいたおかげで総額8万円でした。「限度額適用認定書」があれば8万円を上回る医療費は健康保険が負担する仕組みだそうです。日本の医療制度の素晴らしさを実感した入院生活(個室代金を含めると入院費総額は約35万円)でした。

 今後は小生、膀胱癌の再発、転移を予防する治療に入ります。3月6日にその治療計画が主治医から明らかにされます。小生の退職後人生の原点でもある、この早稲田総研「クオンネット」のブログ執筆、早稲田大学オープンカレッジの講義(春講座は4月12日スタート)はよほどのことがない限り、続けたいと思っています。ご愛読、よろしくお願いします。
プロフィール
ニックネームさん
大西良雄(経済ジャーナリスト)
上智大学卒業後、東洋経済新報社に入社。記者を経て「月刊金融ビジネス」、「週刊東洋経済」編集長を歴任。出版局長、営業局長の後、常務第1編集局長を最後に独立。早稲田大学オープンカレッジ講師のほか講演・執筆活動。
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