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大西良雄ニュースの背後を読む

2013年11月

2013年11月25日 13:39

官僚の権力独占もたらす「特定秘密保護法案」

(2013年11月25日筆)

 「論語」に「由(よ)らしむべし 知らしむべからず」という言葉がある。「人民は為政者の施政に従わせることはできるがその道理を理解させることはむずかしい。転じて、為政者は人民を施政に従わせればよい(由らしむべし)のであり、その道理を人民にわからせる必要はない(知らしむべからず)」(デジタル大辞泉)という意味だという。


「由らしむべし 知らしむべからず」の秘密保護法
なぜNHKは法案の国会審議を放映しないのか

 この11月26日にも衆議院で採決されるという段取りだという「特定秘密保護法案」の論議では「由らしむべし 知らしむべからず」の言葉通りの事態が進行している。人民は「特定秘密」保護の必要性など理解できないのだから、さっさと法律を成立させて人民を法律に従わせればいいといっているのだ。

 5人もの安倍総理の個人的縁故者を新しいNHK経営委員理事に送り込んだ成果が出たのだろうか、NHKはこの重要な「特定秘密保護法案」の衆院国家安全保障特別委員会での審議を放映しなかった。NHKもまた、理解できない愚かな国民には「知らしむべからず」とする安倍政権に肩入れしているのだろうか。

 時折ニュースで放映された森雅子秘密保護法案担当相の発言も右往左往して要領を得ない。委員会での野党質問に対して森大臣は「野党との修正協議に影響を与えるので答えられない」というばかりで大臣から法案の実際が正しく詳細に国民に知らされることはなかった。

 実際、この法案は国民から見て解らないことだらけなのだ。第一に、なぜいまこのような「特定秘密保護法案」が必要なのかがわからない。自民党筋は、日本に安全保障上の極秘情報を伝えてもすぐ漏れる、アメリカに極秘情報を教えてもらうには秘密保護が必要だという(法案説明ではこのようには答えていない)。 

 ではこれまでどのような極秘情報が漏れたのか、その結果、アメリカからどのような極秘情報を教えてもらえなかったのか、国民には解らない。それを開示するのも秘密だと言われれば国民は「特定秘密保護法案」の必要性を判断する手がかりを失ってしまう。


修正案でも解決できない「特定秘密」の拡張解釈
官僚批判の看板を捨てたに等しい「みんなの党」と「維新」

 第2に最も肝心なことだが「特定秘密」とは何かが、解らない。一応、防衛、外交、特定有害活動(スパイ活動)、テロリズムの四項目が「特定秘密」に指定されることになっているが、それを指定するのは行政機関の長(実質的には官僚)で、特定秘密の範囲が曖昧、いくらでも拡張される可能性を秘めている。

 小生も朝日新聞10月26日朝刊に掲載された「特定秘密保護法案(全文)」に目を通したが、役人が書いた難解で、回りくどい法律文章を読みこなすのは困難を極めた。しかも随所に「その他の重要な情報」とか「その他安全保障に関する重要なもの」などという「特定秘密」を際限なく広げることができる「その他」が出てくる。

 役人は法案を作成するにあたって拡張解釈を可能とするために「等」と法案に書き込む。それと同じで「その他」は法律の拡張解釈を可能とする文言となり、役人が秘密権限を増やし権力を行使しやすくする装置になるかもしれない。

 自公両党とみんなの党、日本維新の会が合意した修正案では「その他重要な情報」という文言はいくつか削除されている。しかし「その他」を削除する代わりに、外交に関する「特定秘密」については「国際社会の平和と安全に関する重要な情報」、特定有害活動とテロリズムについては「国民の生命及び身体の保護に関する重要な情報」という文言が付け加えられた。「その他」が拡張解釈しようと思えばいくらでも拡張できる抽象的文言に置き換わったに過ぎない。

 役人の猿知恵にみんなの党も維新も丸め込まれてしまった。官僚批判の急先鋒だった両野党は看板倒れだったようだ。

 こんな範囲が曖昧な「特定秘密」にもかかわらず、行政機関の長が指定する「特定秘密」の取り扱いに従事する者がその業務で知得した特定秘密を洩らした時は、「10年以下の懲役および1000万円以下の罰金に処す」という。さらに特定秘密を漏らす行為の遂行を共謀し、教唆し、または扇動した者は「5年以下の懲役に処する」となっている。


秘密漏えいした国会議員や裁判官は逮捕される?
行政(官僚)権力だけが肥大、危うくなる三権分立

 この「特定秘密」の取り扱いに従事する者には行政機関の長(大臣)や自衛官や警察官、公安庁職員など現場の国家公務員が含まれることは理解できる。しかし立法を司る国会議員が議会での質疑応答で「特定秘密」を漏えいした場合、国会議員の不逮捕特権は認められるのか。さらに国会議員は国民の代理人として「特定秘密」の指定を監視する権限を持つのか、漏えいされた「特定秘密」に関する国政調査権を行使できるか、これがよく解らない。

 あるいは司法を担当する裁判官や弁護人、検察官が裁判での立証、反証、判決の過程で「特定秘密」を洩らした場合、逮捕されるのか。裁判官は基本的人権や表現の自由を巡る「特定秘密保護法」の違憲性を判断することができるのかどうか。違憲裁判の過程で「特定秘密」の漏えいに問われれば裁判官も弁護人、検察官も裁判ができなくなるではないか。

 こうした「特定秘密保護法」への懸念が実現するようなことになれば、日本国憲法が保障する立法、行政、司法の三権分立体制は瓦解する。「特定秘密保護法」によって立法や司法の手足が縛られれば、行政の権力独占が進み、役人と一部政治家の言いなりの国家が出来上がる懸念すらあるのだ。

 国家権力からの自由をわが先輩、石橋湛山(第二代自民党総裁、元総理)は説いた。彼が想定した国家権力とは旧陸軍など軍事官僚の権力だったが、いまは行政の執行者である官僚全般の権力を指してよいだろう。官僚は「特定秘密保護法」によって公然とは自らの権限行使に都合の悪い事項を「特定秘密」に指定し世論や国民からの批判を免れることができる。国民や世論からのコントロールが効かなくなれば、官僚権力は肥大するばかりだ。国民は石橋湛山の言う「国家権力からの自由」を奪われてしまうのだ。

 こうした懸念が杞憂であることを願う。NHKの「日曜討論」(11月24日)で公明党の北側一雄副代表は「国民には法案の中身について十分ご存じない方々もたくさんいる」と発言、中身を知れば「特定秘密保護法案」に対する不安はなくなるはずだと言いたげだった。北側氏は小生の懸念は杞憂であるといっているのだろう。しかしその説明を公明党が国民に十分しているとは到底思えない。


権力がジャーアリストの取材源(公務員)を暴く危険
反基地、反原発の市民運動家も逮捕されかねない

 もう一つ、「特定秘密」を洩らした「公務員と共謀」し、「公務員を教唆、扇動した者」とは何かが、解らない。

 新聞記者、雑誌記者などジャーナリストは国家権力(公務員)が抱え込んだ秘密を暴き国民に事実を提供することで国家権力の横暴を牽制するのが重要な仕事の一つだ。そのためにジャーナリストは「共謀、教唆、扇動」することは大いにあり得る。彼らが新聞紙上などですっぱ抜いた権力の秘密が「特定秘密」とされれば、取材源(公務員)の明示を警察権力によって求められる可能性がある。

 権力の秘密をすっぱ抜いたジャーナリストは、取材源との間に「共謀、教唆、扇動」の関係が認められれば逮捕されるのだ。

 「特定秘密」に指定される項目には「防衛に関し収集した電波情報、画像情報その他重要な情報」という項目もある。テロリズムの防止に関する「特定秘密」の具体例として「原子力発電所の警備状況」も挙げられていた。これらの特定秘密には反基地、反原発の市民運動家らが「共謀、教唆、扇動」の対象者になりかねない。テロリストやスパイではない、政府活動を批判的に監視する市民運動家や一般市民が逮捕される可能性もあるのだ。

 今回の「特定秘密保護法案」は国民の基本的人権を踏みにじり戦争への道をひたすら歩む装置の一つとなった戦前の軍機保護法(1937年制定)、治安維持法(1941年制定)になぞらえる人もいる。政府は「特定秘密保護法案」がそんな恐ろしい法律ではないと国民が納得できるまで説明を尽くすべきだ。説明しても国民が納得しないのなら廃案にすべきではないだろうか。

2013年11月18日 10:33

みのもんたと板東英二の老残哀れ

(2013年11月18日筆)

 最近、69歳、72歳と高齢期に差し掛かったタレントをめぐって考えさせられる事件がいくつか起きました。小生もすでに68歳、死に至るまでの今後の生き様を思うにあたって、事件を他山の石にしなければならないと思っています。

 69歳のタレントとはアナウンサーの「みのもんた」氏、72歳のタレントとは元プロ野球選手の「坂東英二」氏のことです。いずれも引き際を間違い、天下に老残を晒してまで生きようとしています。


次男坊の不祥事のせいだけで降板させられたのではない
嫌われた「底の浅い正義感」「ひどい思い込み」「しつこい繰り返し」

 みの氏は、次男坊が警察沙汰になる不祥事を起こしたことから「みのもんたの朝ズバ!」などTBSの2つの報道番組を降板させられました。この降板に対してみの氏は「30過ぎた立派な成人になった息子の不祥事の責任をなぜ親が取らねばならないのか」と盛んに反発、世論に逆ねじをくらわせています。

 しかし報道番組を降板させられたのは息子のせいだけではないことをみの氏もわかっているはずです。みの氏は、月刊「文芸春秋」の最新号(2013年12月号)で「なぜ私はなぜここまで嫌われたのか」と題した手記を書いているからです。彼は息子のせいで私は嫌われたと言いたいのでしょうが、そうではありません。みの氏自身のせいで嫌われたのです。

 小生、本ブログの2007年12月20日筆の「影の総理"みのもんた"?」でこのように書いたことがあります。

『私など、会社務めを辞してから「朝のワイドショー」を見る機会が多くなりました。ただ、たくさんある「朝のワイドショー」のなかでも「みのもんた」が出ている「朝ズバ!」(TBS)だけは見ないようにしています。朝は、静かにニュースを聞きたいのに、朝っぱらからいきなり安っぽい揚げ物を食わされて、胃もたれがする感じになるからです。』

『「みのもんた」といえば、昼のワイドショー「おもいっきりテレビ」で人気をあげ、いまや億万長者になっている司会者です。叱ったり怒鳴ったりして分別くさそうに人生相談に答える、効くのか効かないのかよく分からない健康コーナーがウリで、主婦たちの支持を得たそうです。「朝ズバ!」でも同じ手法を持ち込み、「底の浅い正義感」と「単純な割り切り」を駆使して、ただただ怒鳴りちらしているように私には見えます。ですから、胃もたれするわけです。』

 最近の「朝ズバ!」でのみの氏には「底の浅い正義感」、「単純な割り切り」に「ひどい思い込み」と「しつこい繰り返し」が加わっていました。「思い込み」は不勉強の証しですし「繰り返し」は老人にありがちな現象です。

 彼は「朝ズバ!」を「バラエティ報道番組」と言っているそうですが、ニュースを扱う番組である限り正確さや公平性が求められます。みの氏は「バラエティ」といいながら自らの「底の浅い正義感」による不正確な判断からニュースを斬っているのです。不遜な仕業です。

 みの氏が、嫌われたのは「底の浅い正義感」「単純な割り切り」「ひどい思い込み」「しつこい繰り返し」である点に気が付いていないとすれば、それは残念なことです。視聴者はTBSがこんな不勉強なキャスターもどき(本人はニュースキャスター気取りです)のみの氏に1日200万円もの巨額のギャラを払っていたことに怒っているのです。みの氏に法外のギャラを払い、傍若無人の「裸の王様」に仕上げたのはかつて「報道のTBS」と賞賛されたテレビ局だったのです。それも皮肉なことでした。


文化人枠の出演ギャラは超薄謝、タレント枠は超高額
みの氏は非正規社員の年収を1日の午前中のギャラで得る

 テレビ局の出演ギャラはタレント枠と文化人枠の2つがあるそうです。ニュースを解説する文化人枠は超薄謝、バラエティ番組でおバカぶりを売ったり楽屋落ちの話題で笑いを取ろうとするタレント枠は文化人枠の20倍、30倍のギャラだといいます。その果てが、みの氏の1日200万円なのです。

 繰り返して申し訳ないのですが、国税庁調べでは非正規社員の平成24年の平均年収は201万6000円です(本ブログ2013年11月5日筆「みずほ頭取の年間報酬は高いのか安いのか」)。非正規社員の1年分のギャラをみの氏は1日の午前中の働きだけでTBSから受け取っているのです。勉強もしないで、思い付きでコメントしていても非正規社員の年収を1日で稼ぐ、そんなみの氏など見たくもないというのが視聴者の実感でしょう。


72歳の脱税タレント「板東英二」の見苦しい弁明
巨額の報酬を忘れ、「老兵は死なず、ただ消え去るのみ」

 72歳のタレント「板東英二氏」も脱税を犯してテレビ番組から追放されましたが、事件発覚の1年後に初めて弁解の記者会見を開きました。その狙いは会見によってテレビ界のお許しを経て再びテレビ画面に出たい、つまり法外なタレント枠のギャラを得たいということになるのでしょうか。

 しかし、坂東氏は、7500万円脱税の原因を聞かれ、「植毛費が経費として認められなかったためだ」と答え世間の嘲笑を浴びています。坂東氏クラスのタレントでも7500万円脱税できるほどの巨額の報酬がテレビ(とその波及による高額な講演代、CM収入など)から得られていることにまず驚きます。それ以上に7500万円も植毛費にかかったという弁明に開いた口が塞がりません。そんな弁明でもテレビに復帰できるとすればテレビ局、ひいては視聴者もなめられたものです。

 坂東氏は酸いも甘いもよくわかったはずの72歳です。誰が聞いても納得できない弁明をしたにもかかわらず、涙ながらにテレビへの復帰を訴える姿は見るも哀れ、老残の極みです。巨額の報酬が忘れられないのでしょう。このままでは甲子園を沸かした徳島商の剛速球エース「坂東英二」の名がすたりますよ。

 坂東氏もみの氏も、自分はまだテレビ画面で必要とされている、賞味期限はまだ来ていないと思い込んでいるのでしょう。しかしかつての「伸介」がそうであったように、「タモリ」も「さんま」も、そして「たけし」も画面から去ればみんなすぐ忘れてしまいます。まして坂東氏やみの氏がテレビ画面に出なくても視聴者は何の痛痒も感じません。

 賞味期限がとっくに過ぎていることに気付いていないのはご本人だけだとすれば、それもまた哀れです。日本の占領軍司令官だったグラス・マッカーサー将軍は引退するにあたって「老兵は死なず、ただ消え去るのみ」といったそうです。

 まだいける、まだ稼げると思い込んで、結局、老残を晒さすことになるぐらいなら、ただ静かに「消え去る」ほうがずっと幸せなのではないでしょうか。両氏ともタレント枠で溜め込んだ資産で老後生活など心配はないのでしょうから。

2013年11月11日 10:18

復興特別所得税の減税のほうが公平、効果がある

2013年11月11日筆)

 東日本大震災の復興財源を捻出するために2年間の特例措置として国家公務員給与を平均7.8%減額したが、安倍政権はこれを2014年度以降延長しない、つまり国家公務員給与を減額前に戻すという方針を決めたと報じられた。

 これに合わせ地方公務員の給与減額特例(7割の自治体が国家公務員に準じて減額を実施したという)を廃止、地方公務員の給与も減額前の水準に戻すことを政府は期待しているという。

 先に政府は3年間限定の復興特別法人税を1年間繰り上げて廃止(減税)することを決めた。日本の法人税率は国際的に見て高く国内投資の障害になっている。だから法人減税を実施するというのが本筋だが、安倍政権は復興特別法人税の減税分約9000億円が賃上げの原資となることを期待するという。

 公務員の給与減額特例の廃止の狙いも賃上げにある。中小企業の中には地方公務員の給与水準を参考に賃金を決めている企業が少なくない。国家公務員が減額特例を延長しない(7.8%賃上げする)ことに連動して地方公務員の賃上げが実現すれば民間の中小企業が準じて賃上げに踏み切るという理屈なのだ。


なぜ法人と公務員の復興費負担を優先して軽減するのか
賃上げ経由の実質所得目減り対策は回りくどく不確かな

 東日本大震災の復興財源は3年間の復興特別法人税(約2.7兆円)、25年間の復興特別所得税(約7.4兆円)、2年間の国家公務員の給与減額(約6000億円)などによって担われている。安倍政権は、このうち法人向けの復興特別法人税と公務員向けの給与減額を廃止し、基準所得額の2.1%を増税する個人向けの復興特別所得税は存続させるというのだ。都道府県民税、市町村民税の10年間各500円の増徴はそのままで変わらない。個人は全く減税の恩恵に浴せない。

 安倍政権は、法人と官僚の復興負担を優先して軽減させ、国民(個人)には復興増税は続け復興負担を求め続けるという決断を下すことになるが、この決断は逆ではないだろうか。優先すべきは復興特別所得税の減税ではないだろうか。

 アベノミクスは円安を煽って輸出企業に儲けさせる一方、円安に伴う輸入価格の上昇という形で国民には生活物資インフレを押し付ける結果をもたらした。この春闘で企業から大幅な賃上げを勝ち取れなければ国民は消費増税インフレと円安(生活物資)インフレが重なる、いわゆるアベノミクスインフレに足をすくわれ「実質所得(実質生活水準)の切り下げ」に見舞われることになる。

 アベノミクスにとって国民の「実質所得の切り下げ」は最大のアキレス腱だ。これを繕うため何としても民間企業に賃上げを実施してもらわなければならない。このために安倍政権は政労使会議を作って労使に賃上げを呼び掛ける、復興特別法人税の廃止に伴い減税分は賃上げに使われたかどうか調査・監視を強めるなどの手段をとることになった。

 その上に今回は公務員給与を引き上げ民間給与の引き上げを促すというのだ。なぜ安倍政権は企業や公務員を経由する、このような回りくどい手段を弄するのだろうか。不可解だ。

 賃金決定は労使の自主的決定に委ね、労働生産性の多寡に従って決めるというのが最も合理的だ。労働生産性が高い企業は賃上げをすることができるが、労働生産性の低い企業の賃上げは難しい。ベースアップは年金や退職金、社会保険料負担に跳ね返る。日本の企業は途上国との人件費競争に迫られている。

 安倍総理に褒められ迫られてベースアップに踏み切りコスト競争に負けて「人件費倒産」を起こしたら経営者は罵倒されるのだ。政府の意に従った結果、人件費倒産したから政府に救済してくれと国民は倒産企業に税金を投入することを許すだろうか。冗談だが救済するなら賃上げを迫った安倍総理が支払うのが筋だ。だから、賃上げは労使の自己責任に委ねるべきなのだ。


国民の懐を直接温める復興特別所得税の減税が公平
アベノミクス最大の被害者・年金生活者をどうする

 民間企業の賃上げで消費増税インフレ、円安インフレによる「実質所得の目減り」を補うには極めて難しい(2013年10月28日の本ブログ「低給与産業、非正規社員の賃上げをどうするのか」を参照)。しかし賃上げがなければ実質所得は確実に切り下がり消費は減退する。

 実質所得の目減りを緩和するには、回りくどくて不確かな民間企業の賃上げを経由するより、国民の懐を直接温める復興特別所得税を減税する、住民税の上乗せを廃止するほうが効果はあるし、公平で望ましい。

 復興所得税の減税や住民税の上乗せ廃止であれば賃上げという手段を持たない年金生活者にも恩恵が及ぶ。そういう意味では公平な施策にもなる。

 年金生活者の生活水準は今後さらに低下する。2013年10月から年金支給額は1%減額された。これを皮切りに14年4月1%、15年4月0.5%、3回合わせて2.5%減額されることが決まっている。加えていま審議中の「社会保障改革プログラム法案」によれば2014年4月から70歳~74歳の医療費の自己負担額が1割から2割へ引き上げられることになる。高齢の高額所得者(高額の基準がまだあいまいだが)は医療費も介護保険料もさらに上がる。

 2014年4月から年金生活者の生活には3%の消費増税、2%の物価上昇(黒田日銀のインフレ目標)のうえに2.5%の年金支給減額、医療費負担の増加が覆いかぶさるのだ。それを補うのに株式運用で儲けようとしても2014年1月から株式値上げ益は10%から20%に引き上げられる。高齢者は若者より預貯金が多いというがアベノミクスインフレでそれも減価する。

 特定の法人や官僚の懐を温める不公平な復興特別法人税の繰り上げ廃止や公務員の給与減額特例の廃止より、年金生活者を含め国民すべてに恩恵が及ぶ25年間の復興特別所得税の減税や住民税の10年間上乗せの廃止のほうが公平だし、消費刺激効果が大きいと言わざるを得ない。

 なお、復興特別所得税を減税した分の復興財源をどうするという疑問が残るが、予定している復興特別法人税の減税分や国家公務員の給与減額分、あるいは復興特別会計予算の不用額(平成24年度1兆2240億円)を当てればよいと思うが、どうか。

2013年11月 5日 11:05

みずほ頭取の年間報酬は高いのか安いのか

(2013年11月5日筆)

 暴力団関係者への融資を放置した責任を問われたみずほフィナンシャルグループの佐藤康博頭取が責任を取って「半年間報酬ゼロ」にすると報じられ、報酬ゼロでは「奥さんがさぞお困まりになるだろう」と思わず同情してしまった。

 そう思うのは、佐藤氏は頭取とはいえ、オーナーでも2世でもない普通のサラリーマン経営者だという思い込みがあったからだろう。かつて中小企業のサラリーマン常務だった自分と同じ境遇だと思ったのが浅はかだった。


米ウォール街のグリード(強欲)な頭取より低い
だが行員平均年収の17倍、非正規社員の57倍

 佐藤氏の2012年度の年間報酬は1億1600万円で半年間報酬ゼロでも残り半分5800万円の報酬は受け取ることができる。半年間報酬ゼロでも奥さんが困ることなどあり得ない報酬を手にするのだ。

 年間報酬1億1600万円が多いのか少ないのか、見方は分かれるだろう。年間報酬30億円などざらの米ウォール街のグリード(強欲)な銀行経営者に比べればいかにも低い。東京新聞によれば三井住友フィナンシャルグループの国部毅頭取の年間報酬が1億2700万円だったから業界並みの報酬だった。

 しかし、みずほフィナンシャルグループ行員の平均年収673万円(平均年齢36.8歳、会社四季報2013年秋号調べ)と比べれば佐藤頭取の年間報酬はその17倍になる。前回の本ブログで紹介した非正規社員の年収201万6000円(月収16万8000円、国税庁調べ)と比べれば約58倍にもなる。比較対象を変えると佐藤頭取の報酬は目が飛び出るほど高いと映る。

 こうした比較も大切だが、もう少し見方を変えて1億1600万円が佐藤頭取の能力と成果にふさわしい金額であるかどうかという見方もあるだろう。

 話が古くなって恐縮だが、かつての銀行頭取には記憶に残る仕事をした人物がいた。みずほフィナンシャルグループを例にとれば、その前身の一つ旧興銀には中山素平、旧富士銀には岩佐凱實、旧勧銀には横田郁、旧第一銀には井上薫といった名頭取がいた。彼らが高額報酬を得ていたとしても違和感はない。

 しかし残念ながらバブル崩壊後、大合併で誕生したみずほ、三菱UFJ、三井住友などメガバンクの中からは記憶に残るような成果を上げた頭取が出ていないのではないか。そんな頭取にはお目にかかっていないように思う。

 昨年度来、銀行の利益改善が進んだ、これが頭取の業績だ、能力だといわれても誰も納得しないだろう。改善の多くは昨年度の「国債等債券損益」や今年度の「株式等関係損益」によるものだ。貸出は伸びずリスクをとって業績が改善したわけでない。国債価格の上昇と株価の上昇による単なる「ウインドフォール・プロフィット(たなぼた利益)」を頭取の業績というわけにはいかない。

 確かに、メガバンクは複数の銀行が合併してできた寄合所帯だから合併相手に気を遣いすぎて頭取がリーダーシップを発揮できる状況ではないという気の毒な面もあるだろう。それを割り引いても現在のメガバンク頭取の存在感は軽くて薄い。


能力、成果によって頭取になったわけではない
一人の頭取のために消え去った数千人の元同僚

 そもそも彼らには、能力があって、あるいは過去に多大の成果を上げて頭取になったのかという疑問がある。東大経済学部卒で旧興銀出身の佐藤康博氏が頭取になるまでに第一勧銀、富士銀、興銀出身者合わせていったい何人の彼の同期、彼の前後の先輩・後輩が消えていったのだろうか。その数は数千人に及ぶだろう。

 その消え去った数千人の銀行マンの中には人品骨柄、能力、そして行員としての業績いずれにおいても佐藤氏より優れた、あるいは佐藤氏と同等の人物がたくさんいたに違いない。佐藤氏が彼らとの厳しい能力競争を勝ち抜いて頭取になったとは到底思えない。そこはグリードなウォール街トップと異なる。

 もちろん無能な人物が頭取になることはあり得ない。しかし、佐藤氏は入行後に配属された部署、配属後つかえた上司、たまたま仕事で出会った銀行幹部などに恵まれた結果、頭取になり得たのではないだろうか。そうした銀行エリートのネットワークに入れず最後は出向させられ消え去った優秀な同僚がたくさんいたことを忘れては罰(ばち)が当る。ドラマ「半沢直樹」で見たとおりだ。

 50歳前後から銀行を去ることを余儀なくされた優秀な同僚が得ている現在の年収に比べると佐藤氏の1億1600万円の年間報酬はやはり高いと言わざるを得ない。佐藤氏の報酬額を聞いてその能力と業績(成果)にふさわしい額だと本心から評価する元同僚など一人もいないに違いない。

 苦労して会社を創業し知恵と努力の限りを尽くしてこれを育て上げた経営者が高額の役員報酬を得るのは当然だし違和感は全くない。しかし、さして飛び抜けた能力があるのでもない、多大な業績を上げたのでもない、単なるサラリーマン上がりの経営者への高額報酬には大いに違和感がある。どう考えても腑に落ちない。

 こう考えるのは、佐藤頭取には遠く及ばないささやかな役員報酬しかいただけなかった中小企業元常務のひがみ、ねたみによるものだろうか。そうだとすれば恥ずかしい限りなのだが......。
プロフィール
ニックネームさん
大西良雄(経済ジャーナリスト)
上智大学卒業後、東洋経済新報社に入社。記者を経て「月刊金融ビジネス」、「週刊東洋経済」編集長を歴任。出版局長、営業局長の後、常務第1編集局長を最後に独立。早稲田大学オープンカレッジ講師のほか講演・執筆活動。
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