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大西良雄ニュースの背後を読む

2013年3月

2013年3月25日 14:00

コメ生産の大規模化で輸出産業へ最後の挑戦

(2013年3月25日筆)

 政府は、TPP(環太平洋経済連携協定)交渉への参加表明に際して、「関税撤廃した場合の経済効果」についての政府統一見解を発表した。その試算結果は日本経済全体では実質GDPを毎年3.2兆円(0.66%)押し上げる効果を持つというものだった。


非現実的な前提が多い「関税撤廃した場合の経済効果」
相手国の関税率低下で10年後、フルーツ輸出額世界一も


 この試算は、(1)関税撤廃の効果のみを対象とする(非関税障壁の削減やサービス・投資の自由化は含まない)、(2)関税はすべて即時撤廃する、(3)追加的な対策を計算に入れないという3つの仮定を置いて行われた。

 仮に除外された非関税障壁やサービス・投資の自由化の経済効果を算入すれば工業製品やサービス・投資分野が活性化しGDPの押し上げ効果はさらに高まるはずだ。そうした効果を加えると日本のGDPを毎年10兆円押し上げるとするペトリ・米ブランダイス大学教授の試算もある。

 「関税はすべて即時撤廃する」という仮定も非現実的だ。TPP交渉参加をめぐる日米首脳会談では品目数は限られるが関税撤廃に例外品目が存在することが確認された。関税撤廃は「即時」ではなく撤廃までの猶予期間が認められるはずだ。TPP参加によって「日本農業は壊滅する」と叫ぶ圧力団体を抱える現状からして「追加的な対策を計算に入れない」とする仮定もあり得ない。

 関税撤廃までに10年近い猶予期間が与えられるとすれば、この間に実施される「追加的な対策」が競争力強化を高め農林水産物の生産減少を縮小させることもあり得る。それどころかTPP参加相手国の農産物関税の撤廃を糧として輸出を増大させる農産物も出てこよう。

 野菜、果実、花卉などは関税率が十分低い。保護の少ない低関税下でこれらは潜在的に高い国際競争力を持つ農産物に育ち高価格での輸出拡大が見込める。産業競争力会議の新浪剛史(ローソン社長)など5議員は、国際的評価が高いメロン、イチゴ、りんご、梨などから農産物輸出を振興し「フルーツ輸出額世界第1位を目指す」と提案している。

 問題は単品では日本最大の農産物であるコメがTPP加盟によっても壊滅的打撃を受けるという主張があることだ。今回発表された「関税撤廃した場合の農水産物への影響試算」でもコメ生産への打撃が強調されている。試算によればTPP参加による「即時の関税撤廃」によって農水産物生産額は3兆円減少、そのうち3分の1の1.01兆円がコメの生産額減少(平成23年コメ生産額1.8兆円の56%に達する)によるものとされている。

 1.01兆円もの生産額減少は、(1)内外価格差が1.3倍を越えても約1割の消費者は国産品を購入するという前提のもとで、(2)国産米生産の約3割が価格の安い米国産と豪州産の輸入米に置き換わる、(3)残る国産米(例えば魚沼産コシヒカリなど品質で競争できるコメ)も輸入米流入により価格が半分に低下する、として算出されたものだ。


国産米価格は米国産米の1.7倍、豪州産米の1.9倍
耕地を大規模化すれば生産費は劇的に低下、輸出も可能


 現在のコメ価格の内外価格差を見ておこう。日本はガット・ウルグアイランドでコメの関税率を778%の高率に設定する代償として77万トンの輸入米の購入を義務づけられた。このうち10万トンが主食米として輸入されている。下表左は、その10万トンの輸入主食米(精米短粒種=ジャポニカ米)の海外からの政府買入価格(輸送費、流通マージン込みの輸入米価格に相当する)だ。

 下表右の魚沼産コシヒカリなど国産米価格は平成24年産米の出荷業者(相対取引)価格だ。上記の政府買入価格(外国産米の輸入価格)と国産全銘柄平均を比較すると国産米価格は米国産の1.7倍、豪州産の1.9倍となる。米国と豪州の短粒種=ジャポニカ米の輸出余力について大きな疑問があるが、内外価格差だけをとればたしかに国産米は輸入米に食われる恐れは拭えない。

外国産米の政府買入(輸入)価格と国産米の価格比較(単位:1kg当たり円)
hyo1.PNG
(注)米中豪産米は精米短粒種、2月20日SBS価格、日本産米は平成24年産米の玄米価格

 しかし、政府が関税撤廃までの猶予期間に「追加的な対策」をとりコメ耕地面積を大規模化し生産コストを引き下げることが出来ればどうなるだろうか。

 下表の上段は平成21年産米をベースに農水省が算出した耕地面積別のコメ1kg当たりの平均的な生産費だ。日本のコメの平均耕地面積は1ヘクタール(ha)だが、この規模だと平均生産費は1kg当たり344円にもなる。これでは政府買入価格161円の米国産に到底太刀打ちできない。

耕地面積別のコメ生産費――平成21年産米(上段、農水省調査)とフロンティア費用(下段)
hyo2.PNG
(注)耕地面積単位はヘクタール(ha)、生産費はコメ1kg当たり。21世紀政策研究所「農業再生のグランドデザイン」の第2章稲作の生産効率化の可能性(斉藤勝宏)より作成。

 しかし耕地面積が15ha以上になると平均生産費は1kg当たり171円まで下がる。生産農家のマージンを加えても1kg当たり200円で販売可能となり米国産の1.2倍となる。1.2倍程度の価格差なら消費者は輸入米より品質が良くうまい国産米を選ぶだろう。上段の農水省の試算値でもコメの耕地面積拡大の効果はかなり大きい。

 下段は本間正義東京大学教授を研究主幹とする研究プロジェクト「農業再生のグランドデザイン」(21世紀研究所、2012年6月発表)の第2章で紹介された耕地面積別の生産費(フロンティア費用)。この数字は3月のTPPをめぐる国会論戦でみんなの党の浅尾慶一郎議員からも紹介された。

 これによれば耕地面積が15ha以上の大規模化した場合、1kg当たり生産費は98円、50ha規模になれば約85円へと劇的に下がる。この生産コストが実現すれば豪州産米の輸入価格146円にも対抗できる。それどころか、日本産ジャポニカの世界各国への輸出が可能になる。

 ここで言う「フロンティア費用」とは、耕地が分散して存在する「分散錯圃」を解消するなど耕作の非効率性を除去した最も効率の良い農業経営が行われた場合の理論的な生産費だ。従って傾斜地が多く狭小な中山間地などではとても達成不可能な生産費であることは疑いない。しかし、広大な平地の耕作地で「分散錯圃」を解消して「フロンティア費用」を実現しようとする農業者の努力とこれを支援する「新しい農地政策」があってもいいだろう。

 上述の産業競争力会議の5議員は、「中山間地については平地に比べ圧倒的に不利なため、保水や美観、環境問題の観点を十分勘案した政策をとる」とする一方、「10~15年程度をメドにコメを中心に50ha(北海道は100ha)程度の規模で効率的な農業生産を実現し、経済連携協定対象国を中心に輸出が出来る競争力体制を確立する」と提案している。

 前回のブログで指摘したように日本の農業は政府と地方自治体あわせて年間約5兆円の予算を投じながら非効率、低生産性ゆえに衰退の一途を辿っている。このままではTPP参加云々にかかわらず後継者が現れず農業は自滅する。座して死を待つのか、TPP参加を最後の好機としてコメ生産の大規模化に取り組むか、決断が待たれる。財源は国、地方合わせて5兆円もあるのだから。

2013年3月19日 15:33

「農業保護」のために課せられた膨大な消費者負担

(2013年3月19日筆)

 朝日新聞の世論調査では安倍総理のTPP(環太平洋パートナーシップ協定)交渉参加表明に対して71%が「評価する」と答えた。国論を2分するといわれた交渉参加に3分の2の国民が賛成したのだから様変わりといえるだろう。

 残念なのは「TPPによる農業の自由化で外国産の農産物がたくさん入ってくるのは良くないことだ」と答えたのが48%、「良いことだ」と答えた36%を上回ったことだ。

 しかし設問自体が悪い。そもそも「TPPによって外国産の農産物がたくさん入ってくる」か、まだ分からない。一年前、米韓FTAを締結しコメ以外を自由化した韓国では農産物輸入は増えるどころか減少している。日本の農産品は品質では折り紙つきだが価格競争力に劣る。TPP参加によって価格競争力を高めることができれば、外国産の農産品は日本に入れないはずだ。

 それより、TPP参加によって「少しでも安くなれば外国産の農産物を買うか」あるいは「外国産に比べ多少高くても日本の農産物を買うか」など消費者の立場からの設問が欲しかった。


生活費の高さでは日本の主要都市が上位を独占
高い関税率に守られ高価格になった日本の食料品


 昨年暮れから相次いで世界主要都市の「生活費ランキング」が公表された。食品を筆頭に日本の主要都市の生活費の高さは筋金が入っている。

 香港の「ECAインターナショナル」は世界400以上の都市で食品や衣料など物品、サービスの価格を比較した。ランキング第1位は東京、2位名古屋、5位横浜、6位神戸と日本の4都市が10位以内に入った(2012年12月12日・共同通信)。

 英国「エコノミスト」誌の調査機関は世界140都市を対象に食料品、家賃、燃料費など160品目の価格を比較、「生活費ランキング2013年版」を発表、その第1位は東京、第2位は大阪だった(2013年2月5日・共同通信)。

 「国際金融情報センター」の食料品価格の国際比較(昨年8月調査、下表)によると、コメ、小麦、牛肉など主要な食料品はすべて日本が最も高い。ちなみに日本の関税率はコメ778%、小麦252%、牛肉38.5%だ。高い関税率で守られて国内価格が高位に維持された食料品が日本の主要都市の生活費を高めている大きな要因のひとつであることは疑いない。

大西表1日本が最も高い食料品.jpg

 日本の消費者は高い関税率の守られた高価格のコメ、小麦、牛肉、乳製品、砂糖を買わされていることに疑問を持たないのだろうか。消費者は高価格農産品への支出によって可処分所得を奪われているのだ。加えてアベノミクスによる円安で小麦や缶詰はじめ輸入農水産物を原料とする食品の価格が引き上げられている。それでも日本の消費者は食品の高価格に寛容でなぜいられるのか。


10.1兆円の総産出に5兆円超の税金が注ぎ込まれている
251万人の農業者の27万人以上の役人、農協職員がのる


 農産品の高価格によって奪われた消費者の可処分所得は手厚く保護された農業者あるいは農協職員の所得に移転している。さらに言えば、消費者は自らが納めた税金が農業関係者に多く流れ込んでいる事実にも気が付くべきだ。

 下表は国と地方自治体が注ぎ込んだ平成22年度(国の予算には補正予算を含む)の農林水産予算の総額だ。単純合計で5.8兆円(地方予算の国庫支出分を除くと5.1兆円)にのぼるが、この予算総額は農林水産業の総歳出額10.1兆円(平成23年)のおよそ半分になる。総産出額の半分が税金によって支えられている事実を知って納税者(消費者)はどう思うか。

大西表2国と地方.jpg

 驚くべきはその予算の使い道である。地方自治体を例にとれば平成22年度の予算総額の48.7%、1.6兆円が「普通建設事業費」(農業土木公共事業費)に使われているのだ。この農業土木によって一戸当りの耕地面積が広がり農家の生産性が上昇しているのならまだ我慢できる。しかし農家経営の大規模化は遅々として進まず、予算の多くが地方の土建業者を潤すだけの結果に終わっているのではないだろうか。

 さらに我慢できないのは予算の19.6%が地方自治体の農業担当職員の人件費に化けていることだ。農水省の人件費も同じようなものだろう。

 地方であれ国家であれ、TPPにも耐え得る農業に生まれ変わる知恵を公務員が捻り出してくれるなら税金を支払っても良い。しかし平成6年(1994年)の6兆円のガット・ウルグアイラウンド対策以来、彼らは多額の農林水産予算を割り振られながら生産性を高めることができず農林水産業の衰退をもたらした。そんな公務員に税金を吸い取られるのを我慢することはできない。

 ちなみに日本の農業就業人口は251万人(ピークは昭和35年の1454万人)、うち基幹的農業従事者数は178万人、従事者の平均年齢は65.9歳だ。農業を主とする65歳未満の農業者(担い手)がいない水田集落は全国で54%に達する。耕作放棄地は埼玉県の面積に匹敵する40万haにのぼる(以上は平成23年)。このままだとTPPに参加しなくても、後継者が現れず日本の農業は自然死する。

 高関税で農業を保護しているにもかかわらず、農業者の高齢化が進み耕作放棄地が増え農業生産額が大きく減少、日本の農業の衰退は著しい。そんな衰退産業に2.4万人の農水省職員(地方自治体の農業担当職員を含めると農水林産業関連公務員は5万人を軽く超すのではないか)、そしておよそ24万人の農協役職員、合計27万人以上の間接人員がのっているのだ。

 彼らは、TPPに参加すれば食料自給率が低下するという多くの国民の心配を逆手にとってTPP反対を叫んでいる。しかしその実態は自らの職場と給料を「心配」したうえでの反対と思われても仕方があるまい。

 ちなみに安倍内閣の新試算によれば食料自給率はすべての農産物関税がゼロ、農業対策なしという極端な仮定を置いても生産額ベースで55%程度を維持できる。競争力を高める農業対策が打たれれば自給率引き上げは可能だと思う。


2013年3月11日 14:29

さらなる大胆な緩和は資産バブルを招かないか

(2013年3月11日筆)

 東日本大震災からちょうど2年が経過した。被災地ではまだ多くの被災者が応急の仮設住宅で暮らしている状況だ。というのに大都市周辺では株高で儲けた「にわか成金」による高額品漁りの「バブル消費」が始まったという。


ロレックス、億ション、ゴルフ会員権が売れ始める
地価上昇見込み「含み資産株買い」が一気に活発化


 百貨店では80万円もするスイス製高級腕時計「ロレックス」が売れ始め、高額な呉服や宝飾品も売れ行きが急回復している。オークションでは絵画や宝飾、彫刻など100万円以上の高額品の落札が目立つ(日経新聞3月8日付け)。関東圏のゴルフ会員権の平均価格は最安値だった昨年12月から約20%上昇した。「億ション」と呼ばれた都心部の高額マンションも売れ行き好調だという。

 日経平均株価は昨年11月14日の底値から前週末3月8日まで約3か月半で約42%上昇した。株価が倍以上に化けた銘柄も少なくなかったから、株式投資で儲けた個人投資家がバブル消費に走ったことになる。

 絵画、ロレックス、億ション、ゴルフ会員権を買い漁ると聞いて1980年代後半のバブル経済を思い出す人も少なくないだろう。これに地価の上昇が加わればバブルの匂いがさらに強まってくる。

 不動産市況の反映でもある東証REIT指数は昨年6月4日の底値から先週の3月7日まで57%上昇している。昨年11月のアベノミクス以降では約32%の上昇だ。REIT(上場不動産投資信託)は取引所で売買できる不動産の賃貸収入や売買収入を配当の原資とする投資信託だ。

 地価も動意を見せ始めた。国土交通省による主要都市150地区の平成24年第4四半期の地価動向調査(2013年2月26日発表)によると、全体の34%に相当する51地区で地価が上昇した。前第3四半期は上昇地区が34地点(全体の23%)だったから上昇地点は着実に増加し始めている。

 3月22日には1月1日現在の公示地価が発表される。兜町では予想以上の地価上昇になるのではないかという思惑から保有不動産の含み資産拡大に目をつけた「含み資産株買い」がにわかに活発化した。

 とくに日銀新総裁として「大胆緩和」派の黒田東彦アジア開銀総裁、副総裁に岩田規久男学習院大学教授を充てるとする日銀人事が国会に提示された後、「含み資産株買い」が急拡大した。都心部に巨額の保有不動産を持つ三菱地所など不動産株は相次いで昨年来高値を更新した。株高で「億ション」が売れたことに加え地価上昇による土地の含み益増加を期待した買いが入ったためだ。

 ふだんは余り動かない三井倉庫、安田倉庫、渋沢倉庫など株価低位の倉庫株も急騰した。倉庫各社は都心部に土地を多く保有している。「大胆緩和」による過剰マネーが不動産市場に出回り地価が上昇、保有不動産の含み益が拡大すると読んでの倉庫株買いだった。


安倍(ABE)はアセット・バブル・エコノミー?
浜田教授の師が考案のバブル正当化指標「トービンのQ」


 市場関係者の間からは「アベノミクス」は安倍(ABE)の頭文字をとって「アセット(A)バブル(B)エコノミー(E)=資産バブル経済」ではないのかという囁きも聞こえるようになっている。

 「大胆緩和」を推進するアベノミクスの指南役・浜田宏一エール大学名誉教授がアメリカで最初の師として仰いだのはJ・トービン教授だった。トービン教授は会社の保有資産の多寡に着目して株価の割高、割安を判断する指標「トービンのQ」の考案者で知られる。

 1980年代後半のバブル全盛期、兜町では「トービンのQ」を「Qレシオ」に変形してバブルを煽った。地価高騰で膨らんだ不動産の含み益を企業価値(純資産)に組み入れた投資指標の「Qレシオ」は、上げ過ぎて理屈が付かなくなった異常な株価を正当化する説明手段として使われたのだ。

 資産バブルとは株価や地価など資産価格が「理屈を越えて」上昇した状態をいう。地価は賃貸料などその土地が生み出す収益力を基礎に形成される。地価がその土地が持つ収益力から大きく乖離して上昇していれば、それは理屈が付かない価格、つまりバブル価格ということになる。

 地価の場合、どこからが理屈を超えたバブル価格か分かりにくい。だが株価のほうは予想PER(株価収益率)などバブル度の目安になる指標を持っている。予想PERは株価を予想1株当たり利益(予想純利益÷発行済み株式総数)で割って算出され、倍率で示される。PER倍率が高ければ高いほど、予想利益に対して株価が割高(時にはバブル株価)になっていることに表す。

 1980年代後半のバブル期、日経平均採用225銘柄の予想PERは89倍という信じられない倍率に達したことがある。1990年代後半に発生したITバブル期では50倍近い予想PERを示した。いずれも理屈が付かないバブル株価であり、理屈の付かないバブルは破裂し株価はその後急落した。バブルは超金融緩和によって発生しバブルは金融引き締めによって破裂し、それが日本のデフレの根因になった。


日本株の予想PERはすでに割高、世界最高水準
黒田新総裁の日銀が資産バブルを引き起こす危険


 3月8日現在の日経平均採用225銘柄の予想PERは約23倍だ。上述の2つのバブル期のPERに比べかなり低いからバブル株価ではないという見方もあるだろう。しかし米英独など先進国株の予想PERは12倍前後だ。これに比べれば日本株のPER倍率は極めて高い。中国はじめ途上国のPERは米英独よりさらに低く日本株のPERはいまや世界最高水準なのだ。

 兜町では来期(2014年3月期)は利益が急回復するのでそれを織り込めば日本株の予想PERは大きく下がる(割高ではない)という見方が支配的だ。中には1株当たり利益が来期50%増えると向きもある。そう仮定しても予想PERは約15倍、国際比較して日本株が割高であることに変わりはない。

 NYダウは2007年に記録したリーマン暴落前の高値を上回った。英国もドイツもリーマン暴落前の株価にあと一歩に迫っている。それでも予想PERは12倍前後、株価に対して利益水準がいかに高いかが分かる。一方、日経平均はリーマン暴落前の高値の約33%安の水準にとどまる。大盤振る舞いして来期50%増益予想としてもPERは15倍と米英独株よりかなり高いのだ。

 PER15倍程度なら国際的に見てやや割高とはいえるが「理屈が付かない」バブル株価とはいえないという見方もあるだろう。しかし兜町で流布される50%増益予想が実現するかどうか全く不透明だ。利益回復が不透明なまま、日銀新総裁のもとで膨大な緩和マネーが発生しそれが株式市場に流れ込めば株価がさらに上昇、PERが跳ね上がって理屈の付かないバブル株価に至る......。

 黒田新総裁下の日銀がもたらすと予想される膨大な緩和マネーは一体どこに流れ出すのか。融資先が見つからず国債の再購入に向かえば国債バブルが膨らむ。株の信用取引に融資が回れば株式バブル、不動産融資に回れば不動産バブルになる。土地、株などの資産価格上昇(資産バブル)は、有産階級を大きく潤す。円安による生活物資インフレは資産を持たない無産階級をいためつける。

 黒田・岩田の日銀新体制は、すでに十分な緩和マネーが累積しているのにさらに大量の緩和マネーを上積みしようとしている。円も国際的に許容されるとされる95円以下の円安に進んだ。この後は、日銀の新体制が地価や株価が理屈を超えて上昇を始め、資産バブルを引き起こさないよう願うばかりだ。

2013年3月 4日 11:08

春よ来い、早く来い、春を探しに庭に出ました

(2013年3月4日筆)

 もう桃の節句だというのに、北海道では地元の人によると「渦巻きのような猛吹雪」(朝日新聞3月4日朝刊)が吹き荒れました。中標津、湧別、網走、富良野では雪に埋もれ8人の方がなくなったそうです。雪に埋もれて亡くなるなど最近では聞いたことがありません。

 こんな痛ましい事故の報道に接すると思わず「春よ来い、早く来い」と独り言をしてしまいます。わが所沢でも今年の冬は例年にも増して寒さが厳しく庭に出るのも億劫になります。しかし昨日は、寒さを振り切って「春はまだか」と春を探しに庭に出ました。


福寿草がもうすぐ咲きます
チューリップの芽が出ました


 いつも真っ先に咲くのは梅の花です。近くの公園ではすでに梅の白い花が満開でしたが、残念ながらわが庭の小梅の花は咲きませんでした。昨年の秋、「桜伐る馬鹿、梅伐らぬ馬鹿」といいますから、花をいっぱい咲かせようと梅の小枝が丸坊主になるぐらい伐りました。しかし花芽をつける古枝をすべて切ってしまったせいで花が咲かなかったようです。梅の花が咲かなかったのは小生の責任で寒さのせいではありません。今年は古枝を幾分残すように伐ります。

 小梅は期待はずれでしたが、玄関先の植え込みには春が芽生えていました。葉を落としたワイヤープラントの間から福寿草が伸び黄色のつぼみを5つ付けていました。例年より少し遅れているようですが今週中には花を咲かせるでしょう。春は黄色い花の開花から始まるようです。黄色い花といえば水仙ですが庭のあちこちから葉が出ていました。もうすぐ花茎を伸ばしてくるでしょう。

 バラも思い切って枝を切ればたくさん花を咲かせるといいますから、これも晩秋から枝を切って整枝しました。そのせいか、枝のあちこちから緑の元気の良い新芽が出ていました。この新芽が伸びて枝となったその先端に真紅、ピンク、黄色のバラの花が咲くと想像すると楽しくなります。

 昨秋といえば、家内が庭の真ん中にチューリップの球根をたくさん植え込んだはずですが、芽を出したでしょうか。よく見ると土から5センチほど芽を出していました。チューリップの芽は水仙の芽に比べると太くたくましい。たくましく育った葉の間からスーと花茎が伸び連休には派手な花をつけるはずです。

 葉の芽なのか花の芽なのか、よく分からないのですが、ツツジ、藤、ブルーベリーの枝先、アジサイの茎先に硬い芽がたくさん付いていていました。これまでの経験だと藤とアジサイは芽が出ても花の芽ではなく期待はずれに終わる場合があります。しかしツツジとブルーベリーの芽は期待にたがわず花の芽であるケースがほとんどでした。今年もたわわに実をつけるブルーベリーの開花が楽しみです(昨年収穫した実はジャムにしたりして食べました)。


伐ったツバキに一輪の花が咲きました
枝は枯れて葉は落ちても花芽は残す


 驚いたのはツバキが花を1輪だけ咲かせていたことです。このツバキはかれこれ30年以上も前、家内と訪れた伊豆大島で地元の人から頂いたものです。大きく伸びすぎたうえ毛虫がつくので地面から1メートルぐらい幹を残し伐ってしまいました。伐ってから5年以上経ちますが、一度も花を付けませんでした。もう花は諦めていたのですがそれが一輪だけ咲いたのです。

 草木は伐っても、伐っても芽を出します。寒い冬の間、枝は枯れて葉は落ちますが花芽をしっかり残し春がくれば花を咲かせます。わが庭の草木もいつものように寒い冬に耐えて花芽を付け、春よ来い、もう少し暖かくなれば咲いてやるからと静かに待っているようです。

 6メートル近い雪に埋もれた酸ヶ湯温泉(小生らの新婚旅行先でした)でも猛吹雪に見舞われた北海道でも、積もった雪の下で草木が春に備え芽を膨らませていると思うと、自然の怖さとたくましさにただひれ伏すしかありません。
プロフィール
ニックネームさん
大西良雄(経済ジャーナリスト)
上智大学卒業後、東洋経済新報社に入社。記者を経て「月刊金融ビジネス」、「週刊東洋経済」編集長を歴任。出版局長、営業局長の後、常務第1編集局長を最後に独立。早稲田大学オープンカレッジ講師のほか講演・執筆活動。
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