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大西良雄ニュースの背後を読む

2013年1月

2013年1月28日 09:56

孫への教育資金にかかる贈与税非課税に違和感あり

(2013年1月26日筆)

 以下は、教育資金を贈与すべき孫もいない、孫がいたとしても贈与すべき金融資産にも乏しい小生のような爺様のひがみと取られかねない。しかし孫への教育資金贈与にかかる非課税措置にはひがみを越えて違和感を覚える。

 自民党と公明党は「2013年度税制改正大綱」の中で、祖父母から30歳未満の受贈者(孫)への教育資金の一括贈与する場合、それにかかる贈与税を非課税とする措置を導入することを決めた。受贈者1人に付き1500万円までの教育資金贈与は非課税となる。適用期間は2013年4月1日から2015年12月31日までの2年9ヶ月間だから消費増税期の消費刺激を意識した措置でもある。


4人孫がいれば贈与額6000万円まで贈与税ゼロ
贈与税減税の消費刺激効果はわずか、税逃れのほうが心配

 かりに娘息子2人に2人ずつ子がいれば、孫は4名、その教育資金を一括して贈与すれば合計6000万円にもなるが、その贈与額がすべて無税ということになる。現状の累進贈与税の下では一人当たり贈与額1000万円超の場合の税率は50%だから、4名に6000万円贈与すれば最大3000万円もの贈与税支払いになる。

 教育資金の贈与税非課税にはいくつか疑問がある。一つは贈与資金が教育資金に使われるのだろうかという点だ。孫が年少者の場合、非課税で一括贈与された1500万円の教育資金を管理するのは孫の親に違いない。親が教育資金という名目で別の用途で費消することも大いにありうるのだ。

 「大綱」ではこうした不正な使途を防ぐための措置を一応講じている。祖父母は銀行など金融機関の信託勘定に贈与資金を預けそこから教育資金を拠出することになる。一方、教育資金を一括贈与される受贈者(孫)は金融機関を経由して「教育資金非課税申告書」を税務署に提出することが義務づけられる。

 そのうえで受贈者(孫)は、信託財産から金銭が払い出されるたびに、それが教育資金に使われたことを証明する書類を金融機関に提出しなければならない。金融機関は提出された書類及び記録を受贈者が30歳に達した後6年間は保存しなければならない。そういうことになっている。

 しかし教育資金とは何かがはっきりしない。「教育資金」支払いの領収書提出先は確かかどうか、信託財産を預かる金融機関がそれを把握できるはずもない。資産家は税負担には敏感だ。金融機関や税理士の知恵を借りて贈与税非課税制度を使った「節税」を目論むことも予想される。

 確かに金融資産は高齢者に偏在している。金融資産全体の中で60歳以上の高齢者が保有する割合は年々拡大し、2009年には61%に達している(総務省「全国消費実態調査」)。その高齢者が溜め込んだ金融資産を孫のために吐き出させて消費拡大につなげようという狙いも自公政権にはある。

 しかし日銀の金融広報貯蓄調査などによると高齢者の70%は老後生活の不安のために金融資産(貯金)を残しているのであって、孫の教育資金に贈与する余裕などあまりない。多くの高齢者は孫に贈与したくてもできないのだ。

 ちなみに2010年度の贈与税納付総額は1289億円に過ぎない。非課税制度を使えるのは老後生活にまったく不安のない、ほんの一握りの富裕層だと思われる。非課税制度を使った納付減少額(減税額)は小さく、子や孫が減税額が消費したとしても、消費刺激効果は微々たるものだといえる。


教育格差がもたらす「富裕の連鎖」と「貧困の連鎖」
安倍総理は「誰にもチャンスがある国」というが教育機会は平等か

 それ以上に違和感を覚えるのは、非課税措置がもたらす教育格差の問題だ。多額の金融資産を保有する祖父母を持つ子供は非課税措置によって高度な教育を受ける機会を持つことができる。しかし、祖父母から非課税の生前贈与が期待できない子供の教育機会は相対的に限定される。教育資金にかかわる贈与税の非課税措置は子供の間の教育格差、ひいては子供たちの将来の所得格差をもたらす結果につながりかねない。それでよいのだろうか。

 東京大学が在校生の家庭状況を調査した「2011年学生生活実態調査」の結果(2012年12月発行)によれば、世帯年収750万円以上の家庭が56.3%、950万円以上の家庭が41.9%に上った。ちなみに、日本の世帯平均年収は549万6000円(2010年、厚生労働省調べ)だから東大生の半分以上が平均世帯年収を200万円以上も上回る世帯の出身ということだ。

 私大の両雄、早稲田大学、慶応大学の在校生の親の年収も東京大学とあまり変わらないだろう。親の所得格差が子の教育格差を生み出し、子供たちの間に生じた教育格差がその子らの将来の所得格差をもたらす。裕福な親(ないし祖父母)の子や孫は高学歴を得て裕福になるという「富裕の連鎖」が築かれる。一方、低所得所帯の子や孫は低学歴で終わり低所得に甘んじるという「貧困の連鎖」に嵌まり込むのだ。

 安倍自民党は選挙公約の中で、「日本の将来を担う子供たちは国の一番の宝」であり、「誰にもチャンスがあり、夢に挑戦できる国」を作ろうといっている。裕福な家庭に生まれた子供も貧しい家庭に生まれた子供も「国の一番の宝」ではないのか。「誰にもチャンスがある国」ならチャンス(機会)はどの子供にも平等でなければならない。

 子や孫は両親や祖父母を選べない。にもかかわらず、両親や祖父母の所得多寡や資産保有の状態の影響を受け、この世に生まれた時から教育格差を受けるというのは公平ではない。その意味で今回の孫への1500万円の生前贈与の非課税措置は、あらゆる国民に教育機会を均等に与えるという教育の理念から程遠い措置だというほかない。

 それぞれの才能と努力の結果、所得の多寡(格差)が生まれることには違和感はない。フランスのように所得税最高税率を75%などという極端な高さに引き上げ、努力の成果を奪い取ることには大きな抵抗がある。しかし自ら所得を生み出さない孫が祖父母からタナボタ所得を譲り受け、譲り受けることのできない子供たちに対して教育機会の面で優位に立つことは納得できない。

 孫への教育資金贈与非課税措置は子供たちから「チャンス(機会)の平等」を奪う。そこに大きな違和感を覚えるのは小生だけだろうか。相続や贈与は、努力や労働の成果ではない、単なるタナボタ所得だ。額に汗して財産を築いたわけでもない相続人や受贈者への課税率を高くして国に吸い上げ、その税収を授業料や給食費の減免や奨学金給付、その他子供たちの教育機会の平等をもたらす費用に使うようにしたらどうだろうか。

 安倍総理には、こうした公平な措置によって貧しい世帯の子供も頑張れば大臣にも学者にもなれた、小生が育った頃の時代を「取り戻す」といって欲しいものだ。

2013年1月21日 14:23

「行過ぎた円安」か「望ましい円安」か――日本の円安誘導に批判も

(2013年1月21日筆)

 日銀に「大胆な金融緩和」を迫るという安倍総理の口先介入もあって対ドルをとれば78円から90円まで12円も円安になった。

 ただし口先介入は、ファンダメンタルズが向かう方向に沿っている場合だけに有効だというのが為替市場の常識だ。昨年12月25日の本欄「安倍新政権発足――円安は続くか、悪い円安は来ないか」でも述べたとおり、米国景気の回復(日米金利差の拡大)、欧州金融不安の小休止(欧州への資金回帰)、日本の経常収支赤字(ドル需要の超過)などファンダメンタルズは円安方向を示しており、安倍氏の口先介入は円安傾向を加速させたに過ぎない。


安倍政権の円安誘導に欧米、ロシアが反発
中国、韓国は自国通貨切り下げ介入で対抗か

 しかし口先介入であれ、日銀による量的緩和の大幅追加であれ、自国通貨の下落(円安)を誘導し過ぎると海外からの反発を招く。

 この点について安倍総理に金融拡張による円安誘導を指南している内閣官房参与・浜田宏一(エール大学名誉教授)氏は『アメリカは日本経済の復活を知っている』(講談社)でこう言っている。

変動相場制下では、一国の金融拡張は当国の為替レートを切り下げ、貿易相手国の為替レートを切り上げる。自国の金融拡張は自国の景気を浮揚させるのはもちろんだが、相手国の金融拡張は自国の為替レート(切り上げ)を通じて景気抑制的に働く――。

 浜田氏は、FRB(米連邦準備制度理事会)やECB(欧州中央銀行)による金融拡張はドル安、ユーロ安をもたらし当国(欧米)の景気を浮揚させるが、その結果、貿易相手国(日本)には円高をもたらし日本の景気には抑制的に働いたと言いたいのだ。しかし浜田教授は自国(日本)の金融拡張によって円安誘導が行き過ぎれば、貿易相手国(欧米やアジア諸国)の景気を悪化させるという点についてはあまり配慮が行き届いていないようだ。

 案の定、安倍総理の円安誘導による円安(貿易相手国通貨高)の結果、自国の景気悪化が懸念される貿易相手国から批判が噴出し始めている。

(以下の談話は日経新聞1月18日、19日付け及び同電子版1月19日付け、朝日新聞1月18日付けから引用しました)
 米国からは、「日本は明白な為替切り下げ政策をとっており困惑している」(米国セントルイス連銀総裁のブラード総裁)、自民党が円安による日本経済の成長で他の貿易相手国を犠牲にしようとしている」(米自動車貿易政策評議会のブラント会長)という声が上がった。

欧州からは、「ユーロ相場は危険なほど高い」(ユーロ財務相会合のユンケル議長)、「中央銀行の政策についての誤解によって世界の金余りがさらにすすむ。日本の新政権の政策にかなり大きな懸念を持っている」(ドイツのショイブレ財務相)、「日本の新政権による非常に保護主義的な金融政策の決定は急激な円の下落につながる。他国も追随しかねない」(ロシア中銀のウリュカエフ第一副総裁)という対日批判が始まった。

 日本の最大の貿易相手国である中国、いまや日本最大の輸出競争国となった韓国からの円安誘導批判はまだ届いていない。しかし中国も韓国も変動相場制は名ばかり、自国通貨高を抑制し人民元安、韓国ウォン安を維持する為替介入の常習者だ。円安に対抗して黙ってドル買い介入を実施、自国通貨引き下げに動くに違いない。


為替切り下げ競争を懸念するラガルドIMF専務理事
商品投機と通貨投機を引き起こした米FRBの量的緩和

 このような通貨切り下げ競争を懸念してIMF(国際通貨基金)のラガルド専務理事は「競争的な通貨切り下げ政策には断固として反対するのがIMFの原則だ」と発言、日本の行き過ぎた円安誘導とそれへの他国の為替切り下げ対抗策への懸念をあらわにした。

 IMFは、戦前の世界大恐慌の後発生した、主要国の金融拡張による通貨切り下げ競争が近隣窮乏化(貿易相手国の景気悪化)を招き、その結果生じた国際対立が大2次大戦の遠因になったという反省から設立された通貨危機を防ぐ国際機関のだ。IMFがその生い立ちから言って通貨切り下げ競争の再来を危惧してなんら不思議ではない。

 現代の通貨切り下げ競争は世界的インフレを呼び起こす危険がある。為替切り下げには通常、金融拡張や為替介入という手法で用いられる。金融拡張であれば中央銀行の国債購入による市中への資金の大量供給が行われる。為替介入によるのであればドルの買い支えに使われた現地通貨が市中に大量散布されることになる。いずれも大量の通貨散布だ。世界各国が金融緩和に走れば世界的な金余り状態が現出する。

 大量に散布されたマネーが実体経済を活発化させればいいのだが、最近では原油や穀物など国際商品や土地・住宅など資産への投機に回り「商品・資産バブル」を引き起こす。それが生活物資インフレにつながる。

 米FRBはリーマン暴落後、第1次、第2次量的緩和(QE1、QE2)を合わせて2兆3500億ドル(1ドル80円換算で188兆円)もの大量資金を散布した。それが米国の実体経済に回らず、国際的な商品投機を引き起こし途上国の食料品価格を吊り上げたことは記憶に新しい。一方で高金利国への通貨投機が起こり現地通貨高から途上国の景気が急降下した。しかも輸入インフレを鎮圧するための金融引き締めが、さらに途上国の景気を悪化させたのだ。


「行き過ぎた円安」が招く生活必需品の値上がり
望ましい為替レートは1ドル90円か、1ドル100円か

 行き過ぎた円安は、通貨切り下げ競争を引き起こすだけでなく日本国内でも生活必需品の値上がりという弊害をもたらす。原油の輸入価格が円安で上がればガソリン代が上がる、天然ガスが上がれば電力料金が上がる。輸入小麦が上がればパンもうどんも値上がり。輸入トウモロコシが上げれば牛肉が値上がりする。衣料、雑貨など身の回り品の多くはいまや円安に弱い輸入品だ。

 原発停止以降、日本は輸出より輸入が多い貿易赤字国になった。その結果、円安によって輸出代金が増える以上に輸入代金が増える国になった。輸出は海外からの所得の流入だが輸入は海外への所得の流出だ。行過ぎた円安は海外への所得の流出を増やし国内景気を冷やすことにある。

 どの程度の円安であれば、通貨切り下げ競争を招かず輸入インフレの弊害が発生しないのか。その望ましいドル円レートについて石破茂自民党幹事長は「85円~90円」というレンジを示している(甘利明経済再生相も一時これに同調)。一方、安倍晋三総理と浜田宏一教授はどうやら「1ドル100円」を望ましい円安水準と見ているふしがある。円高修正、円安誘導に熱心なお二人でも、1ドル100円以上は「行き過ぎた円安」と考えざるを得ないのだろうか。

 実際、どの円安水準であれば「過度の円高を修正した」水準といえるのか、「行過ぎた円安ではない」といえるのか。それを決めるのは為替市場のプレーヤーたちだ。例えばヘッジファンドなど円安をリードした海外投機筋は与党の政治家や一部の学者が決めた「望ましいドル円レート」をどのように評価するか聞いてみたいものだ。

2013年1月 7日 13:51

「安倍バブル」で過熱する円安株高の今後をどう読む

(2013年1月7日筆)

 1月4日大発会の日経平均株価は292円(昨年末比2.89%高)の大幅上昇となった。喜怒哀楽が激しいのは兜町の常だが、兜町の2013年相場見通しは楽観論一色となった。悲観論に溢れた衆院解散前の兜町とは様変わりだ。

 今回の相場反転は昨年11月14日の野田佳彦前総理の衆院解散発言から始まった。日経平均株価(終値ベース)は11月14日の8661円を底値として反転上昇、大発会の1月4日には1万688円まで駆け上がった。


世界でも群を抜いている日経平均の上昇率
円安メリットが出る主力輸出株が上昇を牽引

 この間の日経平均株価の値上がり幅は2067円、上昇率は23.8%にのぼった。この上昇率は、世界主要国の株価上昇率の中でも群を抜いている(下表参照)。それまで日本株は欧州債務危機の影響下にある欧米株に比べても株価回復に大きく出遅れていた。兜町が有頂天になっても不思議ではない。

世界の株価上昇率(12年11月14日―13年1月4日)と直近PER
hyo1.PNG
(注)PERは1月4日終値ベース、「日経ヴェリタス」13年1月6日号


 日経平均株価は円レートの下落に伴って上昇、円安株高が再現した。野田前総理の衆院解散発言の前日の対ドルレート(終値ベース)は79円37銭だったが、これが1月4日には88円13銭に下落した。1ヶ月半で円は8円76銭下落したことになる。8円76銭の円安で日経平均株価は2067円上昇した。したがって1円の円安で日経平均は約236円も上昇したことになる。

 この反転上昇を牽引したのはトヨタ、ホンダ、キヤノン、コマツなどの主力輸出株とファナック、ファーストリテイリング(ユニクロ)の主力値がさ株だった。11月14日から1ヶ月半の上昇率はキヤノンの40.3%を筆頭に軒並み日経平均の上昇率23.8%を大きく上回っている(下表)。

 これら主力輸出株は円安が続けば輸入代金のかさ上げなどによって営業利益が大きく好転する。トヨタの場合、対ドル1円の変動による営業利益の年間影響額は350億円(下表の「1円感応度」)にもなる。

主力株の上昇率(12年11月14日ー13年1月4日)と直近PER
hyo2.PNG
(注)PERは「日経新聞」13年1月5日付、1月4日終値ベース

 トヨタの下期利益予想の前提となる想定レートは対ドル78円だった。かりに88円の円安(10円円安)が1年間続けば営業利益は年間で3500億円改善することになる。ヘッジファンドなど外国人投資家は円安による利益改善を当て込んでトヨタを筆頭とする日本の主力輸出株を積極的に買い上げたようだ。

 兜町ではこのまま円安が進み1月中にも対ドル90円台を付けるという観測が出ている。上述したように1円の円安で日経平均は236円上昇してきた。かりに1ドル90円超、あと2円円安になると日経平均株価は472円上昇するという計算になる。1月4日の日経平均終値の1万688円に472円を加えれば1万1160円になるが、あと2円の円安で日経平均は2010年4月に付けたリーマン暴落後の戻り高値1万1057円を上回ることになる......。


兜町は楽観一色だが多くのテクニカル指標が過熱を示唆
日経平均の予想PERは17.6倍、世界でも割高水準に

 ただ兜町が楽観一色に転じた後、株価のほうが一転反落するということも過去には多々あった。実際、衆院解散発言後の株価上昇は異例のスピードだった。多くのテクニカル指標が相場の短期的な過熱を示唆している。この過熱相場を「大胆な金融緩和」発言で円安株高を牽引したとされる安倍総理を模して「安倍バブル」と称する向きもある。

 例えば、短期的な相場過熱度を示す代表指標である日経平均株価の25日移動平均線からの上方乖離率だが、1月4日の上方乖離率は9.45%に達する。相場過熱の目安とされる乖離率4%の倍以上の上方乖離率になっている。

 もう一つの指標は、東証1部の上昇銘柄数と下落銘柄数の割合を示す騰落レシオだ。騰落レシオが120%以上を続けると相場は過熱状態にあると診断される。騰落レシオは昨年12月13日に120%を突破、12月20日には163%という異常値に達した。1月4日も146%という高水準にある。

 上方乖離率や騰落レシオを見る限りいつ反落してもおかしくないほど相場は過熱している。これらは過去の経験則に基づいた指標に過ぎないが、企業収益という株式価値との関係からみても株価には過熱感が出ている。それを知る代表指数は、株価を予想1株当たり利益で割って算出される予想PER(株価収益率、倍率)だ。予想PER倍率が高くなるに従い株価は割高、PER倍率が低くなるに従い株価は割安と判断される。

 日経採用225銘柄の平均予想PERは1月4日終値ベースで17.6倍に達し、NYダウ採用30銘柄の平均予想PER12.1倍を大きく上回る(上掲表参照)。日本の予想成長率はアメリカの予想成長率より低いのに日本株の予想PERはアメリカより高いのだ。予想成長率がアメリカより高いブラジル、中国、韓国の予想PERより日経平均の予想PER倍率のほうが高い。成長率予想に比べ日本株は買われ過ぎており、株価は国際比較で見て割高状態にあるといえそうだ。

 かりに円が対ドル90円に下落、計算どおり日経平均株価が1万1160円に上昇すれば予想PERは18.4倍に跳ね上がることになる。このPER倍率は世界で最も高い台湾(加権指数)の18.8倍に次ぐ高水準である。

 もちろんこの計算には円安が継続し予想利益が上昇することを織り込んでいない。1月後半から3月期決算会社の決算発表が始まるが、この発表の場で会社側が今期の業績予想をどの程度上方修正するか。その結果、来期(2013年度)の増益率をどのようにアナリストが予測するか次第で、割高かどうかの評価はもちろん変わる。かりに現在予想されている15%前後の来期増益率を前提にすれば日経平均1万1160円の予想PERは16.6倍に下がる。しかし16.6倍でも先進国水準より日経平均のPER倍率は高く株価は割高だ。

 円安による企業業績の好転は予想に過ぎない。その好転予想もすでに株価に織り込まれているとする見方もある。「安倍バブル」は期待だけが先行し実態の裏付けがない。これに悪乗りした結果、かりに株価が業績予想の好転度合いを上回って大きく上昇しているとすれば、株価はいったん反落することになる。

 いったん反落し過熱(バブル)感が消えた後、日経平均は1万1000円の壁を突破できるかどうか。円安相場や長期金利上昇の帰趨、企業業績回復の見通しなどファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)の確認が欠かせない。


※次週(1/14)は休載です。
プロフィール
ニックネームさん
大西良雄(経済ジャーナリスト)
上智大学卒業後、東洋経済新報社に入社。記者を経て「月刊金融ビジネス」、「週刊東洋経済」編集長を歴任。出版局長、営業局長の後、常務第1編集局長を最後に独立。早稲田大学オープンカレッジ講師のほか講演・執筆活動。
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