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大西良雄ニュースの背後を読む

2012年5月

2012年5月25日 14:47

鶴光太郎氏の「日本は南欧化するか?」を読んで

(2012年5月25日筆)

 日本が、財政破綻を引き起こし世界経済に大迷惑を掛けているギリシャの二の舞にならないか、そのことについての経済的分析の前に、考えておかねばならない問題があります。それは政治家と官僚、そして国民(選挙民)の関係です。

 この関係について「日本は南欧化するか?」と題する鶴光太郎氏(慶応大学教授)の示唆に富んだ論文が日経新聞(5月21日朝刊「経済教室」)に掲載されています。鶴光太郎氏は経済企画庁出身、経産省の経済産業研究所の研究員でした。

 経済産業研究所の初代所長はノーベル経済学賞の日本人候補とされる青木昌彦氏(京都大学、スタンフォード大学名誉教授)でした。当時小生は、東洋経済の出版局長でしたが、青木先生と語らい経産研の研究成果を「経済政策分析シリーズ」「経済政策レビュー」と銘打って出版することにしました。

 鶴氏はその当時の研究員で筆者の1人でした。現在は「比較制度分析」を専門としており、その研究成果の一部が本論文に反映されているようです。「比較制度分析」では青木先生が世界的権威ですから鶴氏はその弟子筋に当たります。

 ついでですが青木所長の経産研には現在大活躍の論者たちが集っていました。出版の窓口になっていただいた松井孝治氏(当時研究部長、経産省出身)は民主党の参院議員になり鳩山政権の知恵袋として活躍しました。同じく窓口だった澤昭裕氏(当時研究調整ディレクター、経産省出身)はNPO法人・国際環境経済研究所の所長として原発、電力問題で理に適った現実的な発言をして感傷的な自然エネルギー派に議論に対峙して注目されています。


なぜ、北欧と南欧で財政の健全性に大きな差があるのか
国民の公共心、他人への信頼感が高い北欧、低い南欧


 鶴氏は、「ともに大きな政府が志向されているのに、なぜ北欧と南欧の財政の健全性に大きな違いがあり、英米などでは小さな政府が志向されるのか」という問いを掲げ、その答えを仏エコール・ポリテクニークのカユック教授らの画期的な研究成果(2011年)に求めています。

 カユック教授らは、国民の福祉国家への支持や福祉規模の決定要因として「国民の公共心」を重視しています。

 教授らは「公共心が高いとは脱税や社会給付の不正受給などをしないことを意味する。国民の公共心が高ければ公務員も汚職や不正をせず、透明性が高く効率的な政府が構築されやすい」という考えから福祉国家を分析しています。

 その分析によれば、(1)周りに公共心が高い人が多い(他人への信頼感が高い)と考えれば、国民はより高い税負担とそれに応じた社会給付を受け入れ、福祉国家を支持する。ただし、(2)公共心のない人々が増える(他人への信頼感が低い)場合でも、税負担を逃れながら再分配による給付の恩恵にただ乗りしようとして福祉国家への支持が強まるという2面性があるというのです。

 国民の公共心の高さと再分配への支持(福祉国家の規模)をめぐる2面性に基づいて仕分けすれば、同じ大きい政府(大きな福祉)を志向する欧州諸国でも以下のような二つの国家群に分かれます。

 (1)に対応する国家は、中欧のオランダとフィンランド、デンマークなど北欧諸国のような「まじめな国民・公務員が多いため、大きい政府だが効率的に運営されている国家」です。(2)に対応する国家は、ギリシャ、ポルトガル、スペイン、イタリアなど南欧諸国のような「不正を働く国民・公務員が多いため、大きい政府となり、非効率に運営されている福祉国家」です

 もうお分かりのように欧州債務危機の震源国であるギリシャ、ポルトガル、スペイン、イタリアなど南欧諸国の公共心の低さは、脱税によって形成される地下経済の大きさ(南欧諸国はGDP比20~25%)で証明されると鶴氏は書いています。

 ギリシャでは、政権交代のたびに政治家は自らの縁故者を公務員に採用する、その不正の末に公務員天国が築かれたのです。その公務員は50歳から年金がもらえる、大きな別荘を構えても税金を払わない。事業者は平然と売上をごまかし脱税するなどなど、国民の公共心の低さは折り紙つきです。

 国民は政府へのタカリに忙しく脱税を得意とする。その上タカリと脱税を助長して恥じない政治家が支配する国家の財政が破綻しないほうがおかしい。しかも実際、破綻するという段になってなお政治家は国民に迎合して財政緊縮を拒否し、借金を踏み倒そうとしているのです。4人に1人(若年層は2人に1人)は失業中という危機的状態にあることは分かりますが、その危機を作り出したのが「公共心の低い」国民自身(その助長者である政治家)だったことを忘れているようです。


日本の公共心は高からず低からず、だから社会保障もほどほど
だが政府・官僚への信頼感が極端に低く、「南欧化は避けられない」?


 翻ってわが日本は、どの位置にあるのでしょうか。カユック教授らの分析によれば日本人の公共心(他人への信頼感)の高さは、北欧諸国と南欧諸国の中間にあり、高からず低からず、です。他人への信頼感がほどほどですから税負担も社会保障支出もほどほどです。どちらかといえば日本は「小さな政府」を持つ英米、カナダ、オーストラリアなどアングロサクソン諸国のグループに属すると位置付けられています。

 公共心が高く他人への信頼感が強ければ、国民は高い税負担に耐えて福祉国家を支持するという分析は、現在の日本人には耳の痛い話ですね。小生は、日本国民の公共心はかなり高い(脱税も社会保障の不正受給なども南欧諸国に比べれば少ない...)と思うのですが、他人への信頼感、特に政治家と官僚に対する信頼感は極端に低い状態にあると思うからです。

 現在、我々は消費増税によって社会保障制度の持続可能性を高めるという重要な問題を抱え込んでいます。これに失敗すれば、フィッチにつづきS&P、ムーディズという国際的格付機関が相次いで日本国債の格下げに走り、最悪の場合、国債が売り込まれ金利が急騰するという「ギリシャ悲劇」の第2幕を引きかねないのです。

 そういう修羅場を近い将来に控えているにもかかわらず、国民は政府、政治家、そして官僚を全く信頼していないのです。日本の政治と政治家に対する信頼感は世界でも最低水準にあるという国際調査もありましたね。だから国民は、消費増税も仕方がないと内心思っていても、無駄を削減すれば財源は出てくる、借金の一方に国有財産があるなどという一部の政治家の妄説に惑わされてしまうのです。選挙目当ての彼らの話を聞いて財政再建が先送りされ、ギリシャのように破綻しても彼らの誰も責任を取りませんよ。

 鶴氏は論文の最後で「政府への信頼低下をあおることは国民の公共心を低下させることにつながりかねず、非効率で大きな政府が温存され財政破綻につながる『南欧化』の原因になりかねない」と結論づけています。

 政府・官僚への信頼低下をあおっているのは、あおることで自らの責任を回避し選挙民に媚を売っている一部の政治家とジャーナリズム(小生もその傾向があるかも知れませんが)です。しかし、バッシングを受け信頼を低下させた政府・官僚たちにもバッシングを受ける理由があります。天下りや高収入、予算配分や規制の権限など官僚たちが抱えて離さない既得権益を守り続ける限り、バッシングは避けられません。

 例えば財務官僚は、日本が深刻な財政危機にあるという現状をもっとはっきり国民に示すべきです。一部の政治家に「財政危機は財政官僚のマインドコントロールだ」などと言わせないように......。しかし、かりに財政危機の詳細な証拠を示すことができたとしても、それを示した財務官僚が信頼されていなければ、国民はその証拠を信じないということになりかねません。

 消費増税だけではなく、政府・官僚が何を言っても信頼されず、事態が悪化の一途をたどるという構図は、電力料金の値上げあるいは原子力発電所の再稼動といった問題でも全く同じです。

 政府・官僚は自ら率先して身を削り居ずまいを正して早く国民からの信頼を取り戻して欲しいと思います。そして、官僚を叩けば選挙に勝てると思っている政治家どもを見返してやるべきでしょう。政府・官僚が国民からの信頼を取り戻さなければ、「日本の南欧化」は避けられないということになります。

2012年5月18日 10:29

いきなりズドン、わが家に雷が落ちた?

(2012年5月18日筆)

 今朝(5月18日)の午前一時過ぎだったと思いますが、「ズドン」という鈍い強い音がしました。それと同時に身体が震え、思わず目が覚め、ベッドから身を起こしました。

 何が起きたのか。寝ぼけ眼で考え付いたのは2つの可能性です。ひとつはわが家の近くを走る立川断層がズレ動き大型の地震が発生したという可能性です。

 ズドンと音がしたあと身体が震え、寝室の天井にある蛍光灯のカバーが外れてぶらぶら揺れていましたから大型地震を疑っても不思議ではありません。しかしぶらぶら揺れているのは蛍光灯のカバーだけで書棚や家具は揺れていません。しかも身体の揺れはほんの一瞬で、その後、横揺れも縦揺れもありません。地震ではなさそうです。


ダンプがわが家のブロック塀に突っ込んだ音?

 もうひとつ、わが家のブロック塀にダンプか乗用車が突っ込んだのではないか、そういう可能性にも思い至りました。

 最近は多数の死傷者を生む理解しがたい自動車事故が少なくありません。ダンプや乗用車が通学、通園途中の子供たちの列に飛び込む。格安の夜行バスが高速道路の側壁に突っ込み股裂き状態になった。建機を積んだトラックが、熱海市街の坂道でブレーキがきかなくなって対向車に次々ぶつかったあとクリーニング店に飛び込んだ。

 そんな映像を毎日見せられていますから、「ズドン」という音は、ダンプか乗用車かがわが家のブロック塀に突っ込んだ音だと思い付いたのでしょうね。

 わが家から500メートルほど先に小学校があります。毎朝、2組の通学班が最上級の6年生を先頭にわが家の玄関先の道路を一列縦隊で歩いて行きます。6年生の後に続く子供たちがおしゃべりをしながら楽しそうに通学しているのを見るのが小生の楽しみでもあります。

 ちょっと余談になりますが、小宅のブロック塀は盛り土を支えるもので高くはありません。小学生は通学路に沿って植え込んだ我が家の草木を眺めながら通学することになります。狭いのですがわが庭先にはたくさんの草木が密植されています。

 いまは黄色のモッコウバラ、真紅、朱赤、ピンク、黄色のバラ、チェリーセージ、クレマチス、ローズマリー、アイリス、杜若が咲き、これからラベンダー、ハンカチの木、ピンク、空色、濃紺のアジサイが咲き始めます。

 木々では、藤の木、ブルーベリー、柚子、エゴノキ、ソテツはすでには花をつけましたが、金木犀、ざくろ、夏みかん、柿木などはこれから花を咲かせます。花はつけませんがイチジクも見えます。

 小生、家内と一緒に手入れして育てたわが家の草花を眺めて、通学班の子供たちが「きれいだね」「この花の名はなんというの」と言い合ってくれるのをひそかな楽しみにしているのです。めったに言ってくれないのですが......。

 「ズドン」という音が、そんな通学班の子供たちを巻き込んで自動車がブロック塀に突っ込んだ音だとすれば、ぞっとします。悪夢です。しかし、音がしたのは夜中の1時過ぎ、よく考えれば通学班の子供たちはスヤスヤ夢の中です。夜中の住宅地にダンプトラックが走るはずがありません。この可能性も早とちりでした。


犯人は雷、わが家の屋根を直撃したように聞こえたが......

 実は、音と震えの犯人は雷だったのです。テレビのニュースでは「関東地方では大気の状態が不安定で18日夕方から落雷や突風が発生する恐れがある」と繰り返し言っていました。最近の天気予報は良く当たりますね。

 しかし雷なら、ぴかっと光ってゴロゴロと鳴り、その後、バリバリ、ズトンと来るのが普通です。ぴかっ、ゴロゴロ、バリバリの前段がなく、いきなりズドンでしたから雷だったとは思えませんでした。

 ここで家内と議論になりました。家内は、「雷がわが家に落ちた」からゴロゴロ、バリバリの前段がなくいきなりズドンと来たのではないかと言い張って引かないのです。小生、雷が小宅を直撃していれば、火災が発生しているはずだ、停電になっているはずだ、火災も停電もないのだから雷は直撃していないと諭したのですが、なかなか納得してくれません。

 確かに家内が強く言い張るとおり、ズドンの音は小宅の屋根、家内の頭上から発せられたように思えます。小生にもそう聞こえました。「雷は近くに落ちたが、わが家には落ちていない」という小生の正論が間違っている可能性もある......。

 まあ、火事も停電もなく、どこにも雷の被害がなかったのですから、どうでもいいことなのですが、雷が落ちても木造家屋に被害が生じないことなどあるのでしょうか。家内を再度説得するためにも知っておきたいと思っています。

 ほんとうは、ユーロ安(円高)、株価急落の原因になっているギリシャのユーロ離脱リスクについて書く予定でしたが、雷のズドンにかく乱されてしまいました。ユーロ離脱リスクは来週書きます。

2012年5月11日 14:50

「増税より成長が先」といって勝つ「政治のアウトサイダー」

(2012年5月11日筆)

 「朝日新聞」の「オピニオン」欄は時に優れたインタビューを掲載しますので眼が離せません。4月13日の本プログでも「オピニオン」欄に掲載された「派遣村」の村長だった湯浅誠氏のインタビュー記事を紹介しました。今回は5月10日の「オピニオン」欄に掲載された慶応大学経済学部の竹森俊平教授の「失われた20年 政治の責任」と題するインタビュー記事を紹介します。

 竹森教授は、2002年に東洋経済新報社から刊行された『経済論戦は蘇る』で吉野作造賞を獲得した俊才です。この著書は小生が東洋経済の出版局長当時に発刊されたものですが、担当した編集者の慧眼にいまさらながら感心しています。教授は著書の中で、オーストリア出身の経済学者ヨゼフ・シュムペーターが唱えた「創造的破壊」の考え方とアメリカの経済学者アービング・フィッシャーが主張した「デット・デフレーション」(債務デフレ)の考え方を対比させて戦前の大恐慌をめぐる経済論戦を分析しています。

 そのうえで、小泉純一郎内閣による構造改革路線は、「不況の破壊力」のなすがままにさせ非効率なものを経済から一掃する(これを「清算主義」と名づけた)一方、民間の自力による「創造的破壊」によって経済の回復を図るというシュムペーター流の経済思想だと指摘しました。一方のフィッシャーの「デット・デフレーション」の考え方はデフレ対策として量的金融緩和からインフレ目標政策にいたる金融政策を重視する立場につながっているとも指摘しました。日本で展開されている親・日銀派(シュンペーター派)と反・日銀派(フィッシャー派)との現在の激しい論争の源流が紹介されていたことになります。


選挙が近づくと「政治のアウトサイダー」が勢いづく
彼らは成長が可能だから増税は不要だと「夢を売り込む」


 それはさておき、竹森教授は「オピニオン」欄において、国会で本格論戦が始まった消費増税をめぐる政治の迷走について興味深い指摘をしています。

 教授は、「増税が難しいのは、成長重視と財政再建重視という両論の対立が必ず起きて、選挙が近づくと、痛みが伴わない成長重視派が有利になるからです」とまず指摘しています。そして「地震や原発事故が起こり、この国の前途を心配して、増税もやむなしという国民の合意ができかけたのに、解散・総選挙がいわれ始めると、すっと成長重視派に人気が移る」という状態になったというのです。

 竹森教授は、「政権を担っていない『政治のアウトサイダー』」が日本はまだ「高い成長が可能だから増税は不必要だ」とか言って国民に「夢を売り込む」、そして選挙を有利に戦おうとすると指摘しています。この指摘が実に面白いし、的確です。

 例えば2001年の自民党総裁選挙で党内のアウトサイダーだった小泉氏が消費税を上げないといって勝った。小泉氏は市場重視の構造改革(「構造改革なくして成長なし」)によって成長を実現すれば税収増によって財政は均衡すると考えたのでしょうか。しかし、竹森教授は「衆参で安定勢力を持ち景気も良かった小泉政権の末期こそ消費増税の絶好の機会だった」のに「増税の道筋もつけられなかった」のは小泉氏の失政だと断じています。同感です。

 この後民主党も、当時、野党というアウトサイダーの代表だった小沢一郎氏の、「消費税を上げない」という選挙戦略によって政権交代が実現しました。そして「こんどは橋下徹大阪市長が率いる大阪維新の会のようなアウトサイダーが出てきて成長重視を唱え、増税の実現が怪しくなる」と教授は嘆いておられます。


欧州の異常に高い若年層失業率のもとで
若者に「成長重視」を売り込んで勝ったオランド氏


 海の向こうでは、フランスの大統領選挙でミッテラン以来、長い間野党の冷や飯を食わされていた「アウトサイダー」のフランス社会党の党首オランド氏が現職のサルコジ氏を破って新大統領の座を獲得しました。オランド氏も「緊縮財政だけが選択肢ではない。雇用や成長が重要だ」と「成長重視」を選挙公約に掲げて選挙に勝ったのです。

 参考までにEU主要国と日本の失業率を下表に示しておきます。欧州の失業問題は深刻です。特に若年層(15歳~24歳)の失業率は政府債務危機に陥ったスペイン、ギリシャが50%超と驚異的な高さです。欧州の中軸国、イタリアは35.9%、フランスでも21.8%と日本の10.3%よりはるかに高い若年層失業率です。職を得られない若者たちが「雇用や成長が重要だ」という成長重視の主張に共鳴してオランド氏に投票したのもうなずけます。

深刻な欧州の失業問題、「双子の赤字」を抱え成長は可能か(単位%)
hyo1.JPG注1)失業率は12年3月(ギリシャは2月)、ユーロスタット調べ。日本は総務省調べ。
注2)財政赤字、経常収支、政府債務(残高)比率は2011年、GDP比、OECD調べ。


 だからといってオランド氏が経済成長率の引き上げに成功し雇用を増加させる政策手段を持ち合わせているか、それは全く不確かです。

 表に見るように、ドイツが輸出競争力を磨いて経常収支黒字を積み上げているのに対し、同じユーロ安の好条件下にありながらフランスは輸出力が弱く経常収支は赤字を続けています。GDP比で財政赤字の大きなスペイン、ギリシャ、イタリアはフランス同様、輸出で稼ぐ力はなく大きな経常収支の赤字を抱えています。

 これらの国々の国民は、財政支出に依存した、つまり財政赤字を頼りに消費過多の成長を続けてきました。そのうえ経常収支が赤字のため、つまり海外からの稼ぎがないため貯蓄が増えず、経済成長を促す投資が不足する状態を恒常的に続けているのです。こうした状態を改めず財政赤字と経常収支赤字という「双子の赤字」を抱えたまま経済成長を実現することができるのでしょうか。

 かりにオランド氏の公約どおり教員雇用を6万人増やしてもそれだけでは失業率は下がりません。累進税の最高税率を75%に引き上げれば富裕層の資金は海外に逃避、投資の原資が失われてしまうのではないでしょうか。


成長重視派の「成長の夢」は幻想、幻影
増税を避けてきた結果、GDPの2倍以上の政府債務残高


 日本とて同じです。財政赤字の垂れ流し、つまりバラマキで何とか国内消費を支えていますが累積赤字(国債残高)は増えるばかりです。少子高齢化の進行で貯蓄率は低下しています。内需に成長力はなく投資は成長力のある海外に流出しています。原発停止で火力発電用化石燃料の輸入急増から経常収支の黒字幅は今後どんどん縮小していくでしょう。数年後にはスペイン、イタリア、フランスのように日本も「双子の赤字」を抱え込み、成長が覚束なくなるに違いありません。

 国民は、「夢」を売り込む成長重視派の「夢」が幻想、幻影であることに早く気が付くべきでしょう。竹森教授は「日本には増税で財政を持続可能にするか、いずれデフォルトするかの選択しかない」としたうえで、消費増税法案に名目3%程度、実質2%程度の成長率目標を書くことを主張した民主党の政治家に向けて、「財政計画は希望的観測による高い成長率ではなく、過去20年で1%弱という実績値に基づき現実的に立てるべきです」と言い切っていました。

 そして最後に竹森教授は、「日本人は失敗の記憶を蓄積したがらない。増税を避けてきた結果、GDPの2倍の政府債務残高だという認識を国民ははっきり持つべきだ。同じ間違いの繰り返しでは財政は追い込まれ、政治は袋小路に入ってしまいます」という言葉でインタビューを締めくくっています。

 たまたまですが3月末の「国債及び借入金」、つまり「国の借金」残高が昨日の5月10日に発表されました。昨年3月末から約35.6兆円増加し残高は約956.9兆円になったそうです。オギャーと日本に生まれたのが運の尽き、国民一人当たり約752万円の借金を背負うことになります。この「国の借金」残高、財務省の資産によれば来年の3月末には1085兆円以上に膨らむそうです。名目GDPの2.3倍にもなります。借金は膨らみ続けているのです。
プロフィール
ニックネームさん
大西良雄(経済ジャーナリスト)
上智大学卒業後、東洋経済新報社に入社。記者を経て「月刊金融ビジネス」、「週刊東洋経済」編集長を歴任。出版局長、営業局長の後、常務第1編集局長を最後に独立。早稲田大学オープンカレッジ講師のほか講演・執筆活動。
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