
2011年12月22日 16:00
2011年12月16日 11:22
2011年12月 9日 11:12
2011年12月 2日 14:21
2011年12月2日筆
大阪維新の会の橋下徹氏が、民主、自民、そしてなんと共産党まで支援に回った対立候補を大差で破り大阪市長に就任しました。いまや最大勢力の無党派層は既成政党に絶望して橋下氏になだれを打って投票しました。三行半を突きつけられた民主、自民、そして共産党はショックだったでしょうね。
選挙戦を通じて橋下氏を支援し続けたのは渡辺喜美氏の「みんなの党」でした。「みんなの党」は公務員改革にも規制緩和にも熱心ですしTPP(環太平洋パートナーシップ協定)にも賛成です。小泉改革の申し子といってよいでしょう。
「敵を作って叩き、民意を見方につける」という橋下氏の政治手法も小泉純一郎元総理によく似ていますが、彼の公約も小泉改革に通底するものがあります。大阪都構想は大阪市、堺市の解体、特別区への再編など行政組織の問題だけが取り上げられていますが、それは手段であって目的ではないと思います。
朝日新聞によると「橋下氏が選挙戦で力を込めたのは、政策よりむしろ沈滞する日本に対し、中国などアジアの国々が台頭する現実だった」(11月28日)と書いています。橋下氏は、アジアの国々の台頭に遅れを取り地盤沈下の著しい大阪の経済再生を図ることこそ最大の目標だったのではないでしょうか。橋下氏に投票した人の多くは「大阪の再生」を期待したという調査もあります。
改めて調べてみたのですが、大阪府の平成21年度府内総生産(GDP)は約36兆円(名目)にとどまり、全国シェアは7.6%に過ぎません。大阪府のGDP全国シェアが10%に下がった時、「1割経済に落ちぶれた」と大阪人が大騒ぎしていたことがありました。今はそれをも下回っているのです。さらに、平成21年度の一人当たり府民所得は約288万円、10年前に比べ50万円も減少したというから驚きです。
税収は減り生活保護費が増え大阪府下主要市の将来に夕張の危機が重なる
これでは税収入は上がらず、生活保護費など財政支出が増えるばかりです。地方財政の硬直度を測る指標として「経常収支比率」が知られていますが、大阪府および府下の地方自治体の「経常収支比率」は悪化し、すでに危機ラインに達している自治体も少なくありません。
少し説明します。「経常収支比率」とは、公務員人件費、扶助費(生活保護費、老人福祉費、児童福祉費)、公債費など毎年必ず必要となる「経常経費」(義務的経費とも言います)が、自ら徴税する地方税や国から交付される地方交付税などの「経常財源」でどれぐらい賄われているかを示す指標です。
経常経費が経常財源を下回り、経常収支比率が80%以下であれば、その自治体の財政硬直化は進んでおらず「健全」とされています。財政が破綻した夕張市の経常収支比率は125%を超えていました。必ず必要となる経常経費が経常財源を大きく上回り、夕張市は借金もできなくなり破綻しました。
「経常収支率100%」は経常経費と経常財源が等しい状態ですが、この状態でも非常に危険です。経常経費の中には各種補助金、公共サービス費、学校や公園、市道の改修費など政策経費は含まれていません。これら政策経費は経常財源では賄えずすべて借金(地方債)に依存せざるを得なくなるからです。
ちなみに大阪府下の主要市の2010年度経常収支比率(以下比率は日経新聞11月24日付)は、泉佐野市105.1%、大阪市99.4%、泉大津市99.2%、守口市99.1%です。いずれも全国のワーストランキング10位以内に並んでいます。10位以内ではありませんが大阪都構想で特別区になると想定されている堺市の経常収支比率は96.8%(2009年)で、いずれベストテン入りするのでないでしょうか。
橋下氏がこのたび市長になった大阪市には、もうひとつ不名誉な記録があります。大阪市の住民一人当たり扶助費(生活保護費、老人福祉費、児童福祉費)が日本一でもっとも高い水準だという記録です。大阪市で起きている生活保護費の不正受給や生活保護者医療費の詐取など、扶助費をめぐるおぞましい実態がTV放映されています。生活保護をめぐるモラルハザード(不道徳)は深刻ですが、それ以上に深刻なのは「大阪の衰退」で、その衰退がモラルハザードを生んでいるというほかありません。
座して死ぬぐらいなら、「独裁者」に掛けてみたいというのは大阪の民意
「大阪の衰退」は今に始まったことではありませんが、大阪港、神戸港は港湾荷役やコンテナ扱い量で韓国釜山港に大きく水をあけられました。期待の関西国際空港は大幅な赤字、アジア随一のハブ空港になった韓国仁川の新国際空港に遠く及びません。関西が誇ったパナソニック、シャープ、三洋電機の家電御三家は、円高を背景に競争力を強めた韓国のサムスン電子、LG電子や中国のハイアールなどにその地盤を大きく侵食されました。パナソニックなど関西勢は半導体、液晶パネル、プラズマテレビからの撤退再編を迫られ、成長が期待された太陽電池やリチウムイオン電池、LED(発光ダイオード)さえ生産体制の再編成が迫られています。「大阪の衰退」は一段と加速しているといえるでしょう。
橋下氏に投票した選挙民の多くは、このまま座して死ぬぐらいなら、「独裁者」であれなんであれ、「大阪の衰退」を止めてくれる可能性を持った政治家に一票を投じたいと思ったに違いありません。
「維新」人気に乗っかろうとする亀井・国民新党、小沢グループの愚劣
小生の期待も多少入りますが、橋下氏は大阪市に巣食う自治労や日教組など既得権益グループを退治して、公務員人件費を筆頭に大阪市の異常に膨らんだ「経常経費(義務的経費)」を圧縮、予算を組み替えて「大阪の再生」のために政策経費を拡充するに違いありません。
さらに橋下氏は市営地下鉄の民営化を公約しています。大阪都構想を単なる行政組織の変更にとどめることなく、公営企業の民営化や規制が緩和される「経済特区」を組み込んで「大阪の再生」を図ろうとするに違いありません。
少し橋下氏の政策への理解が行き過ぎているかもしれません。ですが職員を5段階評価し給与や任用に反映させるという「教育基本条例案」「職員基本条例案」は「みんなの党」の公務員改革に通じます。大阪の再生には国内外の交易や投資を活性化させる規制改革(TPP交渉では内外の規制改革が期待できる)や民営化が必要だとすれば、橋下氏は小泉改革の継承者ということになります。
そんな橋下氏に妖怪が乗っかろうとしています。小泉改革の申し子である「みんなの党」が橋下氏の「大阪維新の会」と組んで来るべき衆院選挙を戦うのには必然性があります。しかし、小泉改革、規制緩和、TPPのすべてに敵対している亀井静香・国民新党代表が「維新の会」と新党を結成するなど選挙民を愚弄するのにも程があります。
さらに、原口一博議員など小沢一郎民主党元代表のグループが「維新の会」と組むなども噴飯ものです。小沢氏が『日本改造計画』を書いた当時の「新自由主義者」に戻るのなら別ですが、日教組や自治労、連合と手を結んで「似非社会主義」に転じた小沢氏が小泉改革の流れを汲む橋下氏と組むのは不可解です。別の意図があるとしか思えません。
別に意図とは、もちろん選挙です。小沢氏のグループも亀井氏の国民新党も、現状では多くが落選の憂き目を見るのは確実です。次の衆院選挙で一族郎党を国会に戻し自らの権勢を保持するには人気者の橋下氏に乗るにかぎるというのでしょう。そうした政策無視の、小沢氏や亀井氏の卑しい魂胆を選挙民はとっくに見破っていると思いますが、いかがでしょうか。