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大西良雄ニュースの背後を読む

2011年12月

2011年12月22日 16:00

異常な世代間格差を生んだ「大人たち」への若者の反乱

2011年12月22日筆

2011年、ギリシャでは公務員給与や年金の引き下げに抗する激しいデモが起きました。これは公務員など特権階層の反抗でしたが、アメリカでは「我々は99%だ」と称し貧しい若者たちによる、ウォール街に巣食う1%の超富裕層(特権階層)を攻撃する反格差デモが繰り広げられました。

日本でもアメリカの反格差デモに呼応する若者たちのデモが散発的には発生しましたが、さほど大きな渦にはなりませんでした。しかし、大阪市長と大阪府知事を選ぶダブル選挙では日本の若者たちがついに反乱を起こしたようです。これまで足を運ぶことのなかった若者たちが投票所に向い、自民党、民主党、それに共産党まで既成政党が支持した候補を打ち負かしてしまったのです。

市長選に勝利したのは「みんなの党」を除く既成政党すべてと対峙した橋下徹氏(前大阪府知事)でした。若者たちは民主党、自民党、公明党、共産党、社民党、国民新党などすべての既成政党に絶望して橋下氏に投票したのではないでしょうか。小泉純一郎氏は「自民党をぶっ壊す」、小沢一郎氏は「官僚機構をぶっ壊す」といって選挙に勝ちましたが、彼らは何もぶっ壊すことができず、何も変えることもできなかった。政治家たちは、われわれの職場を奪い所得を削り生活を苦しくしただけだと若者たちは思っているのかもしれません。

もちろん自民党や官僚機構をぶっ壊すだけで自動的に若者たちの職場が生み出され所得が増えることなどあり得ません。ぶっ壊した結果、財政配分が変わり制度が変わり、経済成長が実現して職場が生まれ所得が増えるのです。若者たちはそんなことは十分承知の上で、既成制度、既得権益とその背後に巣食う既成政党を「ぶち壊してくれる」かもしれない橋下徹氏に投票したのでしょう。

借金を作ったのは大人たち、政府債務累増をめぐる若者たちの危うい虚無感
こうした若者の「ぶち壊したい」という感情は、財政赤字についての20歳代の若者の声に顕著に表われているようです。朝日新聞の星浩編集委員は、その有様をコラム「政治考」(12月18日朝刊)で紹介しています。星氏は、時事通信社発行の「金融財政ビジネス」誌で日銀・福井事務所の松原所長が書いたコラムから援用して以下のような若者の声を紹介しています。

小生の推測ですが、松原所長は、借金の返済を怠たり財政赤字を積み上げた結果、財政破綻や金融危機など経済混乱が発生するかもしれないが...と若者たちに問うたのでしょう。これに対し若者たちは以下のように応えたといいます。

「今の借金は大人たちが作ったものであり、大人の付けを若者たちが返す義務はない」
「経済が混乱して給料が下がるのは、年功序列で高賃金を享受している大人」

また、財政が破綻した結果、国債が暴落して円(貨幣)の価値が急落、原油
など輸入物価が高騰する、あるいは暴落する国債を買い支えるため禁じ手である国債の日銀引き受けが再開され、その結果、貨幣供給が急増しハイパーインフレ(きわめて高い物価上昇)が起こる危険がある、ハイパーインフレが起これば預金の価値が目減りするが...、と松原氏は重ねて問うたのでしょう。これに対して若者たちはこう応えたようです

「ハイパーインフレが預金価値を大幅に減価させるとしても、それは多額の
預金を持っている大人の心配事」
「ハイパーインフレで(政府債務の問題が)解決できるならそれによって片
付けてほしい。早く世の中が『リセット』されたほうがよい」

小生、政府債務累増の原因の多くが「大人たち」にあるという見解には同意
します。しかし、財政破綻やハイパーインフレの影響が「大人たち」だけに及ぶという若者たちの見解には同意しかねます。

財政破綻の影響は教育費や医療費その他社会保障費用の大幅削減を通じて「若者たち」にも及びます。緊縮財政は景気の悪化による新卒採用の減少をもたらし「若者たち」の失業率を急上昇させます。インフレは生活費の高騰を通じて給料の少ない「若者たち」の生活を破壊します。他人事ではありません。

星氏は、この若者の声を聞いて、「(消費)増税で財政赤字を減らす必要はな
い。インフレになって持てる者と持たざる者の立場が逆転するなら、その流れに任せればよい―。若者の間にそんな虚無感が生まれているのだろうか。だとしたら、それは危うい。」と書いています。

「若者たち」と「老人たち」との間にある異常な世代間格差をどうする
もちろん消費増税を否定し虚無感に浸って流れに任せ、自分の父親や母親でもある「大人たち」の破滅を待つ若者ばかりではないとは思います。しかし、「若者たち」が、高齢者(老人)を含む「大人たち」とそれを支える自分たちの間に横たわる大きな世代間格差に強い憤りを持っていることについては、小生、共感するところが少なくありません。

 下表は、三菱UFJリサーチ&コンサルティングが昨年9月に発表した世代会計モデルを使って推計した「生涯を通じた世代別の受益と負担」の差額です。

各世代の「受益」は社会保障給付や政府消費(公共サービス)や政府投資(公共投資)によってもたらされたものです。「負担」は保険料など社会保障負担と所得税や消費税などの税負担によって構成されています。したがって、下表は政府を媒介にして各世代が受け取る受益のすべてと支払う負担のすべての差額が推計されていることになります(表の年齢は2007年時点のものです)。

1222表.jpg

推計によると、19歳以下の将来世代は負担のほうが受益を大きく上回り7700万円の負担超過になっています。20歳代、30歳代、40歳代の現役世代もかなりの負担超過です。逆に70歳以上の高年齢層は3533万円の受益超過です。将来世代(19歳以下)と高年齢層(70歳以上)の間の世代間格差は差し引き1億1233万円にもなるのです。

前世代の給付は次世代の保険料で賄うという賦課方式で運営されている現行の社会保障制度や現在の税制を前提にして計算すると、異常ともいえる大きな世代間格差が生じることになります。「若者たち」が「大人たち」の既得権益をインフレによってぶち壊したいと思っても不思議ではないのです。

 来る2012年、若者たちは、「虚無感」にとらわれ何もしないで「大人たち」の破滅(自分たちの破滅でもあるのですが)を待つのでしょうか。あるいは既成制度、既成政党に巣食い既得権益を手放ない「大人たち」と戦って世代間格差を縮め、自らの力で自らの雇用と所得を引き上げる改革を成し遂げるために動き出すのでしょうか。

 政府・民主党は、選挙権のある老人のご機嫌を伺い、年金、医療、生活保護、農家の戸別所得補償などあらゆる面で老人優遇を繰り返しています。政治家たちはもういい加減、選挙目当ての老人優遇を止めたほうがいい。小生は、若者たちが「大人たち」に不毛な世代間抗争を仕掛けるのではないか、憂います。

政府は、若者たちが「大人たち」に向って本格的な反乱を起こす前に、「老高若低」とも言うべきこの異常な世代間格差を解消する方向にあらゆる制度を見直す時期に来ているのではないでしょうか。

新年を迎えるに当たって改めてそう思います。では良いお年を。

2011年12月16日 11:22

65歳まで全員再雇用の「義務化」について考える

2011年12月16日筆

60歳の定年後、年金がもらえず無収入になることほど不安なことはありません。その不安な現実になります。その不安を解消してくれる「65歳までの希望者全員の再雇用義務化」案が政府から提案されています。

厚生年金の基礎部分の支給開始年齢の引き上げはすでに始まっていますが、これに続いて報酬比例部分の支給開始年齢が2014年度から61歳に引き上げられます。その後、報酬比例部分の支給開始年齢は3年ごとに1歳ずつ引き上げられ2026年度には65歳になることが決まっています。

60歳定年後、働く場がなければ5年間は無収入状態になる
2026年度からは定年の60歳から65歳の5年間、厚生年金すべてがもらえず無収入状態になります。働かなければ退職金や貯金を取り崩して生活することになります。このままだと1966年以降に生まれたサラリーマンがそういう状態に陥ります。

現状でも継続雇用制度(再雇用、勤務延長)の導入によって65歳までの雇用確保が義務付けられていますが、希望者のすべてが再雇用されるわけではありません。労使協定によって継続雇用制度を適用する選定基準を定め、その選定基準に達している人だけ再雇用される仕組みです。

どのような選定基準になっているか労使協定を確認する必要があります。働く意欲、必要とされる能力など客観的に測れる基準を示すことになっています。「会社が認めるもの」と「上司が推薦するもの」というような恣意的な基準は認められません。しかし、会社や上司が再雇用したくない「怠惰、無能、反抗的な人物」もいるでしょう。実際には、希望するすべての定年退職者が再雇用されているわけではありません。

今回の政府提案は、労使協定や選定基準などまったく関係なく、希望するすべての定年退職者を再雇用(継続雇用)することを義務付けるというものです。これによって65歳まで年金支給開始年齢を引き上げられても、希望するすべての定年退職者が定年後5年間の無収入状態を避けられることになります。

「人は城、人は石垣」というが社員の1割は「お辞めいただきたい社員」
「全員再雇用義務化」は定年退職者には朗報ですが、使用者側、会社側は「義務化」が経営の重荷になると考えているようです。米倉弘昌経団連会長は、「高齢者になるほど健康に個人差が出てくる。義務化するのではなく会社側と話をしながら働く場をつくっていくことが大事だ」と語っています。日本商工会議所の岡村正会頭は「義務化の必要はない。中小企業には60歳すぎの人の職域を開発するのが難しい」とはっきり「義務化」に反対しています。

武田信玄の「人は城、人は石垣、人は堀」ではありませんが、会社が浮かぶか沈むか、経営にとって人材、従業員がすべてです。会社はベストの人材をベストの職場に自由に置きたいのです(実施できているかどうかは疑わしいのですが...)。ですから従業員の採否を国の制度によって「義務化」されることを民間企業は本能的に嫌います。

若いからといって「ベストな人材」であるとは限りません。「会社がご不満ならいますぐにでもお辞めいただきたい」といいたくなるような若い従業員もいます。逆に高齢社員でも、技術の熟練度が高い、長い経験で培われた人的ネットワーク網を持つ、若い人が嫌がる仕事も厭わずこなす優れた社員はたくさんいます。社員の能力は年齢によって決まるわけではありません。

一方、高齢社員が優れた社員ばかりではないことも事実です。中には60歳定年を機に「何としてもお辞めいただきたい退職予定者」がいることも事実です。

ちょっと不遜な言い方で申し訳ないのですが、組織は「1対8対1」の法則で成り立っているように感じます。会社経営で言えば、会社に欠かせない優秀な稼ぎを生む社員が1割、平凡だが会社を下支えしてくれる社員が8割、箸にも棒にもならずお引取りいただきたい社員が1割いるという法則です。

厚労省の調査によりますと、65歳まで希望者が働ける制度を持つ企業の割合は全体の48%にとどまりますが、制度を持つ企業で実際に再雇用された人は7割以上にのぼり、希望しながら雇用されなかった人はわずか2%だといいます(残りの2割超は再雇用を望んでいない人です)。「1対8対1」の法則が観察されるにも関わらず、会社が再雇用を拒んだのがたった2%の希望者でしかないという事実は驚きです。日本の会社は社会保障の代行機関だという説がまだ生きているのです。

こういう数字を見るにつけ継続雇用制度を導入している会社の手足を「義務化」によってさらに縛る前にやることがあると思えてきます。政府は、「高年齢者の雇用確保措置」が法律で義務付けられているのにまだ継続雇用制度を導入していない残り52%の会社に制度の導入を急がせることのほうが先決ではないでしょうか。

会社が成長しなければ父親・母親が息子や娘の職場を奪うことになる
「全員再雇用義務化」に疑問を呈しているのは経営者だけではありません。これから就職しようとする若い学生たち、転職しようとする若いサラリーマンたちも「義務化」に不安を感じています。「義務化」によって定年退職者が65歳まで職場に居座れば、それだけ新卒採用枠や中途採用枠が狭くなり若者の職場が奪われることになるという不安です。

これは悲しい不安というべきです。父親・母親が定年退職後も再雇用されれば未就労の息子や娘の生活費、学費を稼げます。しかしその父母の再雇用が就職活動を始める息子や娘の職場を奪うことになるのですから。

会社が成長せず従業員数も年功賃金体系も一定だとすれば、居座る父親が就職を希望する息子の職場を奪うことになります。しかし「会社が成長せず従業員が一定」「年功賃金体系も一定」という前提を変えれば、父と息子は職場を奪い合うことはありません。

もう経済成長など必要はないとのたまう知識人もいます。経済が成長しなければ職場は増えず失業問題は解決しません。日本経済が成長すれば会社も成長し従業員数が増えます。そうすれば父親も息子も共に職場を得られます。職場を提供するのは会社(大企業、中小企業に差はありません)です。日本にはそんな当たり前のことが理解できないアンチビジネス、反成長主義の識者、政治家がいるのがとても残念です。

日本が低成長でも会社は国境を越えて成長します。アジアには会社成長のチャンスが転がっています。アジアで成長しアジアに職場が増える会社に新たに就職する若者は、内弁慶を捨て現地語を身に付け現地に職場を求める必要があります。それを記憶力が衰えた再雇用の高齢社員に求めるのは無理だからです。
戦後、日本の会社は従業員に投資してスキルを高め成長してきました。いまこそその成功体験を思い出すべきです。社員のスキルアップに投資すべきです。

日本経済が低成長にとどまる場合、つまりは低成長で総人件費が増やせない場合は、父親と息子は職場を奪い合うことになります。それを避け、新卒を採用して活力を高め、再雇用も実現して高齢者を活用するとすれば、その結果は従業員総数の増加です。
総人件費が一定で従業員数が増えれば一人当たりの人件費は減ります。低成長下で会社が新卒にも定年退職者にも報いるとすれば、一人当たり人件費を引き下げて職場を分け合う(ワークシェア)しかありません。その場合、すでにだいぶ崩れているとは思いますが、「年功序列賃金体系」を再修正する必要が出てきます。

成果主義の失敗に懲りて賃金体系を修正しなければ、会社は無収入になる定年退職者も職場を求める新卒者の期待にも応えられないのです。

2011年12月 9日 11:12

経営の中心部分が腐っていたオリンパス、その哀れな実態

2011年12月9日筆

オリンパスの損失隠し(粉飾決算)を調査した第3者委員会の報告書を読んでみました。粉飾決算の手法、例えば含み損を抱えた金融商品を飛ばす手法やM&Aを使った損失穴埋めの手法について詳しく書かれています。

小生は手の込んだ、証券のプロにしか分からない手法にも興味はありますが、それ以上になぜ粉飾決算が見過ごされてきたのか、経営組織上の問題点について報告書がどのように書いているのか、大いに興味がありました。

この点について報告書は、「本件は、社長、副社長、常務取締役等のトップ主導により、これを取り巻く一部の幹部によって行われた。会社トップや幹部職員によって不正が行われることを想定したリスク管理体制がとられておらず、これらに対する監視機構が働かなかった。経営の中心部分が腐っており、その周辺部分も汚染され、悪い意味でのサラリーマン根性の集大成とも言うべき状態であった」と書いています。

財テクに失敗し粉飾決算を行った当事者が出世するオリンパスの異常さ
記述冒頭の「トップ主導、これを取り巻く一部の幹部」について触れます。オリンパスはグループ全体で3万4686名(11年6月末現在)の従業員を抱えています。真面目で高い技術力を持った従業員が少なくないといいます。その従業員を路頭に迷わすことになるかも知れない巨額の粉飾決算でしたが、その粉飾決算を主導したのは3人の元社長と2人の元副社長、1人の元常勤監査役(元経理部長)、1人の取締役(元財務部長)の7名だったというのです。3万4686名の将来を、役員になったとはいえわずか7名の元同僚サラリーマンが左右したことになります。

もっと驚くことは、財テクの失敗、含み損失の発生、飛ばし、M&Aによる損失の穴埋めという一連の粉飾過程すべてに関わった2名の当事者(最初は運用担当の財務部資金グループ係長とその部下)が副社長にまで出世したことです。含み損失を作って首になるのではなく、粉飾の実態を知り尽くしていることが昇進の決め手になったとすれば、まじめに働いているオリンパスの従業員はあほらしくて働く気などなくなるのではないでしょうか。

彼らの守護者になり副社長にまで引き上げたのは、実は営業畑出身の3名の元社長でした。テレビ取材に対して「私は軍人上がりで財務や経理に首を突っ込まなかった」と変な言い訳をした下山敏郎氏は、バブルに乗って財テク経営を主導した張本人でした。下山社長当時の経理部長で財テク経営を実践した岸本正寿氏は下山氏の後を追って社長に就任しました。両社長とも財テクでの巨額な運用損失の存在を知っており、岸本氏は後継社長の菊川剛氏(営業畑出身)に隠されたままの運用損失を引き継いだと報告書は書いています。

彼らは社長ですから、運用損失を出した担当者を解任、馘首する人事権を持っています。しかし首にするどころか、彼らを総務、人事、財務、経理など本社機能を管轄するコーポレートセンター長や経営企画本部長に取立て最後は副社長につけたのです。巨額の運用損失が明らかになれば、自分の社長の地位も危うくなると思ったのでしょうか。こういうサラリーマン社長は許せません。

監査システムなど名ばかり、社外監査役、社外取締役は全くの役立たず
巨額の運用損失や粉飾決算が明らかになるには、外国人社長のウッド・フォード氏就任を待つほかありませんでした。しかしその前に秘密が暴露される機会も幾度かありました。ただ機会はあっても、報告書が指摘するように「リスク管理体制がとられておらず、監視機構が働かなかった」ようです。

不正をチェックする監視システムは、常勤監査役、監査法人、社外取締役、社外監査役、それに内務統制システム、内部通報制度とオリンパスにもひと通り揃っていました。しかしこれらの監視機能は名ばかりでした。ほんの一握りの経理・運用マンが行使した不正テクニックを見抜けず、あるいは意図的に見過ごし、粉飾決算を素通りさせてしまったのです。

素通りしても不思議はありません。社内監査の中心になる常勤監査役は、粉飾決算の当事者だった元副社長や元経理部長でした。泥棒は自分が泥棒であることを明かすことなどありえません。2名の社外監査役の1人は「社長の高校の同級生」、もう1人は「部品をオリンパスに納入している企業の出身」でした。彼らが定年後の食い扶持をくれる社長に楯突くはずがありません。

社外取締役は3人いますが、飛ばし手法を教えたとされる幹事証券出身者(08年6月就任)、順天堂大学教授と日経新聞元専務(いずれも2011年6月就任)の3名です。彼らは不正を告発したウッド・フォード社長に対する菊川会長(当時)らの解任動議に賛成したと思われます。捨扶持をもらうだけの、まったくの役立たずとしか言いようがありません。

さすがに社外の監査法人(あずさ監査法人)はM&A案件の異常さやバカ高いM&A手数料に気付き、このままでは監査契約の継続ができなくなる、関係役員の退陣にまで言及していました。しかし、菊川社長の怒りを買い、逆にあずさ監査法人は解任されてしまいました。その後は、さしたる引継ぎもなく「あずさ」のライバル、新日本監査法人が監査人に就いたと報告書は書いています。

これらの社外監査役、社外取締役、監査法人はお雇い元の会社側、その代表の人事と報酬を握る社長の意向でどうにでもなるという色彩が強いのではないでしょうか。同じ状態に取締役も置かれています。しかし取締役は株主総会によって選定され、会社の業務全般に対する監督責任があり、株主から経営のチェック機能を委任されているのです。オリンパスの「取締役会」はそのチェック機能を全く果たせませんでした。

担当以外は無関心、波風立てない、議案を議論しなかった取締役たち
報告書では、「例えば、国内3社の株式取得額やジャイラス買収に関わるアドバイザリー報酬額は、専門知識がなかったとしても、一般常識からしても異常に高額であり、取締役会にこの議題が上程された際、本来は突っ込んだ議論がされてしかるべきであったが、全くなされていない」と苦言を呈しています。

オリンパスだけではないと思いますが、営業畑や技術畑などの取締役の多くは経理・財務の知識がほとんどないまま取締役に選任されています。取締役会で経理、財務、資金運用、M&Aなど議論されても理解すらできない人も少なくないのです。それを補うのが「一般常識」ですが、オリンパスの取締役にはそれもなかったことになります。直接関与しなくても損失隠し・粉飾決算当時に取締役であっただけで責任が問われても仕方がないと思います。

2011年12月 2日 14:21

橋下氏の「維新」人気に乗りたい面妖な政治家たち

2011年12月2日筆

大阪維新の会の橋下徹氏が、民主、自民、そしてなんと共産党まで支援に回った対立候補を大差で破り大阪市長に就任しました。いまや最大勢力の無党派層は既成政党に絶望して橋下氏になだれを打って投票しました。三行半を突きつけられた民主、自民、そして共産党はショックだったでしょうね。

選挙戦を通じて橋下氏を支援し続けたのは渡辺喜美氏の「みんなの党」でした。「みんなの党」は公務員改革にも規制緩和にも熱心ですしTPP(環太平洋パートナーシップ協定)にも賛成です。小泉改革の申し子といってよいでしょう。

「敵を作って叩き、民意を見方につける」という橋下氏の政治手法も小泉純一郎元総理によく似ていますが、彼の公約も小泉改革に通底するものがあります。大阪都構想は大阪市、堺市の解体、特別区への再編など行政組織の問題だけが取り上げられていますが、それは手段であって目的ではないと思います。

朝日新聞によると「橋下氏が選挙戦で力を込めたのは、政策よりむしろ沈滞する日本に対し、中国などアジアの国々が台頭する現実だった」(11月28日)と書いています。橋下氏は、アジアの国々の台頭に遅れを取り地盤沈下の著しい大阪の経済再生を図ることこそ最大の目標だったのではないでしょうか。橋下氏に投票した人の多くは「大阪の再生」を期待したという調査もあります。

改めて調べてみたのですが、大阪府の平成21年度府内総生産(GDP)は約36兆円(名目)にとどまり、全国シェアは7.6%に過ぎません。大阪府のGDP全国シェアが10%に下がった時、「1割経済に落ちぶれた」と大阪人が大騒ぎしていたことがありました。今はそれをも下回っているのです。さらに、平成21年度の一人当たり府民所得は約288万円、10年前に比べ50万円も減少したというから驚きです。

税収は減り生活保護費が増え大阪府下主要市の将来に夕張の危機が重なる
これでは税収入は上がらず、生活保護費など財政支出が増えるばかりです。地方財政の硬直度を測る指標として「経常収支比率」が知られていますが、大阪府および府下の地方自治体の「経常収支比率」は悪化し、すでに危機ラインに達している自治体も少なくありません。

少し説明します。「経常収支比率」とは、公務員人件費、扶助費(生活保護費、老人福祉費、児童福祉費)、公債費など毎年必ず必要となる「経常経費」(義務的経費とも言います)が、自ら徴税する地方税や国から交付される地方交付税などの「経常財源」でどれぐらい賄われているかを示す指標です。

経常経費が経常財源を下回り、経常収支比率が80%以下であれば、その自治体の財政硬直化は進んでおらず「健全」とされています。財政が破綻した夕張市の経常収支比率は125%を超えていました。必ず必要となる経常経費が経常財源を大きく上回り、夕張市は借金もできなくなり破綻しました。

「経常収支率100%」は経常経費と経常財源が等しい状態ですが、この状態でも非常に危険です。経常経費の中には各種補助金、公共サービス費、学校や公園、市道の改修費など政策経費は含まれていません。これら政策経費は経常財源では賄えずすべて借金(地方債)に依存せざるを得なくなるからです。

ちなみに大阪府下の主要市の2010年度経常収支比率(以下比率は日経新聞11月24日付)は、泉佐野市105.1%、大阪市99.4%、泉大津市99.2%、守口市99.1%です。いずれも全国のワーストランキング10位以内に並んでいます。10位以内ではありませんが大阪都構想で特別区になると想定されている堺市の経常収支比率は96.8%(2009年)で、いずれベストテン入りするのでないでしょうか。

橋下氏がこのたび市長になった大阪市には、もうひとつ不名誉な記録があります。大阪市の住民一人当たり扶助費(生活保護費、老人福祉費、児童福祉費)が日本一でもっとも高い水準だという記録です。大阪市で起きている生活保護費の不正受給や生活保護者医療費の詐取など、扶助費をめぐるおぞましい実態がTV放映されています。生活保護をめぐるモラルハザード(不道徳)は深刻ですが、それ以上に深刻なのは「大阪の衰退」で、その衰退がモラルハザードを生んでいるというほかありません。

座して死ぬぐらいなら、「独裁者」に掛けてみたいというのは大阪の民意
「大阪の衰退」は今に始まったことではありませんが、大阪港、神戸港は港湾荷役やコンテナ扱い量で韓国釜山港に大きく水をあけられました。期待の関西国際空港は大幅な赤字、アジア随一のハブ空港になった韓国仁川の新国際空港に遠く及びません。関西が誇ったパナソニック、シャープ、三洋電機の家電御三家は、円高を背景に競争力を強めた韓国のサムスン電子、LG電子や中国のハイアールなどにその地盤を大きく侵食されました。パナソニックなど関西勢は半導体、液晶パネル、プラズマテレビからの撤退再編を迫られ、成長が期待された太陽電池やリチウムイオン電池、LED(発光ダイオード)さえ生産体制の再編成が迫られています。「大阪の衰退」は一段と加速しているといえるでしょう。

橋下氏に投票した選挙民の多くは、このまま座して死ぬぐらいなら、「独裁者」であれなんであれ、「大阪の衰退」を止めてくれる可能性を持った政治家に一票を投じたいと思ったに違いありません。

「維新」人気に乗っかろうとする亀井・国民新党、小沢グループの愚劣
小生の期待も多少入りますが、橋下氏は大阪市に巣食う自治労や日教組など既得権益グループを退治して、公務員人件費を筆頭に大阪市の異常に膨らんだ「経常経費(義務的経費)」を圧縮、予算を組み替えて「大阪の再生」のために政策経費を拡充するに違いありません。

さらに橋下氏は市営地下鉄の民営化を公約しています。大阪都構想を単なる行政組織の変更にとどめることなく、公営企業の民営化や規制が緩和される「経済特区」を組み込んで「大阪の再生」を図ろうとするに違いありません。

少し橋下氏の政策への理解が行き過ぎているかもしれません。ですが職員を5段階評価し給与や任用に反映させるという「教育基本条例案」「職員基本条例案」は「みんなの党」の公務員改革に通じます。大阪の再生には国内外の交易や投資を活性化させる規制改革(TPP交渉では内外の規制改革が期待できる)や民営化が必要だとすれば、橋下氏は小泉改革の継承者ということになります。

そんな橋下氏に妖怪が乗っかろうとしています。小泉改革の申し子である「みんなの党」が橋下氏の「大阪維新の会」と組んで来るべき衆院選挙を戦うのには必然性があります。しかし、小泉改革、規制緩和、TPPのすべてに敵対している亀井静香・国民新党代表が「維新の会」と新党を結成するなど選挙民を愚弄するのにも程があります。

さらに、原口一博議員など小沢一郎民主党元代表のグループが「維新の会」と組むなども噴飯ものです。小沢氏が『日本改造計画』を書いた当時の「新自由主義者」に戻るのなら別ですが、日教組や自治労、連合と手を結んで「似非社会主義」に転じた小沢氏が小泉改革の流れを汲む橋下氏と組むのは不可解です。別の意図があるとしか思えません。

別に意図とは、もちろん選挙です。小沢氏のグループも亀井氏の国民新党も、現状では多くが落選の憂き目を見るのは確実です。次の衆院選挙で一族郎党を国会に戻し自らの権勢を保持するには人気者の橋下氏に乗るにかぎるというのでしょう。そうした政策無視の、小沢氏や亀井氏の卑しい魂胆を選挙民はとっくに見破っていると思いますが、いかがでしょうか。

プロフィール
ニックネームさん
大西良雄(経済ジャーナリスト)
上智大学卒業後、東洋経済新報社に入社。記者を経て「月刊金融ビジネス」、「週刊東洋経済」編集長を歴任。出版局長、営業局長の後、常務第1編集局長を最後に独立。早稲田大学オープンカレッジ講師のほか講演・執筆活動。
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