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大西良雄ニュースの背後を読む

2011年8月

2011年8月26日 12:22

小沢傀儡候補と前原候補の政策は真反対です

2011年8月26日筆

政治の一寸先は闇とはいうものの、「小沢元代表、前原氏不支持へ」(「読売新聞」8月26日3時オンライン配信)「小沢氏、前原氏不支持へ」(朝日新聞8月26日朝刊)とわが国の2大新聞がほぼ同じタイトルで報じています。

この報道が事実なら、今回の民主党代表選挙は小沢元代表の傀儡(かいらい)候補と傀儡を拒否した前原候補の戦いになります。小生、最も恐れていたのは前原候補が小沢元代表の「数の力」に屈して小沢傀儡候補に成り下がることでした。前原候補は自らの政策と政治理念を掲げて小沢傀儡候補と堂々と戦えばいいのです。

幹事長と政党交付金を小沢氏系が握るための「挙党態勢」でよいのか
前原候補が「挙党一致」を掲げて「小沢詣で」に参じたときは、「前原さん、あなたも、ですか」と落胆したものです。しかしそうではなかった。

前原氏がいう「挙党一致」は、民主党議員の政策調査会へ参加による全員野球を意味していたようです。これに対していまや小沢氏の代理人と化した鳩山前総理は「挙党態勢」といいました。その意味は党の幹事長ポストを小沢氏あるいは小沢系の議員に譲り渡し、政務は前原氏、党務は小沢一派という構図を作り出すことだったようです。

この「挙党態勢」が曲者です。党の幹事長は国会での野党からの追及を受けない安全地帯にある職です。その一方で、絶大な権力を擁しています。まず党役職の人事権です。小沢系が幹事長につけば、いの一番に財務委員長と選挙対策委員長のポストを小沢系に奪還する人事を決めるでしょう。

幹事長と財務委員長は年間170億円もの政党交付金の配分権を持ちます。野中広務元自民党幹事長は「今や小沢氏の資金源は党の資金、つまり政党交付金ではないか」と某TV番組で言っていました。

かつて小沢氏の政治資金の源泉はゼネコンなどの企業献金だったはずです。しかし野党暮らしで予算の配分権限のない小沢氏に献金を差し出すゼネコンは激減しているのではないでしょうか。まだ献金しているとすれば小沢氏が公共事業の配分権限を行使できると思われる地元の岩手県ぐらいでしょう。

小沢氏にはこの政党交付金の配分権は自らの私兵維持(小沢ガールズ、小沢秘書上がり議員)には不可欠な権限になっているに違いありません。これに公認権を持つ選挙対策委員長のポストが得られれば、鬼に金棒です。

しかし民主党は選挙民が選んださまざまな政治家が集う公党です。政党交付金という公金は公平に配分されなければなりません。自らに従う候補者を選び代表選挙では必ず自らに投票する、あるいは自らの意向に従うような追従者(私兵)を養うために政党交付金が分配されることは許されません。

「政策などどうでもよい。要は幹事長ポストだ」と言い放った小沢氏周辺
小沢氏周辺では前原代表を支持する条件として「要は幹事長ポストだ、政策なんてどうでもいい」と言い放った議員もいると一部で報じられています。政策よりカネを差配できるポストが大切といっているのに等しいのです。さらにポストとカネを寄越すのなら政策がまるきり異なる野田佳彦(財務大臣)候補に乗っても良いという意見も小沢周辺にはあるようですから、開いた口が塞がりません。

小沢周辺が「政策などどうでもよい」と言い放った「政策」こそ、国民にとって最も大切なものです。今回の代表選挙は、告示後2日を置いてすぐ投票に入ることになります。2日間で候補者同士が論争を交わし政策の違いを国民の前に明らかにするなど不可能です。この代表選挙では次の総理を「政策」で選ぶ気などないようですから、「政策」に触れるのは骨折り損ですが、触れないわけには行きません。

選挙戦が最終的には小沢傀儡候補と前原候補で戦われるとすれば、その「政策」はことごとく対立する、真反対のものであることは明らかです。小沢氏とその小沢傀儡候補が仇敵だった菅総理が進めようとした「脱原発依存」政策にどう関わるか不明ですが、その他の点ではまったく政策は異なります。下表はその一覧です。

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傀儡候補の後ろ盾になる小沢・鳩山両氏は、8月25日の会談で「政権公約にもとづく政治主導という原点回帰か、菅政権の継続かの戦いになる。原点回帰の力を結集していこう」と申し合わせた(読売新聞8月26日3時オンライン配信)と報じられています。傀儡候補は「原点回帰」の踏み絵を踏まされるのですから上表のような「政策」にならざるを得ません。

上表の政策に限れば、小生は前原候補の政策に賛成です。前原候補は成長戦略や経済・財政政策の助言者として小泉内閣で活躍した「経済財政諮問会議」(この会議が政策の官僚支配を打ち破るための会議でした)の復活を主張していますが、これにも大賛成です。なお野田佳彦候補が「文芸春秋」9月特別号で書いた「わが政権構想」の政策も前原候補に極めて近いと思います。両候補が一本化できればよいのですが。

小沢傀儡候補は「3党合意」を反故にするのか、反故なら総選挙で問うべき
さて小沢傀儡候補のほうにお聞きしたいですが、あなたが代表選挙に勝ち政権を取られたら、「09年衆院選の政権公約(マニフェスト)」を見直すという自民・公明両党との「3党合意」は反故にするのでしょうか。公党間の約束を代表が変わったからといって反故にすれば、衆参ねじれ国会が再び動かなくなることは必至です。
 
どうしますか。その結果、震災復興のために最も大切な「第3次補正予算」の成立が危ぶまれることになります。その場合、小沢傀儡政権のマニフェスト堅持という姿勢が国民の支持を得られているかどうか、総選挙で国民に問うてください。小沢氏肝いりの選挙に勝つためだけのバラマキ公約が間違っていることを選挙民が教えてくれるはずです。

小生は、これだけ政策も政治手法も異なる勢力が民主党という一つの党に同居していることこそ国民にとって不幸だと思っています。民主党は2つに早く分裂して欲しいとも思っています。自民党も前総理や派閥領袖など旧グループと石破茂政調会長を軸とする新勢力に分裂することが望ましいと思います。

そうすれば政策の対立軸が明らかになり国民はバラマキ公約などに騙されずに政治家を選択できます。選挙区制度の改革を急がねばなりませんが、震災復興予算のめどがついたら、あるいは予算成立が紛糾したら、いずれでもいいのですが「解散総選挙」を行い、政界再編成に進んでいただければと思います。

2011年8月 5日 12:47

NY株急落が為替介入の効果を減殺、円安転換に疑問も

2011年8月5日筆

米国の政府債務上限引き上げ問題がひとまず解決したのを機に、政府・日銀は史上最高値の1ドル76円25銭に接近していた円高を阻止する対策を打ちました。為替介入と追加緩和がセットになった財務省と日銀の共同作戦は珍しいことでしたし、対策発動のタイミングも良かったと思います。しかし、為替介入当日の市場の動きは矛盾に満ちたものでした。

株式市場は円安への本格転換を疑い、主力輸出株は大引けに掛け値を消した
為替の動きは自然でした。対ドル円レートは77円台から80円台へ3円程度引き下げられ、1日の円安幅は震災直後の円急騰に対応した前回(3月18日)の為替介入時とほぼ同じでした。今回は国際協調介入ではなく日本の単独介入でしたが、前回の為替介入時を大きく上回る4兆円規模のドル買い介入でしたから1日の円安幅が前回と同じになっても不思議はありません。

動きが不可解だったのは日経平均株価です。前回為替介入時はその日の安値から320円も急騰しましたが今回は最終的には前日終値に比べ22円しか上昇しませんでした。特に円安の恩恵を受けるトヨタ、ホンダ、ソニー、ファナック、コマツなど主力輸出株の反応は鈍く、午後3時の大引けに掛けて値を消す銘柄も多く見られました。

為替市場は政府・日銀の英断に敬意を表しそれなりの反応を示したのですが、株式市場は円安へ本格転換を疑っていたように思えます。前回の為替介入時には介入後の円安が進展し約1ヶ月後の4月8日には86円台をつけ震災直後の最高値76円23銭から10円近い円安となりましたが、今回はそんなに調子よく円安になるなどと株式市場にはとても思えなかったからです。

欧米では債務危機と減速懸念が混在、NY株はリーマン暴落に次ぐ急落に
今回の超円高は、政府債務危機と景気減速懸念が混在する米欧のドル安とユーロ安が原因であるというのが一致した株式市場の見方です。

まず欧州の政府債務危機(ひいては欧州金融危機)ですが、危機はギリシャなどに比べ経済規模が格段に大きいスペイン、イタリアにも及び制御不能になる恐れがあります。欧米の金融機関取引への疑念が再び頭をもたげています。ECB(欧州中央銀行)のトリシェ総裁は8月4日、欧州景気に下振れリスクを指摘する一方、国債買い上げによる金融市場への資金供給の再開にも言及しました。欧州の株式市場はトリシェ総裁の発言に強く反応して急落しました。

NY株も急落しました。政府債務の上限引き上げ問題がひとまず解決し連邦政府のデフォルト(債務不履行)は回避されましたが、それにはNY株は殆ど反応せず、逆に欧州株急落の流れを受け継ぎ8月4日のNYダウは512ドル(-4.3%)もの急落となってしまいました。終値ベースで見た過去最大の下げ幅は2008年9月29日(リーマンショック暴落)の777ドル(-7.0%)ですから、今回の急落幅はこれに次ぐ大きさになりました。

背景には米国の景気減速があります。一時的なリスク回避の動きであれ資金が株式から金へ移動し株価が下落し金価格は上昇するのですが、今回は景気悪化を先取りして金も株式も急落しました。米国では、6月の個人消費支出、4-6月期の実質GDP成長率、7月のISM製造業景況感指数、7月の全米新車販売台数など米国の景気指標は相次いで予想を下回り、ウォール街では米国景気が減速から失速へ転じるのではという懸念がどんどん強まっています。

欧米も政治家が麻痺し債務問題を先送りする「日本人化」現象に陥る
しかも、この景気失速懸念を目の前にして米国政府は経済政策上の大きなジレンマを抱え込んでしまいました。

今回、オバマ政権は政府債務上限を2.1兆ドル引き上げることに成功しましたが、その一方、今後10年間で約2.5兆ドルの歳出削減を約束しました。米国の11年の予算教書によると今年の財政赤字規模は1.6兆ドルに達し政府債務残高のGDP比は101%に達します(下表)。09年以降の3年間で総額4.4兆ドルも財政赤字を垂れ流したオバマ政権です。今後10年で約2.5兆ドル、年間にして2500億ドル程度の歳出削減では財政赤字の縮小は容易ではありませんし、政府債務残高は増え続けることになります。

0805表1.JPG

結局、債務上限引き上げは実現しましたが、米国の財政赤字、政府債務の問題の解決は先送りされてしまいました。ロンドン・エコノミスト紙が2011年8月の最新号で欧米でも政治家が麻痺して政府債務問題を先送りするという「Turning Japanese(日本人化)」現象に陥っているとからかっていますが、オバマ政権は今後も市場から米国債の格下げなどドルの信用に関わる批判を投げ掛けられ続けることになります。

それはそれとしてドル不安の元になり問題ですが、それ以上に不都合なのは、米国政府が今後10年間、歳出削減はあっても歳出拡大はない、つまり景気を刺激する策としての財政出動の余地を奪われてしまったことです。今回のように景気失速懸念が頭をもたげリーマン暴落時に次ぐ株価暴落が発生しても財政出動という政策手段は使えないのです。

量的緩和(QE3)というバブルの向かい酒でしか回復しない米国景気
かといって手を拱いているわけにも行きません。米国に残された景気刺激手段はFRB(連邦準備制度理事会)による金融緩和だけですが、政策金利は実質0%ですから金利引き下げの余地はありません。最後に残るのはFRBが国債や住宅ローン担保証券などを買い入れて市場に資金を大量にばら撒くという量的金融緩和です。

住宅バブルの崩壊で苦境に陥った米国経済ですが、量的緩和による資産バブルの醸成(株価値上がりによる消費拡大)でしか景気回復のきっかけをつかめない体質になってしまったのです。量的緩和はバブルの向かい酒ですね。

その意味で注目されるのは、FRBが量的緩和第3弾(QE3)に踏み切るかどうかです。その回答は8月9日の米FOMC(連邦公開市場委員会)で出ます。QE3はNY株には朗報ですが、中国など途上国、あるいは日本経済にとっての朗報にはなりません。

米国のこれまでの量的緩和(QE2)は穀物など国際商品急騰の引き金になりましたが、このあおりで中国は6%を上回る消費者物価上昇に悩まされています。ここで米国がQE3に踏み出せば中国のインフレ率はさらに加速しかねません。そうなると中国はさらなる引き締め強化を迫られ、共産党政権にとって最も重要な政権交代を来年に控え、景気失速(投資バブルの崩壊)のリスクを背負うからです。

日本はといえば、QE3実施によって円安転換どころか円高がさらに進展するリスクを負います。QE3実施は米国金利の低下をもたらし日米の金利差が縮小します。その結果、ドル資産への移転が止まるだけでなく対資産の国内還流観測が強まり、ドル売り円買いが発生、再び円高に転じかねません。

だから日本の株式市場は、政府日銀による懸命な為替介入にもかかわらず円安転換は本物ではないと読んだからこそ主力輸出株を買わなかったのです。
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※毎週金曜日掲載の本ブログ「大西良雄ニュースの背後を読む」は、事務局の夏季休業のため8月12日金曜日と8月19日金曜日の回は休載となります。
次回掲載予定は8月26日金曜日となります。
ご愛読いただいている読者の皆様には大変申し訳ございませんが、何卒ご了承ほどお願いいたします。
プロフィール
ニックネームさん
大西良雄(経済ジャーナリスト)
上智大学卒業後、東洋経済新報社に入社。記者を経て「月刊金融ビジネス」、「週刊東洋経済」編集長を歴任。出版局長、営業局長の後、常務第1編集局長を最後に独立。早稲田大学オープンカレッジ講師のほか講演・執筆活動。
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