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大西良雄ニュースの背後を読む

2011年3月

2011年3月25日 09:02

東日本大震災(2) 震災からの復興費用を誰が負担するのか

2011年3月25日筆

政府(内閣府)は、東日本大震災による住宅や道路、工場設備などへの直接的な被害額の試算を16兆円~25兆円になると発表しました。試算の対象地域は岩手、宮城、福島の主要3県(被害額はケース1で全体の87%)に北海道、青森、茨城、千葉周辺4県を加えた7県です。

9兆円と試算に大きな幅があるのは、津波被災地域で損壊した建築物の割合を低く見た場合(ケース1=30.6%、被害額16兆円)、高く見た場合(ケース2=80%、被害額25兆円)に分けて試算したからだそうです。

このうち民間企業が保有する設備の被害額は9兆円(ケース1)~16兆円(ケース2)と試算しています。全体に占める民間設備の被害額は56%~64%と過半を占めます。残りは公共施設や民間住宅ということになります。

震災被害額で決まる復興費用、阪神淡路の復興費用は被害額の30%増し
この政府から発表された公式試算は極めて重要です。今後の復興費用の前提になるからです。被害額を大きく取ると復興費用は当然大きくなりますし、公的資金の投入も大きくなります。公的資金は政府が支払うものだ、自分には関係がないと思っている人が多いようですが、公的資金の出し手は皆さん国民自身であることを忘れてはなりません。政治家や官僚は公的資金の規模とばら撒き方を決めるだけで、彼らが身銭を切って公的資金を支払うのではありません。

阪神淡路大震災の例をとると、震災3ヵ月後に出された兵庫県の直接被害推計は9兆9268億円、約10兆円でした。復興計画に携わった林敏彦・同志社大学教授によると被災5年間に要した復興資金は全部で13兆円、このうち7割の9兆円が公的資金で賄われ、民間資金は残り3割の4兆円と推定されると指摘しています(日経新聞3月21日「経済教室」)。

阪神淡路大震災の場合、被害額10兆円に対して復興費用13兆円ですから費用は被害額の30%増しでした。この30%増しを今回の東日本大震災(政府試算被害額)に当てはめると、復興費用は20.8兆円~32.5兆円に膨れ上がります。阪神淡路並みに復興費用の7割が公的資金だとすると、公的資金の投入は5年間で14.5兆円~22.8兆円にもなります。これを毎年の消費税で賄うとすれば5年間に限って1~2%の税率引き上げが必要です。

被災者が塗炭の苦しみを味わっている時に、ゼニカネの問題を持ち出すなどけしからん、と立腹される方もいらっしゃると思います。小生もそう思うことがありますが、しかし、選挙目当てのばら撒き大好きな政治家や震災を機に権限拡大をもくろむ官僚たちに公的資金の投入規模と投入先を勝手に決めさせて後で臍(ほぞ)をかむのは国民、納税者です。そう思い直してゼニカネの問題を書きます。

膨張が予想される公的資金投入額を数次わたる復興予算で丁寧に検証する
震災からの復興にあたって大切なのは、第一に被害額の算定、つまり復興費用の規模は妥当であるのかどうか、第二にその復興費用、つまり公的資金を誰がどのように負担するかという問題を考えておくことです。

政府の被害額の算定が妥当であるかは、他の民間機関の被害額想定と比較するとよいでしょう。こうした事態では証券会社による被害試算が参考になりますが、被害算定額がもっとも大きいのはゴールドマン・サックス証券の16兆円、最も小さいのがバークレーズ・キャピタル証券の5兆円~10兆円という算定です。日本勢では大和総研が14兆円と試算しています。民間の被害算定は東北3県だけが対象になっているせいでしょうか、その平均値は内閣府試算の下限値に近い金額です。なお、前述の林敏彦教授の被害額想定は15兆円~20兆円と内閣府試算より少し小さくなっています。

実際、被害額がどれぐらいなるのか、今のところよく分からない点があります。直接被害額の中に福島第一原子力発電所の損壊(放射能漏れの原子炉を廃炉にすると1兆円近い被害額になるという想定もある)は含まれていません。生産、消費活動の中断などによる間接的被害、放射能漏れによる避難者の被害額、農畜産業者の被害額も想定外になっています。震災被害額、その結果としての復興費用が膨らみ、公的資金の投入が想定以上になる可能性は大きいと考える人もいるでしょう。

例えば原子炉廃炉の費用は東京電力が負担するのは当然ですが、その一定額(1200億円)以上は東電が負担することになっています。しかしそれが東電の負担能力を超える場合は国民負担になる可能性があります。

こう考えると被害額、ひいては復興のための国民負担額は際限なく膨らんでいくようで身震いがします。国と地方の長期債務残高は2011年度末には892兆円(GDP比184%)、国民一人当たり約726万円に達するのです。震災復興の国民負担は覚悟しているとはいえ国民負担額がいたずらに膨らまないような仕組みの導入も必要になります。それには第一次、第二次、第三次と何段階かに分けて、震災被害からの復旧の緊急性、必要性、公的資金投入の規模を吟味し復興予算を組む方法しかないように思えます。その上で復興予算の国民によるチェックも欠かせないでしょう。

今こそ企業の204兆円の内部蓄積(手元現預金)を活かすときだ
そこで第二の復興費用、つまり公的資金を誰が負担するのか、という問題になります。国民が負担するのに決まっている。その通りですが、国民のうち、企業か一般国民か、現在世代か将来世代か、誰が負担するのかが問題なのです。

企業が負担すべき部分まで一般国民が負担する必要はありません。内閣府の震災被害試算によれば、全体の56%~64%、9兆円~16兆円は民間企業の設備被害でした。この設備被害は、原則として民間企業が負担すべきだと考えます。

民間企業に負担能力があるかどうかについて、経済産業省が興味深いデータを提出しています。経産省(法人税引き下げをめぐる税制調査会への提出資料)によれば、「企業は2000年以降、手元流動性(現預金)を積み上げてきたが、その残高は2009年現在で204兆円に達する」というのです。

204兆円の内訳は、以下の通りです。
(1) 資本金1億円未満の中小企業が約6割強(約126兆円)
(2) 資本金1億円以上、10億円未満の中堅企業が約1割強(約25兆円)
(3) 資本金10億円以上の大企業が約2割強(約53兆円)

大企業の手元流動性は過去20年間ほぼ一定水準で推移しており、手元流動性を大きく積み上げたのは中小企業だったと経産省は指摘しています。企業が内部蓄積を積み上げるのは、「一朝ことあらば」というリスクに備えるという意味があります。「一朝ことあらば」が大震災という形で起こり内部蓄積を取り崩す時期が来たのです。この内部蓄積(204兆円の手元流動性)のほんの一部(9兆円~16兆円)を取り崩せば、中小企業といえども民間企業は自力で震災被害を克服できる計算になります。

もちろん内部蓄積を積み上げてきた中小企業と大震災で壊滅的打撃をこうむった被災中小企業が同一であるはずがありません。内部蓄積のない保険金も受け取れない被災中小企業を救済するための「震災復興特別法人税」も一考に価すると思います。大、中、小問わず企業は今こそ、リスクに備えて積み上げた総額204兆円の手元流動性を被災中小企業の救済資金とみずからの復興投資に振り向けるべきです。

もう一つ、震災費用を負担するのは現在世代か将来世代か、という重要なテーマがあります。予算の組み替えによる復興予算の捻出と復興のための増税は復興費用を「現在世代」が負担することを意味します。復興のための長期国債の増発は復興費用を子供や孫など「将来世代」が負担することです。

その是非については次回触れます。

2011年3月17日 17:29

「東日本大震災」(1) 原発危機が発生、長期化する「計画停電」

2011年3月17日筆

3月11日、マグニチュード9.0という史上最大級の巨大地震が東北・関東を襲いました。この巨大地震による揺れとその後襲った巨大な津波は、まだ正式名称ではありませんが未曾有の「東日本大震災」を引き起こしました。

津波にさらわれ行方不明になっていた住民の死亡が確認されるたびに死亡者数が膨れ上がり、死亡者数は1995年1月に発生した「阪神淡路大震災」の6437人の2倍近くになりそうです。無念です。

「阪神淡路大震災」を大きく上回る「東日本大震災」の被害総額

「東日本大震災」の被災地域になった東北地方(岩手、宮城、福島)の、日本のGDP(国内総生産)に占める割合は7%前後ですから、「阪神淡路大震災」の被災地域(兵庫・大阪)の、当時のGDPに占める割合12.5%程度に比べ低いといえます。だから大震災の経済的損失は小さいと思われるかもしれません。

兵庫県の推計では、「阪神淡路大震災」では建築物、鉄道、高速道路、港湾、商工業施設、公共施設などインフラの被害総額が9兆9268億円にのぼっています。今回の「東日本大震災」によるインフラの被害総額は、海外の災害リスク分析の専門家によると約1000億ドル(約8兆円)と推計されています。

しかし、このインフラ被害の総額は過小だと思います。「東日本大震災」の地震エネルギーは「阪神淡路大震災」の1450倍、場所によっては20メートルを越す巨大津波を伴っています。しかも被災地域は青森から千葉まで広範囲にわたりました。時がたつにつれて被害総額は拡大し「阪神淡路大震災」を上回るのではないでしょうか。実際、林敏彦同志社大学教授はインフラなど直接被害の総額は15~20兆円になるとの最新推計を出しています。

震災被害は、インフラへの直接被害だけではありません。背後にGDPの3割以上を占める関東地域を控え、大震災が経済全体に与える影響(間接被害)はもっと大きくなります。その経済全体への影響を考えるうえで考慮しなければならないのは、東京電力福島第1原発で発生した「炉心溶解」、「放射能漏れ」という最悪の原発事故です。この種の原発事故は「阪神淡路大震災」では発生しませんでした。ここが今回の「東日本大震災」と「阪神淡路大震災」とで大きく異なる最大のポイントです。

生活と産業活動のレベルを決める電力、その大切な電力源を喪失した

この最悪の原発事故によって東京電力は、生活と産業活動のレベルを決定する最も大切なインフラである電力源の一部を将来にわたって喪失してしまいました。次回に書きますが、政府が大規模な震災復興予算を組み、官民挙げて復興に取り組めば、大震災で破壊された家屋や商業施設、公共施設、工場設備、道路、橋、港湾などインフラはいずれ復旧します。

しかし福島原発の発電能力の復活はもう望めません。この事故の深刻度は、米国のスリーマイル島原発事故を上回り、史上最悪だった旧ソ連でのチェルノブイリ原発事故に次ぐ「レベル6」に相当するとされています。福島原発事故は原子力発電に対する国民の信頼を完全に打ち砕き、その復旧、再稼動は許されることはないと思われるからです。

この事故で東電は、福島第1原発、第2原発、合わせて10基の電力供給能力910万kwを喪失したに等しいといえます。その影響は長期にわたり日本経済に下押し圧力を掛け続けることになります。その影響の一端は「計画停電」や節電という形ですでに表面化しています。

東電は当初、福島原発の能力喪失と地震によって生じたその他火力発電所の運転停止によって電力の供給能力が3100万kw(その後3350万kwに修正)に低下したと説明しています。東電管轄地域のこの春先の電力需要は4100万kwと推定されていますから、電力供給は1000万kw不足する勘定になります。この不足分は電力需要の実に25%に相当します。この分を「計画停電」や節電による生活レベルの引き下げや生産活動の圧縮で埋める形になるわけです。
 
しかし春先の電力需要は4100万kwですが、冷房需要が急増する夏場のピーク時には電力需要は6000万kw(過去最高は2000年の6430万kw)に達すると推定されています。当初想定の供給能力3100万kwが続くとすると実に2900万kw(電力需要の48%)もの供給不足になります。かつて電力不足から「ニューヨーク大停電」が発生しましたが、このままだと「東京大停電」が現実のものになり、これを防ぐには東電管轄地域の家計、企業の活動を合わせて半分近く圧縮せざるを得ないことになります。

福島原発の再稼動は不可能、当面はCO2排出覚悟で火力発電に依存

もちろん、この仮定は極端過ぎます。国際エネルギー機関(IEA)は「日本は原子力発電の不足分を補うだけの十分の石油火力発電による余剰能力を有している」(3月15日ロイター電)という見解を示しています。

しかし東京電力を例に挙げると、運転停止中の火力発電をすべて稼動させても電力供給能力は3553万kwです。柏崎刈羽原発は820万kwの供給能力をもっていますが6割操業の安全運転で490万kwの供給に止まります。合わせて4000万kwの供給能力ですから、水力発電を含めても夏場の6000万kwの電力需要を賄えません。福島原発の供給能力喪失分は埋まらず、夏場は電力需要の大幅削減は避けられません。その分、生産の圧縮、GDP(国内総生産)の縮小につながります。

2007年に発生した新潟県中越沖地震で休止した柏崎刈羽原発の場合、原発7基がすべて稼動可能になったのはつい最近、今年の2月でした。修復に3年以上掛かりました。炉心溶融を引き起こした福島第一原発は廃炉となるでしょうし、福島第2原発の運転再開も困難を極めるでしょう。福島原発の供給能力910万kwは長期にわたって失われたままになります。

「安全神話」が完全に崩壊した結果、福島原発の供給能力喪失分を原発の増設で補うことはもはや不可能です。当面は、鉄鋼メーカーなど企業が持っている自家発電(発電能力1800万kw)からの売電によって能力喪失分を補うことになります。その後は、東電自らは新たな火力発電所を建設する必要があります。

自家発電所からの売電にせよ、火力発電所の新増設にせよ、価格が高騰している石油、石炭、LNGなどの化石燃料がエネルギー源です。化石燃料は地球温暖化をもたらすCO2の排出源とされています。高い発電コストのため太陽光発電や風力発電の供給能力は遅々として拡大しません。当面は、CO2の排出には目をつぶり高価格・高コストを覚悟の上で火力発電を増強し「東京大停電」を防ぐことになります。

 

 

2011年3月11日 11:10

「海の国」党と「山の国」党――分裂・再編のすすめ

2011年3月11日筆

少し古いのですが日経新聞2011年1月9日付の「風見鶏」に特別編集委員の伊奈久喜氏が「海彦山彦の戦いが見たい」というコラムを書いています。興味深い文章でしたので少し引用します。

――「日本には『山の国』と『海の国』がある」とは、竹中平蔵氏の(小泉政権)当時の発言だった。政府による保護や規制に守られた「山」に対し「海」は国際競争を意識し規制緩和をもとめる。山も海も象徴であり地理的概念ではないが、農村と都市との違いと多分に重なる。――

民主党の代表経験者でいえば、小沢一郎氏は岩手県、鳩山由紀夫氏は北海道という農村型選挙区、つまり「山の国」の出身です。これに対し菅直人氏は東京都武蔵野市、前原誠司氏は京都市、代表経験はないが野田佳彦氏は千葉市という都市型選挙区、つまり「海の国」の出身です。そう指摘もされています。

これを民主党の党内抗争の図式に当てはめれば次のようになります。現在は「海の国」選出の菅・前原・野田氏らのグループが民主党の主流派ですが、これを民主党Aとします。「山の国」選出の小沢・鳩山グループは反主流派ですので民主党Bとします。このAとBが抗争を繰り返しているのです。

基本政策で対立抗争する親米国際派・民主党Aと反米国内派・民主党B
両グループの抗争は、「山の国」の頭領・小沢氏の「金権政治」に対する民主党Aによる批判から始まりました。その後、「海の国」の菅内閣が提起している重要な政策課題、たとえばTPP(環太平洋経済連携協定)への参加問題や財政再建に絡む消費増税問題に対する「山の国」民主党Bの抵抗という形で激化しています。

外交という基本政策でもAとBは対立しています。日米EPA(経済連携協定)の代わりともいうべきTPPへの参加は、沖縄・普天間基地の辺野古への移転と同様、軍事力を強化する中国に対する安全保障の側面も持っています。これに賛成する民主党Aは親米派といえますが、これに反対する民主党Bは反米派(親中派?)ということになります。小沢氏は師匠の田中角栄元首相以来の親中派ですし、鳩山氏が提唱した「東アジア共同体」構想は反米親中路線ともいうべきものでした。

綱領を持たないことが影響しているのでしょうか、同じ党に属していながら民主党AとBは、国家と国民の将来を左右する基本政策でことごとく対立しているのです。民主党は、政党の体をなしていないといわざるを得ません。

選挙民は基本政策でことごとく内部対立している政党を選ぶことはできません。そう遠くない時期に解散・総選挙になると思われますが、民主党が代表という看板を付け替えるだけで、基本政策の対立を隠して総選挙を争うことは詐欺に等しいといえます。民主党は、同じ党の看板のもとで民主党Aと民主党Bに別れて分裂選挙を戦うか、党を分解してともに新党で戦うかしかありません。選挙民は、ともに新党で選挙戦を戦ってくれたほうが分かりやすいし、投票しやすいのではないでしょうか。
 
海の国は「平家・海軍・国際派」、山の国は「源氏・陸軍・国内派」
過去の歴史でも、「海の国」の政治家は「平家・海軍・国際派」と称され海外に開かれた存在でした。「山の国」の政治家は「源氏・陸軍・国内派」とも呼ばれ、日本列島内部に閉じこもった存在でした。ですから「海の国」「山の国」の対立は、民主党内部だけではなく与野党の間でもあるのです。

0311(1)表.JPG
       
細かい点では異論があるとは思いますが、大筋で現在の与野党を「成長」重視の親米国際派(海の国)と「分配」重視の反米国内派(山の国)という基準で仕分けすると上表のようになるかも知れません。

最大野党の自民党にも民主党ほどではありませんが内政問題を中心に基本政策の党内対立があります。小泉政権で起きた郵政民営化や規制緩和をめぐる抗争は竹中氏が指摘したとおり「海の国」と「山の国」の対立から生じたものでした。

親小泉のグループは、国際標準の自由競争を重んじる親米国際派でした。
ケインズ主義による財政バラマキ(分配)を拒否し規制緩和によって経済成長を実現する成長重視派でもありました。農業では国際競争に耐える大農を育成する政策を採ろうとしていました。「親小泉」自民党Aの政策は、親米国際派の民主党Aと近いといえます。

公明党は民生面ではやや「分配」重視の傾向がありますが、経済政策の考え方は小泉路線に近いといえるでしょう。郵政民営化にも賛成でした。みんなの党は小泉路線をさらに徹底したグループですから「自民党A」そのものです。

なお親小泉派は行財政改革や規制緩和を先行して消費税増税を回避しましたが、彼らが財政破綻寸前の現在でも消費税増税に反対しているとは思えません。
みんなの党は財政問題を軽んじ消費税増税に反対しているように見えますが、小泉氏と同様、反対は時限的なものではないでしょうか。

一方、反小泉の「自民党B」は明らかに「分配」重視です。郵政民営化にも抵抗しました。地方、中小企業、小農、低所得者など、いわゆる「弱者」の救済に案外熱心です。「山の国」の住人「自民党B」は、「日本は社会主義国でもないのに世界で唯一社会主義に成功した国」という古き良き成功体験をいまだに引きずって、財源のあてもないのに公共投資や社会保障などによる「弱者」への「分配(バラマキ)」を優先しています。

成長無視、分配優先(当選目当てのバラマキ?)が色濃い民主党の09年衆院選マニフェストに復帰しようとする親小沢「民主党B」は、郵政民営化反対、規制緩和反対、「弱者」救済、TPP反対の社民党、国民新党と政策面でも気脈を通じています。「減税日本」は小沢派の別働隊とも言われていますので民主党Bの係属とします。

「自民+公明+みんなの党」に新米国際派の民主党Aで安定政権を作れ
総選挙では、民主党には分裂選挙、新党選挙の可能性がありますが、民主党の敵失をじっと待ち政権奪回を狙う自民党には分裂はありえません。公明党も、みんなの党も独自で選挙を戦うでしょう。したがって総選挙後は、自民党と公明党、みんなの党の3党連立の可能性が最も高いと言えます。

0311(2)表.JPG

上表は、自民党+公明党+みんなの党の現在の合計議席数です。衆院では過半数に96議席、参院では過半数に8議席足りません。現在の民主党支持率では96議席失うこともありえますが、もし「自公み」で96議席上乗せできなければ、政策が近い民主党A=「海の国」の住人たちを連立に引き込めばよいのではないでしょうか。民主党Aが連立に加われば参院の不足8議席の補充も可能になります。

その時の野党は、民主党B=「山の国」の住人と減税日本、それに選挙後生き残っているかどうか分かりませんが社民党、国民新党の残党、それに別枠の日本共産党ということになります。

衆参両院で過半数を持つ与党が議会を支配しなければ安定政権はありません。いまや国民の大部分を締める都市の住民に依拠する、つまり親米国際派、成長優先の「海の国」の政治家たちが「安定政権」を形成してくれることを小生は切に望んでいます。

とはいっても政界の一寸先は闇、政策抜きの数合わせ、政権欲だけの野合もありますから、油断はできません。

2011年3月 4日 13:31

原油100ドル、強い「原油高抵抗力」をさらに強めよう

2011年3月4日筆

チュニジアから始まった民主化運動はあっという間に北アフリカ・中東各地に広がりました。リビアでは独裁者・カダフィ大佐と反体制勢力との間で激しい戦闘状態に入りました。

カダフィは「中東の狂犬」と呼ばれた非常識な政治家ですが、その人物が40年も権力の座に居座っているのです。失脚したチュニジアのベンアリもエジプトのムバラクも、人民の膏血をすすって数兆円もの蓄財をなしていました。長期政権は腐敗するという意味の「権腐10年」という言葉がありますが、「権腐数十年」ですね。

お隣の北朝鮮、中国を含め30年も40年も独裁者(党)が居座って国民を支配する体制を続ける国が地球上にはまだ沢山あることを改めて認識させられました。しかし乾燥地帯の独裁体制のことと漫然としているわけにはいかないのです。これら北アフリカ・中東での独裁体制は、石油というすべての国に欠かすことのできないエネルギー資源の独占の上に成り立っていることを忘れてはいけません。

原油の「スイング・プロデューサー(需給調整役)」、サウジは健在だが
チュニジアの民主化運動(後に「ジャスミン革命」と名づけられました)が産油国ではないエジプトから、原油生産量8位のリビアや24位のアルジェリアに波及するに及んで原油価格が急騰を始めたのです。1バレル80ドル台だった原油価格は一時、100ドルを突破しました。アメリカでは1バレル120ドルは必至だとする観測も出ています。

日本の大手証券の中には、リビアとアルジェリアの原油生産停止が長引けば1バレル220ドルもあり得るという恐ろしいレポートを出しています。「ジャスミン革命」が原油埋蔵量で世界1位のサウジアラビア、3位のアラブ首長国連邦に波及するようなことになれば200ドル台もあり得るでしょう。

しかしいまのところ騒動は、石油生産余力が大きいサウジアラビアやアラブ首長国連邦へは波及しないという観測が有力です。事実、サウジアラビアは、リビアの生産停止に対応して日量400万バレルの生産余力のうち1割、40万バレルを緊急増産しました。原油生産の「スイング・プロデューサー(需給調整役)」、サウジアラビア健在なりといったところでしょうか。

1バレル100ドルになっても、日本経済は慌てない、大騒ぎしない理由
石油危機が繰り返されるたびに思い出すのは、1973年に起きた第一次石油危機です。この時、原油価格は1バレル3ドルから12ドルに急騰しました。
安い原油価格に慣れ親しんでいたところでの突然の急騰でしたから慌てたのでしょう。石油危機とは関係が薄いトイレットペーパーの買占め騒動なども発生しました。そんなことから翌74年の消費者上昇率は23%にも達しました。

現在も原油情勢は当時と似たようなものです。かりに1バレル100ドル前後が定着するとすれば、今後の原油価格は第一次石油危機後の12ドルの約8倍になる勘定です。小生には信じられない値段です。

しかし以前なら大騒ぎするところでしょうが、今回、日本人は動じず日本経済も平静を保っているように思えます。買占め騒動も物価高騰も起きていません。船舶やトラック、銭湯、クリーニングなど業者の皆さんが重油・灯油、ガソリンの値上がりに悲鳴を上げていることは存じ上げています。しかし日本経済全体としては、1バレル100ドル時代に入ってもなお冷静さを保っているといってよいでしょう。

なぜそうなのか、その背景を考えておきたいと思います。結論から先に言いますと、第一次石油危機から今日まで38年の間に日本経済が原油高に対する強い抵抗力をつけてきたからだと思います。
 
一つは円高の効果です。第一次石油危機当時は1ドル300円でした。現在は82円前後ですからこの38年間で円は3.7倍にもなったのです。原油の輸入価格はドル建てですから、円高分だけ輸入価格は下落することになります。ドル建ての原油価格は12ドルから100ドル前後へ約8倍になりましたが、その値上がりの半分近くは円高が吸収してくれたことになります。

もう一つはエネルギー源の転換です。例えば発電に用いられるエネルギー源の大きな構造変化です。1973年当時の電力のエネルギー源は石油が71%と突出していました。その他のエネルギー源は石炭5%、原子力3%、天然ガス2%という構成でした。3つ合わせても10%にすぎません。それが2008年には石炭27%、天然ガス26%、原子力24%へ拡大、3つ合わせてエネルギー源の77%を占めるまでになったので。これに対して石油は13%に低下、発電の石油依存度は劇的に下がりました。
 
技術革新でエネルギー消費の少ない産業、企業の割合が大きく増えました
産業構造の変化も貢献しています。日本経済に占める鉄鋼、石油化学、セメント、製紙などエネルギー多消費産業の比率が大きく下がりました。その一方で自動車、電機、機械装置などの加工産業、あるいは対事務所サービスやネット・通信などの新サービス産業などのエネルギー消費の少ない産業の比率が格段に高まりました。日本の産業構造は原油高に強くなっています。

企業のイノベーションも石油消費の削減に大きく貢献しています。エネルギー多消費企業では鉄鋼の連続鋳造設備のような省エネ型の技術革新が進みエネルギーの使用原単位が大きく下がりました。自動車や電機、製造装置などの企業では半導体、コンピュータを組み込んだ製品や製造設備の開発が深く広く進みました。エアコン一つとってみても電力の消費量が大きく減少しています。エネルギー消費の節約型のイノベーションが進んだ効果は大きいと思います。

この結果、原油高騰が全体の企業業績悪化に直結するようなことは少なくなりました。大和証券が3月3日に金融を除く主要300社の最新業績予想を発表しています。これによると今2010年度は円高、原油高を乗り越え増額修正となり61.6%の経常増益が予想されています。問題は来期以降ですが、11年度は1ドル82円、原油価格1バレル90ドルを前提として16.9%の経常増益になると予想しています。伸び率は鈍化しますが17%近い増益率を確保できれば上出来です。企業も原油高に強くなっているのです。

原油高騰を逆手にイノベーションを進め「原油高抵抗力」をさらに高めよう
日本の「原油高抵抗力」は格段に強まっています。たぶん日本の「原油高抵抗力」は世界でもトップクラスでしょう。しかしそれで満足しているわけにはいきません。もっともっと「原油高抵抗力」をつけるべきだと思います。

日本経済は、インターネット産業や研究・技術開発や教育、金融など高度サービス産業を育ててエネルギー消費の少ない産業構造にもっともっと変えていく必要があります。企業が、電子技術を生かした電力消費の少ない製品、製造設備の開発をさらに進めることも大切です。政府はイノベーションをバックアップする政策をもっと強めるべきでしょう。

もう一つ、多少異論はあるでしょうが、現在24%に止まっている発電に占める原発比率をもっと高めてもよいのではないでしょうか。フランスの発電に占める原発比率は77%にもなります。原発の発電コストは1kWh当たり6円前後と他のすべてのエネルギー源に比べ最も安い。太陽光発電の発電コストは49円と高い。原発はCO2発生もゼロです。いくらCO2を排出しない電気自動車を走らせても石油や石炭が発電源のままならCO2の削減率はぐんと小さくなります。
 
日本経済が原油高騰を逆手にとってイノベーションを起こせばさらに「原油高抵抗力」が強まるだけでなく、設備投資や研究開発投資が増え成長率が高まり、雇用問題の解決にも繋がると思うのですが、いかがでしょうか。
プロフィール
ニックネームさん
大西良雄(経済ジャーナリスト)
上智大学卒業後、東洋経済新報社に入社。記者を経て「月刊金融ビジネス」、「週刊東洋経済」編集長を歴任。出版局長、営業局長の後、常務第1編集局長を最後に独立。早稲田大学オープンカレッジ講師のほか講演・執筆活動。
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