QuonNet(クオンネット) まなぶ・つながる・はじまる・くおん




大西良雄ニュースの背後を読む

2011年2月

2011年2月25日 09:22

愚かな政争の末に日本経済に不測の事態も

2011年2月25日筆

国民生活を左右する平成23年度予算案を「人質」に与党内部、与野党間で「愚かな政争」が繰り広げられています。この政争の結果、予算執行に欠かせない関連法案である「特例公債法案」(財源不足を補うための赤字国債の発行を可能にする法案)の年度内成立は絶望的な情勢になっています。

日本経団連の米倉弘昌会長は、予算審議より政局を優先している与野党の国会議員を「給料泥棒」と一刀両断にしました。久しぶりに胸のすく言葉を耳にしました。小生は、政争の果てに国を滅ぼしかねない「給料泥棒」であることを彼らがまったく自覚していないことに強い憤りを覚えます。

日本国債売りのマグマが溜まるが、日本の金融機関は「茹で蛙」状態
格付機関のムーディーズも日本の国会議員たちが「政争」に明け暮れ、世界最悪の日本財政を再建する道筋をつける能力もその気もないのに愛想をつかせたようです。与謝野馨大臣のもとで作成され6月末に発表される予定の「税と社会保障の一体改革案」を待たずに日本国債格下げの検討に入りました。

正確には日本国債の格付見通しを「安定的」から「ネガティブ」に変更しました。「ネガティブ」とは現在の日本国債の格付Aa2の維持は難しい、格下げを今後検討するという意味です。実際に格下げされるのは、「税と社会保障の一体改革」は発表される6月末以降になりますが、それ以前でも菅政権が財政再建の道筋を付けられなければ、直ちに格下げが発表されるでしょう。

幸い今回も日本国債が売られることなく長期金利の急上昇は発生しませんでした。正直ほっとしていますが、給料泥棒たちの「愚かな政争」が続く限り、今後も日本国債売りの動機、あるいはマグマがどんどん溜まっていきます。経営学の危機管理の用語になっている「茹で蛙」に似ています。蛙をビーカーの水につけた後、湯の温度を少しずつ上げていっても蛙はその温度変化に気がつかず茹で上がって死ぬそうです。

融資先が見当たらないからといってせっせと日本国債を買い込み安易な運用姿勢を続けている日本の金融機関は「茹で蛙」状態にあるといってよいでしょう。もし銀行や郵貯の債券運用担当者(ファンドマネージャー)が、「みんなで渡れば怖くない」と思って日本国債を買っているのでしたら危険です。何かのきっかけで日本国債が下げ始めたら、こんどは「みんなが売るから我も売る」と信念もなく売り競い、日本国債を暴落に導く恐れがあるからです。そうなると自分だけが逃げ切れることなど不可能、気が付いた時はみんなが「茹で上がった蛙」状態になる。そうでなければいいのですが...。

資金繰りがつかなくなる6月末以降も「特例公債法案」成立の保証はない
菅政権の玄葉光一郎国家戦略担当大臣は、3月末の年度内に特例公債法案が成立せず。赤字国債を発行できなくても、6月末までは税収などで平成23年度予算は執行できると言っています。しかし菅内閣が総辞職しない、衆院を解散もしないままの状態で、6月末までに与党内部、与野党間で予算関連法案をめぐる妥協が成立するという保証はどこにもありません。

国会会期末である6月22日までに特例公債法案が成立しない場合、6月以降、日本の財政は資金繰りがつかない状態になります。昨年の例でいいますと9月末までに政府は50兆円の予算を使いました。かりに今年も50兆円を使うとすれば、赤字国債を除く今年度の歳入予定額51・7兆円ですから、かりにそれをすべて先食いできたとしても、9月末には財政の資金ショートが明確に表面化することになります。

そのとき何が起こるのか、不測の事態も想定しておかねばならないでしょう。
資金ショートを起こすことがはっきりすれば、歳出を削ったり支払いを延期したりする必要が出てきます。一番先に公務員給与の支払い延期に手を付けられるでしょうが、それだけでは足りません。

日本財政の硬直化は著しく、社会保障費28・7兆円、国債費21・5兆円、地方交付税16・8兆円の3項目で歳出総額の約73%を占めます。次はこれに手を付けることになりますが、医療、介護、年金など国民生活に直結する社会保障費は削れないでしょう。地方交付税の交付を後回しにすれば、中央に劣らず財政事情の悪い地方自治体のほうが資金ショートを起こしかねません。

残っているのは、国債の償還や利払いなど国債費21・6兆円の支払いをリスケジュール(延期)するという手段ですが、一部でもリスケを行えば国債暴落は必至です。リスケを起こさないために国会議決を必要としない3ヶ月財務省証券(TB)の発行枠20兆円がフルに活用されるはずです。しかし、不安定な短期資金を転がして財政資金を調達するとなると日本政府に対する信頼は失墜します。市場が国債売りという形で警告を発する懸念もあるのです。

海外のヘッジファンドが日本国債と金融株の仕掛け売りを始めるリスクも
最初に資金繰りがつかなくなる6月末はもう一つの意味で日本国債の信認にとって重要な時期になります。市場は6月末までに結論を出すという菅政権の「税と社会保障の一体改革案」を注視しています。日本国債が売られないのは消費税率が世界最低の5%にとどまり税収増の余地が大きいからだというのが市場の常識です。「一体改革案」に消費税増税がどのように盛り込まれるのかを市場は見ているといってよいでしょう。

しかし与党内最大の小沢グループから「消費増税はマニフェスト違反」という声がいまだに絶えません。ですから菅内閣の「一体改革案」が完成し6月末に消費増税が提案されてもその提案は与党の半分の賛成しか得ていないことになります。たぶん市場は与野党間の大規模な政界再編を行い安定政権ができない限り消費増税はできないと読むでしょう。

そうなると6月末の「一体改革案」の結論を待たず、格付機関のムーディーズは予定通り格下げを実施するでしょうし、さらに1月に格下げを実施したS&Pは日本国債再格下げの検討に入るかもしれません。

S&Pが再格下げを検討すればイタリア、ポルトガル並みの「シングルA」格が視野に入ってきます。ムーディーズは日本国債の格下げに連動して日本のメガバンクの格下げを検討しています。そうなると海外のヘッジファンドが日本国債の先物売りを仕掛けてくる一方、日本国債を大量に保有する銀行など日本の金融株を売り込むというリスクも生じてきます。

金融株だけではありません。税制改正法案が成立しなければ法人税5%減税が見送られるだけでなく、15%に引き下げられる予定だった中小企業の法人税率が22%に本則に復帰します。製造業の株価にも影響を与えるでしょう。株価面で心配なのは、配当や売買益への優遇税制が切れて10%から20%課税に戻ることです。これで投資家の株離れが起きないか心配です。

いずれにしても、株式の売り材料が増えることになります。株式市場は北アフリカ、中東地域の政情不安で大きく下げていますが、日本の「愚かな政争」がようやく回復してきた景気や株式市場にさらに冷や水を浴びせることになることを懸念します。

2011年2月18日 16:26

「党中の党派」より「民主党分裂」のほうが国民益に叶う

2011年2月18日筆

「小沢一郎氏を大変尊敬する」という衆院比例代表選出の民主党議員16名が民主党の衆院会派を離脱すると表明し、新しい会派届けを提出しました。この「会派離脱」に驚く選挙民は少ないでしょう。昨年末、本ブログ「民主党は分裂(小沢除名)を恐れず政界再編を進めよ」で以下のように「民主党は分裂するほうが自然だ」と書きました。ですから小生も驚いていません。

『すでに民主党は分裂しています。親小沢グループと反小沢グループは、小沢国会招致に象徴される「政治とカネ」の問題だけでなく、政治手法や政策思想など最も重要な問題でことごとく対立し、同じ政党に属している政治家とは到底思えません。意見がこれほど異なるグループが同じ党に同居するほうが不自然です』(本欄2010年12月17日付)

彼らはなぜ「離党せず」に会派を離脱するのか。その本音はどこにある
分からないのは彼らが「離党せずに会派を離脱する」と言っていることです。
本人たちは「09年衆院マニフェストを実現するために離党しない」と弁明していますが、小沢氏が強制起訴されたにもかかわらず「離党しない」のと同じです。離党すれば民主党の母屋を菅氏ら現在の非小沢主流派に乗っ取られるというのが本音でしょう。ひさしを貸して母屋を乗っ取られるのが嫌なのです。

小沢一郎氏は「国民の生活が第一」などと言って貧乏人の味方のようなことを言っていますが、いまや盟友となった鳩山由紀夫前総理と同様、親からの遺産やお小遣いをたっぷり受け継いだ大金持ちです。小沢氏の場合は他に別財布があるようです。この二人の大金持ちは、自らの大金をはたいて作った党を貧乏人のお雇い執事の菅氏らに奪われるのは我慢ならないのでしょう。

16名の分派議員は、09年の衆議院議員選挙で小沢氏によって「政権交代」の員数合わせのためにかき集められた比例名簿下位の議員たちです。この選挙で小沢氏は自由党解党時にくすねた政党交付金を500万円ずつ91名の議員に配りました。彼らがその受領議員かどうか良く分かりませんが、大金持ちの小沢氏に一宿一飯の恩義に預かったことは疑いありません。報道によると、彼らに対して小沢氏は事前に会派離脱を認めるお墨付きを頂いたようですから小沢氏の意向を受けた分派行動の第一陣であることは間違いありません。

小沢氏のお雇い執事候補の一人、原口一博議員は、小沢氏からの500万円受領議員です。彼は月刊誌のインタビューに答え「政権交代の原点に回帰しようとするグループ」の「民主党A」と菅首相を支える「民主党B」に分党すべきだといっています。これが分派の第2陣になるのでしょうか。

しかし原口議員も自ら離党するとは言わないようで、16議員と一緒に「党中の党派」を策動しているようです。なぜ「党中の党派」なのか、その理由はカネにありそうです。離党して新党を結成しても政党交付金は当分得られず、いつ起きてもおかしくない衆院解散・総選挙での資金に事欠きます。

民主党の党執行部は岡田幹事長以下、非小沢グループの支配下にあり党資金を握っています。幾ら大金持ちといっても小沢資金も鳩山資金も枯渇しつつあるのではないでしょうか。党に残ってもう一度代表選挙を戦って党代表・幹事長の職を奪い返し、党資金を手中にしなければ選挙は戦えないと彼らは考えているのでしょう。小沢氏らには相変わらず「選挙は金なり」なのですね。

「党中の党派」に堕するより「民主党分裂」のほうが望ましい
百歩譲って党資金ではなく、原口議員の言うように政権交代の原点である「09年衆院選マニフェスト」を守るか、修正するかあるいは破棄するかという政策基準で党が二分されるのであれば、「党中の党派」に堕すことは許されません。民主党が保有する党資金を議員数に従って分配し、互いに新党を作るべきです。その上で、民主党分裂後の新党は、新党の綱領とマニフェストを掲げていま直ちに総選挙に打って出て民意を問うべきです。

あと1ヶ月後に新年度が迫っているのに予算が成立しないという状態で、選挙などやっている暇はないと思っている人も多いと思います。もっともだと思いますが、マニフェストが絡む内輪もめを抱えた民主党がカンバンを付け替えて政権を維持しても、新年度予算執行の鍵を握る予算関連法案が成立する保証はどこにもありません。

「解散・総選挙」を直ちに行い、本格政権をつくる政界再編を進めよ
この際、民主党の分裂新党を筆頭にすべての政党が、経済財政政策に絞って言えば、(1)自分たちの政策提案に対し、どこに、幾ら財源があるのか、(2)財政再建(あるいは社会保障手当て)に必要な財源はいくらか、そのための消費税引き上げ率はいくらか、(3)経済成長率を回復し雇用を増やし税収を拡大させるマクロ経済政策をどう考えているのか、(4)公務員改革、地方分権改革をいつまでどの程度実行するのか、を明示してもらいたいと思います。できれば各界の識者が日本経済の抱える共通のテーマを取り出し、それに各党派が答える方式が良いと思います。

今の状態ではどの党派が何を言っているのか、国民はまったく分かりません。
国民は投票する際の明確な選択肢を与えて欲しいのです。国民の多くは、小鳩一派が後生大事にする「09年衆院マニフェスト」など選挙前に読んでもいませんし、「マニフェスト」が優れているから民主党を選んだのではありません。短期間に総理をすげ替える自公政権に呆れ、その反動で民主党を選択したに過ぎません。

 今度はそんなことがないように、国民が選択しやすい単純明快な「マニフェスト」を見せてください。それでも過半数を得る政党など出てこないのですから、選挙後は「マニフェスト」が近いもの同士が合従連携(政界再編)し、本当の改革に取り組める安定した本格的な政権を作ってください。そのためなら多少の予算成立の遅れを国民は我慢すると思うのですが。

2011年2月10日 17:00

名古屋市長選・河村氏圧勝に表われた民意

2011年2月10日筆
 
どの選挙であれ、小生の興味はいつも、誰が当選したのかではなく、なぜ当選したのか、選挙で表された民意はどこにあるのか、にあります。その意味から、すでに旧聞に属しますが、先週行われた名古屋市長選挙で河村たかし前市長が圧勝したことについて触れておきます。

河村氏は、民主党・社民党・国民新党推薦、つまり政権与党系推薦の石田芳弘氏(前衆議院議員)の3倍の得票を得て圧倒しました。これを朝日新聞(2月7日朝刊)は、「ふがいない政治に対する絶望感の裏返し」(小沢無罪論者のテレビコメンテーター)だとか「小泉旋風と一緒」(小沢氏団体から講演料50万円受け取った民主支持の政治学者)と「専門家」に言わせています。

これら「専門家」のコメントは、名古屋の選挙民を愚弄するコメントだといえます。名古屋の選挙民は、彼ら「専門家」が言うように政治(中央政治?)への漠とした絶望感や一時の人気や風、感情で河村氏に投票したのでしょうか。そうではありません。精査すると名古屋の選挙民は明確な意思を持って投票したのではないでしょうか。

「市民税10%の減税」と「議員報酬も半減」のどちらに共鳴したのか
その証拠の一つは、同時に行われた名古屋市議会をめぐる議会解散住民投票の結果に表われています。この住民投票では、議会解散に賛成が69万票に達し反対の25万票を大きく引き離しました。自民系、民主系を問わずほとんどの議員が反河村、解散反対だったのですが、選挙民に近いところにいるはずの議員の説得に住民は応じませんでした。住民の答えは「ノー」だったのです。

河村氏が議会解散の住民投票に持ち込んだ理由は2つあります。(1)市民税の10%減税を恒久化する、(2)議員報酬を800万円へ半減するという河村提案を議会が否決したことです。名古屋市民は(1)(2)どちらの河村提案に反応して、議員はけしからん、議会は解散すべし、となったのでしょうか。

このうち10%減税の恒久化についての選挙民の受け止め方は複雑なものがあるのではないでしょうか。名古屋市の財政事情も他の地方自治体と同様芳しいものではないからです。平成22年度の名古屋市の一般会計予算は1兆345億円ですが、これを賄う歳入のうち市税収入は4769億円で歳入の46%にすぎません。足りない歳入の穴埋めに市債が1233億円発行(歳入の12%)される予定です。このうち臨時財政対策費、いわゆる赤字市債の発行は400億円にのぼります。赤字市債の発行は、市民税減税分161億円がなければもっと少なくなっていたでしょう。

しかも積もり積もった一般会計の市債残高は1兆8587億円(市税収入の3.9倍)に達します。一般会計だけでなく特別会計、公営企業会計をあわせた総市債発行残高は3兆3076億円(市民一人当たり約146万円)です。名古屋の選挙民は、減税はうれしいが、後になって子供や孫にその借金の付けを支払わせるのは忍びないと思っているはずです。

「税金で食っている人が楽をする社会」は変えなければならないという民意
もう一つの河村提案である「議員報酬の半減」には名古屋市民はもろ手を挙げて賛成したはずです。議会解散への賛成票が反対票を圧倒したのも、河村氏が政権与党系の対立候補に圧勝したのも、この「議員報酬の半減」という提案に名古屋の選挙民が共鳴したからでしょう。

河村氏は、これを「税金で食っている人が楽をする社会は変えなければならない」という言葉で表現しています。「税金で食って楽をしている人」の代表が市議会議員でその議員報酬を半減し世間の平均給与並みの800万円に引き下げると河村氏は言っています。

ちなみに名古屋市は人口約226万人ですが議員定数は75名、報酬年額は約1630万円にのぼります。これに対して、イギリスのロンドン市の人口は名古屋市の3倍以上の756万人なのに議員定数が3分の1の25名、報酬年額は約690万円です。河村氏はこういう鮮やかな比較例を市民に提示しているのですから、選挙民は「報酬半減」に大いに共鳴したのです。

河村氏の言葉を借りれば、名古屋市長選と議会解散住民投票に表された選挙民の民意は、「税金で食っている人」が楽をする社会を変えて欲しいということにあったのではないでしょうか。

日本には「税金で食っている人」がたくさんいます。議員、公務員、政府系機関職員、独立行政法人職員などの政府関係者がその代表です。ちなみに日本の公務員数は国家公務員が56万人、地方公務員235万人、合わせて291万人です。これらの公務員に支払われている人件費総額は27兆円に達しています。かりに公務員報酬の2割削減という民主党公約を地方公務員にも適用すれば27兆円の2割で5.4兆円、消費税率2.3%に匹敵する恒常財源が捻出されます。

日本の財政赤字は、公務員人件費の2割削減の5,4兆程度では到底穴埋めできる規模ではありません。選挙民は子孫に借金の付回しをしないためにも消費税増税は仕方ないとは思っていますが、「税金で食っている人」が身を削ることもなく国民に増税を強いるのはごめんこうむりたいとも思っているのです。

他にも「税金で食って楽をしている人」はたくさんいるのではないか
それが市長選で表された最大の民意だとすれば、消費増税を我慢して規制緩和や民営化で行財政を削減するとした「小泉改革」に通底するものがあります。

「小泉改革」の場合、「税金を食っている人」の範囲を広く取っていました。定額貯金という民間より有利な商品で国営郵便局に集められた資金で公社、公団、特殊法人が維持され、公務員の天下り先が確保されていました。こうした純公務員も「税金で食っている人」ですが、郵政民営化はこうした「税金で食っている人」の培養装置を改革する意味もありました。

「小泉改革」による規制緩和については、社民党などは労働者派遣法だけを取り上げて騒いでいますが、規制やルール(法律)の守られた既得権益者という「法律で食っている人」を排除するという重要な意味もあったのです。

小生は「税金で食っている人」は他にも大勢いると考えています。例えば、農協や役場、郵便局に勤めて定収を持っているのに土日に小規模な田んぼを耕作して農家所得保証金をもらっている偽装農民がそうです。そんな小規模農民に依拠して農業保護を主張する農協と20万人を超す農協職員も同じでしょう。
生活保護所帯も「税金で食っている人」の典型ですが、その生活保護費は年間3兆円を上回っています。ここに無駄や不公正はないのでしょうか。

河村氏の「税金で食っている人」の範囲は小生よりもっと狭いと思いますが、名古屋市民は「税金で食っている人」の範囲をどの程度広くとっているのか、今回の選挙では判然としません。しかし名古屋市議会の旧民主党議員は、議会解散の民意を斟酌して、次の選挙では「議員報酬の半減」に賛成すると方向転換しました。名古屋市民が示した最低限の民意に従ったことになります。

次の4月の統一地方選挙でも、次の衆院解散・総選挙でも、「税金で食っている人が楽をする社会」を否定する民意に従って得票数は大きく動くと思います。公務員労組や小農、地方ゼネコンなど「税金で食っている人」に依拠している政党・党派は、「税金を払って苦しんでいる人々」が下す民意の鉄槌を受けることを覚悟したほうが良いと思いますが、いかがですか。

2011年2月 4日 11:08

「良い金利上昇」と「悪い金利上昇」の帰結

2011年2月4日筆
 
1月27日、ムーディーズと並ぶ国際的な格付機関であるスタンダード&プアーズ(S&P)が日本国債の格付を「ダブルA」から「ダブルAマイナス」に1段階引き下げると発表しました。
 
 前回の格下げでは日本が資金援助をしているアフリカのボツワナの国債と同格になったことから「ボツワナ並み」という自虐的な言葉が話題になりました。今回はユーロ危機をもたらしているEUの債務危機国「PIIGS」の一角、スペインの格付を下回ったことから「スペイン以下」といわれています。

 格下げ発表の当日、円が売られ1円前後円は下落、日本国債も売られ利回りが若干上昇しました。しかしその後、円も国債価格も買い戻され、元の水準に戻っています。日銀は昨年10月の「包括緩和」で3.5兆円の新たな国債買い取り枠を設定していますから日銀の買い支えがあったのかもしれませんが、心配されたS&Pの格下げの金融市場への影響はほとんどなかったようです。

米国の「良い金利上昇」につられて日本の長期金利も上昇してきた
気になるのは、織り込み済みの日本国債の格下げより米国国債に対する金融市場の評価のほうです。昨年秋以降、米国国債に対する市場の評価が変わり、米国国債が売られ米国の長期金利が上昇し始めています(国債が売られ国債価格が下がると国債の流通利回り=長期金利が上昇します)。

米国の長期金利は、景気の2番底やデフレ懸念から急速に低下し、昨年10月8日には2.3%台まで低下しました。その後、米FRBのQE2(量的緩和第2弾)によって景気回復への期待が盛り上がり、株や商品などのリスク資産が買われ安全資産である米国国債が売られました。その結果、昨年11月以降、米国の長期金利が大幅な上昇に転じました。2月4日現在の米国長期金利は3.652%ですからこの4ヶ月で金利は1%以上上昇したことになります。

この米国の長期金利上昇は、景気の回復期待が高まっていることの反映ですから「良い金利上昇」といわれています(インフレ予想が強まり、インフレによる国債の減価を回避する国債売りという側面もあるが...)。ところがこの米国の長期金利の上昇につられて日本の長期金利も上昇を始めているのです。日本の場合、1%の長期金利上昇で1兆円以上国債の利払いが増えることになりますから、「良い金利上昇」とばかり言っておれないのです。

ちなみに日本の長期金利はアメリカに連動して昨年10月には0.820%まで下がっていましたが、秋口から急上昇し2月4日現在、1.280%まで上昇しています。0.5%近い上昇です。

米国債の下落で値下がり損を抱えた日本の金融機関が日本国債を売った
なぜ日本の長期金利も上昇したのか。米国国債を大量に保有している日本の金融機関に、昨年11月以降の米国国債の価格下落(長期金利の上昇)によってかなりの値下がり損が発生したからです。日本の金融機関は、この損失を埋め合わせるために含み益がある保有日本国債を売却して穴埋めしたというのです。その結果、日本国債の価格が下落し長期金利が上昇したといえます。

実は、昨夏までの米国国債の価格上昇(長期金利の低下)につられ日本の金融機関は米国国債を大量に買い増しています。銀行や生命保険など国内投資家による昨年1年間の外債買い越し額は21兆円と過去最高になりました。このうち銀行部門の買い越し額が10.6兆円と過半を占めています。日本の銀行部門は米国国債が今後も売られ値下がり損が増えれば、含みのある日本国債を売らざるを得ません。日本の長期金利上昇をもたらす契機になりかねません。

どんどん悪化する米国の財政、「悪い金利上昇」の可能性も否定できない
米国の長期金利の上昇については、景気回復による「良い金利上昇」という評価だけではなく、米国財政の悪化による債務危機不安から発生する「悪い金利上昇」という見方もあります。

0204表.JPG

アメリカのオバマ政権は、住宅バブルの崩壊(リーマンショック)による金融経済危機から脱するために過去2年間、多額の財政出動を繰り返しました。その結果、連邦政府の財政赤字は09年会計年度で1兆4127億ドル、10年度1兆2940億ドルに膨れ上がりました。米議会予算局によれば、11年度の財政赤字は1兆4800億ドル(約120兆円)に再び拡大すると予想しています。日本の財政赤字は44兆円ですからその3倍です。

アメリカの財政事情はどんどん悪化しています。上表は2010年の財政事情を世界最悪の日本と比べてみたものです。アメリカの財政事情は日本より悪く、米国国債を取り巻く環境は日本国債より悪いという見方もできます。

名目GDP比の政府債務残高は日本よりアメリカのほうが低いのですが、財政赤字比率はアメリカのほうが日本よりはるかに高く、規模も大きいのです。心配なのは、歳出に占める国債の利払い費比率は12%にも達していることです。このまま長期金利の上昇が続けば米国国債の利払いを累増させ危険があるのです。景気回復による「良い金利の上昇」が国債利払い費を急増させ、債務悪化を忌避する国債売りによる「悪い金利上昇」に繋がりかねないのです。

さらにアメリカは経常収支が赤字(日本の経常収支は黒字)ですし、世界最大の対外純負債を抱える国家(日本は世界最大の対外純資産国)です。日本の場合、経常収支の黒字から生じた資金余剰の一部が対外純資産として積み上がる一方、邦銀への預金に積み上げられその預金が日本国債の購入に向うというメカニズムがいまのところ働いています。これに個人金融資産の増加が合わさって年間150兆円前後発行される日本国債の発行を買い支えているのです。

しかしアメリカの場合、経常赤字が常態化し国全体が資金不足の状態で、他国からの借金で不足を補っています。だから対外純負債が増加しているのです。財政上でも、米国国債の半分近くを中国や日本など外国勢が保有し、財政赤字が外国勢によってファイナンスされているのです。このまま経常収支赤字と財政赤字が続けばアメリカの債務償還能力(借金返済能力)が疑われかねません。

格付機関のムーディーズは「将来の米国国債格下げの可能性」を表明した
連邦債務残高は、米議会が定めた上限の14兆3000億ドル(約1170兆円)を3月末までに突破します。こうした事態を受け国際格付機関のムーディーズは、「今後2年以内にアメリカの格付見通しをネガティブにする可能性が高まっている」と1月27日に表明しました。「ネガティブ」とは最高ランク「トリプルA」の米国国債の格下げを検討するという意味です。市場の中に米国国債売りに走る契機が醸成され始めていることになります。

景気回復(インフレ懸念)に伴う「良い金利上昇」であれ連邦債務への疑念から生じる「悪い金利上昇」であれ、日本の金融機関にとっては米国国債の価格下落であることに変わりはありません。米国債投資からの損失を日本国債の売りで補う動機は今後さらに強まりそうです。

日本人には、外国人が日本国債を保有していないから安心だ、日本国債の暴落はないという神話があるそうですが、米国国債の下落が日本国債売りに波及する経路はあるのです。さらに日本国債の下落が予想されれば、日本国債を保有しないヘッジファンドが先物取引という手段を使って日本国債を売ってくるという経路もあることを指摘しておきます。
プロフィール
ニックネームさん
大西良雄(経済ジャーナリスト)
上智大学卒業後、東洋経済新報社に入社。記者を経て「月刊金融ビジネス」、「週刊東洋経済」編集長を歴任。出版局長、営業局長の後、常務第1編集局長を最後に独立。早稲田大学オープンカレッジ講師のほか講演・執筆活動。
月別アーカイブ
2017年5月
2017年4月
2017年3月
2017年2月
2017年1月
2016年12月
2016年10月
2016年9月
2016年8月
2016年7月
2016年6月
2016年5月
2016年4月
2016年3月
2016年2月
2016年1月
2015年12月
2015年11月
2015年10月
2015年9月
2015年8月
2015年7月
2015年6月
2015年5月
2015年4月
2015年3月
2015年2月
2015年1月
2014年12月
2014年11月
2014年10月
2014年9月
2014年8月
2014年7月
2014年6月
2014年5月
2014年4月
2014年3月
2014年2月
2014年1月
2013年12月
2013年11月
2013年10月
2013年9月
2013年8月
2013年7月
2013年6月
2013年5月
2013年4月
2013年3月
2013年2月
2013年1月
2012年12月
2012年11月
2012年10月
2012年9月
2012年8月
2012年7月
2012年6月
2012年5月
2012年4月
2012年3月
2012年2月
2012年1月
2011年12月
2011年11月
2011年10月
2011年9月
2011年8月
2011年7月
2011年6月
2011年5月
2011年4月
2011年3月
2011年2月
2011年1月
2010年12月
2010年11月
2010年10月
2010年9月
2010年8月
2010年7月
2010年6月
2010年5月
2010年4月
2010年3月
2010年2月
2010年1月
2009年12月
2009年11月
2009年10月
2009年9月
2009年8月
2009年7月
2009年6月
2009年5月
2009年4月
2009年3月
2009年2月
2009年1月
2008年12月
2008年11月
2008年10月
2008年9月
2008年8月
2008年7月
2008年6月
2008年5月
2008年4月
2008年3月
2008年2月
2008年1月
2007年12月
2007年11月
2007年10月
2007年9月
2007年8月
2007年7月
2007年6月
2007年5月
2007年4月
2007年3月
2007年2月
2007年1月
2006年12月
2006年11月
2006年10月
2006年9月
2006年8月
2006年7月
2006年6月
2006年5月
2006年4月

ページトップへ

カレンダー
<< 2016年03月
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28          
最新記事
トランプの愚挙――科学技術予算の削減に米議会が反抗
M&Aに失敗した経営者と成功し続ける経営者の違い
韓国は米軍の北朝鮮への先制攻撃に同意するか
トランプ暴走止めた司法と議会、米国の「三権分立」健在なり
若年層減少がもたらした過去最高の就職内定率
最新コメント
人権(笑) それを言わね...
Posted by 言ってる人々の信頼
習主席は言っている事...
Posted by まる
何故海外の投資家は日...
Posted by 杉本 小太郎
両者の相殺をしないと...
Posted by Anonymous
大西良雄先生、 時事ネ...
Posted by サカグチ ブンケン
最新トラックバック
【記事】トランプの愚挙――科学技術予算の削減に米議会が反抗
from QuonNetコミュニティ
【記事】M&Aに失敗した経営者と成功し続ける経営者の違い
from QuonNetコミュニティ
【記事】韓国は米軍の北朝鮮への先制攻撃に同意するか
from QuonNetコミュニティ
【記事】トランプ暴走止めた司法と議会、米国の「三権分立」健在なり
from QuonNetコミュニティ
【記事】若年層減少がもたらした過去最高の就職内定率
from QuonNetコミュニティ