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大西良雄ニュースの背後を読む

2010年11月18日

2010年11月18日 13:31

大卒就職内定率57.6%、就職氷河期が再来した

2010年11月18日筆
 
心臓が凍りつくような数字が発表されました。文部科学省と厚生労働省の調査によると、来春卒業予定の大学生の10月1日時点での就職内定率が57.6%に落ち込みました。10月1日という就活の最終局面でも42.4%の新卒者は就職先が決まらないというのですから、大変な事態です。

派遣など非正規就業者が急増し長期にわたって滞留するきっかけになった「就職氷河期」は2000年代前半です。その最悪期の03年の内定率が60.2%でしたから今年の57.6%はこの最悪期を下回ることになります。

 「就職しなかった、就職できなかった卒業生」はどうなる
この最悪状態で卒業後はどうなるのでしょうか。文科省の「学校基本調査」に今年春卒業した学部卒業者の進路をフォローすればその傾向が分かります。
2010年春の学部卒業者数54万1000人のうち就職者数32万9000人で就職率60.8%でした。「就職しなかったあるいは就職できなかった卒業生」は残りの39.2%、21万2000人です。

このうち大学院等への進学者は7万3000人(卒業者比13.4%)、専修学校・外国の学校等入学者が1万3000人(同2.5%)と卒業者の約16%が大学院への進学や資格習得で学び続けるということになりますが、その多くは再度の就職活動に備えて「学び続けている」のではないでしょうか。

大学院や専修学校で「学び続ける」費用がある卒業生はまだ幸せです。就職もできず、「学び続ける費用」も出せない卒業生は、パートや派遣、アルバイトなどで稼ぐほかなく、「一時的な仕事に就いた」卒業生は1万9000人(同3.6%)です。ほかに就職も進学もしていない卒業生(自宅待機?)が8万7000人(同16.1%)にのぼります。

以上のような「就職しなかったあるいは就職できなかった卒業生」の何パーセントが近い将来の就職活動によって職を得られるか、大いに不安です。2000年代前半の「就職氷河期」に就職できなかった卒業生の中には今も年収200万円の非正規就業を迫られている人が少なくありません。今年の就職内定率57.4%は、こうした非正規就業の卒業生をさらに増加させる危険が大きくなったというほかありません。

景気が良くなれば就職内定率は改善するのか
景気が良くなれば、大学新卒者の就職内定率は改善するのでしょうか。改善すると思うから大学院等への進学、就職留年、自宅待機を続けているのだと思います。実際はどうでしょうか。

景気は09年3月を底に回復を続けてきました。実質GDP(年率換算)は最悪だった09年1-3月期の515兆円から直近の2010年7-9月期には547兆円まで回復しています。しかし就職内定率は08年の69.9%をピークに下げ続けています。

完全失業率や就職内定率などの雇用統計は景気の回復から遅れて改善する「遅行指標」といわれます。完全失業率は09年半ばの5.4%をピークに直近9月には5.0%へわずかですが改善しています。有効求人倍率も5月から9ヶ月連続改善しています。しかし就職内定率だけは景気には関係なく下げ続け過去最低を更新してしまいました。

なぜなのでしょうか。その理由は多々ありますが、小生が最も気になるのは「新卒の職場が海外に流出しているからだ」という理由です。

日本国内では、新規開業件数が大きく減少し、新しい職場が生まれていません。既存企業は大企業を中心に国内の工場・事務所を中国、香港やタイ、シンガポールなどアジアなどに続々と移転しています。中小企業の海外流出も今後進むに違いありません。

内需型企業も続々海外流出、ますます増加する外国人採用
日本のビッグビジネスのグローバル採用はさらに活発化する勢いです。一例を挙げれば、パナソニックは2011年度の新卒採用人数1390人のうち海外での採用人数は1100人、国内採用は残り290人と海外採用の4分の1に過ぎません(「週刊東洋経済」11月13日号の「就職新氷河期」特集参照)。

国際展開するパナソニックやソニー、ホンダなどの輸出ハイテク企業のグローバル採用は自然な流れだと思います。グローバルな資金の流れをつかまえて商売する商社、証券、金融などの業界も外国人採用を増やさなければ生き残ることはできません。

これに加えて最近顕著なのは内需型の国内企業のグローバル採用です。すでにユニクロ事業の海外拡充を打ち出したファーストリテイリング、海外の電子商取引との提携が活発化しグローバル化を急いでいる楽天が外国人採用を大きく増やしています。この2社は社内の公用語を英語にすると宣言して話題を呼びました。

キリンビール、アサヒビール、サントリー、ヤクルト、キッコーマン、味の素、ヤマト運輸などかつての内需型の代表選手だったビッグビジネスも、国内市場の飽和に限界を見て取り成長するアジアの途上国に続々進出しています。現地採用の社員がさらに増えていくことでしょう。

内需型企業の職場すら海外へ流出しているのです。日本の学部新卒は、国内のブランド大学だ、非ブランド大学と大学同士で競争しているだけでなく、中国やシンガポール、インド、韓国など海外の学部新卒と競わねばならない時代になったのです。

儲からない日本を早く儲かる日本に戻さないと職場は帰ってこない
第一生命の推計では、海外に流出した雇用は08年1年間だけで96万人に達しているといいます。この3分の1でも国内にとどまってくれれば新卒の就職内定率は大きく好転するはずです。しかし、企業は国内にとどまっている限りグローバル競争に生き残れません。企業に向って政府が海外に進出するなといえば、企業側は、「政府は私に死ねというのか」と反論するのが落ちです。

このブログで何度も触れていますから詳しくは繰り返しませんが、なぜ企業は日本国内にとどまらないのか、それは「日本経済の期待成長率が低下し国内への投資活動が衰退している」からです。儲からないのに税金が高い、規制が多く自由な企業活動ができないような国に投資する企業家はいません。だから、国内に職場は生まれず、海外に職場が流出するのです。

菅総理は、「1に雇用、2に雇用、3に雇用」と叫んでいますが、儲からない日本を早く儲かる日本に戻さなければ職場は日本に帰ってきません。正解は「1に成長、2に成長、3に成長」です。職場を作るのは企業です。国内の成長、つまり企業の成長や職場の創出を妨げているアンチ・ビジネスの政策(今回は触れませんが、その中身は折にふれ書いて来ましたし、今後も書きます)は直ちに引っ込めるべきだと思いますが、どうでしょうか。
プロフィール
ニックネームさん
大西良雄(経済ジャーナリスト)
上智大学卒業後、東洋経済新報社に入社。記者を経て「月刊金融ビジネス」、「週刊東洋経済」編集長を歴任。出版局長、営業局長の後、常務第1編集局長を最後に独立。早稲田大学オープンカレッジ講師のほか講演・執筆活動。
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