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大西良雄ニュースの背後を読む

2010年10月

2010年10月27日 11:31

TPPというバスに乗り遅れ、韓国に負ける?

2010年10月27日筆

菅総理が「参加を検討したい」と口火を切った環太平洋戦略的経済パートナーシップ協定(TPP)をめぐって小沢・鳩山連合軍が「政局にするぞ」と脅しを掛け、反対の狼煙を上げています。

消費税率引き上げの「検討」にせよ、今回のTPPへの参加検討にせよ、理に適った至極まともな提案だと思います。これに野党が反対するのならまだ分かるのですが、与党民主党の内部から政権を揺さぶる反対が出てくるのです。小沢・鳩山連合軍は今度も票を稼ぎ権力を簒奪することを目当てに特定少数勢力の利権誘導を図り、理の通らぬ反対論を繰り返しているように小生は思えます。これにまた国民新党、社民党が便乗しています。味方であるはずの与党内に最大の反対勢力を抱えている菅総理にリーダーシップを発揮せよというのは、ないものねだりの無理難題というものです。

TPPは、二国間のFTA(自由貿易協定)をさらに進めたもので、参加者がすべての品目で関税を撤廃してお互い自由に貿易を行うというグループ協定です。すでに太平洋を挟んでチリとニュージーランド、ブルネイとシンガポールの4カ国が協定を結んでいます。この4カ国に環太平洋を時計回りにアメリカ、ペルー、豪州、マレーシア、ベトナムの5カ国が参加協議に踏み切り、その協議に日本も加わろうというのが菅総理の提案なのです。

このTPPにはカナダ、メキシコ、タイ、それに中国、韓国も参加を検討しているようです。これに参加しなければ、日本は、環太平洋の主要な国々が関税ゼロで互いに自由な交易を行うという地域経済圏から排除され、ひとり高い輸出関税率のハンデを背負って国際経済活動を行うことになるのです。

FTA締結でさらに対日競争力を増す韓国ビジネス
今後、参加交渉を始める国々の中では、お隣の韓国が特に積極的で、参加は時間の問題だといわれています。韓国は今ではアメリカ、EU、中国・アジア市場で日本の最も強力な競争相手になっている感があります。その韓国がTPPに参加して日本が参加しなかった場合、日本は韓国に対して競争上、2重苦、3重苦を背負うことになります。

すでに韓国は、輸出競争力において日本に急速に追いつき、一部ではすでに追い越してしまっています。日本が得意とした電子機器では、いつの間にか韓国のサムソン電子に世界首位を奪われてしまいました。サムソン電子のシェアは、薄型テレビ、大型液晶パネル、半導体で世界首位、携帯電話ではノキアについで世界2位です。売上高、純利益で比べてもサムソン電子は日本を代表する電子機器メーカーのパナソニック、ソニーを大きく引き離しています。

日本の独断場と思われていた原子力発電でも高速鉄道でも、世界の受注競争に韓国勢が急速に食い込んできました。リチウムイオン電池、LED(発光ダイオード)、3D(3次元映像)、ネット検索やオンラインゲームなど先端分野でも韓国勢の足音が日本勢のすぐ後ろから聞こえ始めています。

こうした韓国の対日競争力上昇の背後には、韓国が競争条件のさまざまな面で相対的優位に立っているという事情があります。下表をごらん下さい。

10.27表.JPG

まず第1は、韓国ウォンの大幅な下落です。リーマンショック前の07年に比べ直近の韓国ウォンは対日本円で46%も下落しています。このウォン安円高によって輸出市場での日本勢の価格競争力は韓国勢にすでに46%も劣化しているのです。

第2は法人実効税率での韓国の優位です。韓国の法人実効税率は24.20%でアジアではシンガポールの17%に次いで低いのです。日本はアメリカと並んで世界で最も高い法人実効税率で、韓国とは16%近い税率差があります。日本企業は為替レート差46%と法人実効税率差16%、あわせて62%ものハンデを背負って韓国企業と競争しているといえます。

それに、FTA比率のハンデが加わるのです。韓国政府のFTA(自由貿易協定)への取り組みはきわめて積極的です。韓国の発効済み、署名済みのFTA締結国数は日本に比べ数は少ないのですが、ASEAN、インド、米国、EUなど大きな、主要な貿易相手国・地域とFTAを結んでいます。その結果、貿易総額に占めるFTA締結国の貿易割合は約40%(上表FTA比率)に達しています。日本にFTA比率は締結したばかりのインドを含め17%に過ぎません。TPPに参加すれば韓国のFTA比率は70%を上回るでしょう。

韓国はEUとの間でFTAに合意し調印済みです。EUには現在、自動車には10%、液晶テレビには14%の輸入関税が課せられています。FTAが発効すれば、韓国製の液晶テレビや自動車の輸出関税はいずれゼロになります。日本とEUのFTA交渉は農業問題などが障害になって暗礁に乗り上げ締結のめどすら立っていません。日本企業はEU市場でも韓国企業に対して10%以上の競争ハンデを背負うのです。

「1.5%の第一次産業のために98.5%のかなりの部分が犠牲に」
日本のFTA比率は、すでに韓国より大きく劣っています。将来もその差が広がりそうです。なぜ日本のFTA比率が高まらないのか。その理由は、ひとえに日本の農業問題の深刻さと農業保護を叫ぶ政治家にあります。

TPPの交渉役をまかされた前原誠司外相は、そのことを見事な表現で言い当てています。「第1次産業のGDPに占める割合は1.5%に過ぎない。1.5%を守るために98.5%のかなりの部分が犠牲になっている」と。

正確に言いますと、農水省の基本データ集によりますと農林水産業の総生産は5兆6295億円で08年度のGDP494兆円の1.14%です。前原氏の数字よりさらに小さくなります。この1.14%に足をすくわれ、日本は自由貿易の輪の中に入れず、産業の競争力をどんどん劣化させているのです。


農水産業が自由貿易交渉の阻害要因になるのは韓国も同様でした。しかし、韓国には「自由貿易で生きる」という政府の決断、政治家のリーダーシップがありました。韓国企業は1997年のアジア通貨危機の後、大胆な経済構造と経営改革に踏み切り今日の競争力基盤を築きました。韓国政府はこれに歩調を合わせて輸出立国へ大きく舵を切ったのです。その武器がFTAでした。

そして韓国はFTA締結を進めるために、国内農業に対する体系的な構造改善策を採用しました。FTA締結に備え農業・農村総合対策として総額119兆ウォンにのぼる中長期の投融資計画(2004年~2013年)を打ち出ししたのです。国内農業に大きな影響が予想される韓米FTAの締結に際しては総額20.4兆ウォン(当時100ウォン=12円)の投融資計画(2008年~2017年)を追加しました。

小沢・鳩山連合の妨害で日本の産業も日本の農業も共倒れの危機に
誤解がないように述べておきますが、韓国の農業・農村対策は、日本の民主党が実行している小規模な兼業農家、日曜農家にも小遣いをばら撒くような選挙目当ての戸別所得保障制度とは大いに異なります。

2007年に韓国政府が発表した「韓米FTAに対する農業部門への支援策」(ジェトロ仮訳)によりますと、
「農業人のうち、趣味で農業を営むものや農業以外の所得が高い兼業農家は農業政策支援の対象から除外する」
「農業を主業とする農家と農業法人を韓国農業の中枢として育成していく」
「高齢農業人の経営移譲を誘導する政策を拡大し、農地など生産要素が専業農業者に集中できる環境を整えていく」
とうたっています。

以上でお分かりのように、韓国の農業対策の主眼は、専業農業者の育成や規模の拡大による農業生産性の引き上げ、ひいては農産物の輸出競争力の引き上げにあることは明白です。韓米FTA締結で追加された投融資支援20.4兆ウォンのうち94%に当たる19.2兆ウォンは競争力強化に当てられます。

日本は韓国に倣って、日本経済の衰退を招かないために「98.5%」の産業のためにFTA締結を推し進め、その犠牲になるとされる「1.5%」の第一次産業のための抜本策を採用すべき時に来ているというほかありません。

財源はあります。現在でも、上述した5.6兆円の農林水産業の総生産を維持するために国と地方自治体あわせて毎年3.9兆円もの農業予算が投じられているのです。農家への戸別所得保障を含むこの農業予算のすべてを抜本的に組み替え、FTA締結に備える農業対策費用に回せばよいのです。

そうしなければ今後も農業後継者は現れません。現在65.8歳に達する農業就業者の平均年齢は10年後には75歳になり、日本の農業は崩壊しかねません。小沢・鳩山連合の言うまま、TPPというバスに乗り遅れ、後継者が出てこない農業を現状のまま放置すれば、日本産業も日本農業も共倒れになってしまうでしょうね。とても残念ですが......。

2010年10月20日 09:59

中国の金融引き締め転換で潮目が変わる?

2010年10月20日筆

 中国がついに金利引き上げに踏み切りました。貸出と預金の基準金利(期間1年物)を0.25%引き上げ、貸出金利を5.56%、預金金利を2.50%としました。中国の貸出金利はリーマンショック後、7.47%から5.31%まで5回連続して引き下げられました。その後、5.31%の水準を継続していたのですが、これが約1年10ヶ月ぶりに引き上げられたことになります。

 「5中全会」にも関係がある、市場の虚を突いた利上げ
今回の利上げは、市場関係者の虚を突くものでした。貸出金利の引き上げは、すべての債務者に影響を与え景気の減速を招く一方、金利上昇による内外価格差の拡大から中国国内への外国投機資金の流入という副作用をもたらす懸念があります。市場関係者は、景気減速と投機資金流入を避けたい中国人民銀行は貸出金利の引き上げに踏み切ることを躊躇していると読んでいたからです。

しかし、人民銀行の、預金準備率引き上げによる融資増加額の抑制や不動産融資規制の導入など懸命な努力にもかかわらず、不動産バブルはなかなか終息しません。国民生活に直接影響する消費者物価の上昇率も7月3.3%、8月3.5%と連続して警戒ラインの3%を上回り、加速懸念すら出てきました。

そうした状況下で、今週、中国では中国共産党の「5中全会」という重要な会議が開かれました。「5中全会」では、胡錦濤氏から習近平氏への後継態勢が出来上がる一方、2011年から始まり12年からの習近平治世下に実施される第12次5カ年計画の骨子も承認されました。今回の利上げは、「5中全会」での新5ヵ年計画の骨子決定と関係があるのではないでしょうか。

新5カ年計画の主要目標は、「経済の安定的で比較的早い発展、経済構造調整の進展、都市・農村住民の収入増」が3本柱です。たぶん第一に過剰で非効率な生産能力を整理しながら環境配慮、資源節約型の経済を築く、第二に労働分配率を引き上げ、貧富の格差を是正するというのが主眼だと思われます。中国は、前5ヵ年の高度成長によって生じたひずみを是正する調整型の経済政策に方向転換するのではないでしょうか。

今週末には9月の消費者物価上昇率が発表されますが、上昇率は8月をさらに上回り4%に接近すると噂されています。人民銀行も副作用を覚悟で貸出金利を引き上げざるを得なくなったと思われます。

ドル安の誘因に変化はなく、ドル全面高は一時的? 
中国の利上げは0.25%と小幅なものでしたが、虚を突かれたということもあり、株式、国際商品、為替など市場は大きく反応しました。株式市場では米・NYダウ、ドイツ・DAXなどが大幅安、国際商品では金価格が大きく下落しました。為替市場ではドルが買い戻され、ユーロ、途上国・資源国通貨に対してドルが上昇、ドル全面高の様相を示しています。

中国の実質GDP成長率は、今年1-3月期の11.9%をピークに4-6月期は10.3%に減速、7-9月期の成長率(今週末発表)は10%前後に高止まりしたとしても、今回利上げで10-12月期の再減速は確実になったといえます。中国向けの製品輸出に期待していた欧米でも景気減速が確実視されますから欧米株価が下落しても不思議はありません。対中輸出依存度が高い銘柄が多い日本株も下落するでしょう。

ただ、ドルの買い戻しによるドル全面高の動きが今後も継続するかどうかについては、もう少し事態の推移を見きわめる必要があるでしょう。

まず、つい最近までドルの全面安をもたらしていた米国の超金融緩和状態が、中国の金融引き締め転換によって変わるのでしょうか。11月3日の米FRBの金融政策決定会合(FOMC)では、5000億ドルとも1兆ドルとも予測されている巨額の追加量的緩和は見送られるのでしょうか。

利上げがもたらす中国景気の減速によって世界景気の同時減速が確実視される状態では、9.6%に高止まりしている米国の失業率が大きく下がることは期待できません。加えて米国では消費者物価上昇率がどんどん低下しデフレ化への懸念が高まっています。市場関係者はよほどのことがない限り追加緩和が見送られることはないと見ているはずです。

追加量的緩和によってドルが大量散布されるという市場予想が消滅しない限りドル安の誘因は治まらないといえます。金は「代替通貨」ないし「無国籍通貨」と呼ばれ、ドル安という基軸通貨への不信から上昇を続けてきました。しかし今回のドル全面高で金価格は急落しています。これもドルの大量散布が続く限り一時的な下げにとどまり、上げ基調は変わらないことになります。

日本円は人民元高に連れ高する恐れがある
ドルと人民元の関係はどうなるのでしょうか。中国人民銀行は今回の中国の利上げによって外国の投機資本が国内に流入することを容認したことになります。外国資本の流入は「ドル売り・人民元買い」となり人民元の上昇をもたらします。G20を目前に控え、中国は利上げによってアメリカの人民元切り上げ圧力をかわす作戦を取ったとも言われます。その結果、ドルは人民元に対して下落し、ドル安・人民元高となると予想されます。

では日本円の対ドルレートはどうなるのでしょうか。中国の利上げによるドル買い戻しで円も一時81円代後半に下落しましたが、すぐに81円台半ばに戻しました。市場は円安への基調転換にまだ自信が持てないようです。つい最近まで、市場では人民元高になれば中国に次ぐ対米貿易黒字国の日本円も連れ高になると予想されていたからです。米FRBの追加量的緩和が見送られない限り日米金利差の縮小は止まらず、この面からの円高誘因も解消されていません。

金融緩和が生み出した膨大なマネーが世界中を駆け巡っているのです。そのカネがどういう理屈でどういう資産に向うのか予断を許しません。ドル安が終わりドル高円安に基調転換すると考えるのはまだ早いと思います。確かなことは、世界が中国の成長減速によって同時減速過程に入ったということと、その減速を緩和するための金融緩和が続くということだけです。

2010年10月13日 10:59

猛暑に耐えたわが畑のトマト、きゅうり、なす、ピーマン

2010年10月13日筆

今年の夏は記録的な猛暑で野菜が育たず、キャベツ、レタス、白菜の葉物はもちろん、トマト、茄子、胡瓜、大根までいっせいに値上がりしました。いずれも自給率100%の農産物ですが、農業の専門家たちも異常気象に打ち勝つことができず供給不足を来たし、値上がりを防ぐことができなかったようです。

さてわが畑、といっても玄関脇の5坪に満たない小さな家庭菜園ですが、プロの農家を差し置き、この猛暑に耐えに耐え大豊作でした。もう20年以上も細々と家庭菜園で野菜を育ててきましたがこんな大豊作は初めてです。信じられません。皆さんに報告せずにはいられません。

プロ農家が仕入れる苗をわが畑にも植え付けています
まず、胡瓜(きゅうり)ですが、接木苗を6本ほど仕入れ5月の連休に植え込みました。7月、8月の記録的猛暑の前、梅雨時は寒く感じるほどで胡瓜の育ちが悪かったような気がしますが、気温が上がった後はすくすく育ちました。
猛暑だったからでしょうか、こまめに水遣りを欠かさなかったことが生育にはよかったようです。門型のトンネル柵を作りつるを這わせたのですが、どんどんつるは伸びトンネル柵は長くなってゆきました。胡瓜は伸びるトンネル柵に何本も垂れ下がり、9月の半ばまで食べきれないほど収穫できました。

胡瓜の接木苗は、所沢の旧市街地に古くからある「渡辺種苗」で購入したものです。所沢周辺は台地で稲作には向かず農家はサツマイモ(川越イモの産地)や野菜などを作付けしています。「渡辺種苗」はその所沢周辺のプロ農家もタネや苗を買いにくる老舗です。小生も、毎年5月の連休になるとプロ農家のまねをして家内と「渡辺種苗」に出かけます。そこで胡瓜、トマト、茄子、ピーマン、しし唐、時にはかぼちゃ、スイカなどの苗を5000円~6000円ほど買い付けるのです。その苗を小生が耕した「わが畑」に家内が植えつけます。

20年以上も筋のいい立派な苗を「渡辺種苗」から買って植えつけてきたのですが、年々わが畑では、苗の育ちが悪くなり収穫は減っていきていました。その上での記録的な猛暑ですから、わが胡瓜もナスもトマトもこれまでと腹をくくっていたのですが、そうではなかったのです。

鳥の餌食になる前に収穫して食す「完熟トマト」は格別だった
感動したのはトマトの作柄でした。大球2本、中球2本、ミニトマト2本計6本の植え付け地は5坪菜園ではなく桜木を切って日当たりが良くなった一坪ぐらいの庭先です。陽が当たり過ぎる庭先ですから猛暑で日焼けし枯れてしまうのではと心配したのですが、ここも毎日水遣りを欠かさなかった成果でしょうか、背丈2メートルぐらいに育ち実もたくさんつけました。夏中、トマトはわが食卓をにぎわせました。黄色のミニトマト、中球トマトはフルーツ代わりにいただきました。大玉トマトは完熟するまで待つのですが、飛んでくる鳥たちの餌食になる前に収穫しなければなりません。鳥が食す直前に収穫して食べる完熟トマトの味は格別です。みずみずしくて柔らかく甘いトマトでした。

トマトに比べるとおいしいといえる野菜ではありませんが、胡瓜が植わっている5坪菜園には茄子6本、ピーマン2本、しし唐2本も植えつけました。これらも背丈1メートルに育ち、幹も太く、葉も茂り、10月半ばの現在も3日に一回、直径20センチのザル一杯収穫しています。しょうがと醤油で味付けした焼きナスや塩コショウで焼いたしし唐は好きですが、どのように料理しても好きになれないのがピーマンです。そのピーマンもいつの間にか消費してなくなっています。たぶん家内がおかずの中に秘かに潜ませて、小生が知らないうちに食べさせているのでしょうね。

痩せた土壌に「有機野菜培養土」を継ぎ足した成果です
本当のことを言いますと、こまめな水遣りだけで大豊作に至ったわけではないようです。例年同じ「渡辺種苗」から同じ苗を買い付け、水遣りも家内がこれまでも丹念にやっていました。それなのにわが畑の野菜は年々育ちが悪くなり、収穫が減っていたのです。であるのに大豊作に転じたのは、土壌改良の成果に違いありません。

わが畑の元になっている宅地は、30年以上も前、田んぼの土を持ってきて盛り土して造成されたと聞いています。田んぼの土は農薬のせいで痩せているといいます。土に空気を入れ肥料を注ぎ込まなければ、どんどん土壌はやせ細っていくはずです。肥料をやらなかったわけではありません。家内は野菜ゴミなどをせっせと漉き込んでいましたし、小生は落ち葉をためて腐葉土にして5坪菜園に戻していました。自然農法と格好をつけ化成肥料や農薬はまったく使いませんでした。しかし、聞くところによると野菜ごみの漉き込みは土中の細菌を増やし、野菜を食い荒らす虫の発生の原因になるそうです。腐葉土だけでは土壌の栄養分は足りないといいます。

ということで、小生、痩せたわが畑に新たな土を継ぎ足すことにしたのです。継ぎ足す土はホームセンターで買った一袋389円、25リットル入りの「有機野菜培養土」です。トマト、胡瓜、茄子、ピーマンを植えつける際に、旧来の土地を掘り返した後、必ずこの「培養土」を上乗せすることにしたのです。後で気が付いたのですが、これは単なる「痩せた土」の入れ替えではなく、即効、遅効などさまざまな肥料を含んだ「培養土」の追加でした。土が清潔になり、肥料が加えられたためにわが畑の「土」が生き返り、猛暑にも負けず、大豊作をもたらしたのです。

胡瓜やジャガイモ(春先にうえ梅雨明けに20キロぐらい収穫しました)を植えていた5坪菜園と庭先の一坪菜園には大根、赤カブ(ラディッシュ)、ほうれん草の種が撒かれ、リーフレタス、長ネギ、たまねぎ、カリフフラワー、ブロッコリーの苗が植わっています。冬から春先の収穫が楽しみです。

心配なのは、毎年「有機野菜培養土」を継ぎ足しし続けると狭い家庭菜園が盛り上がって「築山」になってしまうのではないか、という点です。しかし、「築山」になるほど継ぎ足すのにはあと10年は掛かるでしょうから、そこまで生きているかどうかも分かりません。そんな心配するより、来年も完熟トマトをいただけることを楽しみにしましょう、と家内がいっています。

2010年10月 6日 10:53

日銀の「包括緩和」は効き目があるか

2010年10月6日筆

日銀は、10月4日、5日に開かれた金融政策決定会合では「包括緩和」と名づけられた、予想外の、思い切った金融緩和政策を打ち出しました。市場では軽いサプライズ(驚き)が発生し、日経平均株価は134円高の急反発、10年物国債の流通利回りも0.9%を割り込み0.899%と今年の最低水準まで低下しました。株式市場と債券市場はとりあえず「包括緩和」を歓迎したことになります。

ただし、肝心の為替市場の反応はそう単純なものではありませんでした。5日の「包括緩和」発表後、対ドルレートは一時84円台まで下落しましたが、それもつかの間でした。東京市場では再び83円台前半に上昇、NY市場では一時82円90銭と83円を上回る場面もありました。気になります。

白川方明日銀総裁は、今回の緩和策を「包括的な金融緩和」、略して「包括緩和」と呼んでいます。「政策をパッケージとして出し効果を最大限引き出す」というのが「包括緩和」の意味のようです。下図は、金融緩和政策の種類を仕分けしたものです。今回は、このすべての金融緩和手段が採用されたことから「包括緩和」と呼んだのでしょう。

101006表.jpg


日銀は、「インフレ目標」政策の緩やかな導入に踏み込んだ
まず、伝統的な金融政策といわれる政策金利(銀行間で取引される無担保コール翌日物の金利)の誘導目標を0.1%から0~0.1%へ引き下げました。

事実上のゼロ金利政策への復帰となりますが、すでに政策金利は0.1%以下の状態に踏み込んでいます。さらに日銀は、上限に0.1%を残して短期金融市場(銀行間の短期資金取引市場。金利がゼロになると資金の出し手がなくなる)が消滅しないよう従来の政策を続ける意思も表明していますから、この金利水準の変更自体に余り大きな意味はありません。

意味があるのは、この事実上のゼロ金利政策を「物価の安定が展望できる情勢になるまで継続する」と表明したことです。日銀の最大の政策目標は「物価の安定」にありますが、物価上昇率がマイナスのデフレ状態での「物価の安定」とは物価上昇率をマイナスから0%以上に引き上げることを意味します。

日銀は物価安定の目標を、「生鮮品を除く消費者物価上昇率(コアCPI)で1%程度」に置いています。ですから事実上のゼロ金利政策を「消費者物価上昇率が1%程度まで上昇することが展望できるまで」つづけることになります。みんなの党などが主張しているような「インフレ目標政策」の緩やかな導入に踏み切ったことになります。インフレ目標政策が消費者物価引き上げに効き目があるかどうか、検証が必要ですが...。

「量的緩和」と「信用緩和」を併用した金融緩和
次に、「5兆円基金創設による新たな資産の買い入れ」という非伝統的な金融政策の採用です。これは従来の「量的緩和」政策に「信用緩和」政策を組み合わせたものです。規模は今のところ小さいですが、日銀が従来の慎重姿勢を転換させ、自らのバランスシートを膨張させても金融の量的緩和を行うという意思を表明したものと市場では評価されました。

5兆円基金のうち3.5兆円は長期国債など政府証券の購入に当てられますが、これは従来の「量的緩和」の拡充になります。残る1.5兆円は、市場からの民間リスク資産の買い入れに当てられます。米FRBが「住宅ローン担保証券」など民間リスク資産を買い入れて住宅市場に直接資金を供給した緩和策を「信用緩和」と呼びましたが、この1.5兆円はこれに相当します。

1.5兆円のうち1兆円はCP(商業手形)や社債の買い入れに向けられ、企業金融市場に資金を供給することになります。残る5000億円は、これまで日銀が購入したことのないETF(指数連動型株式投資信託)やREIT(上場不動産投資信託)の買い入れに当てられ、株式や不動産など資産市場に直接資金を供給することになります。この買い入れが、日経平均株価やREIT指数の上昇を誘発し、資産デフレの解消につながることが期待されています。

小規模な「包括緩和」では足元の円高を阻止できない
さてそこで冒頭に触れた、日銀の、この思い切った「包括緩和」に対する市場の反応です。日経平均株価(株式市場)、国債流通利回り(債券市場)、東証REIT指数(不動産市場)は素直に反応しましたが、対ドルの円レート(為替市場)はいったん下げた後、再び円高に戻るという具合に、複雑な反応を示しました。円高が止まらなければ、今回の「包括緩和」が、本コラムでも繰り返し述べている「デフレが円高を呼び込み円高がデフレをもたらす」という悪循環を断ち切る力を持っていないということになります。

今回の円高の原因はドル安にあります。ドル安の原因はアメリカの急速な金利低下による日米金利差の縮小にあるというのが定説です。アメリカでは景気減速懸念に対応する米FRB(連邦準備制度理事会)の金融緩和政策によって金利が急速に低下しています。一方、日本の金利はすでに十分低く下げる余地がどんどん少なくなっており、日米の金利差は縮小してきました。投資資金はより金利の高い国に流れその国の通貨高をもたらします。しかし日米金利差の縮小によって、投資家には円を売ってドルを仕入れ、高い金利のドル資産を買って儲けるという動機が薄れてきました。その結果、ドル買いが減少しドル安(その反対が円高)をもたらしているということになります。

したがってアメリカの金利低下が止まらない限りドル安が止まらないということになります。しかし、米FRBは、長期国債の買い入れ拡大によって金利をさらに低下させる量的緩和政策を準備しているのです。アメリカでも短期金利は十分低下していますが、長期金利にはまだ下げ余地があります。ですからFRBは景気減速が確認されれば、長期国債の買い入れ増額によって長期金利をさらに引き下げようとしているのです。

FRBが準備している長期国債の新たな買い入れ枠は5000億ドル(約45兆円)以上にのぼるといいます。日銀の「包括緩和」では長期国債などの購入枠を3・5兆円としていますから、これに比べ桁外れの資金規模です。想定される長期国債の買い入れ規模を比較するだけで日米中央銀行の長期金利引き下げに対する意気込みの差が現れています。投資家は米金利の低下のほうが早く大きいと読むに違いありません。これではドル安は止められません。

日銀券ルールを放棄して長期国債を買い入れるのか
さらに日銀は、「長期国債の保有残高は日銀券の発行残高を上限とする」という日銀券ルールを今回も堅持しました。このルールを崩すと、赤字財政補填のために日銀が日銀券をどんどん刷り増して長期国債を引き受けるという結果を招きかねません。財政規律が失われハイパー・インフレが発生することを日銀は恐れています。日銀券ルールを堅持することには賛成ですが、9月22日現在、日銀券発行残高約77兆円に対して長期国債の保有残高約58兆円で、買い入れ余力は20兆円弱あります。日銀は、いざとなればこの余力をフルに活用してさらなる長期金利の引き下げを促すというメッセージを市場に与えなければ,FRBの大規模な量的緩和準備に対抗できません。

以上のように、足元の円高阻止は思い切った「包括緩和」によっても困難を極めるのです。日銀の金融政策だけに依存するのではなく、中長期に構えたデフレを克服し円高を阻止する(デフレと円高の悪循環を断ち切る)政策に官民あげて取り組むことが必要です。デフレ脱却には、日銀の「包括緩和」を呼び水として、日本国内に投資が回帰し資金需要が盛り上がるための成長戦略の実行が欠かせません。


プロフィール
ニックネームさん
大西良雄(経済ジャーナリスト)
上智大学卒業後、東洋経済新報社に入社。記者を経て「月刊金融ビジネス」、「週刊東洋経済」編集長を歴任。出版局長、営業局長の後、常務第1編集局長を最後に独立。早稲田大学オープンカレッジ講師のほか講演・執筆活動。
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